告白 | にゃ~・しねま・ぱらだいす

にゃ~・しねま・ぱらだいす

ドコにもダレにも媚を売らずに、劇場・DVDなどで鑑賞した映画の勝手な私評を。

告白 【DVD特別価格版】 [DVD]/松たか子,岡田将生,木村佳乃


【監督】中島哲也
【主演】松たか子、岡田将生、木村佳乃、芦田愛菜、山口馬木也
【オフィシャルサイト】http://kokuhaku-shimasu.jp/index.html

『このミス』でも上位ランクされた湊かなえ原作のベストセラーが映画化。
松たか子の感情を抑えつつかつ恐怖を連想させる怪演が話題になり、ヒット作となった。
個人的には原作の読後感の悪さが気になったが、映像化されても同じだったという…。

3学期の終業式の日。
市立中学校1年B組の担任だった森口悠子は、生徒達に学校を辞めることを告げる。
数ヶ月前、学校のプールでシングルマザーである彼女の一人娘が水死体で発見されたのだった。
森口は警察に事故死と判断されたが、本当はこのクラスにいる2人が犯人であると断定するが、
少年法で守られた彼らを裁くことは難しい、と語り、恐ろしい復習を仕掛けたことを告白する。

その日を堺に、生徒達の彼らの家族の生活が暗転していく…。

恥を承知で『告白』してしまうが、この作品の良さが今一つ分からない。
映像作品は原作に忠実に作られており、流石中島監督という美学を感じさせるシーンを多々ある。
だから映画の完成度云々は関係がないと思うので、原作自体が受け付け難いのだと思う。

最近は女流作家のミステリー分野への進出が目覚しい。
高村薫は性別無縁の別格の存在だが、宮部みゆき、小野 不由美、小池真理子など、
所謂ベストセラー作家と呼ばれる才女が数多く活躍をしている。
質実剛健、ファンタジー、アングラ、ラブストーリー絡みなど持ち味は個々違うものの、
何処か『客観視して感情移入が難しい』キャラクター、もしくはストーリー立てをする点では
共通しているように思う。
よく言えば漫画っぽくない、悪く言えば冷めているというある種、読み手を拒絶するような
ニュアンスを文体・行間から感じ取れる気がする。俺だけかしらん。

この作品で本格デビューした湊女史も、読中から同じ傾向が漂っていたのだが、
結局最後までそれは変わることなく、誰の思いにも共感できずに読了してしまったのだった。
当然、殺人犯にシンパシーを感じなくても良いのだが、現在の陰惨な事件とは違い、
そこに動機・人間ドラマとしての厚みを感じてこそのミステリーという分野に深みが出ると
信じて疑っていないので、どうにも腑に落ちない気持ち悪さだけが残ってしまったのだった。

映像になれば、誰も救われないこの物語に若干でも光明が見えるのかな、と思っていたが、さにあらず。
同じドロドロしたモノを感じたままでスタッフロールを見つめざるを得なかった。
『面白い』とか『エンターテインメント』とか見当違いなキャッチコピーが予告編には踊っていたが、
良作ではあるが、快作でもましてやエンターテインメントとは決して呼ぶことはできない。
知的好奇心はみたされるかもしれないが、決して楽しい物語ではないのだから。

これまでパン祭くらいしかなかった松たか子の代表作になるのかもしれないが、
彼女のふくよかなご尊顔は、苦悩したり葛藤したりした爪痕は見えず、リアリティは今一つ。
キャリアに一石を投じる怪演ではあったかもしれないが、犯人役の2人の学生の方が余程好演だった。

個人の問題で厳しい評価には落としたが、アイドル映画でもTVドラマ映画でもない邦画が
きっちり足場を築く礎になったという意味では、素晴らしい功績だと思う。


【評価】
★★☆☆☆