NTKのすべて-2

OEM編-1

 

NTKの自社編に引き続きOEM編です。

OEM供給先は20社を超えていて、同時代のスパナ専業メーカーとしては圧倒的な数であり、総合工具メーカーであるKTCに匹敵します。

なお、OEM商品かどうかは製造元モデルと形状が同一であることから判断できますが、本編では形状が似ていない場合でも根拠を明示したうえで大胆な推測を試みます。

まずは、その1として工具メーカーと商社ブランド向けのOEMモデルから。

なお、本編ではOEM先の商標も取り上げます。

※写真背景色…NTK/OEM:薄紫  、NTK:水色  、その他:薄緑  

(⑧TONEは例外で青  

1.一覧表

 

2.商品解説

1) NTKロゴ入り & ロゴは無いけど間違いなくNTK製 

 ① SPEED by スピード工具(株) 

 ① SPEED-1/スパナ 

・NTKがスピード工具(株)にOEM供給したスパナです。

・裏面にJIS-N認証マークと共に、JISで表示が義務づけられている製造者記号としてNTKのロゴが刻印されていますので、NTK製と分かります。

・凸丸パネルは、オリジナルのNTKスパナには無いモデルで、OEM専用になっています。

(NTKコンビレンチでは凸丸パネルがスタンダードなのですが)

 

 ① SPEED-2/コンビレンチ 

・NTKコンビレンチの定番である凸丸パネルのインチ仕様SPEED。

・コンビレンチは北米への輸出が多く、このSPEEDもアメリカに輸出されていて、ebayで入手しました。

・"JAPAN"の刻印が入っていませんので、初期(1960年前後)の輸出と思います。

(日本製には"JAPAN"刻印を入れるように1960年代に法令で義務付けられたと理解しています)

・NTKの輸出は大阪の工具商社が担当していたと聞いていますが、恐らくこのSPEEDもNTKモデルと同じ商社が一緒に輸出したものと思います。(地元三条の工具商社は斧など国内金物が主流で、輸出は得意では無かった様子)

 

・コンビレンチにはNTKのロゴは入っていませんが、NTKモデルと形状が同一なことからNTK製と分かります。

 

・SPEED凸丸パネルのスパナとコンビレンチの比較です。

 

・スピード工具は、大阪の小規模な作業工具メーカーで、上の会社情報を見る限りでは、ペンチ類を得意としていたようです。

・本業では無かったスパナの製造をNTKへ委託したものと推定しています。

・本編一番下3項の『NTK供給先一覧』にスピード工具(株)が含まれていて、NTKからスピード工具に商品を供給していたことが資料からも分かります。

・なお、ロゴ"SPEED"は、商標登録されていませんが、当時の企業名鑑にロゴが載っていました。

・ネット情報が全くありませんので、2000年以前に廃業しているものと思います。

※会社情報は『日本機械工業名鑑』(国会図書館所蔵)より。

 

 ② HOZAN by (株)宝山工具製作所 

  

 ② HOZAN-1/スパナ 

・自転車工具で有名なHOZAN/(株)宝山工具製作所にNTKがOEM供給したスパナ。

・NTK定番の凸帯パネルで、JIS-N認証マークおよび製造者記号としてのNTKロゴが刻印されています。

・表面に◇"HKC"も刻印されていますが、このロゴは1975年に商標出願されていますので、このモデルは1975年からNTKが終焉する1978年までの数年間だけ生産されたのが分かります。

・日本では見たことがありませんが、カナダの古い自動車等を得意とする個人のブログで見つけました。⇒こちら

・その解説でNTKを日本精工/NGK製と間違えていますが、日本でも良く間違えられていますので、海外ではしょうが無いことです。
・このブログにはKTCが一重丸京のゼロ戦工具について語っていた幻の過去記事も掲載されていて、私にとっては貴重な情報源になっています。⇒幻のKTCゼロ戦記事


