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にゃ~・しねま・ぱらだいす

ドコにもダレにも媚を売らずに、劇場・DVDなどで鑑賞した映画の勝手な私評を。

エクスペンダブルズ [DVD]/シルベスター・スタローン,ジェイソン・ステイサム,ジェット・リー

【監督】シルヴェスター・スタローン
【主演】シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン
【オフィシャルサイト】http://www.expendables.jp/

老年となってなおアクション映画に情熱を燃やし続けるスタローンが所謂ソレ系の俳優ばかりを集め、
理屈・論理度外視のアクションバカ作品を制作。当然内容はまったくないが郷愁感はたまらない。
ちなみにオフィシャルサイトが妙に凝った造りになっているので是非一見を。

カネさえ貰えればどんなヤバイ仕事でも受けるバーニー・ロス率いる傭兵部隊「エクスペンダブルズ」。
謎の男チャーチから南米の小国、ヴィレーナの独裁者であるガルザ将軍の排除を依頼されたロスは、
メンバーの1人・ナイフ投げの達人であるクリスマスと共に偵察に赴くが、発見され追跡を受ける。
辛くも逃げ出した2人だったが、ロスは情報提供者の娘の安否が気になって仕方がないのだった…。

『ロッキー』『ランボー』シリーズでマッチョな筋肉を誇張しハリウッドの古き良きアクション活劇を
牽引し続けたスタローンも70歳目前。かといって不器用な彼が今更演技派に路線変更できる訳でもなく、
引退して裏方に徹する潔さがある訳でもなく、必然的に原点回帰するしか道はないと判断したようだ。
彼がただの『終わったアクション俳優』ではないところは、プロデューサーの感覚を持ち合わせていること。
ジェイソン・ステイサムやジェット・リーら『現役バリバリ』の旬のアクション俳優をメインに配置し、
自分も含め、ドルフ・ラングレン、ブルース・ウイルス、そしてシュワちゃんまでを脇で揃えるという
『プロデューサー・スタローン』でなければ不可能なキャステイングを実現してみせた。

往年の暴れっぷりを期待するのは無茶というものだが、スタローンは年齢を感じさえない頑張りを見せるし、
『タクシー』シリーズなどで披露されるジェイソン・ステイサムのスピードとパワーは圧巻。
哀しいかなジェット・リーだけではネタ的に扱われ見せ場は少ないものの、続編でリベンジかと思わせる
含みと期待を残す常套手法は、シリーズモノを熟知した彼ならではの手腕と言えなくもない。

まぁ、かといって内容はないし、ぼーっと2時間弱アタマを働かせず見るのには最適、といったレベル。
過度な期待は厳禁だし、見所は大根アクターの中で1人ズバ抜けて存在感を放つミッキー・ロークくらいかw


【評価】
★★☆☆☆
ナイト&デイ (エキサイティング・バージョン)ブルーレイ&DVDセット(初回生産限定) [Bl.../トム・クルーズ,キャメロン・ディアス,ピーター・サースガード

【監督】ジェームズ・マンゴールド
【主演】トム・クルーズ、キャメロン・ディアス
【オフィシャルサイト】http://movies.foxjapan.com/knightandday/

所謂『The ハリウッド』的豪華スター競演アクション活劇。当然中身は何もナシw
往年のドル箱スター2人も、恋愛スパイコメディを繰り広げるのには流石にお年を召しすぎたようで、
代役バレバレのスタントやらサービスのつもりの水着シーンや皺が目立つアップなど、所々痛い。

妹の結婚式へ参加するためにボストンへの航空便を待っていたジェーンは、
謎めいた男・ロイとぶつかり、しかも同じ便に搭乗することとなる。
運命的なものを感じたジェーンだったが、トイレに入っている間に、
機内はロイと彼を狙う暗殺者との間で格闘戦となっており、修羅場となっていた。
『パイロットが死んだので不時着する』と説明するロイに、ジェーンは不可思議な状況に
困惑しながらも、確実に平凡な人生が暗転していくのを感じる-。

予想通りそれ以上でもしれ以下でもなく、それでいてデート映画としての及第点はあげられる。
美男・美女に派手なアクション、素晴らしいロケーション、そしてハッピーエンド。
これぞハリウッド映画の王道という作りに、『今は80年代か?』と錯覚してしまう程。
007シリーズでさえ変革が求められているこの時代に、果たして必要なジャンルなのかという疑問は、
興行的に失敗したという結果でも明らか。前時代的な作り方では、もう子供でさえ連れないようだ。

