読む小説に困った時は宮本輝と思っている。絶対にハズレがない。毎回、物語展開の巧さに喝采する。
特に宮本輝がいいのは、この人が偏屈なこと。それが独特のこだわりに繋がり、物語を豊かにしている。
実際に、この作家に接したことがある人は、曲者ぶりに手を焼く、と聞いたことがある。
でも、作家なんて、それでもいいと思う。大女優、杉村春子は「どんなに人が良くても、演技が下手な人なんて大嫌い。イヤな人もで演技がうまければ、許せる」と。作家も似たようなものではないか。
今は「いい人」であることが、判断基準になっているけど、毒がある人の方が光る部分も多いのではないかというのが、時代おくれの自分の感覚。
5年前に発表された「灯台からの響き」の主人公は62歳の中華そば屋の親父。高校を中退して家業を継いで、妻と二人で子供3人を育てた。長男と長女はサラリーンになり、末息子は大学生。
長年共にした妻は、老後を楽しむことなく、逝ってしまった。東京の片隅、板橋の仲宿という、下町風情の商店街という舞台設定がうまい。
一体、誰が、関西人の宮本輝に板橋の仲宿を教えたのだろうか。
これが、この頑固なシニアの性格にあっている。最寄りの駅は都営三田線の「板橋区役所」。東武東上線の「大山」駅には歩いて10数分。ここにも「ハッピーロード」という、かつては盛況だった商店街がある。
駅には隣接しない、旧道に残る商店会。そのタイプでは北品川あたりも同じような商店街がある。東京を舞台にするなら、品川の方が舞台映えするのに、なぜ、地味な板橋の仲宿なのだろう?
でも、その地味さがうまい。それで主人公の顔が見える。
近所にはシニアになった幼馴染が住んでいる。高校、大学は別になっても地元に残る仲間。そんな仲間のひとりが急に亡くなってしまう。実は彼には昔付き合った愛人の子供がいたのだ。それが後半の展開に絡んでくる。
灯台巡り、同級生と交流、親子関係、宮本輝の描く世界は奥が深い。