・同じ形状の池田工業製HOZANがあります。(刻印"01E"より2001年5月生産)

・丸"I"がJIS表示義務の生産者記号になっていて、池田工業製を示しています。

・品番はNTK製と同じ"521"のまま。

・上の①SPEEDと同じようにNTK廃業に伴い委託先を切り換えたものと思います。

 

 ② HOZAN-2/コンビレンチ 

・HOZANのコンビレンチです。

・下の比較写真よりNTKに極似しているのが分かりますので、NTK製と判断できます。

・NTKが得意とするクロモリ製です。

・スパナ部とメガネ部のサイズが異なるのが特異です。

↓NTKとHOZANの比較

 

・コンビレンチもスパナと同じく池田工業製に切り替えられています。

・但し、材質はクロモリから一般鋼材に変わっています。

・写真の上側がNTK製、下側が池田工業製で、ロゴも新世代になっています。

 

↑HOZANの登録商標。

※コンビレンチ詳細ならびにHOZAN工具全体については、こちらで解説しています。

 

 ③ HILKA/英国 Hilka Tools (UK) Ltd. 

 ③ HILKA-1/コンビレンチ 

・英国の工具ブランドHILKA向けにNTKがOEM供給しています。

・日本製では珍しくメガネ部がディープオフセットになっています。

・同一モデルがNTKにあることから、NTK製と分かります。

・日本製であることを示す"JAPAN"の刻印が裏面に刻印されています。

・"クロム"のスペルがNTKはドイツ語表記の"CHROM"になっていますが、HILKAは英国向けであることから英語スペルの"CHROME"になっています。

・この形状(メガネ部がディープオフセットでロングタイプ)は、NTKが姿を消した後にロブテックスで復活します。

 

・Hilkaモデルの元になった同一形状のNTKコンビレンチです。

・ほぼ同一形状で、ブランド名がHikaの直立文字に対し、NTKは斜め文字になっています。

・さらに"NTK"ロゴの周りが長方形から平行四辺形に変わっています。

 

↑HILKAとNTKの比較写真

・Hilkaはスタンダードな長さですが、NTKはロングタイプになっているのが分かります。

 

 ③ HILKA-2   

・上のHILKA-1に対しHILKAロゴが斜め大文字で、枠は平行四辺形になっています。

・HILKA-1はスパナの付け根が幅広になっていますが、このHILKA-2は一般的なつながり形状になっています。

 

 ③ HILKA-3    

・パネルデザインが、凹尖りになっています。

・NTKにはこのパネルタイプはありませんが、JAPAN刻印があること、全体形状がHILKA-1や2と同一であることから、これもNTKからのOEM供給と判断できます。

 

 ③ HILKA-4/スパナ   

・同一デザイン(斜め大文字、平行四辺形枠)のスパナもあります。

・スパナのHILKAにはJAPAN刻印が無いのが悩ましいところです。

・また、上のHILKAコンビレンチ3種は英語表記の"CHROME"だったのが、スパナではドイツ語表記の"CHROM"になっています。

 

☆日本での商標登録

HILKAは英国の工具ブランドなのですが、(株)グリンヒル加藤商会が1961年にねじ回し等の工具類として日本で商標登録をしているのを見つけました。

グリンヒル加藤商会は大阪の貿易商社で、英国HILKA社とNTKがOEM供給契約を結ぶに際し仲立ちし、かつHILKAブランドを商標登録したものと推測します。

NTKは大阪の商社経由で輸出していたという話を聞いていましたが、輸出に力を入れていた割には大阪の貿易商の名前がこれまで出て来ませんでした。

したがい、HILKAの商標登録から輸出元候補に辿り着けるとは思っていませんでした。

ちなみに、グリンヒル加藤商会は、アメリカの会社との貿易記録も残っていますので、英国だけで無く、NTKのアメリカ輸出にも関わっていたものと思います。

 

 

Hilkaは英国で50年以上の歴史があり、現在は台湾製と思われるモデルがWebに載っています。

現在のHilka Webサイト/Hilka Tools (UK) Ltd.