2人のギャラ、そしてアメリカ、アルプス、オーストリア、スペイン、南国の島でのロケ。
制作費は大作に相応しい天文学的な数字になる筈だが、それに見合う話題性も
注目度もあったとは思えないし、ある意味この手のハリウッド大作の終焉を暗示しているように思う。

演技派へとなかなか脱皮できない両キャストが今後どうやって生き残っていくのか。
作品よりも今後の彼らの動向の方が面白いように思ってしまったり。

2時間強何も考えずぼーっと阿呆になりたい方にお薦め。その代わり何も残りません☆


【評価】
★★☆☆☆
告白 【DVD特別価格版】 [DVD]/松たか子,岡田将生,木村佳乃


【監督】中島哲也
【主演】松たか子、岡田将生、木村佳乃、芦田愛菜、山口馬木也
【オフィシャルサイト】http://kokuhaku-shimasu.jp/index.html

『このミス』でも上位ランクされた湊かなえ原作のベストセラーが映画化。
松たか子の感情を抑えつつかつ恐怖を連想させる怪演が話題になり、ヒット作となった。
個人的には原作の読後感の悪さが気になったが、映像化されても同じだったという…。

3学期の終業式の日。
市立中学校1年B組の担任だった森口悠子は、生徒達に学校を辞めることを告げる。
数ヶ月前、学校のプールでシングルマザーである彼女の一人娘が水死体で発見されたのだった。
森口は警察に事故死と判断されたが、本当はこのクラスにいる2人が犯人であると断定するが、
少年法で守られた彼らを裁くことは難しい、と語り、恐ろしい復習を仕掛けたことを告白する。

その日を堺に、生徒達の彼らの家族の生活が暗転していく…。

恥を承知で『告白』してしまうが、この作品の良さが今一つ分からない。
映像作品は原作に忠実に作られており、流石中島監督という美学を感じさせるシーンを多々ある。
だから映画の完成度云々は関係がないと思うので、原作自体が受け付け難いのだと思う。

最近は女流作家のミステリー分野への進出が目覚しい。
高村薫は性別無縁の別格の存在だが、宮部みゆき、小野 不由美、小池真理子など、
所謂ベストセラー作家と呼ばれる才女が数多く活躍をしている。
質実剛健、ファンタジー、アングラ、ラブストーリー絡みなど持ち味は個々違うものの、
何処か『客観視して感情移入が難しい』キャラクター、もしくはストーリー立てをする点では
共通しているように思う。
よく言えば漫画っぽくない、悪く言えば冷めているというある種、読み手を拒絶するような
ニュアンスを文体・行間から感じ取れる気がする。俺だけかしらん。

この作品で本格デビューした湊女史も、読中から同じ傾向が漂っていたのだが、
結局最後までそれは変わることなく、誰の思いにも共感できずに読了してしまったのだった。
当然、殺人犯にシンパシーを感じなくても良いのだが、現在の陰惨な事件とは違い、
そこに動機・人間ドラマとしての厚みを感じてこそのミステリーという分野に深みが出ると
信じて疑っていないので、どうにも腑に落ちない気持ち悪さだけが残ってしまったのだった。

映像になれば、誰も救われないこの物語に若干でも光明が見えるのかな、と思っていたが、さにあらず。
同じドロドロしたモノを感じたままでスタッフロールを見つめざるを得なかった。
『面白い』とか『エンターテインメント』とか見当違いなキャッチコピーが予告編には踊っていたが、
良作ではあるが、快作でもましてやエンターテインメントとは決して呼ぶことはできない。
知的好奇心はみたされるかもしれないが、決して楽しい物語ではないのだから。

これまでパン祭くらいしかなかった松たか子の代表作になるのかもしれないが、
彼女のふくよかなご尊顔は、苦悩したり葛藤したりした爪痕は見えず、リアリティは今一つ。
キャリアに一石を投じる怪演ではあったかもしれないが、犯人役の2人の学生の方が余程好演だった。

