(17)プレプラン

 

 プレプランのときは、『ヨウ素125線源永久挿入による小線源療法治療者カード』へのサインが必要なため、奥さん(または、保証人)を連れてくるように、と言われる。

 プレプランの内容は、私の師匠・ichiさんが「じじ..じぇんじぇんがん」の中で詳しく解説してあるので省略するが、私の場合、検査直後、お尻の穴から血が出たのにはびっくりした。

 だが、次の日には、治っていた。排便痛もなかった。

 ただ、プレプラン終了後の排尿痛は、きつかった。

 すぐに条件反射が形成されてしまい、トイレのドアを見ると、恐怖が走るようになった。だが、その排尿痛も、次の日には、ほぼ消えた。

 

 プレプランでは、あのイヤな尿道カテ-テルは入れられたが、これも、生検同様、案ずるより産むが易しだった。

 

 プレプランで印象的だったのは、生まれて初めて、おしっことともに空気がプスプスと出たことだ。ヘンな感じはしたが、それだけだった。前立腺の超音波画像を撮るとき、空気を入れて膀胱を膨らませたためだろう。

  

 

(18)密封小線源治療

 

 これも、ichiさんが「じじ..じぇんじぇんがん」の中で詳しく解説してあるので省略するが、「ブラキセラピ-のほうが針生検(経会陰式)よりも楽だなぁ」と感じたことが印象的だった。

 

 しんどさは、針生検(経会陰式)>プレプラン>ブラキセラピ-の順だ。

 

 しかし・・・退院した日の深夜、いきなり尿閉になった。

 

 午前1時頃、尿意を感じて目が覚め、トイレにいったのだが、いくらがんばっても尿が出ない。

 退院してから(尿道カテ-テルを抜去してから)、それまで(眠る前まで)、排尿痛もなく、ごくふつうに出ていたのに、いきなり尿閉になったので、びっくり仰天した。兆候は、まったくなかった。

 

 尿閉は、不快というよりも、気持ち悪かった。

 

 すぐに岡本圭生医師に、「昼は、調子良かったのに、深夜、いきなり尿閉になりました」という内容のメ-ルを書き始めた。

 しかし、メ-ルを書き終えた頃(15分後)、尿意を感じて、トイレにくと、ちょろちょろと出た。

 残尿感はあったが、とりあえずは、出た。ほっとした。

 

 そこで、メ-ルは送信せず、しばらく様子を見ようと考えた。

 忙しい岡本圭生医師の邪魔をしてはいけないと思ったからだ。

 

 次の日の夜も、尿意で目が覚めたときは、尿閉気味ではあるが(ちょろちょろしか出ないが)、しかし、完全な尿閉ではない。残尿はあるが、出ることは出る。

 

 だが、いつ完全な尿閉になるのか不安だったので、岡本圭生医師に報告だけしておいた。

 

 すると、岡本圭生医師からすぐに返事がきた。

 要約すると、「移行域からも癌が見つかっているため、通常よりも、尿道線量は高めに設定してあります。排尿状態をチェックしてみないとわかりませんが、場合によっては、自己導尿をおぼえてもらったほうがいいかもしれませんので、来週の火曜日に受診してください」という内容だった。

 

 「自己導尿」という言葉を聞いて、ヘタレの私は、パニックになったガーン

 

 しかし、幸いなことに、その火曜日の診察では、とくに問題はない、ということで、八味地黄丸を処方されて、終了した。

 ほっとした。

 

 それからも、日中の排尿はまったく問題ないのに、深夜にトイレにいくときだけ尿閉気味になる。

 その差がありすぎる。

 こういう症状は、ネットにも本にも書いていなかった。

 

 そこで、師匠のichiさんに聞いてみた。

 だが、ichiさんは、自分にはブラキセラピ-による副作用はなかったので、わからない、という回答だった。

 岡本圭生医師にも質問してみたが、「わからない」という答えだった。

 

 今も謎のままだが、仮説はある。

 「ブラキセラピ-の傷による炎症仮説」だ。つまり、ブラキセラピ-手術の際、針を刺入したときにできた傷から炎症がおこり、その炎症により前立腺が腫れ、その腫れのせいで尿道が狭窄した、という仮説だ。私の場合、通常よりも、尿道に近いところにもシ-ドが入れられているので、尿道に近い傷が腫れると、尿道が狭窄してしまうことは容易に想像できる。

