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 中国経済の危機が言われて久しいけれど、いまだに爆裂は免れている。その理由となっている人民元の戦略的作為は、下記リンクにポイントを簡略に記述しておいたけれど、副題の“中国主導「アジアインフラ投資銀行」の行く末”に絡んだ内容も含めて読書記録を書いておいた。2015年5月初版。
   《参照》  『嘘だらけ世界経済』 ベンジャミン・フルフォード×板垣英憲 (ヒカルランド) 《後編》
            【元とドル】

 

【ドル本位制】
 建国後は、人民元を米ドルにぴったりと連動させるペッグ(固定)制をとり、人民元の価値を安定させてきた。2005年にはドルに対してごく小幅に変動させる「管理変動相場制」に修正し、現在に至るが、「ドル本位」の人民元資金発行路線は、昔も今も一貫している。
 ドル本位制路線とは、中国に入って来る外貨(主にドル)の量に応じて、中国人民銀行が人民元資金を発行し、国有商業銀行に流し込む。この方式だと、人民元発行は外貨準備の大枠に沿うので、人民元は事実上、ドルの裏付けがあるとして国民の間での信用を維持できる。それが、人民銀行が自らの裁量で決めるレートでドルと人民元を交換する管理変動相場制の運用を円滑にする。中国の通貨システムは「ドル本位制」と言っていい。ドル本位制こそは、これまでの中国経済発展の最大の動因である。(p.6-7)
 中国は、後発で世界経済の荒波に船出しながら、基軸通貨ドルに従属するどころか、ドルをうまいこと利用する作戦を採ったのである。
 ドルを端緒とした世界恐慌の跫音が響き出した頃、中国は米ドル国債を手放す経済政策を行っていた。しかし、いつしか逆にドルの外貨準備を増やす方向に転換していたのだけれど、この方針転換時点が、ドルの供給量に応じて元を供給する「ドル本位制」の実質的スタートだったのだろう。中国とすれば、これによってドルの裏付を確保しながら、08年9月に起こったリーマン・ショックによる国内金融不安を結果的にうまいこと乗り切ることができた。国内負債を帳消しできるハイパーインフレを誘起できたのである。
   《参照》  『中国バブル経済はアメリカに勝つ』 副島隆彦 (ビジネス社) 《前編》
            【ハイパーインフレーション】

 

 

【人民元による貿易決済圏】
 中国とのFTA締結後、人民元による貿易決済圏に半ば組み込まれた東南アジア諸国連合(ASEAN)は、南沙諸島を不当に占拠する中国に対して、一致結束して抗議できない。中国との取引で収益を上げる華僑資本が経済を担う各国は、中国との関係悪化を極端に恐れるのだ。(p.12)
 日本が各国と結ぶFTA(自由貿易協定)は、従来通りドル建てで構わない。
 日本にとって、交易、通貨、軍事は、まったく別のものだけれど、
 中国にとって、交易、通貨、軍事は、当然の如く一連のものである。
 日本は、欧米発の世界経済に後入りで参加した極東の島国発想だけれど、中国は、さらなる後入りであれ文字通り中華思想の国である。ジャブジャブ供給されたドルを裏付けとして、ジャブジャブ発行した人民元で、AIIB(アジアインフラ投資銀行)を創設し、一帯一路構想をぶち上げ、周辺諸国を取り込んでゆくというスゴ技。
 しかし、中国人民元は、実体経済から大きく遊離して膨張している通貨であることに、間違いはなく、貿易黒字が減り、マイナス成長になり、外貨準備高(ドル)が減った場合、遊離した膨張分を埋め合わせる手立てはない。
 とわいえ、このような状況は、ドルもユーロも人民元もみな同じようなもの。それぞれにビッグマウスで何らかの開発構想をブチ上げつつ、相互に資金を提供しあって、見せかけの信用乗数(中央銀行の通貨発行量「1」に対する、巷のおカネの増加量)を高く維持することで爆裂を先延ばしにしてゆくのだろう。

 

 

【AIIB(アジアインフラ投資銀行)】
 中国は当初から資本金の50%出資を表明し、今後出資国が増えても40%以上のシェアを維持する構えだ。総裁は元政府高官、本部も北京。主要言語は中国語。AIIBは中国財政省というよりも、同省を支配する党中央の意志に左右されるだろう。今後、何が起きるか、火を見るよりも明らかだ。
 例えば、党中央が必要と判断したら、北朝鮮のAIIB加盟がただちに決まり、同国向け融資が行われ、日本の経済制裁は事実上無力化するだろう。(p.168)
 アメリカが、IMFを使って同盟国をいいように活用してきたのと同じことを、中国はAIIBを使ってアジア圏をいいように活用しようとする。そういうこと。
 北朝鮮に関していえば、現在、戦争誘発の策動をしているのは、下記リンクにあるようにアメリカ(CIA)である。
   《参照》  『嘘だらけ世界経済』 ベンジャミン・フルフォード×板垣英憲 (ヒカルランド) 《後編》
            【「闇の支配者」の残党たち】
   《参照》  『悪魔の情報戦争』 浜田和幸  ビジネス社
            【朝鮮半島をめぐるアメリカの利権構造と、ここでも貢君国家の日本】