個人の問題で厳しい評価には落としたが、アイドル映画でもTVドラマ映画でもない邦画が
きっちり足場を築く礎になったという意味では、素晴らしい功績だと思う。


【評価】
★★☆☆☆
新年あけましておめでとうございます。Toshikiです。
相も変らぬある時更新の不定期gdgd Blogですが、
本年も生暖かい目で宜しくお願い申し上げます。

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インセプション [DVD]/レオナルド・ディカプリオ,渡辺謙,ジョセフ・ゴードン=レヴィット

【監督】クリストファー・ノーラン
【主演】レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤール
【オフィシャルサイト】http://wwws.warnerbros.co.jp/inception/mainsite/

…ということで正月はタマった作品をまとめて消化できるかと思えば、さにあらず。
年を重ねれば重ねるほど、時間も老い先も短くなって行くのですね(-_-;)
今年の1本目は、昨年末DVDリリースだったこの作品。
それなりの大作の割には話題にならないのがフシギだってけど、見て納得(-_-;)

コブは、他人の夢に潜入し潜在意識の中から機密情報を抜き出す凄腕産業スパイ。
その彼に大物実業家・サイトーが、ライバル企業を潰すための仕事を依頼してくる。
跡継ぎであるロバートに、『父親が築いた巨大企業をつぶす』という思想を植え付ける
『インセプション』をして欲しいとのことだった。

アイデアを抜き出す『エクストラクション』と比較して難しく不可能に近いミッションだが、
コブは自分の犯罪歴を抹消してくれることを条件に受諾。最高のメンバーを集めるために奔走する。

相棒・アーサー、設計士・アリアドネ、偽造士・イームス、調合士・ユスフそして依頼者サイトーは、
失敗すれば永遠に虚無世界を彷徨うことになる危険で複雑なミッションをクリアして、無事帰還できるのか-。

押井マニアなら、30年前から付き合っている『夢ネタ』。
『エクストラクション』『インセプション』というアイデアは新しいが、発想自体は使い古されたもの。
今が本当に現実なのか夢の中なのか-のような話は、個人的には『またこれかよ』的既視感もある。
確かにVFXに頼らないホンモノならではの迫力ある映像表現は見応えがあるが、哀しいかな、
逆に技術が進んだ現代では、洞察力のある観客でなければ『どうせCGでしょ』と付されてしまう、
というパラドックスも起きてしまうように思う。予算があるハリウッドならではの贅沢な悩みだけど。

一昔前であれば、同じ日本人である謙さんとかつてのアイドル俳優・ディカプリオが競演というのは、
それなりに引きもあった組み合わせだろうが、演技派への転身で苦悩するレオ様(懐)と、
最早珍しくもなくなった謙さんのハリウッド大作への出演では、インパクトがなくなったのも事実。
こちらも、セールスのネタとしては痛し痒しという残念な結果である。

代表作『メメント』を初め、奇をてらったストーリー展開、発想、映像表現をするノーランが、
今回は考え過ぎた、策におぼれたという感も否めないのだが、それは期待値の高さの裏返し。
名前だけで鑑賞意欲が高まる稀有な監督として、今後もオリジナル作品を極めていって欲しい。
『ダークナイト2』も楽しみだけどw

日本人、特にこの手の映画を見飽きた人種には、少しリズムが悪く無駄に複雑で退屈かも。
ラストがハッピーエンドかバッドエンドかは観客に(相変わらず)託されてしまう。
自分は後者だと感じたのだが、マイノリティーのようで。まぁ、どっちでもエエわ(-_-;)


【評価】
★★☆☆☆

年末である。
メディアでは『早いもので』とか『気が付けば』といったスピード感を表現する
冠言葉が溢れているが、個人的には過去最高に長く感じた1年だった。
未曾有の不況が予想以上に直撃しあまりにロクでもなかったので、
一刻も早く年代わりして欲しいと切望したほどである。
マァ、年が変わっても状況が劇的に変化するワケもないと思うが、
気分転換できるだけでも、鬱々とした現状よりはマシな気がする。

それだけ時間があるなら、さぞ映画三昧かと思いきやさにあらず。
昨年63本も消化したのに、本年はわずか36本。半分程度という体たらく。
理由はいろいろあるが、昨年ほど精神的に余裕がなかったということだな(T_T)

そんな理由で昨年は『超個人的視点によるベスト10 』を選出できたが、
今年は精々ベスト5程度が関の山ということで、『超個人的視点』の5本をご紹介。
例年通り、あくまで私個人の嗜好で万人には当て嵌まらないこと、そしてあくまで
今年見た作品で必ずしも『今年上映された作品ではない』ことをお断りしておく。

