《前編》 より
 

 

【アラブの定義】
 地理的には中東に位置しており、イスラム教国ではあるが、トルコ語が公用語のトルコと、ペルシャ語が公用語のイランはアラブには含まれない。アラビア語を母国語としていることが、アラブを定義するうえで、非常に重要な要素である。(p.52-53)

 

 

【アラブのIBM】
 「アラブのIBM」 とは、「インシャラー(神の思し召しのままに)」 「ブクラ(明日)」 「マレーシ(気にしない)」 の三つの言葉の頭文字をとったものだが、いずれもアラブ人の追うような気質を表現している。(p.147)
 アラブ人の 「ブクラ」 は、日本の官僚や政治家が言う 「善処します」 のようなものだと書かれている。

 

 

【アラブ諸国の歴史認識は重要】
 まずは歴史の話をしないことには、仕事の本題にもスピーチの本題にも入れないのが、ほとんどのアラブ人に共通した気質である。
 よって、アラブ人とのビジネスをスムーズに進めるためには、アラブ諸国の歴史や部族間の問題などを、しっかりと理解しておくことが非常に重要だ。 (p.151)
 多くのアラブ人は、日本の皇族の歴史や、戦後復興の話にも興味を示すとも書かれている。

 

 

【イスラム金融】
 イスラム金融とは 「シャリア」 と呼ばれるイスラム法、あるいは、イスラム教の教義によって運用される金融システムのことである。
 イスラム金融が行う金融活動が、イスラム教の教義にかなっているか否かの判断は、シャリアの知識を備えた法学者によって構成されるシャリアボードが行う。(p.163)
 賭博的なハイリスク投資は否定されるため、2008年以降の世界金融危機での損失は欧米金融機関と比べると少ない傾向にあるという。
   《参照》   『リアル経済学』 ベンジャミン・フルフォード (日経BP社)
            【著者おすすめの自己投資】

 

 

【マレーシアは東南アジアのイスラム金融窓口】
 マレーシアのイスラム金融機関が、日系企業に対してアラブ産油諸国の機関投資家や個人投資家からの資金調達を手助けできることは、イオンとトヨタの事例で証明済みである。そして、「今後も日系企業は積極的にイスラム金融に取り組んで欲しい」 というのが、彼らの率直な意見なのである。(p.176-177)
 東南アジアに位置する多民族国家マレーシアは、インドへの窓口とばかり考えていたけれど、それだけではない。イスラム金融を通じての中東湾岸諸国への窓口でもある。
            【ヘッジ・フライト & 異文化体験としての経由便】
 東南アジア諸国は、近年進出してきた貪欲なチャイナマネーを、いずれは忌避するようになることだろう。
 日本は中国が進出する遥か以前から、ODAを通じて東南アジア諸国の産業インフラを整備してきたのである。日本の下支えに助けられてきた東南アジア諸国は、中国との相対比較によってマレーシアも含め日本企業のさらなる進出を大いに歓迎することだろう。中国や韓国とは、その接し方に雲泥の差があるのである。

 

 

【アラブ諸国の中・韓と日本に対する見方の違い】
 アラブ諸国のタクシー運転手が、自分の車が日本車であることを自慢していることについては先述した。(p.178)
 灼熱の太陽にさらされるアラブ諸国の環境下では、故障を起こす車はダイレクトに命を奪うことになるので、高くても故障しない日本車を選択する。国際的に多く出回っている韓国車とはいえ、それは価格が安いからであって、日本車に比べたらその品質は明らかに劣っているのである。
   《参照》   『「レクサス」が一番になった理由』 ボブ・スリーヴァ (小学館)
            □ 内も外もツルツルの日本車 □

