こんにちは、培養部門です。

今回は人工授精の妊娠率を高める重要なポイントを説明します。

人工授精は卵管が閉塞していない方や精液の状態が正常な方に行うことで妊娠率の向上が期待できます。

人工授精の出生率は精子の運動性に関係する

 

では、人工授精の妊娠率を高めるためにはどうすればよいのか、人工授精についてまとめられた論文を用いて説明します。

 

 

●精子調整を密度勾配遠心分離法で行う

元気の良い精子と悪い精子に分離することを精子調整と言います。元気の良い精子を子宮に注入することで妊娠率が向上することが報告されています。精子調整の方法はクリニックによって異なっており、方法の違いで妊娠率に差がある可能性が指摘されています。

当院の人工授精は密度勾配遠心分離法( アイソレート )を採用しておりますが、スイムアップ法のみで行う施設があります。いくつかの論文で密度勾配遠心分離法はスイムアップ法に比べて妊娠率が高いことが報告されています。

 

●人工授精当日までの禁欲期間( 射精をしない期間 )は最大3日間にする

禁欲期間が長いと精巣内の精子数が増加しますが、DNA損傷した精子や死滅精子も増加します。それらの精子は良好な精子にも悪影響を与えることが分かっています。よって、禁欲期間が長くなるほど妊娠率が低下する可能性があります。精液量や1日につくられる精子の生産量は人によって様々です。精液検査で精液量や精子数が少ないと診断された方でも禁欲期間は最大3日程度に抑えることが、人工授精の妊娠率を高めるために重要です。

 

●精子運搬するときは常温( 20度前後 で行う

精子の運搬温度は高すぎても低すぎても妊娠率に影響します。タオルに包むことや肌に近い場所に入れて持ち運ぶことで精子の能力を維持することができます。精子を37℃で保管すると精子が活性化してしまい、受精前に精子のエネルギーが不足してしまいます。反対に20度を大きく下回る温度ですと精子の運動性が低下してしまいます。一度運動性が低下した精子は再度運動性が戻ることはありません。

温度を常温に保つことができれば運搬時間は妊娠率に影響する可能性は低いことが示唆されていますので、当日であれば人工授精や体外受精の時間よりも早く射精しても問題ありません。

 

参考:L LemmensTechniques used for IUI: is it time for a change? Hum Reprod

. 2017 Sep 1;32(9):1835-1845.

 

お知らせ

 

当院の初診について

当院の不妊外来を初めて受診される際にお電話での予約が必要な理由

 

当院は不妊治療に関わる先進医療を行なっております。

当院の不妊治療に関わる先進医療の種類と効果

 

大垣市在住のご夫婦を対象として、自費診療でAMH( 抗ミュラー管ホルモン )検査、精液検査を実施した場合に大垣市から助成金を受け取ることができる制度が開始されました。

当院で行うことができます。お電話にてご予約をお願い致します。

大垣市在住のご夫婦を対象に妊活検診費( AMH検査・精液検査 )が助成されます

 

当院はPGT-A実施施設として日本産科婦人科学会に承認されています。

PGT-Aを行うことによって、複数回の妊娠不成立や流産を繰り返す方に妊娠率の向上と流産率の低下が期待できます。

↓詳しくはこちらをご覧いただければ幸いです。

PGT-A( 染色体異数性検査 )の要件が変わりました

 

※PGT-A対象者の方で当院に胚盤胞を凍結保存している場合、採卵を行わずに保存してある胚盤胞を用いてPGT-Aをすることができます。

 

当院でPRP療法を行うことができます。

PRP療法とは再生医療の一つです。

様々な医療分野でPRP治療は行われており、不妊治療分野ではPRP療法を行うと子宮内膜が厚くなるという報告が専門の学会から報告されています。

子宮内膜が厚くなると、移植した胚の妊娠率、出産率が向上します。

 

先進医療、PGT-A、PRP療法をご希望の方、ご興味がある方は当院の不妊外来診察を受診ください。

 

文責:培養部門

 〔生殖医療専門医〕古井憲司