 

 ④ YAHIKO(弥彦) 

燕三条のご当地ブランドで、非常にレアなモデルです。

これまでどこにも登場しておらず、インターネット初披露かと思います。

・弥彦は、弥彦神社で有名な地域の名称で、燕三条に隣接していて、東三条駅から専用のJR弥彦線が走っています。

・その弥彦/YAHIKOをブランド名としたスパナです。

・裏面にJIS-N認証マークと共に生産者記号としてNTKが刻印されています。

・全国的に浸透している名称ではありませんので、ご当地モデルと理解しています。(私は、最初は英語名かと思ったぐらいで、全く分かりませんでした)

・したがい、地元である燕三条の工具金物商社が弥彦ブランドを興して販売したのだろうと思います。

・一番下3項の『NTK供給先一覧』に載っている燕三条商社9社と、自社ブランドスパナの販売実績がある燕三条商社5社を確認しましたが、商標として"YAHIKO"、"弥彦"は登録されていませんでした。

(スパナ販売実績の5社…相忠/AC TOOL、坂謙/GLORY、高儀/GISUKE、与板利器/YRK & Unitech、アークランドサカモト/HAKUBI)

・この13社(9社+5社-重複1社)のいずれかの会社が、商標登録はせずに、単発で販売した可能性が高いと考えています。

・特に、自社ブランドスパナの販売実績があり、かつNTKの供給先でもある商社が第1候補になるのかと思いますが、該当するのは1社のみで、高儀(GISUKEの販売元)です。

・なお、地元ホームセンターと燕三条工具メーカーが協業して単発で5本組セットを特別販売することがありますが、燕三条を拠点とするホームセンターであるコメリとアークランドサカモトの2社はNTK活動時にはまだホームセンター事業を始めていませんでした。

 

・当ブログの読者で地元三条の方に存在を教えて貰い、かつ5本組セットの内の3本を譲って頂きました。(入手経路は不明とのこと)

・これまでオークションを含めて見たことがありませんので、非常に希少なモデルだと思います。

・ご当地モデルでインチサイズというのが気になりますが、ミリサイズのモデルも存在するのだと思います。

 

↑同じサイズのNTKスパナとの比較。

 

 ⑤ KAWASAKI 

 ⑤ KAWASAKIー1 

・KAWASAKIモデルには大きく分けて2種類あります。

・ひとつはオートバイの川崎重工用で、主に水戸工機/MITO製です。⇒詳細は、こちら

・もう一つが、ブランド元が不明のKAWASAKIです。

・"KAWASAKI"を名乗ることが出来る工具商社がブランド元だろうと推測していますが、詳細は長らく不明のままです。(川崎重工以外の川崎xxという機械工業メーカーの可能性もあり得ます)⇒OEM元はどこだろうとあれこれ考えているのは、こちら

・アメリカと日本の両方で流通しています。

・上の凸丸パネル/⑤KAWASAKI-1はその形状から間違いなくNTK製です。

・私が入手出来ているのが上の小サイズだけですので、下で中間サイズ(17mmと14mm)の写真を比較しますが、同一なのが良く分かります。

 

 ⑤ KAWASAKIー2 

・短小フラットパネルの"KAWASAKI"モデルもあります。

・恐らく上の凸丸パネルと同一ブランドで、メガネ部など作りがラフなことからホームセンター向けのセット品だろうと踏んでいます。

・製造元も不明ではありますが、スパナ形状が類似していること、さらに同一形状モデルの製造元が他に無いことから、これもNTK製だろうと考えています。(確度75%)

↓6本セット

 

 ⑥ Tender 

 

・Tenderは、NTKモデルと極似していることからNTK製と分かります。

・日本とアメリカの両方で入手可能ですが、日本でも流通していることから日本の工具商社が興したブランドと考えています。

・輸出もするために"JAPAN"刻印も入っています。

↓NTKとの比較(同一モデルなのが分かります)

