自動車用スパナ 5/6
【二輪その他編(ホンダ以外)】
【2023年6月17日 追記】
カワサキ向けの車載工具は、日本よりもアメリカebayの方が圧倒的に出品量が多く、私も全種をebayで新たに入手しました。
(今は円高で、かつ輸送費も高くなってしまい、手を出しにくくなっていますが)
これを機にカワサキについて全面的に解説を書き換えました。
↑フライング・リバーマーク(W1等)
↓MITO製Kawasakiの4種(1番上…Z1,Z2、2番目…Ninjya等)
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自動車用スパナ6部作の"その5"は、二輪その他編(ホンダ以外)です。
カワサキ、スズキ、ヤマハを取り上げます。
自動車用スパナ-1~4と同様に、車載または整備工場向けスパナとコンビレンチを、二輪メーカー毎に分類し、製造者記号等から判明したOEM製造元を明らかにしていきます。
なお、昔の二輪(1945年~1968年)については"その6"にて。
1.一覧表
本編では、ホンダを除くオートバイ3社について解説します。
2.商品解説
ロゴの変遷から話を始めます。
カワサキ・オートバイのロゴは基本2種類です。
まず、創世記の川崎汽船を起源とするリバーマーク
(船の吃水線)。
川崎重工の傘下となったメグロのタンクマークとして1963年に登場します。
旗の中にリバーマークを入れたフライング・リバーマーク
もW1(1966年)に使われていることが確認できています。
車載工具にはそれぞれが単独で刻印されていました。
次に、2つ目のフライングKマーク
が、1967年に登場します。
、
に大文字"KAWASAKI"と小文字"Kawasaki"が付随して、下の通り5種類のKawasakiロゴを刻印した工具が存在します。
★工具用ロゴ7種まとめ
・川崎重工の会社ロゴとしては
が1952年に設定され、オートバイ用として使われるのはメグロが川崎重工の傘下となった1963年からメグロ・タンクマークの一部として。
・フライング・リバーマーク
は、W1用として1966年(アメリカ向け)から使用されています。
・但し、車載工具としてのロゴ切り替わりが確認できるのは1984年になってから。
・また、一つの車種に搭載されている車載キットに③~⑤3種が混在しているなど、車載工具へのロゴの使い分けはあまり厳格ではなかった様子。
① リバーマーク
・リバーマーク単体を表面の中央に大きく刻印してあり、目立ちます。
・川崎重工傘下となった1963年と1964年のメグロ、または川崎重工の初期オートバイに搭載されていたものと推察します。(1964年にメグロは倒産)
・裏面の"MITO"刻印よりMITOLOY/水戸工機のOEMと分かります。
・このスパナから川崎重工と水戸工機の関係が始まります。
・メグロは、川崎重工傘下になるまではMとWを合体させた独自ロゴ
をタンクマークに使用していました。(上の写真左側)
・川崎重工傘下入り後はM,Wロゴの部分がリバーマークに変わっています。(同右側)
・そのリバーマーク・メグロには、このスパナ①が車載されていたのだろうと推察しています。
② フライング・リバーマーク
・1966年に川崎重工の第1号オートバイとして登場したW1に、フライング・リバーマークのスパナが採用されていたと理解しています。
・このスパナ②は10x14であり、W1車載のサイズとは異なるため、初期のカワサキの別の機種に車載されていたものと思います。
・裏面の"M"刻印が気になりますが、"MITO"を示している?
★W1の車載スパナと車載工具一式
オランダの部品販売会社であるCMS(Consolidated Motor Spares)が運営するWebサイトでカワサキ用パーツリストを閲覧出来ます。 ⇒ 詳細は、こちら。
↓W1に車載の10x13(品番:960B1013)
↓W1カタログ(1966年)の車載工具ページ
③ リバーマーク + KAWASAKI
・カワサキ初の750ccであるZ2、ならびに輸出用Z1(900cc)に車載されていた14x17スパナ。
・Z2の登場は1971年であり、すでに川崎重工の会社ロゴは
に切り変わっていますが、車載用としてはリーバーマークを□で囲った
が採用されます。
・MITO-3
★Z1、Z2用の車載工具一式
↓Z2の車載工具一式
④ フライングKマーク + Kawasaki(小文字)
・目に馴染んでいるフライングKのスパナの登場です。
・作りも①~③と比較して現代的なスパナになっています。
・1984年のGPZ900R用(初代Ninjya)の車載スパナと理解しています。
・品番:92126003
・MITO-10
↑トップガン・マーベリックのGPZ900R A2/1985年(ペットネームでNinjya)
↓ZF900R/Ninjya(1984年/A1)カタログの車載工具ページ
⑤ フライングKマーク + KAWASAKI(大文字)
・大文字版と小文字版の使い分けは、一つの車種に混在しているなど明確になっていません。(混在状況は後述)
・このスパナ⑤から全長が短くなっています。
・14x17mmで、④161mm、⑤145mm。
⑥ KAWASAKI(小文字)
・
Kawasaki は、2007年から川崎重工グループ全体のロゴに昇格しますが、一方でオートバイ用としては1990年前後から
が使われなくなり、単純に"Kawasaki"がロゴになっています。
・車載工具も同じく"Kawasaki"に切り変わっています。
・これも混在されていますので、時期や機種は明確になっていません。
・"Kawasaki"に"MITO"も"JAPAN"も刻印されていない無印&無国籍のスパナが登場します。
・他社の例に漏れずアジア製に切り変わったのだろうと思います。(2000年頃?)
