自動車用スパナ 6/6

【昔の二輪編】

(1945年~1968年)

 

【2023年7月24日 追記】

スズキのエンジン付き自転車である"ダイヤモンドフリー"の車載スパナを見つけました。

スズキ初のエンジン付き自転車パワーフリー(36cc)が1952年に登場し、道交法の改正により排気量を約2倍の60ccにしたのが翌1953年に発売された"ダイヤモンドフリー(DIAMOND FREE)"です。⇒ 詳細は、本稿内のこちら

 

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私が二輪に乗り始めたのはCB750やZ2など静かでスムーズでパワフルな4気筒が主流になってからです。

振動が凄くて爆音なW1は販売が既に終了していて、ましてやトーハツやライラックなどはもう走っていませんでした。

それがスパナやコンビレンチを集め始めてから、昔の二輪にも大いに興味が沸いてきた次第です。

にわか旧車ファンではありますが、手持ちのスパナ現物が増えてきましたので、『昔の二輪編』として独立させることにしました。(解説が4社から11社へ)

したがい、自動車用スパナは全6部構成となります。

当初から増殖するとは思っていましたが、掲載量増加⇒分割を繰り返し、やっと最終形に辿り着きました。(まさか6部まで増殖するとは思っていませんでしたが)

本編では、終戦の1945年から1968年まで約20年間の二輪を対象とし、その車載スパナに焦点を当てます。

二輪メーカー名またはロゴが表示されていて、そのスパナ画像を入手できる場合に取り上げます。

スパナに刻印されるため、タンクエンブレムや会社ロゴに拘っています。

 

 

戦後に民需産業が復活し、1950年代には二輪メーカーが乱立します。

1950年代半ばには200社が存在していたと言われています。

専修大学の水川侑さんがまとめた『二輪自動車産業における寡占体制形成』は、戦後の二輪業界をデーターベースで解説していて、とても参考になります。

曰く、1955年に72社が存在し、これが年間ベースでは最大のメーカー数。

そして、この年をピークとして減少を続け、1964年には大手8社となります。

(ブリジストン、丸正/ライラック、富士重/ラビット、新三菱重工/シルバーピジョンと、4社:ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキ)

さらに、4社以外は徐々に撤退していき、1968年の富士重/ラビット撤退を最後に完全な4社体制となり、4社の市場占有率が98%以上となります。

この年から現在の4社寡占体制が本格的に始まったと言えることから、本編で取り上げるのは終戦の1945年から1968年までとします。

翌年の1969年にCB750が登場し、新しい時代が始まります。

Wiki(戦後オートバイの歴史)

Wiki(全298社の二輪メーカーリスト)

 

↓前述情報のデーターベース

※19446年~54年/9年間の31社リストと、さらに1952年~61年/10年間の111社リストを巻末に添付します。

 

1.一覧表

工具メーカーで分類した一覧表です。

1968年以前の"4社"も対象にしています。

*『製造者記号』は、工具会社名ならびに会社ロゴと共に製造者を示す3番目の名前です。(例えば、大阪鍛工なら  )

 

2.商品解説

 1) トーハツ/東京発動機  ⇒ 会社歴史オートバイ歴史

 

東京発動機(現トーハツ株式会社)は、1955年にはオートバイのシェアーNo.1となり、"トーハツ"ブランドの2サイクル小型オートバイを1964年まで生産販売していました。

 トーハツ-1 

 

by 池田工業(会社ロゴ  より) with JIS-N

・"IKK"は製造年月を表示をさせていますので、記号N59-4は1959年4月生産と分かります。

・したがい、上の写真はトーハツの後期の商品になるかと思います。(1960年に販売が急落し、1964年に倒産)

・ちなみに、市川工業は1953年にJIS認証を取得していますので、"IKK"のトーハツスパナは全てJIS付きだったと思います。

・トーハツオートバイの歴史は、販売シェアNo.1になりながらも僅か10年間です。

↓車載工具セット内のスパナ2本

 

 トーハツ-2 

by 理研化機工業(会社ロゴ"RK"より、JIS無し)

・上記トーハツ-1(フラットパネル)のRK版です。

 