 

・ブランド元がどこなのか長く探していましたが、TENDERを商標登録している商社が1つだけあるのを今回NTK/OEM全体を調査中に見つけました。

・東京の(株)友和という小物商品全般を取り扱っている商社で、TENDERは手動工として登録されています。

・出願が1976年ですので、NTKの存続時期とかろうじて重複します。(ロゴは以前から使用していた可能性もあります)

・ただし、商標は大文字の"TENDER"なのが気になります。

・したがい、製造元はNTKで間違いありませんが、ブランド元が友和である可能性は50%と考えています。

・残りの50%は、大胆な推測ですが、一番上の①スピード工具の別ブランド。

・SPEEDというNTK製の同一モデルを既に持っていること、SPEEDと一緒にアメリカへ輸出が可能なことがその根拠です。(わざわざ別ブランドを作る理由があったかは?)

 

↓TENDERの商標登録

 

 ⑦ TONE コンビレンチ 第1世代 

※TONE第1世代の過去ページでNTK製について解説していますので、その中からNTK製の部分だけ以下に再アップします。⇒第1世代全体はこちら

・TONE最初のコンビレンチ(第1世代)は、日本のコンビレンチで一番ポピュラーな凸丸パネルのデザインで1976年に登場しました。

・TONEスパナは1964年に発売されていますので、コンビレンチはスパナから10年以上遅れての登場になります。

・カタログ上では1981年が最後の掲載となり、次のカタログ1985年で第2世代コンビレンチ(凹丸パネル)に切り換えられています。

・したがい、カタログへの掲載は5年間のみ(1976年~81年)で、販売期間は長くとも10年間(1976年~85年)となります。

・短命だったこともあり、この第1世代コンビレンチは、あまり存在が知られていない貴重なモデルになっています。

・その第1世代コンビレンチにも3種類があり、上の写真は最初の1stモデルで、メガネ部オフセットがプレス曲げになっています。(2ndと3rdモデルは鍛造曲げ)

 

・TONEスパナは自社製でスタートし、第2世代から外注に切り替わっていますが、コンビレンチは最初の第1世代から外注となっています。

・上の写真は、1番目が燕三条のNTK、2番目がTONE第1世代、さらに3番目が日本製のアメリカブランド"PowerMaster"で、サイズは異なるものの、3種共に同一形状であることが分かります。

・1番目のNTKは、1960年代からコンビレンチを生産していて、多くの国内外ブランドにOEM供給も行っています。

・裏面右側に1桁番号が刻印されていて、サイズ毎に番号が大きくなっています。

・下表にブランド3種の刻印番号を示しますが、3種類でサイズ毎の連番になっているのが分かります。(これは鍛造型が表示される時に使用される番号の取り方です)

・3種類が同一形状であること、鍛造型を示すと思われる共通した連番が使用されていること、NTKは多くのブランドにOEM供給していることの3点より、TONE第1世代の1stモデルはNTK製と考えるのが妥当だと思います。

(当然ながら、アメリカブランドのPowerMasterもNTK製)

 

 

↓TONE第1世代4サイズの裏面番号が、"6"⇒"9"の連番になっているのが分かります。

 

・メガネ部オフセットがプレス曲げになっているのが分かります。

 

↑3種類の第1世代

同じようなデザインですが、3種類は鍛造型が異なっています。

1stモデル…プレス曲げオフセット(メガネ部)、メガネと胴長の段差大

2ndモデル…鍛造曲げオフセット、①と同じ長さのパネルが右に移動

3rdモデル…鍛造曲げオフセット、②に対しパネルが左右に長い

 

☆商標

TONEの商標は1959年に初めて登録され、川の流れの中の"TONE"と共にカタカナの"トネ"が加えられていました。

第1世代コンビレンチが販売開始される前の1968年にカタカナ"トネ"を除いた商標が登録し直されていますが、利根ボーリングから異議が入ったようで、適用の中に『鉱山機械器具は除く』という一文が追加されています。

