クリーンテック・ベンチャーの失敗
今までの記事ではクリーンテックの成功の側面のみばかり書いてきましたが、ここで少し趣向を変えて失敗例を見てましょう。金融危機が進行する中、資金繰りに困って倒産する企業も増えてきました。
例えばアメリカのバイオ燃料の大手、ヴェラサン VeraSun は最近民事再生法の適用を法廷に申請
したとのことです。世界で最大のエタノール生産者を自認する会社でしたが、トウモロコシ相場の価格変動のために取引で多額の損を計上したようです。
また何回かこのブログで書いた電気自動車のスポーツカーを販売しているテスラ・モーターズ。いま倒産の危機にあっています。10月にはレイ・オフを発表
し、ある時点では銀行口座の残高が底をつきそうだった
と最高経営責任者のエロン・マスク自身が語っています。状況を打開するために11月には4000万ドル(約37億円)の資金調達をした
といいますが、油断はできないと思います。テスラのスポーツ・カーの受注数は既に1200台近くありますが、今のところの生産台数は60台にとどまります。人気があるので、少なくとも製品と技術は生き残って欲しいと思います。
ベンチャー企業は常に失敗と隣り合わせです。以前トマス・フリードマンの言葉を引用
しましたが、成功する確率としては「10万人の人が10万個の[アイデア]に挑戦し、その中で5個ぐらいうまくいくのがでてきて、もしかしたら2つぐらい次の[環境ビジネス]のグーグルが出てくる
」といってもいいぐらいなのです(やや誇張があると思いますが)。多数の失敗から生まれてくる次の環境版グーグルやマイクロソフトに期待したいところです。
MJ
ITからETへ(2)
前回に引き続いてIT(情報技術)からET(エネルギー技術)へという話題です。
コンピューターの頭脳にあたるMPUの製造会社として有名なインテル。情報技術産業の牽引役であったこの会社はクリーンテックでも影響力を示し始めています。太陽電池部門を独立
させたり、投資部門であるインテル・キャピタルがドイツ
や中国
の太陽電池の会社に投資を開始していますが、それよりももっと影響力が大きいのが人的ネットワーク
かもしれません。例えばシリコンバレーで最も名高いベンチャー・キャピタリストであるジョン・ドー氏はインテルのセールス部門出身です。またインテルの創業に関わったアンディー・グローブ氏も米アメリカン誌に電気自動車の必要性を説く記事
を書いていますし、来年からスタンフォード大学で電気自動車やハイブリッドについて授業を教えるたりするようです。こういった有名人以外にもインテルから巣立った人々がスマート・メーター、風力、太陽熱など様々な会社に関与しています。
それから半導体の製造装置を作っている米アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)社は太陽電池の製造装置の販売も開始
しています。(日本だとアルバックが同様なビジネスを展開しています。)特に、インドの太陽電池新興会社モーザーベアへの一貫製造装置を納入したことは注目を集めました。製造装置が簡単に手に入るようになるとますます中国やインドなどの新興企業の追い上げが激しくなるからです。米アプライド社は最近では蛍光灯よりも効率がいい照明である発光ダイオード(LED)や充電池や燃料電池などにも参入を検討
しているようです。
インテルやアプライド・マテリアルズは1年半から2年で半導体の性能(集積密度)が2倍になるというムーアの法則の立役者ですが、実際にIT革命を起こしてきた本人たちがエネルギー産業に入ってくるのは実に頼もしい話です。
MJ
ITからETへ
11月4日、バラク・フセイン・オバマ氏が次期米国大統領に選ばれました。オバマ次期政権はエネルギー政策を大幅に変えることになるでしょう。例えば10年かけて1500億ドル(約14.6兆円)をクリーン・エネルギーなどに投資
し、500万人分もの職をつくり出すという公約を掲げています。1929年に始まった大恐慌に匹敵するといわれる現在の金融・経済危機の状況では思い切ったエネルギー政策は難しそうに見えます。しかし、逆を主張している人もいます。大変な時期こそ政府がニュー・ディール政策のような大幅投資に踏み切るべきだというのです。
温暖化対策に熱心な英国ブラウン首相や仏国サルコジ大javascript:void(0);統領が「グリーン・ニュー・ディール」を提案
しても驚くことはないでしょう。面白いのはIT企業であるIBMの最高経営責任者、パルミサーノ氏がこうした対応が必要だといっている
のです。
省エネを大幅に進めたり、再生可能エネルギーを大量に導入するためには、スマート・グリッドが重要です。このスマート・グリッドは「エネルギー・インターネット」と呼ぶべきものです。多数のコンピューターが相互接続してエネルギーを分散的・双方向的に管理します。(スマート・グリッドの説明は日経ビジネスオンラインのコラム「Next Big Thing」 の記事
が詳しいです。)
パルミサーノ氏は古くなった電力網やインフラを更新し、同時にスマート・グリッドなどを導入しようと提案しています。インターネットと違い流れるものが情報ではなく電気ですが、それでもスマート・グリッドはIT技術を駆使したものになり、莫大な投資はアメリカのためだけではなくIBMの収益にもいい効果があるということでしょう。
以前ブログで書きましたがグーグルとGEは共同でスマート・グリッドに取り組むことを発表
しています。こうしたIT(情報技術)からET(エネルギー技術)へ、いやITとETを統合するという潮流は今後ますます大きくなるのかもしれませんね。
MJ