事故を防ぐのは、心の安全から。
心の安全設計室
心の安全コンサルタント
安田伸也です。

このたび、長く勤務した海上保安庁での仕事に対して、思いがけない知らせをいただきました。
その知らせを受けて思い浮かんだのは、華やかな思い出というよりも、救難の現場で出会った方々や、助けることができなかった方々のことでした。
そして改めて、自分がこれから伝えていきたいことについて考える機会にもなりました。
危険業務従事者叙勲を受章することになりました
危険業務従事者叙勲とは、
”春秋叙勲とは別に、警察官、自衛官など著しく危険性の高い業務に精励した者に対する叙勲で、平成15年11月から開始されました”
内閣府HPから引用
https://www8.cao.go.jp/shokun/seidogaiyo.html
今回わたしが所属していた海上保安庁からは65名が令和8年11月3日付けで発令されることになりました。
海上保安庁:第47回危険業務従事者叙勲について
https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/post-1352.html
正直、定年まで6年残して退職したので、このような勲章をいただけるとは思ってもいませんでした。
退職から10年を過ぎて、潮っけはすっかり抜けてしまいました。
しかし、巡視船や巡視艇に乗っていた時、また陸上で現場に臨場した時の事を思い出すと、辛く悲しいことの方が多く心が熱くなります。
救難の最前線で今も忘れられないこと
よく第1作目の映画「海猿」で源教官役の藤竜也さんが言った言葉を思い出します。
「救難の最前線に、楽しいことなんか一つもないぞ! 覚悟して行け!」
ほんとそのとおり。
今でも思い出すのは、潜水士時代海水浴場で行方不明者の捜索をしていたときのこと。
溺れたと思われる付近の捜索を終え、水面に顔を上げたところたぶんご家族の方でしょう。
私たちの方を不安な目で見守っていました。
当初の予定では、それで捜索を終了する予定だったのですが、一緒に潜っていた潜水士にエアの残量を確認し、もう一度捜索したのを覚えています。
また、ある時は海岸でサーフィンを楽しんでいた若者が溺れ、心肺停止状態で救急病院へ運ばれました。
消防からの通報を受け、病院へ急行した私たちが見たのは、心臓マッサージを受ける若者と、それを見守る彼女でした。
大時化の中で起きた海難では、巡視船で駆けつけて、台風並みの強風や高さ7〜8メートルもある高波の中、懸命に救助作業をしましたが助けることができませんでした。
もちろん、救助出来た事案もありますが、覚えている事故のほとんどはそんな辛い経験ばかりです。
「救助隊が来れば助かる」とは限らない
救難係長時代に一般の方から、こんな電話がかかってきたことがあります。
「遊びで遭難しても、救助に来てもらえますか?」
私は「もちろん、出動しますよ」と答えると、安心したようにその方は電話を切りました。
その後、私は心の中でこう呟いてしまいました。
「助かるかどうかは解らないけどね」
多くの人が、救助隊がくれば助かると思っているようですが、現実はそうではありません。
特に海上の事故は、陸上の救急車のように数分で現場に到着できません。
沿岸でも、数時間かかりますし、外洋では数日かかることもよくあります。
救助が来るまで、生きていて貰わなければならないのです。
だから、事故は起こさないのが一番。
事故防止が大切なのです。
叙勲を受けて改めて感じた自分の使命
今回の叙勲の知らせを受けて、そんな現役時代の事を思い出しました。
私が救助できなかった方々のためにも、コミュニケーションを通じた事故防止や心理的安全性のある職場作りなどを今後も伝えて行きたいと思います。
それが、私が現場で見てきた自死された方達、救えなかった方達の供養になると信じています。
これからも、一つひとつの講演や研修を通して命の大切さを伝え続けていきます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回いただく叙勲を、これからも「自死ゼロ・事故ゼロの世界を創る」ために活動していく励みにしたいと思います。
筆者プロフィール|安田伸也
心の安全設計室代表・心の安全コンサルタント。元海上保安官・潜水士。海上保安庁に約35年間勤務し、潜水士、巡視船航海士、巡視艇船長などを経験。海難救助や事故対応など3,000件以上の事件・事故に関わってきました。在職中にはメンタル不調も経験し、退職後に心理学やコーチングを学び、現在は安全大会や企業研修で、事故防止、心理的安全性、メンタルヘルス、職場コミュニケーションなどを伝えています。「自死ゼロ・事故ゼロの世界を創り、笑顔で働く人を増やす」ことを使命に活動しています。