 

2) たぶんNTK製

ここからは『たぶんNTK製』を大胆に推測していきます。

判断の根拠と、その確度も明示します。 

エッと思うものばかりを集めました。

 ⑧ SANYO by HOZAN 

  

・いきなり凄く古そうで珍しい形のコンビレンチの登場です。

・まずはSANYOブランドについて。

・2年ほど前に手に入れていたものの、"SANYO"のブランド元がどこなのか分からずにいました。

・形状からだけ見ると、まるで1940年頃のアメリカ製のようですが、"SANYO"という名前から日本製であることは確かです。

・でも、三洋電機がコンビレンチを出すわけ無いし、三洋と名前の付く工具メーカーは無いし、??のままでした。

・今回NTKのOEMを調査するにあたって、NTKの供給先69社の商標登録状況を1社1社確認しましたが、自転車工具のHOZAN/宝山工具製作所が1956年にSANYOという商標を登録しているのを見つけ、思わず飛び上がって喜んでしまいました。

 

 

・"HOZAN"のロゴは1963年の登録ですが、"SANYO"はその7年前、宝山として最初の商標登録になっています。

・宝山に確認しましたが、『SANYOという商標をどのように使用したのか社内に記録が無く、また伝聞としてもSANYOというブランド名は聞いたことが無い』とのこと。(65年も前の話ですので、仕方が無いことと思います)

・現実的に"SANYO"と刻印されたコンビレンチがあり、かつ工具メーカーの宝山がSANYOを工具として商標登録していますので、宝山の商品と考えるのが妥当です。

・ちなみに、『農工器具』として登録されていますが、これは農業用の農耕器具という意味では無く、項目分けとして『農業もしくは工業の器具』という意味になります。(農工大学に農学部と工学部の両方があるのと同じ)

 

・2本を手に入れていますが、両方共に13x19と14x19という変則的なサイズです。

・宝山は基本的に自転車工具を取り扱っていましたので、通常であれば15mmが基本になると思うのですが、サイズが異なることから何用の工具だったのかは不明です。

 

・次に商品の作りについて。

・スパナ部の作りのラフさだけを見ると、まるで手打ち鍛造のようです。

・一方で、メガネ部のオフセットはプレス曲げになっていて、スパナ部とメガネ部の胴長のつながりに若干の段差はあるものの、基本的には平板になっています。

・したがい、プレス打ち抜きのようにも見えますが、板厚が6mmあり、この厚みでプレス打ち抜きが加工なのか不明です。(一般的には打ち抜きは板厚3mmまでと理解しています)

・メガネ部が6Pになっているのも特徴で、簡易な作りに見えます。

 

前置きが長くなりましたが、NTK製の可能性について。

宝山は戦前からの自転車工具メーカーですが、戦後の比較的早い時期にレンチ類はOEM外注に移行したと理解しています。

一番下にNTK供給先69社の一覧表を載せていますが、この中に工具メーカーが5社入っていて、宝山工具製作所も含まれています。

したがい、NTKがOEMに力を入れていたことから考えて、NTK製の可能性が高いと考えています。

上の②HOSAN-2コンビレンチでNTKから宝山/HOZANへのOEM納入実績もあります。

また、1950年から1960年頃の時代に他にOEMを行っていた工具メーカーはあまり思い付きません。

したがい、この宝山のSANYOコンビレンチはNTK製だろうと考えています。(確度50%)

NTKは1955年に新しい社長が就任し新体制になっていて、SANYOの商標登録1956年と同時期になります。

ただし、商品の作りの古さ加減から推測すると、もっと以前からSANYOは登場していたことも考えられます。

NTKは戦前からの企業ですので、1955年以前から工具生産に関わっていたものと思いますが、戦前から1955年までの間のNTK情報が残念ながら全く見つかっていません。