★複数ロゴの混在
↑350TR(1972年発売)の車載工具
・3種のロゴが混在しています。
⑥文字だけ"Kawasaki"(小文字)14x17
・タンクマークは、文字だけの斜め大文字"KAWASAKI"。
★MITO-x刻印について
水戸工機製のKawasakiスパナ③~⑥には全て裏面に"MITO-x"が刻印されています。
この"x"は、サイズを示しているのか、ロゴ種類と関連しているのか、50本で調べてみました。(重複を除くと29例)
一覧表にしてみましたが、サイズともロゴ種類とも関連は全くありませんでした。
結論としては、何を示しているのかさっぱり分かりません。
ちなみに、MITO-1からMITO-14まであります。
★MITO製4種(上から③~⑥)
・切り替わり(④⇒⑤)の途中で全長が短くなっているのが分かります。
⑦ Kawasaki(大文字)
・大文字の文字だけ"KAWASAKI"も見つかっています。
・JAPAN刻印は無く、これもアジア製と思います。
・オートバイの車載用なのか確認できておらず、後述するコンビレンチの様にいずれかの川崎重工グループ用の可能性もあります。
アメリカebayのKawasakiスパナページ ⇒ こちら
【参考】コンビレンチ-1
・凸丸パネルに"KAWASAKI"と浮き出し刻印されたコンビレンチがアメリカでのみ出回っています。
・前述カワサキ・カタログの主要車種は確認しましたが、車載工具としてコンビレンチは採用されてはいません。
・したがい、カワサキディーラー向けの整備工具の可能性があります。
・もしくは、"KAWASAKI"ロゴを使えるいずれかの企業が、次のセット品の様に一般工具として販売していたのかもしれません。
・他と異なり"KAWASAKI"の"S"が角張った字体になっているのが特徴です。
【参考】コンビレンチ-2

・大文字の"KAWASAKI"と表示されたコンビレンチがあります。
・10~17mmの6本セットになっています。
・日本で手に入れました。(このモデル以外は全てアメリカebayで入手)
・文字表示だけ見れば、スパナ⑦と同一で、オートバイ用なのか疑問です。
・オートバイは収納スペースが少なく、コンビレンチの6本セットが車載された例はありません。
・コンビレンチのメガネ部はプロユースに耐える形状では無いことから、整備工場用とも考えられません。
・以上より、"KAWASAKI"という名前を名乗ることが出来るいずれかの企業(川崎重工グループ外?)がホームセンター等に卸した一般向け工具の廉価版と考えるのが妥当だと思います。
・形状の古さより1960年から1980年代頃のモデルと思います。
他ブランドとの比較
・燕三条の大栄鍛工所/DAIEのモデルに非常に似ています。
・異なるのはスパナ根元部の段差形状と全長の2点のみです。
・確度80%の精度でDAIEのOEMだと思います。
【参考】コンビレンチ-3
・上のコンビレンチ-2と同一形状ながら、"KAWASAKI"の"S"がコンビレンチ-1と同じく角張った字体になっています。
・15mmという自動車工具には無いサイズです。
・15mmは自転車で多用されるサイズですので、自転車用工具かもしれません。
・コンビレンチ-1と同時にアメリカで手に入れました。
・アメリカではブランド"KAWASAKI"は価値が高いので、自転車にブランド名を貸していることも考えられます。(日本に"JEEP"ブランドの自転車が出回っているのと同じ)
・ちなみに、2000年以降の話になりますが、タイ・カワサキが自転車を取り扱っているのが確認できています。
・似たような形でBMX/マウンテンバイクのブームが始まった1980年代にアメリカに"KAWASAKI"ブランドの自転車が広く展開されていたのかもしれません。
【参考】コンビレンチ-4
・メガネ部や全体形状は他の3種(コンビレンチ-1~3)と同じですが、スパナ部が他と異なります。
・薄型スパナで締付力を出すためにスパナ部が幅広になっている例がありますが、このモデルも同じような幅広スパナになっています。
・但し、薄型スパナでは無く、スパナ厚みは他の3種と同じです。
・コンビレンチとしては珍しくスパナ部とメガネ部のサイズが異なり、13x17mmになっています。
・メガネ部の特徴などからコンビレンチ-2~4(3種)は同じメーカー製に見えますが、どのメーカー製で何用のKAWASAKIなのでしょうか??
★商標登録
"KAWASAKI"と"川崎重工"で検索したところ、7種類の登録商標がヒットしました。
冒頭で説明した7種類ロゴの内、5種類は商標として登録されています。
但し、大文字"KAWASAKI"の2種(フライングKの有り無し)は、商標としては登録されていないようです。(小文字のバリエーションの範囲?)