【第5位】第9地区レビュー

第9地区 [DVD]/シャールト・コプリー,デヴィッド・ジェームズ,ジェイソン・コープ


低予算を逆手に取ったドキュメンタリータッチの映像表現、馬鹿馬鹿しくも
何故かリアリティを感じさせる脚本など、監督の才能とセンスを実感した作品。
まったく期待していなかっただけに良い意味で裏切られた。


【第4位】時をかける少女レビュー
時をかける少女 【完全生産限定版】 [DVD]/仲 里依紗,中尾明慶


しつこく映像化されその度に高いハードルが科せられる原作を、
ノスタルジーな雰囲気を醸しつつ仲里依沙ならではの現代っぽさもプラス。
意外な秀作となった。『第9地区』同様、期待値と評価が反比例した好例。


【第3位】アリス・イン・ワンダーランドレビュー

アリス・イン・ワンダーランド [DVD]/ジョニー・デップ,ミア・ワシコウスカ,ヘレナ・ボナム=カーター

公開当時の不評が不思議で仕方がなかった作品。
ティム・バートン節は控えめとはいえ、映像表現・奇抜なアイデアなど、
彼ならではのテイストが溢れているし、ジョニー・デップの怪演も従来通り。


【第2位】沈まぬ太陽<レビュー>

沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組) [DVD]/渡辺 謙,三浦友和,松雪泰子


キャスト、予算のかけ方など、邦画の正しいあり方を示した王道のつくり。
基本的に骨太な大作が好きという嗜好の問題はあるものの、それを除いても
長編原作を中断アリの3時間強という破格の扱いをした英断は評価されてよい。


【第1位】トイ・ストーリー3レビュー

トイ・ストーリー3 [DVD]/ディズニー


全体的に小粒感の漂う本年のラインナップではダントツ。
続編、しかも第3弾となると評価は下げがちになるのが通例だが、
綿密に練られた脚本とスキのない映像はシリーズであることを度外視しても、
単体の作品として圧倒的なクオリティを持っている。

本年はディズニーアニメが一番面白かった、という結論は、
ハリウッドがアクション大作やヒット作の続編に走り、
国内はTVドラマ映画を量産したことにもあると思う。
全てを否定する気はないが、安易な作品作りはクリエイティビティを育てない。
映画をビジネスにするためにはスタッフ・キャスト共に高レベルな作品を作ること、
そのためにはそれを作り出せる才能を育てることが重要である。
関係者には、不景気な今こそ未来のための尽力を注いで頂きたい。

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本年も駄文を乱筆にお付き合い頂きましてありがとおございました。
来年も本年以上の気まぐれ更新となるかと思いますが、引き続きご愛顧頂ければ幸いです。
今後とも宜しくお願い申し上げます。




Toshiki
ソルト デラックス・ディレクターズ・コレクション [DVD]/アンジェリーナ・ジョリー,リーヴ・シュレイバー,キウェテル・イジョフォー

【監督】フィリップ・ノイス
【主演】
アンジェリーナ・ジョリー
【オフィシャルサイト】http://bd-dvd.sonypictures.jp/salt/

当初トム・クルーズ主演で検討されていた企画を性別変更、アンジー主演で実現。
MI的残り香が漂う中クールに立ち回る姿は、流石トゥームレイダーという印象だが、
いかんせん年齢を重ね過ぎた感は否めず、そこに美学を感じられることは少ない。
彼女のギャラで予算を使い切ったのか、他キャストもパッとしないしなァ。

かつて北朝鮮に囚われた経験を持つ・CIAの女スパイ、イヴリン・ソルトは、
命を救ってくれた博物学者である夫と結婚し、平穏な日々を送っていた。

しかしある日、ロシアからの密告者オルロフの尋問を任された彼女は、
『米副大統領の弔問に訪れるロシア大統領を暗殺するスパイが潜り込んでいる』
『その名はソルト』という衝撃情報をCIAにもたらす。
CIAは必死に弁解するソルトの身を拘束ものの、彼女は追撃隊を撃退し建物を脱出。
逃亡生活へと入っていく。
そして副大統領の葬儀が行われる当日、すぐ横には変装した彼女の姿があった-。