これが確度を50%止まりにしている理由です。 

 

 ⑨ ASH/旭金属工業 

・1975年頃に発行された旭金属のパンフレットに輸出専用のディープオフセット・コンビレンチが載っています。

・ごく一時期のみ輸出用に生産されたとのことですが、残念ながらこれまで現物も詳細写真も見たことがありません。
・このモデルの存在は以前から分かっていたのですが、今回NTKをまとめ直すに際して改めて見て、NTK製の可能性が高いことに気が付きました。(確度90%)

・なお、NTKのこのモデルは、日本のコンビレンチに大きな影響を与えています。(これ1本で日本のコンビレンチが語れます)

 

・三段論法のような話になりますが、以下よりたぶんNTK製と推定できます。

[1] HILKAがNTKのOEMであることは上の③で説明の通りです。

[2] そのHILKAに凹3分割のパネル枠が平行四辺形では無く長方形になっているモデル(③ HILKA-1)があります。

[3] このHILKAの長方形枠は、下の写真から分かるようにASH/旭金属モデルと類似しています。

[4] このASHモデルは、上の⑪ASHディープオフセットと長方形枠の形状が同一に見えます。(写真が不鮮明ではありますが、パネルが3分割の長方形で中央にマークがあるのが分かります)

[5] 上の水色背景のNTKディープオフセットモデルと写真を比較すると分かる通り、ASHディープオフセットモデルの形状はNTKに類似しています。

[6] ASHモデルは1975頃に輸出用にごく少数だけ生産されたようですが、HILKAとNTKは後述するように1960年には関係が始まっていたようですので、NTK/HILKAが先に登場しています。

[7] したがい、ディープオフセット形状が類似していること、同一の長方形パネルデザインがNTK製HILKAと同一であること、NTKの方が先であることの3点から、このASHはNTKのOEMと思います。(確度90%)

[8] ASHもヨーロッパ輸出市場に参入するにあたり、NTKで実績のあったこのモデルをまずOEMとして採用したのだと思います。

 

↓ASHとHILKAの長方形枠パネル同士の比較

 

↓HAZETディープオフセットとASH凹3分割パネルの比較

・NTKとASHの凹3分割パネルの話をする場合、HAZETモデルとの類似性について触れなければなりません。

・輸出を得意としていたNTKがヨーロッパ市場を狙うにあたって、参考にしたのがこのHAZETだったのだろうと推測しています。

・ヨーロッパでは一般的なディープオフセットを採用することにし、さらにHAZETのこのパネルデザインを模して、スムーズな参入を試みたのだと思います。

・そして、この凹3分割パネルでNTK製のASH輸出モデルが出来あがり、NTKが廃業した後もASH内で凹3分割パネルデザインが継承されて、1980年に入ってからディープオフセットでは無い普通のコンビレンチとして登場したものと大胆に推測します。(下のASHコンビレンチ)

・また、NTKディープオフセットモデルのデザインは、同じくNTK廃業後にロブスターのコンビレンチモデルとして復活します。


↓ロブスターのディープオフセット・コンビレンチ

(全体形状がNTKデザインの延長線上にあるのが分かります)




・パンフレットの左側がNTK製のディープオフセット・コンビレンチ。

・パンフレット右側は同じようなディープオフセットですが、パネル形状が凸帯になっていて、NTK製とは異なりますので、旭金属自社製または他の燕三条メーカー製と思います。⇒詳細は、こちらにて。

 

 ⑩ HONDA二輪 by RK/理研化機工業 

・RK/理研化機工業(株)はホンダ二輪HMの車載工具として有名です。

・1955年頃からホンダ車載スパナが無印となる2000年までの約45年間納入されていました。

・ホンダだけで無く、ヤマハやスズキにも車載スパナを供給していました。

・理研化機は工具生産会社では無く、例えば鍛造プレス機は持っていませんので、レンチ類の生産は外注していたと理解しています。

・その理研化機にNTKが供給していたことが下の69社リストから分かります。

・サイズ10x14mmが一般的なHMスパナですが、日本生産のカブだけで3千万台が生産されていますので、併行発注されていたKOWAと半々にしてもRKの10x14mmスパナは1,500万本がホンダに納入されていることになります。⇒ホンダスパナの詳細は、こちら