 上記に続いて、以下のように書かれている。
 そして多くの場合、彼らが自慢話のあとに続けるのが、韓国人と中国人の悪口だ。どうやら両国の評判は、アラブ諸国の庶民にすこぶる悪いようだ。(p.178)
 「韓国人は何であんなに横柄なんだ」
 「中国人は約束を守らないし下品だ」 (p.180)
 チリに国策で移民した韓国人は、酒場で喧嘩を売ってテレビの特集番組にまでなっている(p.181)
  ことが記述されてもいる。
   《参照》   『 「道徳」 という土なくして 「経済」 の花は咲かず』 日下公人 (祥伝社)
            【ロス大地震で、なぜ韓国人街は襲撃されたか】
            【世界中で襲われている中国人】
   《参照》   『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 宮崎正弘 (KKベストセラーズ)
            【南米】
 このように、アラブ諸国でビジネスをし、そこに生きる人たちと接すると、彼らの日本人に対する視線と、中国人と韓国人に対する視線の違いを皮膚感覚で理解できるようになる。アラブの人々は、日本・中国・韓国を 「東洋」 といった一括りで見ているわけではない。日本と、中国・韓国のあいだには、明確な境界線が引かれているようだ。 ・・・(中略)・・・ 。筆者も常々、日本民族の精神構造は漢民族や朝鮮民族よりも、アラブ民族との相性のほうが良いと感じている。(p.182)

 

 

【アラブ諸国の韓国評価】
 アラブ諸国には韓国の建設会社が多数進出しているが、ここにきて、手抜き工事が問題化している。加えて納期を守らない、ビジネスの現場で軋轢を生む、労働者に対して非人間的な扱いをするといったことも問題視されている。(p.5)
 建設の手抜き工事の具体例は、この書籍の中で、別途記述されている。
 マレーシアのペトロナス・ツインタワーは当初、日本のハザマ建設の受注が確定しかけていたところに、韓国のサムソン物産が横槍を入れたことにより、1号棟をハザマが、2号棟をサムソンがそれぞれ建設することとなった。 ・・・(中略)・・・ 。
 ところが、ペトロナス・タワーは落成後、悲劇に見舞われる。サムソンが建築した2号棟だけ、何の事故も発生していないのに建物が傾いていたのだ。
 しかも、2号棟は電気配線系にもトラブルが続出し、いつまでたっても韓国サイドだけ、入居が進まない状況に陥ってしまった。マレーシアにしてみると、まったくもって安物買いの銭失いである。(p.185)
 500人以上の死者を出したソウルの三豊百貨店の崩落は日本人も知っているけれど、それ以外に海外でも、韓国の建設会社が関わった橋の崩落も起こっている。パラオのKBブリッジがある。これは日本の無償援助によって鹿島建設が架け直している。
 韓国が経済発展をしつつあった段階で、多くの韓国人が建設労働者として中東アラブ諸国へ出稼ぎに行っていたのである。中東における韓国受注の建物はかなりの数に達するはずである。それらの手抜き工事は、韓国にとって重たい十字架として圧し掛かってくることだろう。
 韓国の尻拭いは、いずれ全てを技術力と信頼性に秀でた日本がすることになるのだろう。

 

 

【アラブ諸国の中国評価】
 中国がアラブに進出するようになってそれほど期間が長くないから、具体的な記述は少ない。
 また、これは世界の共通認識といっても過言ではないと思うが、中国に対しては知的所有権を踏みにじる国というイメージを強く持っている。とくにアラブ諸国は知的所有権を重視するために、中国に対する信頼度はかなり低いと言える。(p.5)
 インドも知的所有権に対する認識は非常に高い。中国は、諸国の産業が高度化すればするほど世界中から嫌われるようになることは間違いない。
    《参照》   『驚異の超大国インドの真実』 キラン・S・セティ (PHP研究所)
               【インドの商慣行】

 

 

【日本の素晴らしさは】
 エジプト国立研究所教授、アムディ・エルゲタニー博士の意見。
「日本の素晴らしさは、技術力や品質管理能力だけではありません。技術だけでは良い製品を作ることができないことを、我々は知っています。日本の素晴らしさは、その国民性にあります」 (p.273)

 

 
<了>