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 3年半ほど前に書かれた著作だけれど、増税論者らしき野田首相に変わったので読んでみた。通読して見えてくるのは、官僚によって腐敗しきっている日本の姿である。2008年4月初版。

 

 

【 国債は 「税金手形」 】
 国債というのは、アダム・スミスによれば 「税金手形」 debt note  であり、かたちを変えた税金なのである。つまり、日本国民はすでに国債というかたちで税金を徴収されているのである。(p.20)
 一般の人々の中には、「東日本大震災の復興資金を捻出するために増税(消費税率アップ)もやむを得ない」 と言われれば 「しかたがない」 と言う人もいるのだろうけれど、「現在の閉そく状況で増税なんて絶対にあり得ない」 と言う人も同等以上に存在することだろう。
 そこで 「増税しない代わりに国債で・・・」 という話が出て来るのだけれど、リスクを先送りする 「税金手形」 として既に発行されてきた日本の国債は、欧米に比べ、対GDP比で異常に高くなっている。
 地方を含む日本全体の債務残高の総額は、2008年4月2日現在で、約1193兆245億円である。これは名目GDP(517兆円)の約2倍である。これが3倍になるともはや手の打ちようがなく、完全にデフォールトであろう。(p.215)
 国債を等しく国民が徴収される税金と見れば、その額からいって、消費税の2倍以上である。つまり、日本国の消費税は、すでに15%を突破して20%に迫っているといってよいのだ。(p.20)
 英国の債務残高は、対GDP比で3分の1だと書かれている。
 他国に例を見出せないほど異様な発行額に達している日本国債を消費税として換算すると、上述のように既に欧米並みの消費税率に達しているのである。(債務残高の対GDP比の2倍~3倍は、消費税率換算で10%~15%になる。故に、消費税率は、現行の5%にそれらが加算された15%~20%と看做すことが出来る)
 消費税率が高くても国債依存が少ないならまだましである。日本は、それが逆だからとんでもなく危険なのである。

 

 

【「平和」であっても戦争経済状態の日本】
 (アダム・スミスは)国債は禁じ手であり、増税も戒めている。
 ・・・(中略)・・・ 。それ(国債発行)は戦争が続いている間 during the war だけの特異なこと extraordinary としている。 ・・・(中略)・・・ この国の実像は 「戦時下」 と考えるのが正しい判断だろう。であれば、やがて敗戦 defeat が訪れるのは必至なのである。(p.37)
 日米同盟という名のもとに、世界中で暴れまわっていたアメリカの戦費を、日本国債で賄ってきたと看做しうる状況は確かにあった。日米の腐れ縁が重くのしかかっているといえるけれど、国費の無駄遣いはこれだけではない。官僚たちが隠し持っている国費横領としての埋蔵金を放置したまま、増税や国債発行を語るのも大層空しいことなのである。
   《参照》   『新たなる金融危機に向かう世界』 副島隆彦 (徳間書店) 《後編》
             【日本の将来を潰した者達】

 

 

【所得税率】
 モナコは所得税ゼロ、スイスは最高税率が11.5%である。
 また、ロシアは驚く劇ことに最高税率などというものはなく、すべての所得者が同じ税率の13%である。 ・・・(中略)・・・ 。
 したがって、このグローバル経済においては、所得税を高くすることは自殺行為にも等しい。それなのに、日本はこの流れに1人で逆らっている。(p.45-46)
 お金のある人々ほど所得税率に敏感である。お金持ちは所得税率いかんによって容易に国境を跨いでしまう。
 連邦国家アメリカでは、所得税がない州もあるのである。
   《参照》   『ボストンで暮らして』 久野揚子 大和書房
             【ボストンには所得税がない】

 日本の所得税の最高税率は40%で世界一ではないけれど、これに10%の地方税を合算考慮すると、世界一の所得税率になるという。だから、リッチな日本人の皆さんは本気で資産防衛策をこうじている。
   《参照》   『ニュー・リッチの王国』  臼井宥文&編集部  光文社 《後編》
              【PT志向】