 トーハツ-3 

・裏面に刻印されている"ROYAL M.K.K"が納入メーカーになるのかと思います。

・"MKK"からモトコマが推察出来ますが、確認したところ創業は明治時代ながら長谷川製作所からMKK/モトコマの会社名になったのは平成になってからとのことでした。

・したがい、M.K.Kはどのメーカーなのか不明です。

・実は、"ROYAL"が気になっています。

・とても古いコンビレンチで"ROYAL"(日本製)をアメリカで手に入れていて、製造元が分からず、ずっと探しているのですが、一瞬探り当てたかと喜んだものの不発でした。

 

 トーハツ-4 

・製造者記号が無く、工具メーカーが不明な"無印"モデルです。

 

 トーハツ-5 by 昭和スパナ? 

・昭和スパナ自身の1959年資料に『トーハツと取引』と記されています。

・しかしながら、トーハツ-1~3は他の工具メーカー製であり、トーハツ-4は昭和スパナのモデルとは異なる形状です。

(凸帯パネルモデルは昭和スパナにもありますが、帯両端のデザインが異なります)

・したがい、昭和スパナ製のトーハツ-5も存在するのだろうと考えています。

・その昭和スパナ製トーハツモデルを探したのが、旧車スパナに深入りするキッカケで、最初に手に入れたのがトーハツ-1でした。

・なお、昭和スパナは、日産とプリンスのほぼ全て、また二輪ではメグロとホンダに納入実績があります。

 

 ☆車載工具セット 

↑↓上記トーハツ-1のスパナ2本を含む車載工具セット


 

↑日本でオートバイシェアーNo.1になった1955年の"PK55"

 

 2) ラビット/富士産業  ⇒ 歴史

富士工業⇒富士重工業(現・SUBARU)が1946年から1968年まで製造販売したスクーターです。

 ラビット-1 

by ☆S(工具メーカー名は不明) 

・大径で短小な特異形状のスパナです。

・☆印内に"S"が入っている珍しい製造者記号です。

・これまで見たことが無い記号で、メーカー名は不明です。

 

 ラビット-2 

by ☆S(メーカー名不明) 

・通常サイズのフラットパネルです。

・ラビット-1と同じく☆印内にS"が入っていて、浮き出し文字では無く、打ち込み刻印文字になっています。

 

 ☆車載工具セット(搭載車型?) 

 

 ラビット-3 

・製造者記号が無いため、これも工具メーカーは不明です。

・ネツレン等と同じようにスパナ部に補強が入っているのが特徴です。

・ラビットS301型の車載スパナ。

・ラビットロゴに色々なバリエーションがあるのが分かります。

・このラビット-3が一番ウサギらしいかも。

 

 ☆車載工具セット(S301型用)とカタログ 

↑左側…ラビット第1号機、右側…S301型

 

 3) オートペット/山口自転車  ⇒ Web解説

戦前からの自転車メーカーですが、1953年から1963年までの10年間、"オートペット"ブランドでオートバイの生産販売していました。

 オートペット 

by MITO/水戸工機

・丸にアンダーラインの"Y"は、山口の"Y"でしょう。

・アンダーラインの方は、この部分のロゴ本来は"YAMAGUCHI"であり、文字は小さくて刻印できないので、一本線にしたのだと思います。

 

 ☆車載工具セット 

 

 

↑オートペットスポーツSPB(1962年)

 

 4) ブリヂストン/BSタイヤ  ⇒ Web解説

ブリヂストンは、戦後になってから経営の多角化を狙って自転車事業を開始し、その延長線上として1952年から1966年までオートバイを製造販売していました。

 ブリヂストン 

・ブリヂストンのチャンピオンホーマー(1959年)に車載が確認できているスパナです。

・恐らくブリジストン二輪の全車型にこのモデルが搭載されていたと考えています。

・裏面の ロゴ  から”UENO TOOLS"製と分かります。

・工具メーカーとしての詳細は不明ですが、ロゴ  に”UENO TOOLS"と刻印されたスパナが見つかっています。

 

 ☆車載工具セット(チャンピオンホーマ用用) 

 

 

 

 5) ライラック/丸正自動車製造  ⇒ Web解説-1Web-2

シャフトドライブを特徴とした浜松のオートバイメーカーです。

1955年の浅間火山レースで優勝するなど実力のある会社でした。(1948年~67年)