・RKスパナの表面に刻印されているHMロゴに多くのバリエーションがありますので、その内の幾ばくか(1%でも15万本)はNTKからの供給品だと考えています。(確度75%)

・また、燕三条の熊谷鉄工所も理研化機に納めていたことが分かっていますので、NTKと熊谷鉄工所の少なくとも2社はホンダHM/RKのOEM供給元だと考えています。

なお、ゴールドウイング用のホンダ"HONDA"スパナが1987年から生産されていますが、この時にはNTKは既に存在していませんので、可能性があるのはホンダ"HM"スパナだけになります。

 

 

 ⑪ 大阪鍛工 

・NTKは大阪鍛工にも納めていたと聞いています。(燕三条での伝聞情報)

・大阪鍛工のスパナは大半がJIS付きですので、外部に生産委託した場合には必ず委託先の生産者記号が刻印されることになります。

・しかしながら、大阪鍛工のJISモデルで他社の生産者記号が入っているスパナは見つかっていません。

・したがい、可能性があるのはJIS付きでは無い大阪鍛工スパナになります。

・私が知る限り対象は1種類だけあり、それが上のモデルです。

・これがNTK製の大阪鍛工である可能性が濃厚だと思います。(確度75%)

・なお、表面に刻印されているロゴは見たことがありませんので、このNTK製であろうスパナを大阪鍛工がどのブランドに納めたのかは不明です。

・裏面には大阪鍛工のロゴである丸”T"が入っています。(商標登録はされていません)

・ちなみに、このモデルはJIS付きではありませんので、大阪鍛工以外のロゴや記号を表示する義務はありません。

・サイズ12x21mmと左右差が大きな特異形状になっていますが、表面と裏面の中央にロゴだけが刻印されたシンプルで好印象のスパナです。

 

 ⑫ MITOLY/水戸工機 

・『たぶんNTK製』の最後は水戸工機です。

・旧社名の(株)水戸合金工具製作所の名前が、下のNTK供給先リストに載っています。

・水戸工機/MITOLOYはソケットを得意とする工具メーカーですが、スパナに関しては初期から外注していたと理解しています。

・JIS付きのコンビレンチを見る限りでは、ダイア精工と池田工業の製造者記号が刻印されていますので、この2社のOEMになっています。

・前述の供給先リストは1962年当時のものですので、その時代と思われるスパナが上の写真のモデルです。

・どのモデルがNTK製のMITOLOYなのかは不明ですが、例えばこのモデル辺りだと思います。(このモデルの確度50%)

・なお、KAWASAKI二輪の車載スパナとしてMITOロゴの水戸工機が採用されていて、その始まりはZ1です。(Z1は1972年に販売が開始されています)

・NTKが積極的にOEM供給していた時代ですので、Z1の車載工具もNTK製なのかと妄想してしまいます。(スパナ部の尖りが長くて、NTKっぽくありませんが)

 

NTKの話ではありませんが、このミトロイ君のイラスト、とても好きです。

水戸工機がソケットを得意とする会社というのが良く分かります。

なお、上の商標登録はイラストの1stバージョンで、3Dデザインに変更された2ndバージョンもあります。(2ndバージョンは商標登録されていません)

 

3.OEM商品を探すための情報源について

古い工具を調べる時に重要な情報源は、"国会図書館"と"商標検索サイト"の2つです。

昔のスパナは情報が少なくて『スパナは暗い闇の中にある』と長らく思っていましたが、この2つを駆使すれば、かなりのことが分かります。

少なくとも『闇の中』という印象は全く無くなりました。

家内制手工業レベルの小規模会社でなければ、なんらかの情報は得られると今は考えています。

ちなみに、インターネットが普及する前の2000年以前に終焉を迎えた会社の情報は、元々ネット内に情報が無いので、ネット検索してもほとんど何も出て来ません。

 

