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 私欲を排して気高く生きている経営者や、企業の背後にある文化など、守らねばならない人や企業に係わった13の実例が記述されている。感動してしまうケースが少なくない。巷に氾濫しているくだらない小説などより、遥かに素晴らしい内容の読み物である。2010年8月初版。

 

 

【一行取引】
 地方企業の場合は、地元のナンバーワン銀行のみと付き合う 「一行取引」 を行っている会社が多い。「うちは○○銀行さんと先代のときから付き合っている」 というステイタスと安心感があるからだ。ところが、これが企業にとっては足かせになる場合も多い。銀行側から見れば、ライバル行のない顧客だから金利を高くしていくことができるというメリットがある。なぜなら、これまで他行との付き合いがないのだから、メインバンクを変えることなど現実性として不可能になる。だから一行取引は慎重にしなければならない。(p.32)
 付き合いが長いのに金利を高くしている、という事実にビックリするけれど、商売なんてこんなものである。
 私の地元に長年君臨してきたミツウロコというガス屋は、数十年間、競争がなかったから恣に高値で支配してきた。新規参入してきた業者の5割増し単価で貪ってきたのである。長年の付き合いを大切にする実直な人々は、こうして餌食にされ続けるのである。

 

 

【「簿価」と「実高(実地棚卸高)」の乖離】
 会社としては資産項目を大きくするために在庫を乗せておきたい。だから多くの会社は、処分しなければならない 「死に筋商品」 であっても在庫を抱える。そのロス率を分析するのは手間のいる作業だが、それを怠ると一見健康そうに見えて、検査をしてみたら内臓がボロボロという状態を見すごしてしまう。(p.50)
 資産勘定の在庫は納税時にも負担になっているはずだけれど、放置しておくと再生が不可能になってしまう。 トヨタのような大企業だって、その危険性を重々承知しているから 「ジャスト・イン・タイム方式」 をとっているのである。
 ましてや、一発勝負をあてこんで多量の在庫を抱えるようでは、とうてい健全な経営とは言えない。それは投資ではなく、投機である。

 

 

【早めのSOS、早めの決断】
 バブル崩壊で30億の負債を抱えてしまった日本の伝統文化を具現する高級料亭旅館の例。
 相談に来るのがあと二カ月遅ければどうなっていただろうか、それは私にもわからない。しかし、ポイントは、経営者母子が 「不動産流動化」 をわずか数日で決意したことだった。前述の通り、「土地を手放すことは一族の恥」 と言ってはばからない旅館経営者が多いなか、「死んで楽になるよりも、生きて頑張りつづける道を選ぼう」 と誓い合った母子に賛辞を送りたい。(p.69)
 著者のような再生請負人であっても、そこへ再建依頼に来るのが遅すぎたり、唯一の再建方法に同意できなかったり、ということであればやはり道は閉ざされてしまう。

 

 

【老舗中の老舗 『ぎをん屋』 の再建】
 「京都では70年、80年は洟垂れ小僧。老舗と言えば100年を超えています。 ・・・(中略)・・・ だから、着物をなくすということは京都がなくなることです。日本がなくなることなんです。だから、私の代で潰すことはできません。私が持っている土地は全部売ってもかまいません。家は買えますが、会社は買えません」
 「伝統を残す」 「個人資産は捨てる」 という山本社長の信念のもと、私は再建準備に取りかかった。(p.77-78)
 個人資産をすべて売却し負債に充てても、まだ足りない。
 さらに私は 『ぎをん屋』 を贔屓にしてもらっていた歌舞伎俳優や女優の方々に窮状を話してまわり、資本増資に協力してもらった。 ・・・(中略)・・・ 金融機関が貸してくれない現状を打破するための常套手段である。もちろん、これまで 『ぎをん屋』 が培ってきた信用が為せるワザであることは言うまでもない。(p.81)
 銀行の協力を取り付けるまで、こうしてなんとか繋ぐことができた。
 日本文化の根幹を扱う老舗だったからできた特例なのだろう。

 

 

【金融機関からのとばっちり】
 信用金庫等は、専務派対常務派などといった派閥抗争が激しいところが多く、融資先がとばっちりを受ける場合がある。今回もその典型例だった。(p.118)
 そんなことで、会社が潰されるの!!! と素人の私は思いっ切りビックリしたから、ここだけ書き出しておいた。
 でも、まあ、落ち着いて振り返ってみれば、国政レベルでも、小泉・竹中政権時代に、改革派の標的とされて、選択的に潰された 「りそな」 や 「ミサワ・ホーム」 のような企業もあったわけである。
   《参照》   『売国者たちの末路』 副島隆彦・植草一秀 (祥伝社)
              【「小泉・竹中政治の闇」】