 また、炎症は、一般に、昼よりも、夜のほうが激しくなる。深夜だけ尿閉気味になることも、この仮説で説明できる。

 さらに、リラックスしているときに尿閉気味になることが多いので、副交感神経も深く関与していると思われる。

 

 そのほか、シ-ドから発せられる放射線でも炎症が発生するので、この炎症による腫れも原因のひとつではあったことはまちがいない。

 

 ただ、尿閉になったのは、退院した日の深夜の一回だけで(一瞬だけで)、そのあとは、少しずつ回復していった。

 深夜のトイレ事情は、いまは、大幅に改善している(昼と夜の差は、ほとんどない)。

 

 なお、第一部で述べたように、ハルナ-ル、フリバス、ユリ-フをそれぞれ2週間以上、試したが、どれも効かなかったので、途中から、勝手に(岡本圭生医師に言わずに)服用を中止した。副作用を避けるためでもある。

 今も、西洋薬は、いっさい服用していない。

 

 

(19)ポストプラン

 

 術後1ヶ月におこなうポストプランでは、尿検査や血液検査のほか、CT、MRI、レントゲンとフルコースの検査をする。

 もう、この頃になると、CTやMRIも慣れてくるが、それでも、検査は疲れる。

 ただ、横になっているだけなのだが、やはり、緊張しているのだろう、私のような怖がりは、精神的に疲労してしまう。

 

 

(20)トモセラピ-による外照射(43.2Gy)

 

 トリモダリティの最終章が放射線外照射だ。

 1.8Gyを24回、月~金に照射する。

 外照射では、前立腺のほか、精嚢へも照射する。

 岡本圭生医師に地元の病院を紹介してもらった。その病院は、トモセラピ-(TomoTherapy社製のTomoHDシステム)を有し、スタッフも医師も優秀だった。

 

 当初、私は、師匠・ichiさんと同じく、自分にも血尿、血便という副作用が出るものと思っていた。

 また、岡本圭生医師からも、「外照射をしたら、排尿障害が悪化するおそれがあるので、外照射が終わったら、すぐに受診するように!」と言われていた。

 

 だが、副作用らしい副作用は、あまりでなかった。

 お尻の穴がムズムズする、という副作用と、切迫尿意くらいだった。

 

 ただ、この切迫尿意は、それなりにやっかいだった。

 なぜなら、私の場合、水の音を聞くと強い尿意が出る、というものだったからだ。

 家の中で(台所や洗面台で)水の音を聞くと、その音に刺激され、猛烈にトイレに行きたくなる(滝の音は、だいじょうぶ)。しかも、その尿意は、我慢のできない尿意だ。つまり、すぐにトイレに駆け込まないと、漏れてしまう。

 

 外照射中は、クルマにガソリンを入れているときも、その音で尿意が刺激され、トイレに駆け込んだこともある。

 

 今でも、この切迫尿意は続いている。ただ、我慢できるようにはなっている。

 

 外照射中、一番、苦労したのは、排便のコントロールだった。

 外照射は、「膀胱満タン、直腸の便はゼロ」の状態で受けることが理想だ。

 膀胱に100cc~150ccほど尿をためるのは簡単だが(水分を多めにとり、照射1時間前からトイレに行かなければ達成される)、問題は、排便のコントロールだ。

 

 私は、下痢体質で、便秘はほとんどしない。

 だが、外照射が始まる前の診察で、担当の放射線科医は、画像を見て、直腸に便がたくさん映っている、と指摘し、その対策として、リンゼス錠0.25mg(毎朝、2錠)を処方した。

 

 しかし、下痢体質の私には、リンゼス錠は効き過ぎた。

 服用すると、きっちり2時間半後に激しい下痢をおこす。水のような下痢だ。おなかも痛い。

 一錠に減らしても、ひどい下痢をする。

 これでは、排便コントロールはできても(直腸をからにすることはできても)、体がもたない。

 

 このことを放射線科医に報告すると、「では、リンゼス錠は中止しましょう」ということになった。

 そこで、私は、放射線科医にユリ-フと防風通聖散の処方をお願いした。

 第一部でも述べたように、ユリ-フの副作用である軟便を利用しようとしたのだ。そして、念のため、防風通聖散にも軟便になる作用があるので、それも利用した。

 