誤解を受けた主人公が逃亡生活送る中で真相を究明していく-というプロットは、
真新しいものではなく、むしろ手垢が付いている程やり尽くされた感がある。
寡黙な女主人公・Wスパイ・国家規模の陰謀…など、何も今更、演技派に覚醒した
アンジーでなくても…と言いたくなる一昔前のアクション活劇という印象。
逆に彼女をキャスティングできなければお蔵入りであったであろう、という程度の企画。

要人暗殺、国家危機、報復核攻撃など、描く世界観は無駄にデカイ。
その割にはたった1人のスパイに潜入されたり、チームがあっさり全滅させられたりと
妙にセキュリティが甘く現実感が乏しい。緻密にリアリティを追求していかないと
娯楽作品とはいえ一笑に付されてしまう難しさが、今のフィクションにはある。
SFでない現実世界をバックボーンにするなら、脚本や美術に現実味が欲しい。

そんな残念な制作陣の頼みの綱はアンジー。
名前で集客できる数少ないハリウッド女優は、ララ・クロフト張りの往年の冴えを見せるが、
如何せん重ねた年齢は隠せず。アップの表情や動きの切れ味に制裁を欠く。
前作『チェンジリング』でついに演技派に覚醒、アクション女優は卒業か、と寂しく思っていた
ファンには朗報だったかもしれないが、果たして満足させる内容だったか、というと疑問。
個人的には、もう年齢的にもキャリア的にも無理にアクションモノに出演する必要はないと思う。

全体的に様々なジャンルのファンを裏切ったような、そんな中途半端で残念な仕上がり。

【評価】
★★☆☆☆
シャッター アイランド [DVD]/レオナルド・ディカプリオ,マーク・ラファロ,ベン・キングズレー

【監督】マーティン・スコセッシ
【主演】レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キングスレー
【オフィシャルサイト】http://www.s-island.jp/

スコセッシ&ディカプリオという黄金コンビなら駄作である筈がない、と信じた映画ファンは多い筈。
しかし駄作とまでは呼べないものの、期待を裏切る結果になってしまったという感は否めない。
スコセッシらしさが出たのが意味深なフリと、2時間強という長尺だけだったというのは、残念だった。

1954年9月。
ボストンの沖合いに浮かぶ精神を煩った犯罪者を収容する病院島・シャッターアイランド。
連邦保安官のテディは、相棒のチャックと共に女性患者の失踪事件の調査で、この島を訪れた。
3人の実子を溺死させた罪で収容されたレイチェルが、密室となった病室から消えてしまったのだ。
捜査に協力的ではない医院長、姿をくらましている担当医、やたら威圧する看守長など、
不審な人物が現れては消える中、テディ自身がこの事件を引き受けた別の目的まで発覚する-。

ミステリーに分類されてはいるが、結末まで見てもスッキリしない。
解釈はできるが、『本当にそんなオチでいいの?』とこちらが心配しなくなる程のお粗末さ。
道中、散々前フリしたり思わせぶりなシーンをインサートしたりして、『もっと深い』的な暗示をしつつ、
その実そのまんま…という延々2時間以上も引っ張られたのは何なのだろう、と失った時間の尊さを
思いたくなる脱力的な展開が待っていた。
勘の良い方なら、舞台だけでストーリーを妄想できると思うのだが、おそらく間違っていないw

確かに、スコセッシらしさは散見できる。
落ち着いた色調で統一された絵作り、台詞や細やかな仕掛けで展開を想像させる手腕など、
彼らしい安定さと計算された不安定さは健在。惜しむらくは作品が持っているポテンシャルが
彼の能力に追いつかずに余してしまったこと。スコセッシがやるべき作品ではなかったということだ。

このレベルの話なら2時間弱に削ぎ落とす事は充分可能だろうし、充分な内容である。
鑑賞後の後味の悪さも、その程度にコンパクトに纏めてもらえれば享受できる分もあるであろう。
演技派として歩み始めたディカプリオも、ハードボイルドタッチ一辺倒という匂いがしてきたし、
他ジャンルやアクの強い役柄をこなしていかないと、名前で客が呼べるようにはならなくなるだろう。

脚本・演出・俳優と、全てにおいてまったく新しさのない作品に成り下がってしまったのは、
スコセッシ&ディカプリオという黄金コンビが錆付いてしまったようで、今後が心配でもある。


