<2024年8月1日・加筆修正>

 

    第二部 <<<トリモダリティ体験記>>>

 

(1)私は、cT2cN0M0、GS:4+5(solid patternのある「5」)、生検の陽性率:59%、トリモダリティ治療を始める直前のPSAは、5.052、硬結なし(ただし、生検前は、少し硬結あり)、移行域にもがんあり、前立腺は、治療前は36cc(前立腺肥大あり)、年齢は、60代後半。

 

 NCCN分類によると、「5つ以上のコアで、グレ-ドグル-プ4 または 5」に該当するため、「超高リスク」。

 

 

 2022年7月のPSAが4.1ng/mlと基準値を0.1超えたため、治療を開始する。

 なお、2022年の私の体調は、良好だった。体重が減るようなこともなかった。

 

 

(2)私の50代から現在までのPSAの推移

 

2010年10月         PSA=1.010ng/ml

2011年7月            PSA=0.998       

2012年7月            PSA=1.030       

2013年9月    PSA=1.160       

2014年8月    PSA=1.580  ←やや上昇    

2015年8月    PSA=1.520       

2016年8月    PSA=1.410       

2017年7月    PSA=1.470       

2018年7月      PSA=1.690 ←再び、上昇   

2019年7月      PSA=1.930   ←さらに上昇   

2020年7月    PSA=2.0         

2021年7月      PSA=3.6  ←急上昇!体調不良の年        

2022年7月    PSA=4.1   ←ついに基準値を超える      

 

       (以下、治療開始後のPSA)

 

2022年10月 PSA=4.840 ←たった3ヶ月で0.74ng/mlも上昇!  

 

      2022年11月 針生検(経会陰式・標的生検)をする。

 

2023年1月 PSA=5.052  ←半年で1ng/ml近く増えている。がんの勢いが強くなっていることが示唆される。

 

2023年3月 PSA=0.563 (ホルモン療法開始後、約1ヶ月)←超高リスクだから下がりが悪いのかと不安になる。なぜなら、多くの人は、この時期、0.2以下になるからだ。

        テストステロンは、0.1428ng/ml(去勢レベル)     

 

             2023年4月  3ヶ月間のホルモン療法が終了する            

 

2023年4月   PSA=0.014 (ホルモン療法が終了後した日)←0.2を下回ったので、ほっとする。

        テストステロンは、0.2101ng/ml(去勢レベル)

 

2023年5月  PSA=0.052 (ホルモン療法終了後・約3週間目)

        テストステロンは、0.1526ng/ml(去勢レベル)

 

      2023年6月 ブラキセラピ-手術 71本

 

2023年6月  PSA=0.061    (ブラキセラピ-後・約1週間・                                                                                   ホルモン療法終了後・約50日目)

 

2023年7月   PSA=0.026    (ブラキセラピ-後・1ヶ月)

                          ホルモン療法終了後・2ヶ月半)

        テストステロンは、0.2201ng/ml(去勢レベル)

 

2023年7月   PSA=0.007(nadir値)(ブラキセラピ-後50日、                                                                                              ホルモン療法・終了後・約3ヶ月)

 

      2023年7月 放射線外照射開始(43.2Gy)

 

2023年8月  PSA=0.024    (外照射開始後、約2週間

                                                ホルモン療法終了後・約4ヶ月

        テストステロンは、4.19ng/ml(基準値内)

 

      2023年8月末 放射線外照射終了      

 

2023年9月    PSA=0.048

        テストステロンは、4.202ng/ml(基準値内)  

 

2023年10月 PSA=0.057

 

2023年11月 PSA=0.066 ←4ヶ月間、上昇し続ける・・・

        テストステロンは、2.8431ng/ml(なんとか基準値内)

 

2024年2月  PSA=0.058 ←ほんの少し減少(下降に転じたので、ほっとする)

               テストステロンは、2.6022ng/ml(なんとか基準値内だが、これ以上、下がるとLOH症候群!)

