こんにちは、培養室です。
今回は、当院の人工授精(AIH)の方法について説明します。
人工授精の手順です。
初めに、ご自宅で採取していただいた精液の調整を行います。元気の良い精子だけを集めるために、特殊な精子調整液の上に精液をのせて 遠心分離をすることで運動性が良好な精子と不良な精子に分けることができます。その後、良好な精子のみを回収し、専用のカテーテルを用いて子宮内に精子を注入します。注入された精子は自然妊娠と同じ過程で、卵子と受精し妊娠します。
通常は膣内に射精された精子は子宮頸管を通り、子宮内に到達します。子宮内に到達するまでに精子数はどんどん減少していきます。
一方で人工授精では、膣内、子宮頸管内をカテーテルによってスキップすることができるので、良好な精子を減少させることなく、子宮内に送り届けることができます。
人工授精は精液量が少ない方、精子運動性が不良な方に有効な技術です。
精液検査で精子の状態を検査することができます。こちらの記事もご参考ください。
精液検査の所見について、精子における質の向上と加齢の影響について
当院の人工授精の妊娠率向上への取り組み
・人工授精を始め、不妊治療に関わる診察は当院理事長、院長とし、正確な排卵の時期を予測し、ピンポイントで人工授精を行っています。
熟練した技術と知識を持つ、理事長、院長のみで不妊治療を行うことで年間を通して高水準の医療を提供することができます。
・精液を調整し、運動性が良好な精子のみを回収した後は直ちに人工授精を行っています。
精子は時間の経過とともに運動性が低下していきます。精子もエネルギーを消費し運動していますので、限られたエネルギー源しかない調整後の容器の中では、精子の運動性が低下する可能性があります。運動性が低下する前に豊富にエネルギー源が存在する子宮内に注入することが重要です。
これらのことより、正確に排卵日を予想し、より多くの良好な精子を素早く注入することで人工授精の成績向上に努めております。
当院の人工授精における9月の臨床的妊娠率(経腟超音波で子宮内に胎嚢が確認できた率)は25%でした。全国平均の臨床的妊娠率は8~10%と言われておりますので、非常に高い臨床的妊娠率と言えると思います。
これからも当院に通院される患者様がより満足できる医療を目指して、常に新しい知識と技術を導入して治療にあたらせていただきます。
不妊治療卒業メッセージとして、当院に患者様からのメッセージが数多く寄せられております。本当にありがとうございます。
こちらの 不妊治療卒業メッセージ
お知らせ
当院はPGT-A実施施設として日本産科婦人科学会に承認されています。
PGT-Aを行うことによって、複数回の妊娠不成立や流産を繰り返す方に妊娠率の向上と流産率の低下が期待できます。
・直近の胚移植で2回以上連続して臨床的妊娠が成立していない方
・直近の妊娠で臨床的流産を2回以上反復している方
・夫婦いずれかにリプロダクション(生殖)に影響する染色体構造異常を有する方
※PGT-A対象者の方で当院に胚盤胞を凍結保存している場合、採卵を行わずに保存してある胚盤胞を用いてPGT-Aをすることができます。
PRP療法とは再生医療の一つです。
様々な医療分野でPRP治療は行われており、不妊治療分野ではPRP療法を行うと子宮内膜が厚くなるという報告が専門の学会から報告されています。
子宮内膜が厚くなると、移植した胚の妊娠率、出産率が向上します。
PGT-A、PRP療法をご希望の方、ご興味がある方は当院理事長または院長の外来診察を受診ください。
文責:培養室
〔理事長〕古井憲司