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 1999年の世紀末に関するノストラダムスの予言が結果的に外れたとはいえ、五島さんの記述には実際の政治経済情報の裏付けがあるから、今日読んでもなかなか面白い。エドガー・ケーシーの予言にからめて、ノストラダムスの 預言にある 「別のもの」 を推察している。
 この著作の主要な論旨は、 『アジア黙示録』 と同じであるけれど、人類の歴史を変える可能性がある、いくつかのアザーズが記述されている。2000年4月初版。

 

 

【エドガー・ケーシーの予言】
 日本沈没の予言として世界中で解釈されていたエドガー・ケーシーの予言について、著者は、日本の経済的沈没の予言と解釈していた。その解釈は正しかったのであり、現実となっている。

 そのセンテンスとは、
 The greater portion of Japan must go into the sea.  These will begin in those periods in ’58 to ’98.

 

 

【 must が用いられている理由】
 ケーシー自身も、他の部分ではふつうの単純未来の will を使っているのに、ここだけはなぜか must を使っている。(p.54)
 その根拠について、著者は以下のように記述している。
 ケーシーは愛国的国民的霊感者として、こうした自国民の思いを鋭く読みとった。(そんな日本がキライだ、憎い、ぶっつぶしてやりたい)。このアメリカの心の鬱積をケーシーは受けとめ、彼自身の願望や未来洞察も加えた。(p.56)

 

 

【 greater が用いられている理由】
 「日本の greater な分け前は沈まなければならないが、great な分け前は沈まなくてもいい」。この強い潜在欲求が隠されていたということだ。(p.67)
 比較の対象はアメリカである。日本がアメリカより greater となった場合は沈める。 great までならば沈まなくていい、ということ。 つまり 「№1は許さない。№2の位置に留まれ」 「アメリカの属国でいつ続ける限りはよし、さもなくば潰す」 と。
 ケーシーの予言の後半には、1958年から1998年の期間に日本潰しが始まると書かれているけれど、終わりの時期は書かれていない。つまり、現在も続いているのである。
 Greater となった日本経済は、1989年にバブル崩壊をしかけられ、その後も90年代のクリントン政権時代の露骨な恫喝政治、ブッシュのポチ小泉首相の改革に乗じた露骨な分捕り、と続き、日本経済は決して再度 take off できない状態に押し留められている。
 著者は、日本国民の状態をギリシャ神話のシジフォスに譬えているけれど、その通りだろう。高度な技術力によって得た富が、そのまま日本人のものとなっていたなら、好況は継続しこんな格差社会にならずにすんでいた筈なのである。

 

 

【別のもの】
“月の支配の20年は過ぎ去る
 7000年、別のものが王国を保つだろう
 太陽がその日々に飽きる時、
 わが大予言も衰えて終わるのだ” (p.31)
 なお、7000年とはユダヤ占法による数字で、西暦2000年を表わすらしい。
 このノストラダムスの予言詩の中にある “別のもの” について書かれているのが本書。
 3つ書き出しておいた。

 

 

【アザーズ1】
 1999年11月、ラスベガスで開かれた 「コムテックス」――― 明日の電脳の性質をきめる重要な一種の万国博の席上、日本代表の出井伸之氏(ソニー現会長)は、 ・・・(中略)・・・ 日本は 「パソコンによらない次のインターネット新時代」 を目指すと宣言した。
 しかしこれに対し、アメリカ電脳界を代表するマイクロソフト社のビル・ゲイツ会長は、 ・・・(中略)・・・ 彼独特のひらめくような強い口調でこう予言したのだった。
 「パソコンは進化する。いっそう重大な役割を果たすようになる」 (p.138)
 12年前のこの両者の主張は、現在も継続的に実施されているだろう。ソニーの薄型デジタル放送用テレビは、すべてインターネットに対応したソフトが組み込まれていて情報家電になっている。アメリカ発の iPad はキーボードが液晶画面内に取り込まれた進化型になっている。
 ただ、ビル・ゲイツが言っているパソコン進化の究極は ”神” なのである。
 それを目指す進化の途上には、ロボットがある。インターネット上の戦争は、すでに世界中で様々な破壊工作の実例があるので、軍事的にインターネットを活用することは難点が大きすぎることがわかっている。
 そこで、インターネットから独立したロボットであればハッカーによる破壊を免れるというメリットから、実際に戦争用として研究されているらしいけれど、これも、敵味方を区別する上でのセンサーが弱点となって、実用するには困難が大きい。
 また、世界中が、クラウドのようなNC構想に率先して同意することもありえない。
 進化の究極としての “神” は、現時点では不可能に近い。