【評価】
★☆☆☆☆
沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組) [DVD]/渡辺 謙,三浦友和,松雪泰子


【監督】若松 節朗
【主演】渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二
【オフィシャルサイト】行方不明

山崎豊子原作の大作を、豪華キャストを擁してこれまた3時間22分もの長編として映画化。
予算20億は『ヤマト』と同じ制作費だが、衣装・美術の細部にまで気配りが行き渡った
豪華な絵面は到底同等とは思えない。カネはこう使うべし、との見本のような作品。

ナショナルフラッグである国民航空の労働組合委員長として経営陣と対立した恩地は、
その強硬な姿勢が仇となり、開発途上のカラチ支店へと転勤させられる。
その後もテヘラン、ナイロビと単身赴任の海外勤務は足掛け8年に渡り、苦悩の日々を送る。
一方、恩地と共に副委員長として活躍した行天は専務に取り入り、出世街道を歩むこととなった。

それから10年。帰国した恩地に待っていたのは、御巣鷹山で発生したジャンボ機墜落事故だった。
500人強の人命を奪った過去最悪の航空機事故の中、遺族係としてと彼らと向き合う恩地は、
後処理を事務的に済ませようとする会社側に猛烈な反発を抱く。

痛ましい事故から4ヶ月。利根川首相は、関西の紡績会社会長・国見を会長に就任させ、
国民航空の再建を目指す。東京に呼び戻された恩地は、国見が新設した「会長室」の部長に抜擢。
改革に奔走する国見と恩地サイドとそれに反目する行天サイドの対立が明確となっていく-。

長い間映像化が待望されていたものの、モデルとなった日本航空の反発やスケールから
幾度も頓挫したようで、こうして完成の暁を見た日には、太陽が沈んでしまうという皮肉な話となった。
会社経営陣と労働委員会の対立、事故の痛ましい記憶、遺族らとの事務的な交渉、
社内の権力争い-幾ら『フィクション』と弁解しても、誰の目にも『そういうことはあっただろう』と映る
骨太な内容は、見ごたえ充分であると共に事故の記憶など幾つかの感傷も呼び戻してくれる。

時間が経った所為もあるが、1985年8月に発生した日航機墜落事故を題材にしたものが増えてきた。
アプローチは様々だが、当時の状況を知っている者にとっては、胸に帰来するものがあるものばかり。
『絶対安全を謳っていた日本の航空機が落ちた』という現実は、その後数年にわたって利用者の
空路離れを促したほど衝撃だった。当時まだ飛行機に縁遠かった自分にもショックな事件だった。

しかし直接関係のない我々と違って、遺族にとっては記憶が風化することはない。
この映画を観るまでもなく、彼らにとって今なお悲しみの日々は続いている筈なのだ。
日本航空が弱体化したことによって日の目を見た待望の映像化ではあるが、
立ち位置自体は微妙であることには違いない。その配慮はエンディングも現れているが、
自分のようにあらためてあの事件を思い起こし、心あらたにする鑑賞者もいるので、
その意義は十二分にあったように思う。

しかしこの作品は、スゴイ。渡辺謙あっての作品ではあるのだが、脇を固める三浦友和らの
演技力を超えた人間力が、画面越しにもビシビシ伝わってくる。『俳優』『女優』と安易に名乗る
タレント崩れが恥ずかしくなってしまう程の圧倒的な存在感は、この作品に対する熱意や思い入れが、
本来の実力は勿論、それをさらに恐ろしい程に昇華させてしまうという稀有な例を見た思い。
そしてそれを支えるしっかりとした美術。飛行機を筆頭としたCG表現は陳腐で頂けないが、
現地でのロケセット、小道具や衣装の細部まで行き渡っている拘りにも、熱意や思い入れが
俳優部だけでなかったことを裏付けているように思う。

3時間を越える作品は『赤ひげ』をスクリーンで見て以来だったが、正直それほど長くは感じなかった。
各部で展開や人間模様に変化に富んでいる所為もあるが、全編に渡って統一された重みと深みが
流れていたこともあるかと思う。
かといって、この手の作品は世の映画ファン万人にお薦めできる傾向のモノでもないので、
好きなヒトなら3時間強見る価値は十分にある、という推薦に留めておきます。

