こんにちは、培養部門です。


今回は、人工授精の出生率と精子の運動性について説明します。

当院の人工授精についてでも説明しましたが、人工授精に用いる精子は運動性が良好な精子のみに調整して子宮に注入します。子宮に注入された精子は自然妊娠と同じ過程で卵子に到達し、受精します。

この論文では、注入する運動性が良好な精子の数が多いほど出生率が高いと記されています。調整後の運動性が良好な精子が1510万~2000万だと出生率が14.8%、対して500万以下だと5.5%であることがわかりました。また、調整後の運動性が良好な精子がさらに少ない100万以下の場合でも5.1%の出生率が確認できました。

これらのことから、調整後の運動性が良好な精子が少ない場合、出生率は低下するが妊娠する可能性は大いにあることが言えます。


人工授精の妊娠率における全国平均は8 〜10%程度であり、出生率は6.88.5%程度です。

5.1%の出生率は低すぎるとは言えません。


しかしながら、極端に精子数が少ない場合や運動精子が少ない場合、人工授精を繰り返しても妊娠が成立しない場合は、体外受精、顕微授精へのステップアップが必要です。

また、生活習慣や加齢による精子の運動率の低下やDNA損傷率の上昇が報告されています。精液検査を行い、現在の精子の状態を知ることが不妊治療に取り組む上で非常に重要です。


お知らせ


当院はPGT-A実施施設として日本産科婦人科学会に承認されています。

PGT-Aを行うことによって、複数回の妊娠不成立や流産を繰り返す方に妊娠率の向上と流産率の低下が期待できます。


PGT-A対象者

・直近の胚移植で2回以上連続して臨床的妊娠が成立していない方

・直近の妊娠で臨床的流産を2回以上反復している方

・夫婦いずれかにリプロダクション(生殖)に影響する染色体構造異常を有する方


PGT-A対象者の方で当院に胚盤胞を凍結保存している場合、採卵を行わずに保存してある胚盤胞を用いてPGT-Aをすることができます。


当院でPRP療法を行うことができます。

PRP療法とは再生医療の一つです。

様々な医療分野でPRP治療は行われており、不妊治療分野ではPRP療法を行うと子宮内膜が厚くなるという報告が専門の学会から報告されています。

子宮内膜が厚くなると、移植した胚の妊娠率、出産率が向上します。


PGT-APRP療法をご希望の方、ご興味がある方は当院理事長または院長の外来診察を受診ください。


文責:培養室

 〔理事長〕古井憲司