 中国が戦争を望まないという意志であるなら、アメリカとその同盟国が主導する北朝鮮経済制裁に対する、中国歩調合せ要求は、見え透いた茶番劇に過ぎない。
 AIIBは同経済圏に必要な資金を提供することになっているが、当面の資金需要の76%は中国発である。習政権は自国単独では限界にきた国際金融市場からの資金調達を、多国間機関名義にしようとする。(p.175)
 中国は、北朝鮮も人民元経済圏に取り込むことで、中国経済を拡大し爆裂を防ぎたいだけだろう。
 アメリカは、同盟国から軍需品購入という名目でカツアゲして自国の軍需産業に利益をもたらしつつ、中国経済を追い込むために、北朝鮮を悪ガキ役として活用しているのである。
 あるいは、下記リンクにからむ理由かもしれない。
   《参照》  『神国日本八つ裂きの超シナリオ』 菅沼光弘×飛鳥昭雄×ベンジャミン・フルフォード (ヒカルランド
            【新興タックスヘイブン国】

 であるなら、①と➁の2通りが考えられる。
 ①「闇vs闇(ドルvsユーロ)の内紛」 
 即ち、サウジアラビア一斉逮捕に対する、ロックフェラーの残党によるロスチャイルドへの報復。
 ➁「光vs闇」 即ち、光の勢力による、ロスチャイルド資金封じ。
 あるいは、「ハルマゲドンへ向けての、闇による計画的序章」。 
 イギリスの参加は、ロンドンが取り仕切る国際金融界が中国の野心の後を押し、その上がりで儲けようという強欲主義そのものだ。それは戦前、ナチスにカネを流した国際金融界の姿とダブル。イギリスはお得意さんの中国のAIIB参加要請に応えたのだろうが、国際金融界はリスクに応じて高い金利を要求するだろう。(p.178-179)
 欧(ユーロ)・米(ドル)・中(人民元)。
 いずれが勝ち残るのか、はたまた、いずれでもない結末になるのか。
 こんなに面白い未来予測状況は、今この時代を生きているのでない限り、遭遇できないことである。

 

 

【人民元のSDR化】
 中国は、国際通貨基金(IMF)が発行する計算上の通貨SDR(「特別引出権」と訳される)の構成通貨への人民元組み込みを工作している。もし認められると、人民元は円を抜いて、ドル、ユーロに次ぐ世界3大国際通貨に数えられるようになり、世界各国政府の公的準備資産として採用される。すると、中国はマネーパワーをさらに発揮しやすくなる。(p.47)
 本書は2015年5月初版なので、こう書かれているけれど、2016年10月に、人民元のSDR構成通貨入りが決定されているから、現在はAIIB融資と一帯一路構想に、ターボが付いたような状態になっている。
 先にドル建てで融資を受けていた借入国も、人民元のSDR化に伴って、人民元建てにすることを了承すれば、中国依存から抜け出ることはできなくなるだろう。

 

 

【ボーテン・ゴールデン・シティ】
 02年に、ラオス国内(中国との国境付近)にできた、中国資本による経済特区のこと。
 中国企業がラオスから基本30年、60年延長付きで租借した「中国人租界」で、21㎢の特区内の通貨は人民元、公用語は中国語、時間も北京標準時である。
 特区の中心にあるのは、ラスベガスをまねてつくられた中国系のカジノホテルで、・・・中略・・・客の大半は中国人。賭博用チップは人民元でしか買えない。(p.59)
 中国国内で賭博はご法度らしいから、ラオスの租界でこれを計画したのは、人民元商圏の拡大と共に、国外人民元の吸い上げと、麻薬生産地帯として有名なラオスに跨るゴールデン・トライアングルから上がる麻薬資金洗浄(マネー・ロンダリング)が目的で造られたのだろう。中国はカジノの活用法を、間違いなくアメリカから学んだのである。
 しかし、この人民元舞うカジノの光景も、今はなりをひそめている。11年にラオス政府がカジノを閉鎖。中国人客が激減したためだ。
 それでもボーテンのようなカジノホテルは、ミャンマーの中国国境地帯にも建設されて中国化が進んでいるし、歴史的に中国への警戒心が強いベトナムですら、ジワジワと人民元が浸透している。(p.59)
 08年のリーマンショックで、カジノにつぎ込めるような羽振りのいい客が激減したということらしい。
 麻薬利権を侵犯する中国ビジネスに、アメリカが横槍を入れたのかもしれない。
 ラオス政府が、付近一帯の風紀紊乱を恐れ、糺したかったのかもしれない。
 ボーテンは今、リゾート地としての再開発が行われているとか。

 

 

【香港という資金ポータル】
 香港の通貨、香港ドルは固定レートによって米ドルと置き換えられる国際通貨である。中国は香港で人民元を香港ドルに容易に交換できる。つまり、人民元は香港ドルを媒介して米ドルに化けることができるのだ。・・・中略・・・。香港を拠点にすれば、人民元の自由な流通ネットが形成でき、北京の資本規制も形骸化される。こうして人民元は、香港という舞台で米ドルの裏付けを持った国際通貨としての衣装を身につけてきたのである。(p.64-65)
 北京で資本規制といいながら、一国二制度によって共産党幹部による桁外れな不正蓄財資金海外持ち出しも、香港をポータルにすれば自由にできるのだから、表向きと裏の実態の乖離はいかにも中国そのものである。
 これに係わって、香港を重要な拠点としているHSBCが果たしている暗黙の役割に思いをはせると面白いけれど、結局のところ中国経済のマッチポンプを操作しうるのはここだろう。
    《参照》   『次元「超」突破』 エハン・デラヴィ×中丸薫 (ヒカルランド) 《前編》
              【香港上海銀行(HSBC)本部】