↑登録第1号で、1952年のリバーマーク。
・川崎重工の始まりである川崎造船時代に作られたロゴで、船の吃水線をデザインしたとのことです。(どれが吃水線を表しているのか良く分からないのですが)
↑フライング・リバーマークも同じ1952年に同時登録。
↑1972年登録のリバーマーク+大文字"KAWASAKI"。
・このデザインが1972年発売のオートバイZ1の車載スパナに刻印されています。
↑ロゴ単体としてリバーマークとフライング・Kマークが、1975年と1974年に登録。
↑会社ロゴがリバーマークから新しくなり、フライングK+小文字"Kawasaki"として1984年に登録。
↑1997年に文字だけの"Kawaski"が登録。
スズキ-1
・"MITO"より水戸工機製と分かります。
スズキ-2
・"RK"より理研化機工業製。
・亜鉛メッキながら、全体の作りが丁寧で、スズキのロゴも大きいし、裏面には製造会社のロゴも入っていて、好印象のスパナです。
・RK/理研化機工業のバリエーションで、"MADE IN JAPAN"が表面から裏面へ移動。
スズキ-3
・製造者不明の無印ながら、日本製です。
スズキ-4
・製造者記号とJAPANの刻印が無く、ロゴ"S"だけのシンプルな作りです。
・フラットパネルでは無く、スズキとしては唯一の凹帯パネルになっています。
・スパナ形状やパネル形状から、アジア化される2000年頃よりも一世代前の雰囲気を感じますので、日本製の可能性もあります。
・フラットパネルでは無いことから、二輪用では無く、四輪スズキ用の可能性もあります。
ヤマハ-1
・製造者記号
より大阪鍛工製と分かります。(JIS-H/強力級)
・ヤマハで製造者記号が入っているスパナは、非常に珍しい存在です。
・会社名の文字のみが刻印されていて、ロゴを入れていないのは4社の中でヤマハだけです。
・無味乾燥として華の無いスパナになってしまっています。
・音叉マークという素晴らしいデザインのロゴがあるのですから、刻印したら良かったのに。
ヤマハ-2
ヤマハ-3
・製造者記号はありませんが、ヤマハ-1と同一形状であることから大阪鍛工製の可能性が高いと思います。
・但し、裏面の"M"刻印が気になっていて、"MITO"の"M"かもしれません。
・ちなみに、古いモデルでは日本製でもJAPAN刻印無しの場合が多くなっています。
ヤマハ-4
・理研化機工業製もあります。(製造者記号"RK"より、JIS無し)
ヤマハ-5
・ヤマハの車載スパナは大半が無印で、さらに裏面には何の刻印もありません。
・JAPAN刻印もありませんので、海外製(中国製?)の可能性が高いと思います。
・13x17という変則的なサイズです。
★登録商標(音叉マーク)
↑1959年『日本商標大辞典』
★日本楽器とヤマハ発動機の音叉マークの差について
両者の音叉マークに差があることは下に添付の日本楽器資料に説明がある通りです。
ヤマハ発動機の音叉マーク商標は見つけたのですが、残念ながら日本楽器の音叉マーク商標は見つけられていません。(日本楽器としての商標登録件数が2,000件近くあり、かつ大半が検索画面では画像が表示されていないので、2,000件のファイルを一つ一つ開けていかねばならないため)
【参考】 ハーレーJAPAN
by 相伍工業(製造者記号"AI"より)
・ハーレーJAPANが日本で出荷時に独自に車載。
・メーカー自身(ハーレーUSA)が設定している工具を車載しているわけではありません。
・日本製の工具ながら、本稿の掲載条件が『日本の自動車会社』ですので、参考扱いとしました。
・ミリサイズとインチサイズの両方が設定されていますが、ミリサイズはハーレーブランド力を利用した一般販売向けでは無いかと思います。
・同一形状の製造者記号"HK"版もあります。
↓車載キット

【参考】 BUELL distributed by ハーレーJAPAN ⇒Wiki

・ハーレーのエンジニアだったBuellさんが1983年に興したスポーツバイク指向のオートバイメーカーで、ハーレーのエンジンを使用。
・企業としても一時期ハーレーの一部門となっていましたが、2009年にはハーレーから離れ独自の道を歩んでいます。
・そのBuellバイクをハーレーJAPANが日本で販売する時に車載キットを同梱し、その中に"AI"(AIGO製)のコンビレンチが採用されています。
・なお、ハーレーモデルに対し刻印がBuellに変更されているだけの差です。
・ハーレーキットと同じくハーレーJAPANが日本で独自調達しているものと思います。
・BUELLの方は、"HK"版は無く、"AI"版だけになります。
↓車載キット

↑AIGOオリジナルのミラータイプ(写真内の一番上)との比較
この回、終わり
自動車用スパナ 全6編それぞれのページには、こちらから






























































