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グーグルとGEがクリーン・エネルギーで協力を発表

先週17日、グーグル Google とGE(ジェネラル・エレクトリック General Electric)はクリーン・エネルギーついて協力していくことを発表しました。同時に再生可能エネルギーのために政策分析を行い、政治に働きかけていくことも発表しました(日本語報道Google公式ブログ )。

このブログではたびたびグーグルについて書いていますが、今までの記事はGoogle.org という慈善活動(的な投資)を行う部門の話でしたが、今回はグーグル本体のようです。GEはエコマジネーションという標語で環境ビジネスを積極的に打ち出しており、また高性能タービンや風力発電タービンで世界をリードしています。GEがエネルギーに真剣なのは理解できますが、インターネットの巨人であるグーグル本社がなぜエネルギーに取り組むのでしょうか?英フィナンシャル・タイムズが"unusual(異常な、風変わりな)"と呼ぶ協力体制 の狙いは何なのでしょうか?

グーグルの創業者が環境問題に熱心に取り組んでいるということもありますが、ビジネス的な狙いも大きいと思います。今回の発表の主題の一つはスマート・グリッドsmart grid です。この用語、「賢い電力網」と訳せばいいでしょうか。誤解を招くかもしれませんが、電気エネルギーをインターネット上の情報のようにしてしまう技術といってもいいかもしれません。

現在の電力網(送電線、電線、変電所など)は原子力・火力・水力発電所のような中心的な発電所があり、そこから電力を運ぶというものです。中心から末端という方式は、既存の発電所には非常に有用な方式です。しかし、再生可能エネルギーの多くは発電規模が小さく分散しています。また太陽電池を設置すれば家庭がミニ発電所になるように、消費者から電力網へ電力供給という電気の逆の流れも起こりえますさらに再生可能エネルギーは発電のタイミングが一定でないという問題があります。例えばGEが世界市場をリードする風力発電は、風が吹いているときしか発電しません。旧来の電力網にとってみれば非常に扱いにくい電力源なのです。

こうした問題を解決してくれるのがスマート・グリッドです。発電所や家庭にスマート・メーターという自動計量装置をつけ、インターネットなどを通じてこうした情報を双方向にやり取りします。そして発電状況、需要量にあわせて電力の流れを変化させ融通させたり、電力使用量を変化させたりします。究極には電力網の中心となる大きな発電所があるという形ではなく分散された小さな発電所がエネルギーを双方向にやり取りするという形になるのでしょう。これはインターネットが情報を交換するやり方に似ていて、大量のデータをネットで自由にやり取りするグーグルの経験が十分活かせるようなのです。

グーグルとGE。アメリカを代表するこの二社が、技術と政策でタッグを組むことで再生可能エネルギーが大幅に進むかもしれません。

MJ

地球をよりよい場所にするために(2)

引き続きベター・プレイスについてですが、今回の主役は最高経営責任者CEOのシャイ・アガシ(Shai Agassi)氏 です。今回もWIREDの記事 をもとに書いています。

ユダヤ人の彼はエネルギーや自動車と無縁の情報技術畑でキャリアを歩んできました。15歳でイスラエルのトップ技術系大学入学。父と一緒にいくつものソフト会社を起業していきました。世界最大のビジネス向けソフト会社SAPがアガシ氏の会社を買収した後はSAPで頭角を現し、製品部門のトップに躍り出ました。たった30台後半という若さですが、次期CEOになると期待されていました。

アガシ氏がエネルギーに興味をもったのは実は最近です。彼は2005年に世界の優秀な40歳未満の政治家・ビジネスパーソンを集めるヤング・グローバル・リーダーズに招待されました。スイスのリゾート地に集まり議論をする場で、参加者は世界をよりよい場所にするために誓いを立てます。アガシ氏のテーマは環境で、特に地球温暖化について考えることになりました。

参加者の殆どはビジネスなどの自分の分野で何ができるか、わずかな対応を考えました。でもアガシ氏は違いました。環境問題の中で地球温暖化問題に注目し、CO2の排出量を減らす、つまり石油の消費を減らすことに考えをめぐらせます。石油に依存する自動車社会を石油から脱却させるという壮大なビジョンを打ち立てます。そしてSAPを辞め、ベター・プレイスを起業するのです(最初の名前はProject Better Placeで、後にProjectがとれます)。

