大昔の哺乳類、ねずみが登場。太古の昔、恐竜の天下だった。

たえず命を脅かされていたのが哺乳類。隕石衝突によって恐竜が絶えてしまい、その後の世界の覇権を誰が握るのか。今夜はその前編。

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出産、お腹の中で赤ちゃんを育てる仕組み。その仕組みが哺乳類を繁栄させた。有胎盤類は今多くの種を持ち地球を席捲している。

そのルーツをボリビアに求める。石灰岩を掘り出した巨大な壁があるが、手がかりはその絶壁にある。

スイスチームがその絶壁をロープ1本で降りる。その手がかりとは「くぼみ」それは恐竜の足跡だ。さらに三日月型の10mに及ぶ足跡。

6600万年前の南アフリカ、恐竜が闊歩していた。肉食のカウノサウルス、植物を食べるエドモントリアに襲い掛かる。恐竜王国は世界中に広がっており、その頂点にティラノザウルスがいた。地上の王者だった。

その頃、私たちの祖先はどんな姿だったのか?

砂漠の中のアリの巣、アリ塚にある黒い歯の化石。ジェリー博士は、アリの巣の補強に使われるこの歯がキモレスクといわれる体長15cmほどのねずみに似た生き物が哺乳類の祖先だ。

2億2000万年前にいたネズミ型からほとんど変わらずに6600年前まできた。この時代はまだ卵を産む哺乳類もいた、しかし卵は常に狙われていた。

多くの哺乳類は夜行性で、虫などを食べてなんとか生き延びてきた。カラダが小さいのも食物が無かったからだ。

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転機となったのは繁殖方法の革命だった。

1億2500万年前の地層から「エオマイア」が見つかった。もう卵は産まなかったと推測される。李強博士はエオマイアが胎盤を持つ哺乳類の先祖ではないかという。

胎盤は今の私たちにとっても赤ちゃんを産むために欠かせない。

胎盤と卵の違いは、卵は隔離された世界になるが、胎盤によって赤ちゃんは母親と繋がる。しかし別々の個体であるために、同じ血液ではないため、胎盤で複雑な構造で分離される。

暑さや寒さにも耐えられるこの方法によって、哺乳類は生存率を高めた。

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6550万円前、思わぬ運命が祖先たちを襲った。

宇宙の小惑星帯の中で、二つが衝突し、その中の破片のひとつが地球に向かった。

現在のメキシコユカタン半島付近に落下した隕石は地球上に大異変をもたらした。衝突で噴出した溶岩が空にあがり真っ赤に染め、高温の雨を落として森林火災を起こし、半径200mものクレーターは巨大な津波を引き起こし、生き残ったものを飲み込んでいった。最大6回も襲ったという。

カナダのアルバータ州、現場から4000kmも離れている。ここに黒い地層があり、その中に3cmもの茶色い地層がある。これが隕石によって吹き上げられて降り注いだ粉塵と思われる。これが地球全体をほぼ包み込んだ。

宇宙からは灰色の星に見えたはずで、「衝突の冬」といわれる気温の低下を招き、多くの食料を必要とする恐竜を絶滅させた。

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では哺乳類は何故生き残れたのか。カラダが小さく、何でも食べた哺乳類。

カーネギー自然史博物館の羅博士は、胎盤を獲得していたことが有利だったと語る。

「大切だったことは、哺乳類が胎盤を獲得してから恐竜が滅んだこと。」

支配者が消えた世界、哺乳類の世界が始まった。

ドイツ・フランクフルト、街の中心部から30km南にいったところにある「メッセル・ピック」ここには4700万年前の地層が広がっている。メッセルの岩は水分を含んでいてやわらかい。本のページのように薄くスライスすると、そこに化石たちが鮮やかに蘇る。メッセルは貴重な覗き窓なのだ。

ここでは50cmほどの大きさになった「プロパレオテリウム」がいた。馬の祖先にあたる。

当時の地球は今よりずっと暑く、欧州もギャングルに覆われていた。

4700万円前、ギャングルの中は、カンガルーのように飛び跳ねるもの。猿の仲間でヒトへと繋がるものなど、メッセルで40種類ほどの哺乳類が見つかった。

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同じドイツで見つかったエンリオプリウムの化石は上半身が無かったり、足や手がバラバラになったりした化石も見つかっている。それは恐ろしい敵に食べられたからだと思われる。その敵とは同じく隕石衝突を免れた「ガストルニス」という巨大な鳥。高さは2mを越えてダチョウのように走っていたと思われる。

ガストロニスは肉食。するどい3本のつめの足で獲物を捕獲していた。

このガストロニスこそ恐竜の生き残り。鳥が恐竜の子孫なのだ。

当時最大の生物のひとつで、強力な足を武器にメッセルの王者として君臨していた。

ではどうして隕石衝突を生き延びることができたのか?

「オビラクトル」という化石がモンゴルから見つかった。

卵を抱えているが、これは盗んだものではなく、自分の卵だった。どうやら卵を自分で温めていたようだ。

卵を産む生物はほとんどが生みっぱなしだが、鳥は抱卵する。親が手間をかけるこの繁殖術のおかげで生き延びたと考えられる。

「抱卵」が隕石衝突を生き延びるポイントとなったのだ。

効率よく暖めるために、羽根が出来、さらに長さを増して、やがて大空を羽ばたくようになった。

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しかし恐竜亡き後も、哺乳類は恐竜の影に脅えることになる。

この試練に哺乳類はどんな方策で乗り切ったのか?

メッセルで見つかった化石。プロパテリウムの胎児がいる母親の化石だ。

カナダアルバータ大学のフィリップ博士。「胎盤にはあるマイナス面がある。妊娠中にカラダが重くなることだ。卵を産むと、襲われたときに卵と母親は分離できるが胎盤方式はそれができない。」と語る。

カラダが小さく寿命が短かった祖先は、胎盤方式を放棄せずに、大切に育む途を選んだ。

共に生きる!これが祖先が選んだ途だった。これがおそらく必須の進化だっただろうと羅博士。

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胎盤を持つ哺乳類は出産後もある営みをする。

母乳を出す乳腺の発育だ。数倍にも膨れ上がり、母親は血液を母乳に変えて、出産後も養育していく。

私たちのその道の果てに存在している。

この強い結びつきが、哺乳類を育んだ。

しかし水の中にも強敵がいたのだ。哺乳類の中にも強力なライバルがいたのだ。

(後編に続く)