《前編》 より

 

 

【日本国体を維持している憲法1条から8条】
佐藤 : 不完全な形ですけども、日本国体は現行憲法に引き継がれていると思います。ポイントは何かといったら、1条から8条です。そこで決められている日本の伝統。それはいろいろ変容するんですが、権力と権威を分けているんです。これは 『神皇正統記』 でも触れられている大切なポイントなんですが、そのシステムを現行憲法は保持している。そこは勝手に崩してはいけないのだと思います。
村上 : 自民党の憲法議論は極めて浅薄です。2世、3世の世襲議員たちによって安易に改正などすべきではない。国体観をしっかり持った人がじっくり腰を据えて、4、5年の時間をかけるべきです。(p.84)
 『神皇正統記』 を著したのは北畠親房。
 彼が属した南朝に縁の深い吉野の各地を訪れている対談者お二人の写真がいくつも掲載されている。

 

 

【社稷(しゃしょく)】
村上 : 社稷なんていう言葉は、今はほとんどの人が知らないでしょう。社稷というのは日本の古い国家概念で、もともとは中国の 『礼記』 にある言葉です。建国の時に天子、諸侯が壇を設けて祭った土地の神(社)と五穀(米・麦・粟・豆・黍もしくは稗)の神(稷)のことです。村が発展したような国家をイメージするといいですね。
 村上正邦さんという名前は、まさに社稷を中心として政(まつりごと)を行っていた村をそのまま発展させた正しい邦(国家)を造るべき使命を表わしているのだろう。
佐藤 : 権藤成卿によると、日本の在るべき姿は大化の改新より前にあるというのです。つまり、大陸の法律制度である律令制度を入れる前の日本を非常に重視しているのです。この頃はまさに我が国独自の 「社稷」 が外国の影響を受けることなく息づいていた。
 しかも、この権藤成卿に記した 『君民共治論』 が面白いんです。 ・・・(中略)・・・ 。だから我々も、少し近過去の歴史、権藤成卿であるとか、あるいは大川周明、あるいは北一輝もそうだし、さらには文部省がまとめた 『国体の本義』 もそうです、こうしたものを、虚心坦懐にもう一回読み込むという作業が、私は凄く重要だと思うんですよ。(p.102-103)
 戦後民主主義は、社稷を中心に行われていた政(まつりごと)の本質を、ほぼ完全に奪い去ったといえるだろう。世界維新という枠組みの中で、そろそろ本質を取り戻すべき時が近づいている。
   《参照》   『2012年へのカウントダウン 闇の権力 フリーメイソンの大分裂』 中丸薫 《前編》
             【民主主義を一掃する】
   《参照》   『日本をここまで壊したのは誰か』 西尾幹二 (草思社) 《後編》
             【GHQが焚書とした 『国体の本義』 】
             【まこと】

 

 

【三種の神器と天皇】
村上 : 佐藤さんね、三種の神器っていうでしょ。これが日本を表わしているんじゃないですか。 ・・・(中略)・・・ 。
佐藤 : そうです。そこは非常に重要なところで、例えば皇室典範の問題が出たときでも、萬世一系の話ばかりが出て、DNAみたいな話になってきました。そこで見落とされているのが三種の神器なんですよね。
 例えば血が繋がっていても、三種の神器を持っていなければ天皇じゃないんです。(p.115)

 

 

【『神皇正統記』 が有する爆弾】
佐藤 : 『神皇正統記』 の思想って言うのを、やはりきちんと勉強する必要があります。
村上 : そうですね。
佐藤 : その中に恐るべき爆弾が入っているからなんです。
 それは天皇に対してはですね、緊張感を持ってやらないと、あなたたちの血統は途絶え、皇統は過去に遡って別の流れで維持されますよと、こういうことを言っているんですよね。
 それで第1章でも触れましたが、葦津珍彦先生もそこは非常にうまく言っているんですよ、「放伐思想っていうのは日本でも適用されるんだ」 と。「基本的には革命は適用されるんだ」 と。「しかし、それは一定の幅の中で起こるんだ」 と。
 皇室だからというだけですべて無条件に守られるというわけではい、ということ。
   《参照》   『素顔の一瞬』 高円宮憲仁親王 中央公論新社
            【韓国:戦後初の皇族の公式訪問】