ロゴの一番右は丸正自動車の会社ロゴで、丸にデザインされた"正"。

 ライラック 

・裏面が分からないため、工具メーカーは不明です。

・作りがしっりしていて、Lilacのロゴも大きく、見栄えのするスパナです。

 

 ☆車載工具セット 

 

 

 

 6) メグロ/目黒製作所  ⇒ 歴史

  

戦前からのオートバイメーカーで、大型バイク(500ccと250cc)で人気を博していました。

1960年に川崎航空機工業と提携したものの業績は上向かず、1963年には傘下となってカワサキメグロ製作所と改名、1964年には事実上の経営破綻となり、川崎航空機工業に吸収されます。

K型⇒K2型(500cc)をカワサキが改良し、W1(650cc)が誕生します。

アルファベットの"M"と"W"(逆さ"M"?)を合わせたのがメグロのオリジナルロゴですが、カワサキとの提携後にウイングマークも変更になり、カワサキの"リバーマーク"と"MEGURO"が共存する形になります。

 メグロ 

・メグロのロゴ("M"+"W")が刻印された片口スパナ(23mm)。

・高級鋼材のクロモリ(Cr.Mo.)を使用しています。

・"SHōWA"の刻印より、昭和スパナ製と分かります。

↓メグロのロゴだけが刻印されたサイズ26mmもあります。

 

 ☆車載工具セット  (ケースのみ確認できています) 

 

↑K1(W1の原点)

 

・横道にそれますが、昭和スパナはJIS認証取得第1号の工具メーカーで、1950年代初頭から日産やプリンスなどにスパナを納めていました。

・上のカタカナ『ダットサン』もクロモリ鋼なのですが、クロモリという尖ったスペックでメグロにも納めていたことが分かり、昭和スパナのコレクターとしてはニコッとしてしまいました。

⇒当ブログ内の昭和スパナ

 

 7) W1/川崎航空機工業  ⇒ Web解説-1Web-2

1964年に倒産したメグロ製作所のメグロK2(500cc)を改良する形で1966年に生産販売が開始されたのがW1(650cc)です。

CB750(1969年)やZ1/2(1972年)の4気筒に時代が流れていく中で、振動も音も凄くて、独自の世界観がある二輪でした。

 リバーマーク-1-① 

・スパナのパネル部が尖ったくぼみになっている凹尖りパネルです。

・製造者記号が無く、工具メーカーは不明です。

・川崎重工の会社マークであるリバーマーク入りの旗ロゴだけが刻印されています。

・W1の車載工具です。

・カワサキのスパナは、Z1/Z2世代からはフラットパネル形状に変更となり、MITO/水戸工機製が採用されています。

 

 リバーマーク-1ー② 

・『凹尖りパネル+リバーマークフラッグ』のスパナは、似たように見えますが、少なくとも3種類が存在します。

・この②は、①と同じ凹尖りパネルですが、尖りパネルの幅が狭くなっていて、リバーマークの旗がパネルからはみ出しているのが特徴です。

 

 リバーマーク-1-③ 

・この③は、①と同じように尖りの窪みパネル幅が広くなっていますが、尖り度合いが①よりも大きくなっています。

・また、旗ロゴが非常に大きいのが特徴です。

 

 リバーマーク-2 

・リバーマークのロゴだけが入ったスパナもあります。

・ほとんど見かけませんが、非常に悩ましい存在です。

・W1は旗ロゴで、次世代のZ1/Z2は『リバーマーク+"KAWASAKI"』であり、このスパナはまた別のモデルになります。

・裏面の刻印より工具メーカーがMITO/水戸工機であることが分かりますが、水戸工機はZ1/Z2でも採用されている工具メーカーです。

・推測として、工具メーカー無記名の旗ロゴからMITOモデルに移行する過程で、ロゴがリバーマークだけのMITOモデルが存在したのではないかと思います。

・W1は1966年から、またZ1が1972年からですので、その狭間の1970年頃かと思います。

・本編は1968年までを取り上げていますので、このスパナは対象外なのかもしれません。

・ただし、川崎重工の会社マークは、1967年にリバーマークからフライング"K"に変更になっていますので、このリバーマークモデルは初期のW1に採用されていた可能性もあります。

