山崎豊子(2001)『沈まぬ太陽(三)』新潮文庫 | Winterecord

山崎豊子(2001)『沈まぬ太陽(三)』新潮文庫

沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)/山崎 豊子

¥700
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 他の巻とは圧倒的に異彩を放っている本巻。
 先の巻まではその場面場面において、恩地の意思が試されている記述が中心であった。しかし本巻では、そんな恩地が我々と同じ目線でただただ「国民航空機墜落」という現実に翻弄されていく。
 家族の絆とはこうも強いものなのか、と強く感じた。必死に肉親の遺体を見つけ出そうとする家族の描写には胸を打たれた一方で、自分との大きな距離を感じた。自分の家族がこういった事態に巻き込まれたとき、わたくしはこうも強く、ひたすら強く「真実」を追い求めることができるだろうか。そう考えたとき、作中の遺族に対しどこかまだ後ろめたさを感じる自分がいる。それは、わたくしの未熟さゆえなのか、それとも情のなさゆえなのか。そんな問いを提起する本巻は、自分にとっていつになく後味の悪いものだった。
 とにかく、筆者の想いがかつてないほどに詰まっている、壮絶な一冊である。