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 あんまり興味はないけれど、ジャンルを変えようと、この本を手にしただけ。2004年4月初版。

 

 

【イラクをめぐって日本をカモるアメリカ】
 (1970~80年代にかけて)日本では政府の経済援助もあり、民間企業の対イラク経済投資の実行、あるいは投資を保証する貿易保険などをかけて、これまで総金額1兆円近くをイラクに投資してきた。これは、世界中で最も大きい額である。2番目のロシアで、だいたい3000億円くらい。(p.55)
 しかし、イラン・イラク戦争や湾岸戦争が勃発して、日本などが提供した物資やサービスに対するイラクの支払いが滞ったままになっていた。このような状況下で、イラクで産出する石油の利権を抑えるために、
 アメリカは各国に対しイラクへの債権放棄という圧力をかけてきた。
 しかし、フランスやドイツ、ロシアは、そういったアメリカの圧力に対してノーと答えた。(p.56)
 ところが、2003年末に来日したベーカー国務長官に
 「ヨーロッパ各国はイラクへの債権放棄を納得してくれた。日本の自衛隊は大歓迎だが、やはり経済大国として、まずはイラクへの債権放棄をしてもらえないか」 と言われ、「他国が債権放棄をするのであれば、わが国も前向きに検討する」 と小泉総理は返事をしてしまった。
 ブッシュ政権からすると 「日本は騙しやすい」 という感じを持ってしまったのではないか。これで1兆円はパー。さらに日本は、ODAを含め50億ドルを投入し、イラクを支援するとも約束してしまった。これほど大盤振る舞いをしている国はわが国をおいて他にはない。・・・中略・・・。とにかく 「人出せ、金出せ、借金は忘れろ」 と、アメリカの言うなりなのである。 (p.58)
 小泉元総理については、大学時代に起こしたレイプ事件の弱味を握られているという内容が記述(p.172-176)されている。著者はその内容について真偽のほどを判定していないけれど、いずれにせよアメリカにとって小泉元首相ほど使い勝手の良い政治家はいないらしい。
    《参照》   『西武を潰した総会屋 芳賀龍臥』  平井康嗣  WAVE出版

 

 

【朝鮮半島をめぐるアメリカの利権構造と、ここでも貢君国家の日本】
 ブッシュ大統領の 「悪の枢軸国」 演説を聞いて、真っ先に反応したのは、父親のブッシュ元大統領であった。息子に向かって 「・・・中略・・・。私が最高顧問を務める金融投資会社は韓国に20億ドル以上の投資をしている。お前が北朝鮮は信用できない、と言うたびに、韓国の株価が下がり、わが社は大きな損害を受ける」 と諭したという。ここでいう金融投資会社とは 「カーライル」 のことである。(p.119-120)
   《参照》   『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた (下)』 ヴィクター・ソーン  徳間書店
              【カーライル・グループ】
 北朝鮮に対しては、原子力発電所計画に国防長官のラムズフェルドが、核関連機材の輸出でヒラリー・クリントンが関与していた。
 (ラムズフェルドは)国防長官に指名される前まで、スイスに本拠を構える原発メーカー最大手ABBの取締役を務めていた。・・・中略・・・。北朝鮮が核開発をストップする見返りとしてアメリカは北朝鮮に軽水炉を提供することになった。総額40億ドルを超えるビック・プロジェクトである。・・・中略・・・。ラムズフェルド氏を経由してスイスの企業に発注されたのである。
 KEDO(北朝鮮の原子力発電施設)の資金は、日本と韓国の政府系金融機関が中心となって負担しているにも関わらず、欧米の企業がボロ儲けする仕組みの中で、ラムズフェルドやイギリスのブレア首相は巨額のリベートを手にしたといわれる。ここでも、わが国の役割が 「金づる」 というだけであり、実に情けないとしかいいようがない。 (p.121-122)
 北朝鮮向けの非合法な核関連機材の輸出に関わっていたことで、彼女(ヒラリー・クリントン)はシカゴの連邦地方裁判所で訴訟を起こされていながら、いかなる釈明もしていないことには唖然とさせられる。(p.115)
 アメリカ政府を構成する主要人物は、特定企業の代理人である。こんなことは常識以前である。なのだから、アメリカのメディアが日本に配信する情報を鵜呑みにすることほどバカげたことはない。政治に正義を当て嵌めることは100%無意味である。
   《参照》   『戦争を企画する者たち』
 情報が価値を持つのはビジネスにリンクしているから。しかし、情報化社会といわれる今日、意図的に誤情報を流して、本当のところを隠ぺいする情報操作方法が多用されている。腹黒い欲望の上で動いている国際政治が、クリーンになることなどありえない。

 

 

【良き情報とて操作される】
 日本テレビの 「知ってるつもり」 という番組で、お蔵入りさせられた情報操作。
 ニューヨークの街頭で暴漢に襲われたエジソンを助けた柔道の達人である彼のボディーガード、エジソン電球をニューヨークで一番多く売りさばいたトップセールスマンなど・・・いずれも、20代の日本の若者であった、というものである。
 ちなみに、このトップセールスマンは岩垂邦彦さんという人で、当時・・・中略・・・エジソンの会社の重役となり、後に日本へ帰国して新会社を立ち上げた。それが今日のNEC(日本電気)なのである。(p.144)
 なぜ、この番組がお蔵入りしたのかというと、番組の一番のスポンサーが東芝だったから。
 戦争を誘発するために仕組まれた情報操作ほど悪しきものはないけれど、良き情報とて、企業社会では日の目を見る機会を奪われるという実例。

 

 

【日本人のメンタリティー】
 日本はアメリカに騙され、翻弄されている。ところが日本では、そういった事実を平気で放置しているのである。その根底には、「騙されるほうが人間として優れている」 といった特有の思想があるのではないか。結局、日本人は、「騙すより騙されろ」 といった一種屈折した理屈で自己正当化する傾向が強いのである。(p.182)
 「自らは図らはず」 という日本人のメンタリティー。神仏なるものの配慮を信頼しているのだろう。国民は役人を神仏なるものの代替に想定しても、今日の日本の主要な部署に配されている役人の多くは、"機神界の存在でありながら神的に振る舞うアメリカ" の下僕である。
 「自らは図らはず」 という日本人のメンタリティーが、長期的には正しいものであると確信していても、現時点の日本国民は、搾取され窮乏しつつある。
 
<了>

 

  浜田和幸・著の読書記録

     『悪魔の情報戦争』

     『チャイナ・コントロール』