1930年の統帥権干犯論と2018年現在の憲法改正論
1930年の統帥権干犯論と2018年現在の憲法改正論共通点:感情論的な不満による「憲法の破壊」 1930年、昭和初期・軍部台頭の頃の憲法論(明治憲法) → 統帥権干犯論 支持者:軍部・右翼など 感情論:軍縮や平和に不満な軍部や右翼が反発 2018年、安倍政権による平成の憲法改正論(日本国憲法) → 憲法9条改正論 支持者:自民党・右派勢力 感情論:自衛隊の名誉回復にかこつけた感情論 による改憲正当化 ----------------------------------------------------------------- 昭和初期の軍国主義の契機となった統帥権干犯論(昭和5年:1930年)における軍部・右翼の主張と現代における右派勢力の日本国憲法(9条)に関する改正論議の背景分析から、大きな類似点が幾つか明らかになった。 まず、昭和期の統帥権干犯論と現代右派の憲法改正論における類似点は、両者とも議論を主導する勢力が憲法知識を有しない軍や右派勢力であるという点である。 このことは、現代憲法改正論議の主体である一部の極右勢力(=憲法の知識を有しない集団)による破壊的な憲法の暴論によって世論が引き摺られる等、昭和初期のようなファシズムと同様の体制崩壊が起きる危険性が十分にあるということを示す事例ともいえるだろう。 次に、昭和期の統帥権干犯論の背景には軍や右翼の感情論的な不満があった。現代の憲法9条改正論議の背景にも自衛隊の名誉回復という感情論的大義名分や、戦後長く続いた平和に対する右派勢力の感情論的な不満が与党の改正論の根拠の大部分を占めており、現代の憲法改正論の根拠が同感情論に基づく事実は、安倍総理の施政方針演説にも明言されているとおりである。 よって、右派勢力の感情論的な不満を背景とした為政者による憲法改正論議は、為政者の都合によって自由に書き換えられる憲法という意味において、本来あるべき憲法の立憲主義的機能を損なう恐れが高く、正当性を著しく欠く暴論であると言える。 なお、自衛隊員の人権が大切というのであれば、他の立法等で十分対応が可能だ。 結論としては、「憲法を知らない右派勢力による改憲論議は、かなり危険である。」ということが、歴史検証によっても明らかだということだ。