 また、「課税最低限」 の額は、日本が325万円なのに対し、アメリカ401万円で、他の欧米諸国はもっと大きいという。つまり、日本ほど低所得者から所得を奪っている国はないのである。
 日本という国家は、豊かな人からもそうでない人からも容赦なく税金を取るのである。重税国家というより酷税国家と言う方が相応しい。しかも、先に見てきたように 「税金手形」 としての税金の将来先送り(国債発行)額まで、圧倒的に抜きん出ているのである。

 

 

【法人税率】
 個人にとっての所得税率と同様に、企業にとっての法人税率が高いことは周知のことであるけれど、
 法人の実効税率がいくら高いからといっても、控除・優遇措置が多ければ、法人税自体の税率だけでは、国際的に高いとは言いがたいのである。
  ・・・(中略)・・・ 。
 こうした優遇措置がざっと7種類あり、これを考慮すると、日本の法人税率はそれほどでもないのである。(p.50-51)
 そうはいっても、海外で得た収益を、わざわざ日本に持ち込んで法人税を払ってくれるような企業なんてありえないだろう。トヨタやソニーなどの大企業は、海外収益を直接海外で投資しているという。企業とすればそれが当たり前である。
 だから、既にグローバル化しきっている大企業からなる経団連(財界)は、増税を容認するのである。ダイレクトに法人税率が経営に響くのは日本を拠点としている中小企業だけである。
   《参照》   『最強国家ニッポンの設計図』 大前研一  小学館  《後編》
              【法人税率】

 

 

【「国民皆年金」制度】
 日本の年金は諸外国にも例のない 「国民皆年金」 である。 ・・・(中略)・・・ 。この皆年金制度は、太平洋戦争中に 「戦費調達」 collection of war cost から始まった制度だった。(p.101)
 国民に保険料を払わせておいて、「言ってこなければ年金は払わない」 というのも戦費なのだから当然と言えば当然だ。(p.131)
 日本という国家は、国民の将来を考えて 「福祉政策」 として 「国民皆年金」 を実施していた訳ではないのである。
 2008年当時、メディアによって伝えられ、日本国民の怒髪天を突かせた社会保険庁のあまりにも杜撰な年金の扱いは、このような成立ちを知ることで、ある程度納得できるだろう。
 第二次大戦時に、戦費調達として用いられた 「戦時国債」 は、敗戦にともなう国家破産によって実際に紙屑となったのである。だから、 「戦時国債」 同様、戦費調達として開始された 「国民年金」 も、畢竟するに国家破産によって紙屑となるのである。
 ここで言いたいのは、国は信用 trust できないということである。それがたとえ選挙 election で選ばれた議員 lawmakers がコントロールする民主国家であろうと、権力は必ず腐敗 become corruptするからである。とくに、選挙という信認を経なくてもいい官僚となれば、必ず腐敗していく。(p.135-136)
 国家(議員や天下り既得権をもつ官僚)が行う法整備というのは、したたかにズルイものなのである。
 検察庁と財務省がリンクした公設暴力団(警察)が行っているズルイ法整備例を下記に示しておこう。
   《参照》   『日本が潰してはいけない会社』 立川昭吾 (青志社)
             【日本でパチンコ屋は上場できない理由】

 

 

【日本国家の二重帳簿】
 国家財政が二重帳簿になっているなどあってはならないことで、本来、国家経営は単一会計が大前提でなければならない。
 いくら 「財源法」 で認められているといっても、裏帳簿である特別会計が表帳簿である一般会計の約5倍もあるなどとは異常である。(p.175)
 裏帳簿を使っている特別行政法人というのは、みな天下りの牙城である。奸智に長けた官僚達によって日本がどれほど酷い国になってしまっているか、よくよく認識しておくべきである。
   《参照》   『小沢革命政権で日本を救え』 副島隆彦・佐藤優 (日本文芸社)
             【亀井静香】