・もっとも、会社ロゴ変更の工具への反映は遅れ気味になるのが通常のようで、1972年からのZ1/Z2にもリバーマークが継続使用されています。

↓Z1/Z2に採用されている『リバーマーク+"KAWASAKI"』

 

↑W1(1966年)

 

 8) ホンダ/本田技研工業  ⇒ 歴史ウィングマーク変遷

形状だけで搭載車種と年代が特定できるスパナとコンビレンチが、初期のホンダドリームにあります。

1955年~1967年まで12年間の3車型だけを取り上げます。

【二輪ホンダ編】と一部重複する部分があります)

 

 ホンダ-1(ホンダドリームSA型/1955年) 

・ホンダ二輪向けのロゴ  が入ったKTC製の10x14スパナです。

・KTCのロゴは、創業時は二重丸京 、さらに創業から4年後の1954年5月にお馴染みの楕円KTC  が商標登録されています。

・その二重丸京と楕円KTCの狭間で使われたのが、このロゴ  だと考えています。

・つまり、この10x14スパナは、1953年~1955年頃の生産となります。

・そして、ホンダ二輪にHMマークが最初に採用されたのは1955年ドリームSA型です。

・したがい、このロゴ  スパナは、ホンダドリームSA型の車載工具だと考えるのが妥当だと思います。

↑ホンダドリームSA型(1955年)

 

 ホンダ-2(CB125K1~3/1967年~69年) 

・KOWA/興和精機製のHMロゴ入りのコンビレンチです。 

・CB125後期型の最初の3年間(1967年~69年)だけに車載されていました。

・オートバイでコンビレンチがメーカー設定として車載されているのは非常に珍しく、私の知る限りでは世界でも同じホンダのゴールドウィングGL1200と、このCB125の2例だけです。

・ゴールドウィングの場合は綺麗にクロームメッキされたコンビレンチを高級工具として車載していますが、普通のオートバイに安価な亜鉛メッキ仕様の実用工具としてコンビレンチを車載したのは、世界でこのCB125だけです。

※昔の二輪を1968年までと規定したのは、実は世界に一つだけのこのコンビレンチを紹介したかったからです。

 

☆CB125用との特定について

・オランダ部品販売会社CMSホームページにてホンダ全カタログをチェック。

・カタログのイラストより、コンビレンチはCB125にのみ車載されていることが分かりました。

・なお、CB125は1967年からカムチェーンがセンターからサイドに変更され、その後期型(サイドカムチェーン仕様)のCB125K1になってからこのコンビレンチが採用されています。

(初期型CB125K0のオーナーから『初期型にはコンビレンチは入っていない』との情報より)

・さらに、上記CMSのホンダカタログより後期型の最初の3年間(1967年~69年)、CB125K1~K3(C/#:3000001~500000x)だけに採用されていることが分かりました。

・CB125の歴史は、こちら

↓CB125後期型と車載工具セット(カタログから)

 

 ホンダ-3(CB92/1959年)  ⇒Web解説 

 

・CB92はCBシリーズの第1号で、1959年から生産販売が始まっています。

・ホンダ-1のドリームSA号からわずか4年後ですが、フロントフェンダーだけを比較しても一気に現代的になったのが分かります。

・上の車載工具イラストはCB92パーツカタログからで、スパナは10x14と17x19の2本が車載されているのが分かります。

・下表の如く、その内の10x14は多くのホンダ二輪に採用されていて、ホンダ二輪を代表するスパナと言っても差し支えないと思います。

・HMロゴの入った10x14スパナは、先のドリームSA号に始まり、同じデザインのまま国内生産のホンダ二輪に2000年まで採用されています。

(2000年からHMロゴが消え、ホンダを示すマークは無くなります)

・45年間(1955年~2000年)の長い歴史があり、かつ量販のスーパーカブにも車載されていますので、HMロゴの10x14は世界で一番生産本数の多いスパナでしょう。

・カブの日本国内生産は1960年が56万台⇒恐らくカブだけでも合計3,000万本以上⇒Wiki

 

・HMロゴの10x14は、主に2社に併注されていて、KOWA/興和精機とRK/理研化機工業が担当しています。

・また、さらに一部はKTCと昭和スパナ産業にも発注されています。

・一方で、45年間も作られ続けたことで、表面のHMロゴにも色々な形があり、製造メーカーとHMロゴのバリエーションを掛け合わせると膨大な数が存在していることになり、どれがどの年代のどの車種に搭載されていたのかも分からなくなっています。

