《前編》 より

 

【中国の大気汚染が深刻になった大きな要因は・・・】

 じつは日本が円借款を打ち切ったことにある。06年、当時の小泉純一郎首相が新規の円借款を08年で打ち切る決定をしたことが、中国の環境対策に大きなダメージを与えたのだ。(p.80)
 公害防除設備費用を提供する中央の特別枠の財源は円借款だった。
 世界の車市場は、今年からEV(電気自動車)に急速にシフトする様相を見せている。であるなら、中国は車に限らず、太陽光発電にも大いに傾注することだろう。
 実際のところ、海運の値段が下がっているにもかかわらず、輸出用ソーラパネル関連の資材は高騰しているのだという。日本は、太陽光エネルギー活用技術において、数十年前に既に完成レベルに達していたらしいけれど、原発や化石燃料の利権をもつ「闇の支配者」たちによって、幾らでもあるソーラーパネル製造原料であるシリコン鉱石の国際価格が意図的に釣り上げられてきたという経緯がある。
 しかし、中国は日米から盗み取ったソーラーパネル技術を使って、お得意のマスプロダクツ(大量生産)で、競争力のある太陽光パネルを量産することだろう。日本はいつまで封じ込められ続けるのだろうか。
  《参照》  『日本よ!今地球運命の最低値からこう脱出せよ』 高島&ウイリアム
           【タイプ0からタイプ1へ】
           【日本はヘタをすると、中国の後塵を拝することになる】

 

【米中経済モデルの類似点と相違点】
 共産党が市場経済をコントロールする中国の経済モデルは、・・・中略・・・、借金主導という点ではアメリカと同じである。アメリカと中国とでは借金の担い手は異なるものの、それを可能にする仕掛けは共通している。不動産相場である。(p.86-87)
 アメリカの場合は、住宅相場の値上がり分を担保にして、消費者が金融機関から借り入れる。
   《参照》  『嘘だらけ世界経済』 ベンジャミン・フルフォード×板垣英憲 (ヒカルランド) 《前編》
            【レバレッジ100倍で、行き着いた先】

 中国の場合は、不動産デベロッパーや地方政府の受け皿が、不動産相場の値上がり益を先取りして、年利回り10%前後の理財商品をシャドーバンク経由で消費者に販売して資金を調達してきた。
   《参照》  『破綻する中国、繁栄する日本』 長谷川慶太郎 (実業之日本社) 《前編》
            【シャドーバンキング倒産】

 完璧な共通点は、「どっちも正気の沙汰ではない」ということ。

 

【熱銭(投機資金)の正体】
 熱銭の正体は、ほとんどが中国系である。中国系資本が香港を足場にバハマ諸島など租税回避地(タックスヘイブン)にペーパーカンパニーをつくって、巨額の資金を持ち出す。外資を装って不動産を中心に本土に投資し、市況をつくり上げてボロ儲けする。(p.104)
 このような八百長手法によって資金が巡っているからこそ、中国の信用乗数は異様に高くなるのだろう。
 アウトロー経済運用“場所”において、“西(洋)の八百長大横綱”が米・ウォール街とすれば、“東(洋)の八百長大横綱”は、香港の資金ポータルを活用する中国系資本である。(中国系資本に、このような手口を指南したのは、HSBCのルーツであるシティ、ないし、ウォール街だろう)
 しかしながら、CDS(倒産保険)まで活用して焼け太りを繰り返しているウォール街は、その徹底した制度活用術において、番付上、“西”ではなく“東の八百長正横綱”が相応しい。
 熱銭にしても、資本取引規制のおかげでこの程度の規模で済んでいるが、自由な資本取引が合法化すれば、外国の投機的な投資ファンドも加わって数倍、数十倍には膨れ上がるだろう。
 まさにマルクス主義で言う「量的変化が質的転換をうながす」ことになるのだが、中国は人民元の自由変動に耐えられるかどうか。(p.109)

 

