地球をよりよい場所にするために(2)
引き続きベター・プレイスについてですが、今回の主役は最高経営責任者CEOのシャイ・アガシ(Shai Agassi)氏
です。今回もWIREDの記事
をもとに書いています。
ユダヤ人の彼はエネルギーや自動車と無縁の情報技術畑でキャリアを歩んできました。15歳でイスラエルのトップ技術系大学入学。父と一緒にいくつものソフト会社を起業していきました。世界最大のビジネス向けソフト会社SAPがアガシ氏の会社を買収した後はSAPで頭角を現し、製品部門のトップに躍り出ました。たった30台後半という若さですが、次期CEOになると期待されていました。
アガシ氏がエネルギーに興味をもったのは実は最近です。彼は2005年に世界の優秀な40歳未満の政治家・ビジネスパーソンを集めるヤング・グローバル・リーダーズに招待されました。スイスのリゾート地に集まり議論をする場で、参加者は世界をよりよい場所にするために誓いを立てます。アガシ氏のテーマは環境で、特に地球温暖化について考えることになりました。
参加者の殆どはビジネスなどの自分の分野で何ができるか、わずかな対応を考えました。でもアガシ氏は違いました。環境問題の中で地球温暖化問題に注目し、CO2の排出量を減らす、つまり石油の消費を減らすことに考えをめぐらせます。石油に依存する自動車社会を石油から脱却させるという壮大なビジョンを打ち立てます。そしてSAPを辞め、ベター・プレイスを起業するのです(最初の名前はProject Better Placeで、後にProjectがとれます)。
クレージー。多くの人は彼の壮大な計画を聞くとこのように思うようです。世界を石油から脱却させるなどというのは普通の企業でできる仕事には聞こえません。できるとしたら、世界中の情報を整理することを目指し、1998年の創業からたった10年で世界の大企業になったグーグルのような勢いでやらないといけないでしょう。そう、実際にベター・プレイスは電気自動車のグーグルを目指しているともいえるのです。
エネルギーや自動車業界で経験がないアガシ氏でしたが、流石はシリコンバレー流というべきでしょうか、ものすごい勢いで学び、また人材を獲得していきます。例えばベター・プレイスは国際標準化機構ISOの元副代表を今年4月に雇いました。世界中で電気自動車を展開する野望を持つアガシ氏。彼はすべての国の規格・基準を踏まえたうえでビジネスを展開することを考えているのです。
商品テストも規模が違います。普通新しい製品を投下する場合はモニターを探して商品を使ってもらいます。ただベター・プレイスのような企業は、個人、企業でもなく、なんと国がテストをする必要があります。壮大な実験に名乗りを上げる国がいるのか不思議に思う方もいるかもしれませんが、すでにイスラエル(アガシ氏はユダヤ人でイスラエルともつながりが深い)とデンマークの協力が決まっています。また車の方はルノー・日産などが協力することも決まっています。
IT業界からの転向。壮大なビジョンに基づく起業。アガシ氏の物語はまるで映画のようです。でもこれは架空の話ではありません。多くの人がアガシ氏のビジョンに共鳴し、協力し、リスクをとっているのです。WIRED誌の末文を訳しますと、「シャイ・アガシは一台の[試験用の]車があるだけで、充電スタンドもなければ顧客もいないのです。それでもみな信じるのです。彼には未来が見えると。」電気自動車の未来が。
MJ