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春山昇華(2007)『サブプライム問題とは何か―アメリカ帝国の終焉』宝島社新書

山崎豊子(1994)『大地の子(一)』文春文庫

大地の子〈1〉 (文春文庫)/山崎 豊子

¥610
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 中国で戦争孤児となり、中国人に育てられた陸一心。

「もし、君の両親が日本人なら、日本の民族の言葉、母国語を知らないことは、人間として不幸なこと、恥だよ」

 これは、日本人であることを隠し、劣等感に思い続け、生きてきた一心がある日、突然に見知らぬ男から諭された言葉である。この男との出会いを皮切りに一心は母国日本に手繰り寄せられていくかの如く数奇な運命を辿っていく。

山崎豊子(2001)『沈まぬ太陽(五)』新潮文庫

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)/山崎 豊子

¥620
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 きな臭い話が延々と続く。「竹丸」も登場する。
 本作、特にこの五巻ではこれでもかと言うほどに、政官民の癒着を見せ付けられる。わたくしはある意味で「御巣鷹山篇」よりもおどろおどろしさを感じた。
 恩地や国見の必死の足掻きも、大勢には何ら影響していない。すべては、雲の上で決定されうるものなのだ。まざまざとそうした描写を見せられると、分かってはいても嫌になってしまう。
 しかし、それでもラストシーンの恩地の生き様には感服させられる。彼は再びナイロビを命じられ、それを自らの意思で受け入れ再度アフリカの地に踏み入れる。そうした強く頑なな人間の意志にこそ、我々の心は突き動かされるのだ。その一方で、それほどの人間の属した国民航空が、五百人超の人間を殺した事故を起こし、未だ癒着の温床となっているところを見る限り、世の無情をただただ思い知らされる。

山崎豊子(2001)『沈まぬ太陽(四)』新潮文庫

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)/山崎 豊子

¥700
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 ついに国見正之の登場だ。
 人物描写が妙に細かくなってくる。大体、何を言わんとしているかわからなくはないが、筆者の怨念のような想いにはもはや薄気味悪ささえ感じる。
 恩地は国見に見初められ、会長室入りを果たす。だが、結果的にそれが会長室の屋台骨を揺るがすことになるのだ。
 誰も救われない、誰も報われない物語の終幕まであと一息だ。

山崎豊子(2001)『沈まぬ太陽(三)』新潮文庫

沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)/山崎 豊子

¥700
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 他の巻とは圧倒的に異彩を放っている本巻。
 先の巻まではその場面場面において、恩地の意思が試されている記述が中心であった。しかし本巻では、そんな恩地が我々と同じ目線でただただ「国民航空機墜落」という現実に翻弄されていく。
 家族の絆とはこうも強いものなのか、と強く感じた。必死に肉親の遺体を見つけ出そうとする家族の描写には胸を打たれた一方で、自分との大きな距離を感じた。自分の家族がこういった事態に巻き込まれたとき、わたくしはこうも強く、ひたすら強く「真実」を追い求めることができるだろうか。そう考えたとき、作中の遺族に対しどこかまだ後ろめたさを感じる自分がいる。それは、わたくしの未熟さゆえなのか、それとも情のなさゆえなのか。そんな問いを提起する本巻は、自分にとっていつになく後味の悪いものだった。
 とにかく、筆者の想いがかつてないほどに詰まっている、壮絶な一冊である。