 

 

【日本の皇室に対する畏敬の念】
佐藤 : 実はですね、ロシアと外交をしていてわかったんですが、エリツィン大統領もプーチン大統領も日本の皇室に対する畏敬の念というのは非常に強いですよ。しかもですね、ロシア人のなかで非常に深く刷り込まれているのは 「我々は皇帝を、ボリシェビィキ、共産主義者によって殺してしまった」 ということなんです。国家の父であり母であり、そういった人たちを我々は殺してしまったんだと、ここに対する意識っていうのはロシア人は非常に強いんです。(p.164)
 渡部昇一先生が、ドイツ留学時代のことを書いていた中で、ドイツ人も連綿と続く日本の皇室に対して畏敬の念を持っていた、という記述を読んだことがある。歴史ある諸国家ほど、日本の皇室を注目しているのである。
 ところで、ミスター・ニエットと言われたソビエト外相が昭和天皇に接した時、ただそれだけで闇雲に慟哭してしまったという話を聞いたことがある。おそらく昭和天皇の背後にある神霊界に感化されてしまったのだろう。皇室に対して畏敬の念を持っているというプーチンさんが今上天皇に接しただけで、同じようになるかどうか分からない。生きてきた時代の様相が違うから、比較すれば背後にある神霊界の差は歴然なのかもしれない。

 

 

【ロシアの復権】
佐藤 : 最近、ロシア恐るべしと思ったのですが、それはプーチンさんがこんな演説をしたんです。
 自分の主義が何だっていうのは言ってないんです。しかし、祖先を大切にして老人を大切にする。これをやらない国は滅びる。あと外国のものは移入できないと。 ・・・(中略)・・・ 。次に自分がするのはロシア民族が何かっていう理念の探究なんだ。国民諸君、一緒にやっていこうじゃないかと。我々はどういう民族で、何を価値とするのか、国民と一緒に考えたいと。
  ・・・(中略)・・・ 。
 こういった演説を2007年4月26日に、2時間ぐらい国会議員の前で、自分の言葉でやっているんですよ。もちろんこの様子はテレビで中継された。なかなかロシア人の心を打つ演説でした。だから8割の支持をプーチンは得ることになるんですよ。(p.227)
 「プーチンさん、素晴らしい」 と思う一方で、「何故、日本にはそういうトップがいないのか」 と思えて仕方がない。プーチンさんは、民族の誇りを取り戻そうと奮闘努力してきた。歴代の日本のトップは、アメリカの属国であり続けようとしているだけである。
   《参照》   『消された惑星「冥王星」の黙示録2012』 神谷充彦 (学研) 《中編》
            【ロスチャイルドと戦うプーチン】
   《参照》   『暴走する国家 恐慌化する世界』 副島隆彦・佐藤優 日本文芸社 《下》
            【燃料はタダ、黒パン、ジャガイモ、ウォトカ、タバコが不可欠なロシア】
佐藤 : 知力やモラルにおいて、ロシア人にいま、日本人は後れを取りつつあるんですよ。
 だから、そこのところで、プーチンのごときにやはり負けたくない。我々はロシアごときに負けたくない。やっぱり過去にロシアを担当した外交官として、そう思うんですよね。(p.269)
 ロシアの歴史の背骨となっていたロシア皇帝は、既に断たれてしまっている。プーチンさんは、それを補うだけの民族的価値を探し出して確立しようと努力しているのだろう。それに比べたら、日本には現在でも皇室が存在するのだから、民族の価値を再評価するのは、はるかに容易なはずである。ところが、日本の国体を根本的に再評価しようとする政治家は全然出てこない。もう、それほど時間がないのに・・・。

 

<了>