でも、久しぶりに骨太な邦画ではない、ちゃんとした『日本映画を観たな』という印象。

【評価】
★★★★☆

SPACE BATTLESHIP ヤマト

【監督】山崎貴
【主演】木村拓哉、黒木メイサ、柳葉敏郎、緒形直人、西田敏行、高島礼子、山崎努
【オフィシャルサイト】http://yamato-movie.net/index.html

華麗にスルー♪しようかと思っていたのだが、1000円デーということもあり
公開初日にしっかり鑑賞。これは明らかに興行的戦略にハメられたのだと思うw
賛否両論分かれるかと思うが、原作への思いが強ければ強いほどツライ作品。
逆に言えば、酒のネタにはこれほど旨い肴はないとも言えるかもしれないw

西暦2194年、突如外宇宙のガミラスから飛来した遊星爆弾の無差別攻撃により、
地球は放射能に汚染され人類のほとんどが死滅。海は干上がり赤い大地が広がる死の星となった。
それから5年。生存したわずかな人類は地下に逃れたが、各国の宇宙戦艦は悉く撃沈され、
最早対抗手段はほとんど残されていなかった。

元軍のエースパイロット・古代進は地上でレアメタルを回収し生き延びていたが、
その作業中に、突如飛来した未確認カプセルの直撃を受け、大量の放射能を浴びてしまう。
奇跡的に命をとりとめた古代は、カプセルのメッセージにあった『放射能除去装置』を受け取る
14万8千光年の宇宙旅行に出発する宇宙戦艦ヤマトに乗船するために軍に復帰。
戦闘班長として指揮をとることになった。

艦長の沖田以下、出発の準備を慌しく整える乗組員達。そんな折、ガミラスの大型ミサイルが飛来。
ヤマトは緊急発進し、これを決戦兵器『波動砲』で迎え撃つが-。

衝撃というか『やめておけ』的実写映画化は主演・キムタクが発表された段階で、
内容や完成度よりも『どれくらいネタとしておいしいか』というある種のコメディ的要素を
多分に期待したものに変化したように思う。特にコアなマニアを持つ作品ほどハードルは上がる。
イスカンダルの旅以上に、スタッフもキャストも観客も誰もが難しいチャレンジであることを認識していた。

そういった意味では厳しい予算・スケジュールの中で、作品として及第点を上げられる箇所もある。
まずはVFXチーム。スケジュールが許せば技術的にもう1歩先へ行ける余地を残した形だが、

今現在国内でSF世界を構築するとしたらこのチームしかないだろう、という実力は見せたように思う。
あとは一部の俳優部。特にヤマト愛を公言した柳葉敏郎=真田の思い入れはたっぷり伝わってくる。
真田役の声優・青野武ならではの節回しやタメを研究したであろう成果が多分に感じ取れる。

逆にモノ申したいのが、まず脚本。
アチコチのレビューで散見していると思うが、基本軸は『第1作+さらば』。
往年のヤマト原理主義論者にはそれで全て結末が伝わる表現だと思うが、
端から興行的にあきらめているのが感じ取れる続編を作らない潔いスタンスw
2時間強でイスカンダルまで行って帰って決戦までするという厳しい時間軸の中で、
原作ファンが納得するエピソードの取捨は難しい作業であったには違いないが、
その割に余分なエピソードで時間を消耗しているケースがやけに多い(特に談話室関連)。
他にキムタクのアドリブなのか彼へのサービスなのか分からないが、所謂『キムタク節』を
増長させる台詞回しも多い。演技力を期待しているワケではないが、古代を演じている以上、
古代として見せる努力があっても良いのではないか、とも思う。本人の成長のためにもね。

次に美術。
宇宙が舞台である以上、基本的に密閉空間・特に第一艦橋での人間群像となるのは仕方がないが、
このセットがいかにもハリボテ。コンソールに埋め込まれているのはそのまんまデル・コンピュータ。
攻撃を受ければDLのアトラクションのようにお決まりの場所から煙と火花が噴出し、俳優は右往左往。
それをFollowする筈の照明部も基本ベタ。緊急時にはパイロットランプをくるくる回す。
これではVFXや俳優が技術や愛をもっていくら挑んだとしても、リアル感も現実感も出はしない。