 

2024年5月  PSA=0.048 ←さらに、少し減少

 

2024年7月  PSA=0.055 ←少し増加・・・

 

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註:テストステロンが基準値まで回復しても、PSAは急増していないので、順調に推移しているように見えるが、しかし、私のように、solid patternのあるGS9という超高悪性度のがんで、かつ、PSAをあまり出さないタイプという、やや特殊な前立腺がん患者の場合は、PSA値が低いまま、(PSA再発がおきているようには見えないのに)、臨床的再発がおきていることがある。

 私の場合、再発するとしたら骨転移なので、数年後、DWIBS(全身拡散強調画像)受けることを検討している。

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(3)60代後半(2022年7月)、初めてPSAが基準値を超えた。

 

 4.1ng/mlだった。

 

 PSAの基準値は、4.0ng/ml以下なので、わずか0.1ng/mlの超過だ。

 誤差の範囲と言えなくもない。

 来年の定期健診まで様子見でいいかな・・・

 

 このときの私は、「まさか!」「そんなはずない!」と、素直に現実を受け容れることができなかった。

 

 理由は、2つある。

 

 1つ目の理由は、その当時の私は、師匠・ichiさんと同様、何の根拠もなく、「自分だけは癌にならないのではないか」と思っていたことだ。

 そのため、「体調によって、PSAは変動する、と聞いたことがあるぞ」とか、「今回だけ、たまたま、ちょっとだけ基準値を超えただけなのかもしれない」とか、「前立腺肥大の可能性だってあるぞ」などと、確証バイアス的に、自分に都合良く考えていた。

 

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註:ただし、日本泌尿器学会のガイドラインでは、65歳~69歳の基準値は、3.5ng/ml以下となっているので、この基準だと、私の場合、超過しているのは、0.1ng/mlではなく、0.6ng/mlということになる。

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註:また、4.0ng/mlという基準値は、じつは、厳密なものではなく、つまり、医学的、または、科学的な根拠があるわけではなく、「まぁ、4.0ng/ml以下であれば、がんである確率は低いし、正常な人のPSAは、2.0ng/ml以下なので、その2倍程度を基準値にしておけばいいだろう」という程度のものだ。

 同様に、「放射線治療後、PSAが、その人の治療中の最低値(nadir値)よりも2.0ng/ml増えれば再発が疑われ、全摘の場合は、その人の治療中の最低値よりも0.2ng/ml増えれば再発が疑われる」が、じつは、これも、あまり医学的・科学的な根拠はない。便宜的に、「まぁ、このくらい上がったら、再発と言っていいんじゃないかな」という程度のものだ。

 だが、このときの私は、どちらも知らなかったため、つまり、基準値は厳密なものだと思い込んでいたので、次にPSAを計ったとき、もし、3.9ng/mlとか3.7ng/mlだったら、がんの疑いは消える、と思っていた・・・

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註:なお、4.0ng/mlという基準値は、治療前の基準値であって、治療を始めたあとの基準値ではない。

 たくさんの人のブログを読んでいると、これを勘違いしている人が意外に多く、治療後においても、基準値を超えたとか、超えないと書いてあるブログが散見される。

 治療後に重要なのは、絶対値よりも、横ばい傾向にあるのか、上昇傾向にあるのか、それとも下降傾向にあるのか、ということのほうだ。

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 しかも、かかりつけ医(内科医)は、私の確証バイアスを助長するように、「基準値は超えていても0.1だし、PSAは、10までだいじょうぶ」「歳をとると、みんな前立腺が肥大し、その肥大に比例してPSAも上昇するので、この程度の超過なら気にすることはありません」「10を超えたら、生検しましょう」とニコニコしながら言う。

 

 かかりつけ医は、基準値を超えたことをまったく気にしていなくて、「問題がなくて良かったですね!」とまで言った。

 私のかかりつけ医は、泌尿器科が専門ではないが、医者に笑顔で言われたら、楽観的に、いや、自分に都合良く考えたくなる。

 

 2つ目の理由は、体調が良かったことだ。

 前年は、体調は悪かったが(微妙な微熱と倦怠感が半年間ほど続いたが)、2022年は、体調が良かった。心も元気だった。体重が減るようなこともなかった

 心身ともに調子がいいのに、がんであるわけがないだろうと考えたのだ。 

  

 だが、家に戻り、少し冷静になって、過去のデ-タを見てみた。

 

 すると、なんと! 前年の2021年は、PSAが2.0ng/ml→3.6ng/mlと、1年間で1.6ng/mlも急上昇しているではないか!ガーン

 1年で、2倍近くになっている。

 直感的に、「この急上昇は、おかしい!」と思った。

  

 あわてて、前立腺がんの解説本を一冊、買って読んでみた。

 すると、案の定、PSAは、絶対値だけでなく、上昇速度も重要で、「0.75ng/ml/年を超えているのは危険」と書いてあった。 

 

 該当するではないか!

