SPACE BATTLESHIP ヤマト | にゃ~・しねま・ぱらだいす

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ドコにもダレにも媚を売らずに、劇場・DVDなどで鑑賞した映画の勝手な私評を。

SPACE BATTLESHIP ヤマト

【監督】山崎貴
【主演】木村拓哉、黒木メイサ、柳葉敏郎、緒形直人、西田敏行、高島礼子、山崎努
【オフィシャルサイト】http://yamato-movie.net/index.html

華麗にスルー♪しようかと思っていたのだが、1000円デーということもあり
公開初日にしっかり鑑賞。これは明らかに興行的戦略にハメられたのだと思うw
賛否両論分かれるかと思うが、原作への思いが強ければ強いほどツライ作品。
逆に言えば、酒のネタにはこれほど旨い肴はないとも言えるかもしれないw

西暦2194年、突如外宇宙のガミラスから飛来した遊星爆弾の無差別攻撃により、
地球は放射能に汚染され人類のほとんどが死滅。海は干上がり赤い大地が広がる死の星となった。
それから5年。生存したわずかな人類は地下に逃れたが、各国の宇宙戦艦は悉く撃沈され、
最早対抗手段はほとんど残されていなかった。

元軍のエースパイロット・古代進は地上でレアメタルを回収し生き延びていたが、
その作業中に、突如飛来した未確認カプセルの直撃を受け、大量の放射能を浴びてしまう。
奇跡的に命をとりとめた古代は、カプセルのメッセージにあった『放射能除去装置』を受け取る
14万8千光年の宇宙旅行に出発する宇宙戦艦ヤマトに乗船するために軍に復帰。
戦闘班長として指揮をとることになった。

艦長の沖田以下、出発の準備を慌しく整える乗組員達。そんな折、ガミラスの大型ミサイルが飛来。
ヤマトは緊急発進し、これを決戦兵器『波動砲』で迎え撃つが-。

衝撃というか『やめておけ』的実写映画化は主演・キムタクが発表された段階で、
内容や完成度よりも『どれくらいネタとしておいしいか』というある種のコメディ的要素を
多分に期待したものに変化したように思う。特にコアなマニアを持つ作品ほどハードルは上がる。
イスカンダルの旅以上に、スタッフもキャストも観客も誰もが難しいチャレンジであることを認識していた。

そういった意味では厳しい予算・スケジュールの中で、作品として及第点を上げられる箇所もある。
まずはVFXチーム。スケジュールが許せば技術的にもう1歩先へ行ける余地を残した形だが、

今現在国内でSF世界を構築するとしたらこのチームしかないだろう、という実力は見せたように思う。
あとは一部の俳優部。特にヤマト愛を公言した柳葉敏郎=真田の思い入れはたっぷり伝わってくる。
真田役の声優・青野武ならではの節回しやタメを研究したであろう成果が多分に感じ取れる。

逆にモノ申したいのが、まず脚本。
アチコチのレビューで散見していると思うが、基本軸は『第1作+さらば』。
往年のヤマト原理主義論者にはそれで全て結末が伝わる表現だと思うが、
端から興行的にあきらめているのが感じ取れる続編を作らない潔いスタンスw
2時間強でイスカンダルまで行って帰って決戦までするという厳しい時間軸の中で、
原作ファンが納得するエピソードの取捨は難しい作業であったには違いないが、
その割に余分なエピソードで時間を消耗しているケースがやけに多い(特に談話室関連)。
他にキムタクのアドリブなのか彼へのサービスなのか分からないが、所謂『キムタク節』を
増長させる台詞回しも多い。演技力を期待しているワケではないが、古代を演じている以上、
古代として見せる努力があっても良いのではないか、とも思う。本人の成長のためにもね。

次に美術。
宇宙が舞台である以上、基本的に密閉空間・特に第一艦橋での人間群像となるのは仕方がないが、
このセットがいかにもハリボテ。コンソールに埋め込まれているのはそのまんまデル・コンピュータ。
攻撃を受ければDLのアトラクションのようにお決まりの場所から煙と火花が噴出し、俳優は右往左往。
それをFollowする筈の照明部も基本ベタ。緊急時にはパイロットランプをくるくる回す。
これではVFXや俳優が技術や愛をもっていくら挑んだとしても、リアル感も現実感も出はしない。

予算がないならないなりにやり方はある筈だ。先日の『第9地区』も同じ20億程度の制作予算である。
それでもあの物語には『リアル』と『現実感』があった。宇宙人が南アのスラムで暮らす生活感があった。
ところが今回のヤマトにはそれがない。今回だけに限ったことではないが、邦画特撮にはそこが欠けている。
もう少し照明を工夫するだけ、もう少しセットを作りこむだけ、もう少し撮り方を変えるだけ…
そのアイデアで制作費をカバーできる部分があるのではないだろうか-そんなことをつくづく思ってしまった。

思い入れがあるリアルタイム世代としてはついつい饒舌になってしまうが、駄作と切り捨てるつもりはない。
言わば『ハードルを上げるとガッカリするが、期待しなければそこそこ面白い』。
同世代と酒の肴にするにはピッタリ、とも言えるネタ的作品とも言える。祭だと思って楽しむのが吉。


【評価】
★★☆☆☆