《前編》 より
 

 

【「ポリティカリー・コレクト(PC)運動」の影響】
 1982年のカリフォルニア州知事選挙の時のこと。
 実際は白人候補に投票した有権者が多かったのに、出口調査では黒人候補に投票したと答えた人が多かったのだ。つまり、黒人差別者と見られたくないばかりに実際の投票とは異なる回答をした有権者が少なくなかったのではないか、ということだ。(p.93-94)
 アメリカ社会において、PCは基本として外せない考え方だけれど、やはり建前として用いられる場合だって多い。人種や性差に伴う差別は、隠然として盤石である。
             【黒人との結婚】
 トヨタ車がPCで浮上したのは、ユーザーにとって経済性という実利があったから。
   《参照》   『「レクサス」が一番になった理由』 ボブ・スリーヴァ 小学館

             ● PCとはパソコンのことではない(p.42)

 

 

【人種差別の現状】
 サンフランシスコ・ジャイアンツのバリー・ボンズは、01年に白人のマーク・マグワイア(セントルイス・カージナルス)の年間本塁打記録を更新したが、その記録がかかった数ヶ月前から脅迫状が殺到し、恐ろしい日々を過ごしていたという。あのスーパースターのボンズでさえ、このような仕打ちを受けるのである。(p.172)
 脅迫状を送り付けるようなヘンな奴もいただろうけど、新記録に惜しみない賞賛を送った人々の方が遥かに多かったはずである。差別感情の強い人は、どの国にもいつの時代にも必ずいる。

 

 

【トレーラー・トラッシュとクラッシー・ピープル】
 白人貧困者の多くがトレーラーに住んでいることから、“ホワイト・トラッシュ(白人のクズ)”をもじって“トレーラー・トラッシュ(トレーラーのクズ)”という侮蔑語が生まれた。(p.182)
 イギリスの状況を少し調べてみた。すると面白いことに、イギリスのトレーラー生活者はクズではなく“クラッシー・ピープル(素敵な人々)”と呼ばれていることがわかった。(p.183)
 日本にも「勝ち組」「負け組」という相対的侮蔑語があるけれど、さすがに「負け組」を「クズ」とまでは言わない。クラッシー・ピープルは、いかんせん、無理。
   《参照》   『連鎖する大暴落』 副島隆彦 (徳間書店)

             【アメリカの家なき人々】

 アメリカでは行きすぎた競争主義や物質主義がはびこり、人々は常に“あざけりの対象”を探し、適当にうさ晴らしをしないとやっていけないようなところがある。
 しかも70年代に始まったポリティカリー・コレクト運動によって、“ニガー”“ジャップ”などの差別用語を公然と使えなくなった。そこで人々は日頃の鬱憤を思い切りぶつけられる対象として、トレーラー生活者を選んだのかもしれない。(p.184)

 

 

【アメリカの傲慢】
 一般的に偉そうな人が多いのは確かなように思う。理由はいくつか考えられるが、最も大きいのは、外国の文化や言葉に対する無知と無関心であろう。
 アメリカ人の多くは、外国へ行っても現地の人々が英語を話すのが当たり前のように考え、その国の言葉を学ぼうとしないし、文化にもあまり関心を持たない。そして彼らは、アメリカ流の生活スタイルや価値観で行動し、現地の人々にもそれを押しつけようとする。それが傲慢に見えるのである。(p.213)
   《参照》   『英語コンプレックス脱出』 中島義道  NTT出版 (後編)

             【国際的ではない都市:ニューヨーク】

 アメリカ人の傲慢さは、今や世界中で使われているインターネットにも現われている。アメリカ人のEメールアドレスには、なぜか国コードが付いていないのだ。(p.215)
 アメリカ人の心理と行動に詳しいマイケル・キメル教授(ニューヨーク州立大学)に尋ねると、こう説明してくれた。
 「アメリカ人は世界で圧倒的なパワーをもつので、国コードをつけなくてもほかの国の人々はわかると思っているのでしょう。 ・・・(中略)・・・。アメリカ人からすると、ほかの国々はすべて“アザー”(向こう側)の存在なので、国コードをつける必要があると考えるのです」(p.216)
 さいでっか。
   《参照》   『世界が読めるジョーク集』 古歩道フルフォード・ベンジャミン (あ・うん)

             【アメリカ独尊】

 

 

<了>