 

 しかも、0.75ng/mlどころではない。1.6ng/mlだ。

 ものすごい急上昇だ。

 

 

 私も、そして、私のかかりつけ医も、上昇速度(PSA-V)の重要性を知らなかっただけで、すでに1年前から、危険な状態だったのだ!

 

 不安になって、すぐ市内の泌尿器科クリニックに電話をした。すると、「健診でPSAを測定した日から3ヶ月後に来てください」という返事だった。

 

 この頃の私は、確証バイアスがひどかった。自分に都合のいい情報だけを集めた。自分ががんであるとは思いたくなったからだ。

 

 「PSAは、前立腺肥大でも増加する。だから、PSAが基準値を超えたからといって、前立腺がんとは限らない」

 「ほっほぉ-、PSA-D(PSA density)という指標があるのか。前立腺の大きさは、20ccまでが正常範囲と言われているので、もし、30ccあったら、PSAは、基準値の1.5倍あっても問題ない、ということになるな。もし、自分の前立腺の体積が30ccあったら、4.1÷1.5=2.7となり、余裕で基準値以下になるぞ!」

 「2年前のPSA急上昇は、前立腺が急に肥大したために、PSAもそれに伴って急上昇した可能性もあるぞ。そういえば、あの頃、尿の出が悪いときがあったかも・・・」

 

 このように、自分に都合良く解釈していた。

 

 そして、愚かにも、私は、このウソ(確証バイアス)をホントにしようと、PSAを基準値以下にもっていこうとした・・・

 

 

(4)次の診察(次のPSA測定)までの2ヶ月間で私がしたこと

 

 当時の私は、愚かにも、「基準値さえ下回れば、前立腺がんではなくなる」と思い込んでいたので、次の泌尿器科クリニック受診までPSAを下げようとした。

 

 以下の3つの作戦を実行した。

 

その1:アグリマックス作戦

 

 ネットで調べていると、東京・馬込(中馬込)の開業医(泌尿器科医・東京慈恵会医科大学卒)がアグリマックス(ニチモウバイオティックス株式会社)というサプリを勧めているHPを見つけた。

 この医師のHPを読むと、全員に効果があるように書かれている。

 しかし、何人中、何人に効果があったのかの記載はなかった。これでは、統計学的に有意かどうか、まったくわからない。

 また、どの程度の効果があったのかの記載もなかった。

 かなり疑問には思った・・・

 ちょうど、その頃、中野重徳医師(相模中央病院理事長・院長)の本、『医者の私ががんを消した食事法』(中経出版)を読んだ。それは、2012年9月に出版された本で、中野医師は、グリーソンスコアが5(4+5なのか、5+4なのか、5+5なのかの記載はなかった)という高リスクでありながら、アグリマックスを2錠/日、服用し、食事療法や運動療法などを併用することで、約10年間ずっと基準値以下のPSAを保っていて、かつ、PET・CTにもがんが映らない状態である、と書いてあった。

 

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註:中野重徳医師は、がん告知後、1年3ヶ月間は、ホルモン療法(CAB療法)をしている。ただし、3ヶ月目以降は、カソデックスの服用はせず、ゾラデックスの注射のみのホルモン療法だった。

 しかし、副作用であるホットフラッシュがひどすぎるために、1年3ヶ月で、みずからホルモン療法を中止し、アグリマックス作戦に切り換えている。

 なお、中野重徳医師は、アグリマックス以外にも、ビタミンAやDやEなどのサプリ服用のほか、高濃度ビタミンC点滴やキレ-ション点滴(EDTAという合成アミノ酸の点滴)など、ありとあらゆることをしている。

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 こちらは、サンプル数は、1つしかないが(著者である中野重徳医師のみ)、わらにもすがる気持ちになっていた私は、アグリマックスにすがることにした。

 さっそく買って飲んでみた。

 

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註:アグリマックスとは(3ヶ月分で16200円)、アグリコン型イソフラボンのことだ。