(現物を見て、どの車種に搭載されていたかが分かるのは、上のホンダ-1と2の2本だけ)

↑工具メーカー4社5種のロゴ(KTCが2種)

↓HMロゴ色々(楕円の長さ、楕円の菱形傾向、字体の太さと傾き)

 

・どの車種に搭載されていたか分からないとは言っても、可能な限りの推測を行います。

・HMロゴは、菱形にが近い楕円から始まっています。(下の写真)

・一方で、HMロゴスパナは、大半がKOWAかRK製です。

・したがい、KOWAかRK製で、菱形に近い楕円HMのモデルが、初期モデルであるCB92(1959年)や下のC100初代スパーカブ(1958年)に車載されていた可能性が高いと思います。

・菱形に近い楕円HMロゴの10x14です。

・改めて気が付きましたが、以下3点より他のHMスパナに較べて古さが際立っています。

(1) スパナ形状が一般的な丸型では無く、戦後直後に良く見られる卵型。

(2) HMロゴは鍛造型に彫りを入れることで浮き出し刻印となるが、機械掘りでは無く、手彫りのようで、ラフな刻印(ラフな彫り方)になっている。

(3) HMロゴが他に較べて極端に小さい。

・RK/理研化機工業製ですが、上の3点よりRKの初期モデルでは無いかと思います。

・したがい、CB92やC100の車載スパナ候補に大いになると思います。

↓卵型スパナと一般的スパナの比較(上が卵型、下が普通の丸型)

 

 ホンダ 【参考】 (スーパーカブC100/1958年) 

・歴史的な名車スーパーカブの初代C100。

・車載工具図は、C100日本仕様のカタログから。

・スパナは10x14の1本だけが車載されています。

・CB92と同時期なので、同じタイプのHMスパナが車載されていたと思います。

 

☆ホンダHMスパナのすべて(1955年~現在)については当ブログのこちらにて。

 

 9) ヤマハ/日本楽器⇒ヤマハ発動機  ⇒ 歴史Web解析

ヤマハ/日本楽器が二輪の製造に乗り出し、その第1号商品が1955年のYA-1です。

小豆色のタンクと二輪専用の音叉マークを従え、とても美しい姿をしています。

 

 ☆ 車載工具セット(YA-1用) 

・車載工具内の両口スパナは3種。(工具ケースも小豆色)

・タンク上部に車載工具を含む物入れがあり、便利そう。

 

 ヤマハ-1-①/JIS付き 

・車載工具セットの写真を見ると、パネル内が窪んだ特徴的な形状から、スパナは大阪鍛工製であることが分かります。

・大阪鍛工製の"YAMAHA"スパナには以下の3種類があります。

① 丸"T"マーク+JIS付き(H:強力級)⇒上の写真

② 丸"T"マークのみ(JIS無し)

③ 無印

(丸"T"マーク  は大阪鍛工の製造者記号)

 

 ヤマハ-1-②/丸"T"のみ & ③/無印 

・JIS認証制度は1952年から開始されていて、大阪鍛工も1950年代に取得していると理解していますが、大阪鍛工については正確な記録が残っていないため、JIS付きの①がYA-1に間に合っているかは判断が難しいところです。

・したがい、①~③のどれも可能性があります。

・裏面写真があれば①~③のどれが車載されていたか分かるのですが、以下と推測します。

・①と②は表面のサイズ表示の前に"M"(メトリック)の記号が入っていて、これは古いスパナで良く見かける表示方法です。

・したがい、③よりも①と②の方が世代が古いと思われることから、①または②(または両方)がYA-1に車載されたスパナかと思います。

 

↑YA-1、美しい立ち姿です。(1955年)

 

 YDS-2(1962年)

・YDS-2(Y=YAMAHA、D=250cc、S=Sport、第2世代)の車載工具一覧です。(1962年)

・小さくしか写っていませんが、スパナのパネル形状よりYA-1と同じ大阪鍛工のスパナが採用されているのが分かります。

車載工具情報YDS開発ストーリー

 

↑YDS-2

 