1) 国会図書館

国会図書館の資料で役に立つ例として『日本機械工業名鑑』。

1962年版の『会社組織編』に作業工具会社を含む機械工業系の製造会社2,000社が掲載されていて、会社毎にロゴと会社情報が掲載されています。

①のSPEED/スピード工具のブランド元詳細は、この資料でSPEEDのロゴを見つけ、詳細が分かりました。

国会図書館資料の多くはデジタル化されていて、資料内に該当情報(会社名など)があるかは、こちらから個人PCで確認できます。 

表示画面内の『図書館送信資料』に"必ず"チェックを入れ、『検索』枠内に会社名等を入力してから、右隣の『検索』ボタンをクリックするだけで簡単に検索できます。

掲載されているのが分かれば、地元の図書館にあるPCで詳細を読むことできます。

印刷も可能です。(著作権保護のため全ページの半分まで)

興味のある方は試しに『スピード工具』と入力してみてください。

※2022年5月19日から項目だけで無くページ内まで個人PCで閲覧が可能になりました。(登録が必要です) 

 

☆ NTK供給先一覧

前述の『日本機械工業名鑑』1962年版には『会社組織編』とは別に『作業工具編』もあり、NTKの供給先リストが載っています。

リストには3種類の会社が載っています。([1] 工具メーカーへのOEM供給、[2] 工具商社への完成品供給、[3] 工具メーカーへの鍛造品素材供給)

NTKのOEM先を調べるに当たっての出発点になりました。

・全69社(この内9社に商標登録あり)

・スパナを含む工具メーカー5社…赤いアンダーライン(5社共に商標登録あり)

・地元三条市の工具商社9社…青枠内(2社が商標登録あり)

※『株式会社水戸工具製作所』は『水戸合金工具製作所』の誤植。(登録住所は東京事務所)

 

☆ 作業工具150社ロゴ一覧

『日本機械工業名鑑』の1959年版と1962年版を合わせると作業工具メーカー約150社のロゴと会社情報が掲載されていて、そのロゴの一覧表を当ブログ内に作りました。⇒こちら

実は、『一覧表があればロゴから工具メーカーを探し当てるのに便利だろう』と昔から考えていて、このNTK/OEM編を書いているのを一端中断し、奮起して作った次第です。

※私がブログ作成上の参考にしているアメリカの工具解説サイト"Alloy Artifact"にロゴ一覧ページがあり、これの日本工具メーカー版を作りたいと思い続けていたのです。

 

2) 商標検索サイト

商標を管理している特許庁の外郭団体が、特許と商標の検索サイトJ-Plat Patを運営していて、戦前からの商標を調べることが出来ます。

HOZAN/宝山工具が"SANYO"というブランドを持っていたのはこの検索サイトで見つけました。

会社名で検索する場合は、入力は2カ所のみ。

画面一番下、『その他検索キーワード』の『キーワード』枠内に会社名フルネーム(株式会社を?にしても可)を入力し、『検索オプション』をクリックして表示させ、『ステータス』の『全て』にチェックを入れてから『検索』ボタンをクリックすれば結果が表示されます。

※『ステータス』の『全て』にチェックを入れないと過去登録は検索できません。(初期画面ではチェックが入っていませんので要注意)

過去会社の商標は調べられないとずっと誤解していたのですが、NTKを調べるに当たってJ-Plat Patの電話相談窓口に確認したところ、過去登録を戦前からでも見ることが出来るのが分かりました。

 

↓宝山工具の"SANYO"を検索した実例

↓画面の一番下

↓さらに下に検索結果が表示される


NTKのすべて-3/OEM編-2に続く

NTKのすべて-1/自社編はこちら