《前編》 より
 

 

【女性脳の活かしかた】
 女性はおしゃべり好きです。女性だけの会議であれば、1時間のうち45分は無駄話をしているように男性からは見えたりする。でも、女性はその45分の間、無邪気におしゃべりすることによって、右脳と左脳の連携を繰り返し、感じたことを出力しやすい状態にしている。いわば、直観力をチャージしているわけです。(p.53)
 女性脳を活かすのも、ダイバーシティ(多様性)を活用する上で重要なことである。
 女性脳の男性脳との際立った違いは、「おしゃべり」 の他に 「食べること」 があるらしい。従来の一般的な職場環境にあっては、あり得ないことばかりであるけれど、これらを上手に取り入れてゆかなくては女性脳を活かせない。
  但し、おしゃべりといっても、注意点がある。
 他人のことを 「ああだ、こうだ」 と言う女性は、無邪気に生きていけないのです。(p.70)
 そんなふうに、悪口やネガティブな発言をしている人は、どうにも無邪気になれない。自分のそれまでのネガティブな行為に足を引っ張られるからです。だから、さもしい行為とか、ネガティブな行為をしてはいけないのです。
 道徳とか正義などということを持ち出す気はありません。生きる戦略として、NGなのです。「もし、あなたが1つの嘘をついたら、それだけで、皆が嘘をつくかもしれないという疑心暗鬼に駆られて、その後の人生を生きていかなければいけない」 からです。(p.71)
 日本人が 『走れメロス』 などの作品を通じて、約束を守ることを教育し大切にしているのは、道徳や正義のためというより、本質的には個々の “無邪気さ” を守るために他ならないはずである。嘘や裏切りが常態となっている諸外国の人々には到底もつことができない “脳力”、 それが “無邪気さ” なのである。
   《参照》   『美しき日本の残像』  アレックス・カー  新潮社  《後編》
             【日本人と中国人の違い】

 左脳に偏れば無邪気さは目に見えて衰弱するけれど、ネガティブは無邪気さを即死させる。MBA頭が左脳指標の数字で評価する定量的な成果主義ほど、日本人のメリットである “無邪気な脳” を損なうものはない。

 

 

【「他人思い」の仕事術】
 なにも難しいことはありません。今、目の前にいる人の気持ちを、自分の気持ちのように思えばいいだけなのです。その人に興味を持ち、その人の考えていること、感じていることを想像し、その人に幸せになってもらいたいと願う、ただそれだけ。
 必要なのは、好奇心と素直さ。つまり、無邪気な脳だけが、本当の勝ち組の場所に入れるのです。それは歴然とした事実。一流と呼ばれる場所に行く機会があったら、きっと一瞬でわかるはずです。
 悲しいことに、野心があって、勉強を重ねた人ほど、数字や損得勘定をつかさどる左脳に荷重がかかり、自分のことしか考えられなくなります。そうなると、世の中が思い通りにいかなくなる。当然、「思う」 方向が間違っているのですが、本人はそのことに気づかない。(p.5-6)
 「顧客第一主義」 ではなく 「顧客中心主義」 の最終根拠は、このような脳の特性に依存している。
   《参照》   『「とことん聞く」経営』 小山政彦 (サンマーク出版) 《前編》
             【家庭も修業の場。家庭では奥さんが宇宙の中心】

 また、ファッチャの飼い主であった著者が、シャーマン的な能力をもつようになったのも、ファッチャの心に成りきるほどの無邪気な心があったからのはずである。
   《参照》   『シャーマン・ブルドック』 レナルド・フィッシャー (読売新聞社)
              【ファッチャ亡き後】

 

 

【第二のモテ期】
 人生のなかで最もデトックスできるチャンスは、意外かもしれませんが、更年期ですね。53歳以降脳は、生殖ホルモンの支配がなくなって、全体をものすごくバランスよく使えるようになるのです。だから、いわゆる “おばさん” とか “おじさん” に対する悪口はつきないわけですが、その年齢を超えると、脳に、今までとはまた別の豊かな世界が広がるはず。上手に自覚すれば、新たな感動力が宿るはずです。そのせいかしら、ある男性雑誌のデータによれば、男性の第2のモテ期があり、それが53歳だという説があるんですよ(笑)。(p.96-97)
 生理的に、「枯れるだけ」 とは考えずに 「バランスが良くなる」 と考える。
 老人も、認知症気味になってきたら、「老人力がついた」 と胸を張ればいい(のだろう)。
   《参照》   『老人力』  赤瀬川原平 筑摩書房
               【老人力】

 

 

【 無邪気さ = ニュートラル 】
古森 : 私が採用面接で必ず聞くのは、「あなたは、お金と人間と、最終的にはどちらを選び成すか?」 ということです。本音の答えがお金の方に近い人は、採用しない。
黒川 : そこで 「お金」 は、だめですよねぇ。 ・・・(中略)・・・ 。私は拝金主義者にも、エゴイストな人間にもお会いしたくありません。ぜひ、お金ではなく人に関心を持ってほしい。そして、誰か、あるいはある種の人々を幸せにするためにはどうしたらいいかを考え、実行することが軸であってほしい。それが、ニュートラルになるための一つの思考法だと思うからです。つまり、自分が幸せにしてあげる人の目線で自分を見るということが大事なのです。(p.112-113)
 最後の文章を読んでいて思いつくのは道化師である。あるいは、「わて、アホでんねん」 と言って笑われている芸人もそうだろう。お金に紐付く意識はない。無邪気さはお金とは無縁なのである。

 

 

【停滞するD音(だ・じ・ず・で・ど)】
 若い女性向けの講演では、「D音は口にすべからず」 とよく言っています。 ・・・(中略)・・・ 「だって」 「でも」 「どうせ」 といった類の言葉です。これ、全部D音です。D音は強い停滞を招くのです。だから、それが口癖なのはよくないわけです。(p.164)
 D音は他にもたくさんある。 「どうよ?」 「どっちみち」 「でも」 「できません」 
 「でも、できません」 「だって、無理です」 では、ビジネスは通らない。大人が使うべきではない。(p.165)
 職場にある大人でも平気でD音(「できません」)を使っているのは、公務員くらいなものだろう。
 否定しているのでもないのに、「でも」 で会話を始める人は非常に多い。自覚的にあらためるべきである。
 日常で、これらの言葉を注意深く使わないようにするだけで、人生はかなり変わるだろう。