大傑作『私たちのブルース』感想の第二弾…空前絶後の俳優陣を…

 

ー物語編-でも書いた通り、エピソードは現在のプルン里を中心に進みますが、時間や地域を超えてモザイク模様に進んでいくので、キャストの感想もどう残せば良いものやら…ただ、豪華すぎる主要俳優陣だけでなく驚くような起用が見られるので、そこは大切にしないといけないでしょう。取り敢えずタイトルになった中心人物を軸にまとめようと思います。

 

<ハンスとウニ> 大手銀行の支店長ハンスに、「毒戦1&2」の凶悪犯など硬軟自在の名優チャ・スンウォン、下町辣腕女社長ウニに、五つ星「ひかり探して」「オマージュ」など文芸畑と思いきやその守備範囲に驚く演技派イ・ジョンウン、女子高校生時代のウニに、主演作もあって大注目の若手演技派シム・ダルギ。

<ヨンオクとチョンジュン>謎の多い新米海女ヨンオクに、個人的には韓国映画界きっての正統派美形で最近では「虐待の証明」「ジョゼと虎と魚たち」などの曲球も実に魅力的ハン・ジミン、無口な働き者チョンジュンに、「宇宙と人」で目茶目茶かっこよかったキム・ウビン、重要な登場人物でダウン症を抱えるヨンヒに、実際ダウン症を持って生まれ今は俳優や肖像画を得意とする画家として活躍するチョン・ウネ。

<ヨンジュとヒョン>妊娠する女子高生ヨンジュに、「20世紀のキミ」でしか見たことがありませんがその演技力には脱帽する若手有望株ノ・ユンソ、優しいヒョンに、映画には端役でしか出ていませんがドラマでは相当に人気だとか爽やかな二枚目ペ・ヒョンソン。

<トンソクとソナ>粗野な行商人トンソクに、世界的スターのイ・ビョンホン、鬱病と親権裁判に苦しむキャリアウーマンのソナに、イ・ビョンホンとは20年ほど昔『美しき日々』で兄妹を演じた頃からの大ファンでその透明感はますます魅力的シン・ミナ、トンソクが毛嫌いする母親のベテラン海女オクトンに、最近ドキュメンタリー「ノランムン」にも登場した「母なる証明」の大女優81歳キム・ヘジャ、中学生時代のソナに、「私はポリ」という主演映画もある美少女子役出身キム・アソン。

<イングォンとホシク>共にウニ(イ・ジョンウン)の同級生で、ヒョンの父親で腸詰屋イングォンに、「犯罪都市」シリーズなど主演を食いそうな名演が続く名脇役パク・チファン、ヨンジャの父親で氷屋ホシクに、映画の出演歴はありませんが舞台やミュージカルで有名だという演技派チェ・ヨンジュン。

<ミランとウニ> ウニの”親友”ミランに、主演映画あまた歌手でもあるオム・ジョンファ、ちらっとしか出ませんがミランの二番目の夫に、キム・ギドク作品を支える名優キム・ヨンミン。

<チュニとウンギ>オクトン(キム・ヘジャ)を姉と慕うベテラン海女チュニに、70年代から活躍する本当は上品なお母さん女優コ・ドゥシム、その孫ウンギに、これが6歳の演技かと目を疑ったキ・ソユ、チュニ(コ・ドゥシム)の末息子でウンギの父親マンスに、実際にコ・ドゥシムの息子であるキム・ジョンファン。

<その他> ハンスやウニの同級生で今はハンスの部下ミョンボに、巧い脇役キム・グァンギュ、市場でコーヒーを売る姉妹、海女でもある姉ダリ(月)に、コケティッシュなチョ・ヘジョン、聴覚障害を抱える妹ビョリ(星)に、実際に聴覚障害を持つキュートなイ・ソビョル。

 

キャスティングの妙はランダムに以下の通り…

・イ・ジョンウンの活躍が圧巻で、チャ・スンウォン/オム・ジョンファ相手に二つの切ないエピソードを紡ぐと共に、他の全てのエピソードにもお節介(世話好き)キャラとして登場、強力に物語を支えています。

・イ・ビョンホンとシン・ミナのコンビが実に絵になっていて、その因縁の深みは『美しき日々』を思い出させます。

・登場人物の若い時代を演じるダブルキャストが魅力的で、イ・ジョンウンの変わった高校生時代シム・ダルギ、シン・ミナの切ない少女時代キム・アソン、ハン・ジミンの少女時代ホン・ジョンミン、オム・ジョンファの女王様然とした高校生時代ヨン・シウなど将来が楽しみです。

・ダウン症を抱える画家でもあるチョン・ウネ、聴覚障害のイ・ソビョルという二人のハンディキャップを持つ俳優の登場も重要なメッセージとなっているでしょう。特にチョン・ウネは、このドラマのために描き下ろした数十枚の作品が巧みに物語に活かされていて涙を誘います。

・何よりもキム・ヘジャとコ・ドゥシムの共演が圧巻でしょう。この81歳と71歳というベテラン女優は何度か共演しているようですが二人の素朴で飾らない会話や手をつないでゆっくり歩く後ろ姿、さらには、キム・ヘジャのイ・ビョンホンとの演技、コ・ドゥシムの6歳キ・ソユとの演技は、それだけで名画を観ていると感じます。

 

とにかく映画を十数本観た気にさせる見事な俳優陣だと思います。この重層的な物語と凄い俳優陣を重厚なドラマとして仕上げる脚本・演出の巧みさは次回”『私たちのブルース』 (2022) -その3 脚本・演出編-”で…