予算がないならないなりにやり方はある筈だ。先日の『第9地区』も同じ20億程度の制作予算である。
それでもあの物語には『リアル』と『現実感』があった。宇宙人が南アのスラムで暮らす生活感があった。
ところが今回のヤマトにはそれがない。今回だけに限ったことではないが、邦画特撮にはそこが欠けている。
もう少し照明を工夫するだけ、もう少しセットを作りこむだけ、もう少し撮り方を変えるだけ…
そのアイデアで制作費をカバーできる部分があるのではないだろうか-そんなことをつくづく思ってしまった。

思い入れがあるリアルタイム世代としてはついつい饒舌になってしまうが、駄作と切り捨てるつもりはない。
言わば『ハードルを上げるとガッカリするが、期待しなければそこそこ面白い』。
同世代と酒の肴にするにはピッタリ、とも言えるネタ的作品とも言える。祭だと思って楽しむのが吉。


【評価】
★★☆☆☆

アイアンマン2 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]/ロバート・ダウニー・Jr.,グウィネス・パルトロウ,ドン・チードル


【監督】ジョン・ファヴロー
【主演】ロバート・ダウニー・Jr、グウィネス・パルトロウ、ドン・チードル、スカーレット・ヨハンソン、ミッキー・ローク
【オフィシャルサイト】http://www.ironman2.jp/

実写化アメコミ作品の中でも大成功を収めた部類に入る人気シリーズの続編。
この手の作品を楽しむには、馬鹿馬鹿しいとか現実感がないとか細かいことは気にしないこと。
それでも破天荒な社長ブリが妙にセクシーだった前作と比較して、若干パワーダウンの印象も。

スターク・インダストリーズの社長でありアイアンマンの正体でもあるトニー・スタークは、
世界各地の紛争を鎮圧し平和貢献していたが、その強大な存在は兵器と見なされ、
軍への引き渡しを要求されてしまう。
断固として拒否したスタークだったが、アーマーと共に戦い続けた代償は大きく、
生命維持装置でもあるアーク・リアクターの副作用により身体を蝕まれていた。
スタークは残りの時間を有効活用するために、社長の座を秘書のペッパー・ポッツに譲ることにする。

一方、スタークに積年の恨みを抱くイワン・ヴァンコは小型のアーク・リアクターを作り上げ、
簡易アーマーを開発。モナコレースに参加中だったスタークの命を狙う。
辛くもこれを退けたスタークだったが、スターク社のライバル、ハマー・インダストリーズの
社長ジャスティン・ハマーの手引きにより逃亡、同社のアーマー開発の責任者の座に着く。

自暴自棄になったスタークに愛想をつかしたジェームズ・ローズ中佐は彼の家からアーマーを略奪、
ジャスティン・ハマーと共謀し武装化、『ウォーマシン』を作り上げる。

スターク・エキスポにおいて公開されるウォーマシンと、イワンが作り上げた無人アーマー『ドローン』。
しかしイワンの謀略によってアーマー達は暴走、襲撃を始めてしまう…。

基本ハリウッド大作には懐疑的なアタクシ。
それでもウィットやアイデアが盛り込まれたモノに関しては、それなりに評価はしているつもりである。
前作は馬鹿馬鹿しさの中にもそれが随所に盛り込まれていたが、一番魅力的に映ったのは、
主役の不良社長を演じたロバート・ダウニー・Jrのキャラクター。
正義感が強くそれでいて遊び人、しかも天才技術者で肉体派。それでいて知性に溢れた大馬鹿者。
いかにも漫画的な設定ではあるが、それを体現できるのは彼しかいない、という好演ぶりだった。

今回は前作品の結末で自らがアイアンマンであることを明かしてしまった所為か、
当初あった破天荒な部分がやや影を潜め、正義の味方的な要素が増えすぎてしまったように思う。
中盤で調整したり、スカ嬢という贅沢なキャスティングで新キャラを引っ張り出したりして
取り戻そうと画策した点は否めないが、続編としての継続性とマンネリに苛まれた感は否めず。

それでもヲタやマニアが狂喜しそうなロボは満載だし、予算をかけたVFXは相変わらず素晴らしい。
リアリティとライト感が同居した美術やストーリーテラーは流石といわざるを得ない。
ラストで3作目を匂わせる演出も含めて、よくも悪くも『続き物』のハリウッドパワーを感じる一本。

しかし『スクリームズ』の劇中でもあったけど、続編の評価って1作目を越えるのって難しいよね。


【評価】
★★★☆☆