 吸収率の高いイソフラボンだ。イソフラボンは、女性ホルモンと似た作用をもっていて、大豆(豆腐や納豆)に多く含まれる。

 中野重徳医師は、男性がアグリマックスを服用すると、血中の女性ホルモン濃度が上昇し、それに呼応して、男性ホルモンは減る。前立腺がんは、男性ホルモンをエサにして活動するので、アグリマックスで血中の男性ホルモンが減ったら、前立腺がんの活動は低下する、と解説している。

 要するに、男性がアグリコン型イソフラボンを服用すると、男性ホルモンが減るために、前立腺がんの活動は抑えられる、という解説だ。

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 そのほか、中野重徳医師にならって、私も、天然型ビタミンC、天然型ビタミンE、フコイダン、天然型ビタミンA、高麗人参なども飲んだ。

 

 

その2:運動作戦

 

 運動もがんばった。ふだん以上に、散歩やジョギング、山登りやテニスなどをした。

 体調が良かったので、運動量を増やすことは、なんの苦もなかった。

 

 

その3:食事作戦

 

 甘いものや肉食を控え、緑黄色野菜やくだものや魚(青魚)を多く摂取した。

 

  

(5)そして、迎えた初診(2023年10月)

 

 市内の泌尿器科クリニックに行った。

 私は、2ヶ月間、アグリマックス作戦と運動作戦と食事作戦をしたので、自信満々だった。 

 

 診察室に入ると、私は、にやけた顔でグラサン、過去10年間のPSAの推移を医師に見せた。

 

 それを見た医師は、診察前だというのに、いきなり大声で、「診察する前に言うのもなんだけどね!紹介状を書くから、国立病院(旧国立病院)で検査を受けてね!治療は、医大がいいです!」と叫んだ。

 

 それは、あまりにも大きな声だった・・・

 

 私は、虚を突かれて、ぽか-んとしたびっくり 。

 

 何を言われているのか、さっぱりわからなかった。

 

 なにしろ、私としては、「基準値以下のPSAの数値が出て、そして、笑顔と共に泌尿器科とバイバイキンする」ということを夢見て臨んだ初診だったからだ。

 

 それなのに、診察する前から、紹介状だの、医大だのと言われて、私は、混乱してしまった。いや、ムカついた。

 

 医師は、私の怒った顔を見て、説明を始めた。

 「国立病院には、標的生検ができる装置がある!」「医大は、エビデンスに基づいて、しっかりと治療をしてくれる!」「どちらも、自信をもってお勧めできる!」

 

 ここで、やっと、自分ががん患者扱いされていることに気がついた。

 私は呆然とした。

 

 それから、直腸診と超音波検査(腹部にプロ-ブを当てる)をしたが、医師は、検査結果について、何も語らない。診察前にした尿検査の結果すら教えてくれなかった。(いまだに検査結果は、教えてもらっていない。)

 黙ってパソコンになにやら入力している。

 

 仕方がないので、私のほうから質問をした。

 

私「硬結はありましたか?」

医師「あるが、それほど硬くはない」

私「がんということでしょうか?」

医師「前立腺肥大でも、このくらいの硬さになるので、なんとも言えない」

私「前立腺の大きさは、どのくらいですか?」

医師「36cc」

 

 私は、ほっとした。

 

私「では、PSA-Dで計算すると、基準値をはるかに下回っていますよね?」

 医師は、黙って、パソコンに入力した。

 画面上に「2.28ng/ml」の表示が出た。

 それを見た私は、心の中で(ふふふ、これで、基準値以下になったぞ!)と叫んだ。

 

 だが、医師は、「フン、それがどうした!」という顔をしている。

 まったく意に介さない。

 「そんなの関係ねぇ!」という態度だ。

 

 そして、事務的に、「じゃ、採血をしてください。PSAの結果は、明日、出ます」と言う。

 

 医師は、明日のPSAの結果がどうあれ、紹介状を書くつもり満々の態度だった。

 

 家に戻ってから、私は、診察前にがん患者扱いされたことに憤慨していた。

 「失礼だろ、診察をする前から、病院の紹介をするなんて!」

 「しかも、なんなんだ、あの自信は!」

 「検査結果を教えようともしなかったぞ!」

 「あんな医者、信用できるか!」

 

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註:私のPSAの推移は、前立腺がんに特徴的なものだ。当時の私は、PSA-Vの重要さを知らなかった。