 この作戦は、大成功だった。

 

 しかも、防風通聖散は、体重を減らす効果もあるので、一石二鳥だった・・・はずだが、こちらは、効かず、体重はまったく減らなかった。

 

 こうして、外照射は、20回目までは、順調だった。

 

 しかし、外照射21回目のとき、事件がおきた。

 

 照射が始まるタイミングで、どやどやとスタッフが数人、照射室に入ってきた。

 あれ?機械の故障かな?びっくりと思ったが、なんと! 直腸にガス(おなら)がたまっているとのこと。そして、横にされ、お尻の穴にチュ-ブを入れられた。

 

 これが本当のガス抜きだ。

 

 そして、尻の穴にチュ-ブを入れられたまま、15分間の外照射がおこなわれた。

 恥ずかしかったし、ショックでもあったえーん

(註:こういう処置は、それほど珍しいことではないようだ・・・)

 

 次の日、担当の放射線科医から、「食べるときに一緒に飲み込んだ空気でしょう」と言われた。

 確かに、思い当たるフシがあると言えばある。

 この日、外照射を受ける数時間前、メロンがおいしくて、ガツガツ食べたのだが、このとき、大量の空気も一緒に飲み込んだのかもしれない。

 

 ただ、21回目のときは(チュ-ブを入れられた日は)、おなかは、いつもと同じ調子だったので、ショックが大きかった。おなかが張っているような感覚はまったくなかった。照射前に、きっちり排便もできていた。だから、その日もスム-ズに終わる、と確信していた。それなのに、いきなり、チュ-ブを入れられたので、ショック倍増だった。

 怖がりの私は、以後、なにがなんでもチュ-ブを回避しようとした。

 外照射は、あと3回を残すだけだったので、下痢を覚悟で、22回目以降は、リンゼス錠を半錠、服用した。下痢はしたが、なんとか無事に、24回の外照射を終了することができた。

 

 

  放射線科の3ヶ月検診のとき、担当の放射線科医に晩期障害について、質問してみた。

私「おかげさまで、早期障害(急性期障害)は、ほとんど出ませんでしたが、早期障害が出なかった人は、晩期障害も出ないのでしょうか?」

放射線科医「いえ、早期と晩期では、メカニズムが違うので、早期が出なかったからといって、晩期もでない、とは限りません」

私「晩期障害は、どんな症状が出ますか?」

放射線科医「もっぱら、出血です。血尿、血便です」

私「それは、鮮血ですか?」

放射線科医「はい、血管が切れて出血することが多いので、鮮血です」

私「晩期というと1年後とか2年後に出るのでしょうか?」

放射線科医「はい。3年後に出る人もいます」

私「では、鮮血があったら放射線科を受診したらいいのですか?」

放射線科医「はい、一週間以上、鮮血が続くようでしたら、受診してください」

私「ブラキセラピ-にも晩期障害というのは、あるのでしょうか?」

放射線科医「あります!ブラキセラピ-は、ものすごい量の放射線なので、排尿障害や血尿の可能性はあります」

私「血尿、血便が出たら、どういう治療をするのですか?」

放射線科医「まず、膀胱内視鏡検査や大腸内視鏡検査をして、それが、晩期障害によるものなのか、それとも、膀胱がんや大腸がんなど、別の病気によるものなのかをチェックします。そのあとで治療法を検討します」

私「ひ-!内視鏡ですか?怖いです!」

放射線科医「まぁ、チビ太さんの場合は、便秘もないし、糖尿病もないし、脂質異常症(高脂血症)でもないし、ワ-ファリンも飲んでいないので、血便の心配は低いかもしれません」

 

 

 

(21)大阪前立腺クリニック

 

 岡本圭生医師は、宇治病院での診察は、2024年2月22日(木)で終了し、2024年4月から、「石田記念 大阪前立腺クリニック」(京阪本線・森小路駅(もりしょうじえき)東口から100m)(電話:06-6951-9701)を開業している。ただ、ブラキセラピ-の開始は、夏頃からになるようだ。

 なお、治療費の支払いは、クレジットカードのみとなるので、注意が必要だ。

 岡本圭生医師へのメ-ルアドレスは、これまでと同じ keiseiok@814@gmail.com だ。                                                 (第二部 了)

 

 

 

 

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