 10)ダイヤモンドフリー/鈴木式織機株式会社  ⇒ Web解説

 

スズキ初のエンジン付き自転車パワーフリー(36cc)が1952年に登場し、道交法の改正により排気量を約2倍の60ccにしたのが翌1953年に発売された"ダイヤモンドフリー"です。

※鈴木自動車工業に改名するのは翌年の1954年。

・表面に"DIAMONDO FREE SUZUKI"、裏面に”DF. M143"と刻印されています。

・"DF"は"DIAMONDO FREE"の略で、"M143"は品番でしょう。

・日本の初期スパナに多く見られる凹帯パネルで、小サイズの5x6mm。

・残念ながら製造元を特定できるような表示はありません。

・凹帯パネルスパナは多くの工具会社が出していますが、帯パネルがほとんどストレートで、スパナ形状がまん丸なのは意外に少なく、KTCの二重丸京(1950年~1960年)があてはまります。

・但し、1950年、60年代は、オートバイと同じように色んなスパナメーカーがありましたので、特定には至りません。

・小さなスパナなので、ブランド不明スパナ入れの中で長く埋もれていました。

 

 11) シルバーピジョン/新三菱重工業  ⇒ 歴史

ラビットと双璧をなしたスクーターです。

中日本重工業⇒新三菱重工業⇒三菱重工業の社名変更を経ながら多数の車種が展開され、1946年~1964年に活躍。

 シルバーピジョン-1 

・大阪鍛工製の三菱スパナが、同じ時代で同じ新三菱重工業/水島製作所の3輪車レオ/LEO(1959年~1962年)に採用されていることが確認できています。

・したがい、同じ工場で同時に生産されていたシルバーピジョンにもこの大阪鍛工のスパナが採用されていたと考えるのが素直です。

・ちなみに、ヤマハも同じ凹パネルの大阪鍛工スパナを最初のYA-1(1955年)から採用しています。

↓新三菱重工業の3輪LEOと、その車載工具

 

 

 シルバーピジョン-2 

・自動車用スパナその3に掲載していますが、三菱マークが付いていて、自動車用スパナとはデザインが異なり、やたらに古そうなスパナが見つかっています。

・スパナ部が卵型になっていて、1950年代の商品で良く見かける形状です。

・このスパナがシルバーピジョンに車載されていた可能性もあります。

・なお、"TORI"が製造者記号になっていますが、工具メーカー名は不明です。

・また、JISマーク付きですので、JIS認証制度が始まった1952年以降の商品と言うことだけは分かります。

 

 

 

 12) トヨモーター/トヨモータース  ⇒ 歴史

・トヨモータースは、自転車への後付けエンジンからスタートしています。

・車載工具ではないのですが、畑屋製作所の1953年カタログにエンジン後付け時に使用する専用のメガネレンチが載っています。⇒当ブログ内の畑屋カタログ

* 車載工具では無く、スパナでも無いので、参考とします。

 トヨモーター 【参考】 

・畑屋製作所は、自転車用工具の専門メーカーで、美しい工具が沢山あります。

 

・『トヨモーター』は、1949~1958年にトヨタ販売店で販売していたオートバイでした。

・トヨタ自動車研究所にいた方が設立した会社で、トヨタと資本関係は無かったものの、実質的にはトヨタの会社だったようです。

・『取付用に便利』と書かれているので、自転車に後付けするエンジンを取り付ける専用工具なのかと思います。

・恐らく、このパンフレットの商品向けと思います。

 

 

・トヨモーターにはちゃんとしたオートバイもありました。


バイク広告集(1951年~1958年)

 

☆『自動車ガイドブック』内のオートバイカタログ

国会図書館デジタルの個人会員IDをお持ちであれば、各年度の『自動車ガイドブック』を閲覧できます。

1956年1957年1960年

 

☆二輪メーカー31社とモデル名(1946~1954年)

 

☆1952年~1961年の111社リスト

 

☆皆様へのお願い

旧車の車載工具に関する情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、どの様な車載工具とスパナなのかを教えて頂けると助かります。

1968年よりも以前のものであれば、どのメーカーのものでも構いません。

ご協力をお願い致します。

 

 

この回、終わり

自動車用スパナ 全6編それぞれのページには、こちらから