 

 

【アザーズ2 : 別のUSA】
 まず呈示しておくが、「別のUSA」 とはアメリカのことではない。では何のことかというと、それは実はアジアのことである。
 つまり、ユナイテッド・ステイツ・オブ・アジア。これが ・・・(中略)・・・ 「別のUSA」 の正体である。

 

 

【別のアジアの切り札】
 日本ではさほど目立たないが、他のアジア全域では、華僑つまり本国を離れた中国商人と、印僑つまり本国を離れたインド商人たちが、大資本家から小さなラーメン屋さんカレー屋さんまで、たがいに強固なネットを張り巡らせ、火のような競争をしたり強調したりしている。
 つまり商売ガタキだが信用相手でもある。従ってその有力者たちがアジア大連合のメリットに目ざめ、本気になって根回しすれば、アジア問題の大半は根のほうから解ける。
 だから米欧や中東の宗教的な人種的な結合より、アジアの華僑・印僑のビジネス協調のほうがだんぜん強い、これが新しいアジアの切り札になると、 ・・・(中略)・・・ アジア問題専門家たちは見ているというのだ。(p.210-211)
 第一の切り札が、華僑・印僑のビジネス協調であり、第二の切り札は、中国とインドの人口である。
 “分断と統治” を基本戦略としてアジアを分断し利益を吸い上げてきている欧米の影響力は絶大であるけれど、このことを知って、アジアが冷静に対処すれば、「別のUSA」 が強力になってゆくのは自然なことなのである。このことに関しては、既に以下の読書記録の中に書いている。
   《参照》   『アジア黙示録』 五島勉 (光文社) 《後編》
             【777の二重性】
             【インドと中国】
 本物のUSAに組み込まれてしまっている状態の現在の日本は、際どい位置にいるともいえるけれど、世界が暴走しないように、均衡点を維持する位置にいるともいえる。日本は、「本物のUSA」 と 「別のUSA」 の貪欲な戦略を掻い潜って新しい時代を照らし出さなくてはならない。
 「 賢明なる人智 + α 」 が必要である。

 

 

【アザーズ3 : 若返らせる技術】
 中年・老年の頭や体を決定的に若返らせる技術が、日本の多くの大学医学部・薬学部・研究室で世界水準を超えて進み、そのいくつかは遠からず実を結びそうだということもお知らせしておく。(p.221)
 11年前に書かれているこの記述に該当する研究は、現在どの程度進んでいるのだろうか?
 もう一つ、クラゲに見られる蘇りの遺伝子について。
 死にかかった細胞の中に、蘇り機能がはじめからセットされているので、自動的にそれが働き、老クラゲはふたたび幼生に戻って成長・・・・ 永久に死なずに蘇りを繰り返すのだ。
 実はこれは、構造的にわれわれの体の中にもないことはない。(p.227)
 現在の人類は、成長して死ぬまでの設計図を保持したDNAを1回しか使っていない。村上和雄教授の表現に従えば、このDNAを2度使えるよう指示するDNAが off になっている。このスターター役のDNAが on になれば、人類は何度も成長を繰り返すことが可能になるけれど・・・さて。
   《参照》   『世界は1つの生命からはじまった』 村上和雄・葉祥明 (きこ書房)

 

 
<了>