 ただ、ひとつ、弁解させてもらうと、「PSA-Vは重要ではない」と結論づけている論文があったので、調査中だった私は、むしろ、PSA-Dのほうが重要な指標かもしれないと、当時、解釈していた・・・

 

 なお、前立腺炎が発症している場合は、いきなり20ng/mlとか30ng/mlに爆増することがある。ただし、こちらは、炎症が収まれば、PSAは下がる。

 

 また、「PSAが上がる=前立腺がん」とは限らない。前立腺肥大や前立腺炎のほか、膀胱鏡検査、前立腺生検、経直腸超音波検査をしてもPSAは上がることがある。

 

 注意すべきは、デュタステリド(ザガーロ)やフィナステリド(プロペシア)などのAGA薬を服用していると、PSA値は、服用後、半年で50%まで低下していくので、2倍に換算する必要がある、ということだ。自由診療をしている人は、要注意だ。

 なお、前立腺肥大症のためにアボルブを服用している人も(アボルブの成分は、デュタステリドなので、つまり、ザガ-ロと同じなので)、当然のことながら、PSA値は、半分になるので、2倍にする必要がある。

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(6)PSA検査結果

 

 なんと! PSAは、減っているどころか、ど-んと増えていた!ガーン

 

 まさかの4.840ng/mlだった。

 しかも、たった3ヶ月で、0.74ng/mlも増えている!

 ものすごい上昇率だ。

 

 そ、そんなバカな!

 

 呆然とする私に、医師は、「ほら、言った通りだろ」という顔をして、「では、紹介状を書きますので、明日、取りに来てください」「国立病院への予約は、当院でします。国立病院では、初診となりますので、尿検査、血液検査、超音波検査など、最初から、もう一度、検査することになります。そのあとにMRI、CT、レントゲン撮影、そして、生検という流れになります」と言う。

 

 死ぬほどいやな生検をすることになるのかと思うと、頭が真っ白になった。

 

 私は、ショックのあまり、病院への支払いも忘れ、診察券も受け付けに預けたまま、まるで亡霊のように、ふらふらしながら家に戻ってしまった・・・

 

 

(7)不安と恐怖の日々

 

 家に戻ってから、私は、死に物狂いで前立腺がんのことを調べ始めた。

 必死に調べた。

 本を買い、朝から晩までネット検索した。

 寝ても覚めても前立腺がんのことを調べた。

 

 この日から、微熱(36.8度~37.4度)が出始めた。心臓もバクバクする。

 不安と恐怖からくる微熱と動悸だったのだろう。

 

 食欲も落ちた。自分としては、いつも通りの食事をしているつもりだったが、どんどん体重は減った。あっという間に、3Kg減った。

 そして、みぞおちのあたりが、ときどき、チクチク痛くなった。

 胃潰瘍ができていたのかもしれない。

 

 また、この日から、睡眠のリズムが狂ってきた。

 それまでは、午後11時半頃に眠っていたのに、この日から、午後9時になると眠くなった。しかし、午前1時頃には目が覚めてしまう。眠れなくなり、1時間ほど、前立腺がんの本を読み、二度寝するが、悪夢で午前4時ころにはおきてしまう。

 

 そんな日々の繰り返しとなった。

 当然、睡眠時間は、6時間程度となった。

 私のふだんの平均睡眠時間は7時間なので、1時間、足りない。6時間の睡眠では、頭がすっきりせず、体がふらつくことがあった。だが、悪い意味で、異常に興奮していたせいか、日中、ウトウトすることはなかった。

 

 睡眠障害以上に悩まされたのは、寝汗と悪夢だ。

 しかも、その寝汗は、大量だ。アンダ-シャツがびっちょり濡れた。

 そして、寝汗がひどいときは、悪夢もひどい。

 焦っている夢だ。「どうしよう?」「どうしよう?」と困っている夢だ。後味が悪い。

 こういう夢を見たときは、そのまま二度寝すると、たいてい悪い夢の続きを見てしまう。

 だから、こういうときは、睡眠不足を覚悟で、おきることにした。

 

 さらに、この日から、チビ太をかわいがりたいという気持ちが消失した。

 不安と恐怖のせいで、愛する余裕がなくなったのだと思う。

 

  こういう心身の状態は、岡本圭生先生の初診日まで、約3ヶ月間、続くことになる・・・

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