【華為技研(ファーウェイ)】
 交換機中古品の行商から立ち上がって、瞬く間に高度技術の通信機器の世界的巨人になった同社には、資金、技術、人材を中心に、党・軍・政府からの大がかりな支援があると米側は以前から疑ってきた。日米欧の情報通信機器メーカーが100年近い歳月をかけ、莫大な研究開発資金を投じて営々と築き上げてきたハイテクを、交換機中古品のブローカーが短期間でものにして、世界最大手級の市場シェアを獲得できるはずがないと、誰もがいぶかしむ。国家総揚げのバックアップがなければ、不可能だとみるのが自然だ。
 米下院情報特別委員会は、・・・中略・・・疑惑を強める報告書をまとめ、米通信機器市場からの華為締め出しを導いた。
 党指令のもとに解放軍、政府と企業が一体となり、強大で高度かつ複雑な中国のサイバー戦闘能力は、衰えることがない。・・・中略・・・。
 業を煮やした米司法省は14年5月19日、サイバースパイの容疑で、中国軍の「61398部隊」所属の5人を起訴、顔写真付きで指名手配した。・・・中略・・・。米産業の虎の子である原発や、太陽光パネルの重要技術が盗まれた。(p.151-153)
 日本企業に対しても、毎月800件近いサイバー攻撃が発生していると書かれている。ネットを利用して重要技術を盗むことさえできてしまえば、華為(中国)にとっては実に大きな成果である。
 大手の日本の電子・光学機器メーカーら5社が同じ設計会社に試作品を発注したら、その技術がごっそりコピーされ、深圳の中国企業に流出し、製品が香港に出回っていたという。で、技術を盗まれた日本企業はどうしたのかというと、中国市場でのビジネスが不利になると思い、泣き寝入りしているのだという。
 中国の情報通信技術は、このようにして短期間で長足の進歩を遂げてきたのである。
   《参照》  『日本はドラゴニアンが作った世界最強の神州! だから、破滅の淵から這い上がる』 高山長房
            【ロジックボム】

 

【中国政府の通達】
 2015年3月に、世界の情報通信システム業界に向けて発せられた内容。
・中国政府は15日までに、中国の銀行にコンピューター機器や技術を販売する企業は、独自のソースコードや暗号化キーの利用を止め、中国の技術を採り入れたうえ、同国当局の厳格な検査を受ける必要があると通告した。
・世界的なIT企業各社は、中国市場へのアクセス確保の見返りに独自のIT情報を開示するか、中国企業と合弁会社を設立するか、中国市場向け専用の製品やサービスを提供するか、もしくは撤退するか迫られる。(p.155-156)
 「なんちゅうか、本中華」丸出し。

 

【日中の研究機関の提携】

 上記のような中国政府通達以前から、日中の研究機関は、様々な分野で提携しているのだという。
 理化学研究所(理研)と独立行政法人の情報通信研究機構(NIST)は、中国人民解放軍系の研究機関と連携している。レーザー破壊兵器において極めて重要となる3D画像技術を含んでいるという。他にも
 東大医科学研究所は、中国科学院微生物研究所と分子生物学や分子免疫学で協力しているし、独立行政法人の物質・材料研究機構は、中国科学院大連化学物理研究所と燃料電池の共同研究に取り組んでいる。民生用に見えるが、中国側は随時、日本の技術研究成果を軍事用に生かすだろう。
 中国は対米サイバー攻撃の激化にみられるように、習近平体制のもとで、・・・中略・・・、取るべきものを最大限取っていく路線に転じた。防御しない日本の研究機関は絶好の標的なのだ。(p.160)
 日本は、「友好」かぶれのお人好し過ぎるのか、極め付きのアホなのか、単なる売国機関連中なのか、はたまた、日本の防衛技術は人民解放軍の予想を遥かに超えて進化しているという自負があってやっているのか、なんだかよく分からない。

 

【新次元の・・・】
 アジアインフラ投資銀行(AIIB)、そして人民元のSDR通貨化の策謀は、新次元の日米同盟、日米協調に踏み出す機会ととらえるべきなのだ。(p.206)
 これが本書のクロージングセンテンス。
 これを読んで、最後に、“コテッ”って感じで、コケてしまった。
 新次元という言葉を用いながら、何でこんな従来型のパターンに落とし込む結論なのか。
 地球進化が加速する今この時代における枢要なテーマは、国家も個人も“自立”である。
   《参照》  『シャンバラからの超レッスン』 ベガサス (ヒカルランド) 《後編》
            【これからの時代に必要なもの:自立】

 

<了>