 

 

【不正経理マンの常套手段】
 仕訳伝票の貸方を 「利益準備金」 勘定科目(空勘定)、借方を 「現金」 科目に一度振り替えておいて、その後、月末等適当に 「利益準備金」 を別勘定科目に振り替える。そうすると月次試算表では誰にもわからずに資金を消滅させることができる。(p.120)
 経営者が、このような盗人の手口を知っていて、誰かにセカンドチェックさせれば防げるだろう。

 

 

【企業価値(事業価値)】
 一般的な企業価値(事業価値)の算出方法は、
 純資産+EBITDA(営業利益+減価償却費)×3~5(年) = 事業価値
 となる。いますぐ会社売却を考えていない経営者の方でも、 “自分の会社の値段” をアバウトに知っておくとよいだろう。(p.139-140)
 下記の書籍に書かれていた大前さんの算出方法より、項目が詳細な分、確からしく思える。
 唯一の正解があるものではないから、算出方法はコンサルタントによって異なるのだろう。
   《参照》   『考える技術』  大前研一  講談社   <前編>
             【企業の価値は、利益の8倍】

 

 

【パチンコ業界に韓国人経営者が多い理由】
 この理由を説明している記述に、初め出会った。
 パチンコ店は韓国人や中国人、あるいは暴力団関係者が経営するものと思っている人は少なくない。たしかに現在は、韓国人や中国人が経営する店は多いが、昔はそうではなく、日本人経営者が半数を占めていた。それがなぜ撤退していったかというと、経営努力を怠ったために落ちこぼれ、日本人経営者は淘汰されていったのだ。また暴力団関係者についても、組の資金源にさせないため、司法の力によってパチンコ業界から閉め出していった。その結果、ハングリーさとバイタリティの二つを備えた韓国人や中国人の店だけが生き残ったというわけである。(p.177)
 この記述と、下記の記述には関連性があるだろう。

 

 

【日本でパチンコ屋は上場できない理由】
 これも、その理由を知ってビックリである。
 じつは、公安や警察がパチンコ店に深く関わっているのが最大の理由なのだ。パチンコ店が公安や警察の “天下りの受け皿” になっているため、上場すると役人の名前なども公開しなければならなくなり、天下りの実態が世間にさらされてしまう。それはまずいので、当局の圧力で上場させないようにしている、というわけである。(p.185)
 ドッヒャー~~~って言う感じの理由である。
 ヤクザと警察幹部の腐れ縁は昔から良く知られていることである。そもそもヤクザの中に占める在日朝鮮人の比率は現在ほぼ5割近いはずである。ヤクザや在日の人々が必要とする特別な便宜に乗じて “天下る” 慣行が出来てきたのであろう。
 そうであれば、パチンコ業界から日本人が淘汰されたのは、在日の経営者たちが生き残るために、腹黒い公安や警察を利用しつつ、“天下る” 場所を提供してきたからと言えるのではないだろうか。
 経営努力とかバイタリティに関して黒白聖邪は不問というのであれば、確かに日本人より在日朝鮮人のそれらが勝っていたと言える。
 あるいは、警察という悪貨が、日本人経営者という良貨を駆逐してきたのである。

 

 

【ロンドンで上場】
 在日韓国人の金さんは篤志家で、大勢の人々の資金援助をおこなっていた。そんな篤志家の金さんが経営するパチンコ店の財務が悪化していた。そこで資金調達のために、日本市場でできないパチンコ屋の株式上場をロンドン市場で行った。
 「立川先生にお会いしてから、私は “常識” について何度も考えさせられました。業界の常識、財務の常識、そして在日韓国人の常識・・・・。どれをとっても先生は、常識を疑ってみることから始まっていました。その “脱常識” の経営学は、今後のプロムナード東京の発展に大きく寄与してくれることと思います」(p.191)
 いろいろ勉強し経験している人は、そうでない人よりも常識の範囲が広いのが普通である。常識の枠を広げる努力を継続していかないと、行き詰まってしまうし、ましてや突破口など見つからない。

 

 

【 “釜ヶ崎のマリア様” 】
 釜ヶ崎は、 「ドヤ街」 から 「福祉の街」 へゆるやかに変化している。この旗振り役のひとりである “釜ヶ崎のマリア様” を救えたのは、私の小さな誇りである。(p.219)
 この再建例も素晴らしい内容なので、興味のある方は、自分で買って読んでください。

 

 

<了>