クレージー。多くの人は彼の壮大な計画を聞くとこのように思うようです。世界を石油から脱却させるなどというのは普通の企業でできる仕事には聞こえません。できるとしたら、世界中の情報を整理することを目指し、1998年の創業からたった10年で世界の大企業になったグーグルのような勢いでやらないといけないでしょう。そう、実際にベター・プレイスは電気自動車のグーグルを目指しているともいえるのです。

エネルギーや自動車業界で経験がないアガシ氏でしたが、流石はシリコンバレー流というべきでしょうか、ものすごい勢いで学び、また人材を獲得していきます。例えばベター・プレイスは国際標準化機構ISOの元副代表を今年4月に雇いました。世界中で電気自動車を展開する野望を持つアガシ氏。彼はすべての国の規格・基準を踏まえたうえでビジネスを展開することを考えているのです。

商品テストも規模が違います。普通新しい製品を投下する場合はモニターを探して商品を使ってもらいます。ただベター・プレイスのような企業は、個人、企業でもなく、なんと国がテストをする必要があります。壮大な実験に名乗りを上げる国がいるのか不思議に思う方もいるかもしれませんが、すでにイスラエル(アガシ氏はユダヤ人でイスラエルともつながりが深い)とデンマークの協力が決まっています。また車の方はルノー・日産などが協力することも決まっています。

IT業界からの転向。壮大なビジョンに基づく起業。アガシ氏の物語はまるで映画のようです。でもこれは架空の話ではありません。多くの人がアガシ氏のビジョンに共鳴し、協力し、リスクをとっているのです。WIRED誌の末文を訳しますと、「シャイ・アガシは一台の[試験用の]車があるだけで、充電スタンドもなければ顧客もいないのです。それでもみな信じるのです。彼には未来が見えると。」電気自動車の未来が。

MJ




地球をよりよい場所にするために(1)

今日は Better Place ベター・プレイス(本社カリフォルニア・パロアルト)といったちょっと変わったクリーンテック・ベンチャーを紹介します。今回の内容は、主にWIRED誌の記事に基づいています。非常に面白い記事です。

日本でも郵便事業会社が導入を発表したりして、最近関心が高まっている電気自動車。走行中にはガスを排出することがなく、ブレーキのエネルギーを回収したりアイドリングがなかったりと高燃費。環境に優しい車です。

電気自動車の普及を遮っているのは値段とインフラです。電気自動車はガソリンの代わりに電池に電気を充電して、そのエネルギーで動くですが、この電池が高いのです。またガソリンスタンドに代わる充電ステーションなども、これから設備を作る段階です。ベター・プレイスは、この2つの問題にいっぺんを解こうとしています。しかも今ある技術で。新しいのは技術ではなく、ビジネス・モデルなのです。

あなたがベター・プレイスのお客だとしましょう。電池が切れそうになったらベター・プレイスのスタンドに行きます。電池を充電するのにはすごく時間がかかります。自宅で夜充電したりするのはいいですが、急ぎの場合どうすればいいのでしょうか?なんとベター・プレイスでは急ぎの場合充電をしません。充電池をはずして取り替えるのです。これは言葉で説明するより映像を見てもらったほうが早いでしょう。充電したら何時間もかかるところがたった数分の電池交換で済んでしまうのです。



次は支払いです。「使い放題」プランを選んでいるあなたはスタンドでは何も払いません。毎月銀行から自動振り替えで、会費と使い放題プランの固定額が引き落とされます。「使い放題」プラン。どこかで聞いたことがありますね。そう、携帯電話のプランに似ているのです。使い放題もあれば、使用量に比例した支払い方法もあります。

本体の売り方も携帯電話に似ています。少し前までは携帯電話は0円で買えました。2万円もしたら中々消費者も戸惑うところを、0円という価格でまずは買ってもらう。そして携帯電話会社は月々の通話料から金額を回収していたわけです。電気自動車も同様に本体価格が高いです。通常の車より2から3倍になるという見積もりもあります。このままでは客は寄り付かないでしょう。しかし現在はガソリン価格の高騰のため、燃費のいい電気自動車は燃料費/電気代を考えてトータルに計算するとむしろ安くなるのです。ですからベター・プレイスは0円携帯のように非常に低額で電池をリースし、代金を会費で回収します。こうやって環境にも優しいだけでなく、お財布にも優しいビジネスを打ちたてようとしています。

ビジネス・モデルだけ聞いても興味深いこの会社。まだ製品はできていませんが、実際にイスラエルやデンマークなどで展開が決まっています。ですが、会社よりもっと面白いのはCEOのシャイ・アガシ氏。彼については次回の記事で書きます。

MJ