イメージ 1

 

 教育問題に関する書籍。著者の肩書きにある系列校である桐蔭学園は有名な進学校であり、しかも高校野球などのスポーツにも秀でた学校であることは多くの人々が周知のこと。ゆえに読んでみる気になった。
 著者が、現場の先生に教育基本法を読んだことがあるかと質問したら、誰一人手を上げなかったそうである。教育の原点となる条文であるとは言っても、ここにまで言及する人は極端に少ない。だからこそ、この書籍には価値がある。


【教育基本法】
 憲法と同様に、敗戦後にアメリカ占領下で作られた教育基本法をそのまま遵守するのはおかしいのであって、独立主権国家状態下で立法されるべきである、というのが著者の基本的な考え方である。
 当然すぎるほど当然至極の論理である。
 そうでなくても、国家の大計である教育は、戦後60年を経過した昨今、その綻びを顕著に表している。GHQ占領下で定められた教育の弊害は、アメリカ人識者(アメリカ人の法学博士であるジョージ・L・ウエストさん)の見解としても語られている。

   《参照》  『日本の心を語る34人』 安西愛子・他 (明成社)

             【日本の教育を害したもの】

 また、日本における、形式主義と習慣主義という対比の中で、明治憲法下に存在した教育勅語の存在を、日本の強さの表れと記述しながら、現在の憲法下には教育勅語に変わる習慣法が存在していないことに、危惧を感じてもいた。

   《参照》  『日本史の法則』 渡部昇一 (詳伝社)

             【日本における、 形式主義  VS  習慣主義】

 教育基本法は決して日本文化に基ずく習慣法ではないのである。


【五常五倫】
 教育勅語に変わるものとして、著者は「五常五倫」を挙げている。
「五常」とは、仁・義・礼・智・信
「五倫」とは、父子親有り、君臣義有り、夫婦別あり、幼長序有り、朋友信有り

 である。
 著者が述べているこれらは、鎌倉時代の「貞永式目」から、江戸時時代の規範であった「儒学」、さらに明治時代の「教育勅語」へと、日本史に通底する習慣法の核である。これらが有効に機能していた時代はいずれも封建的な時代であり、この様な習慣法による秩序維持については、社会的コンセンサスなど求めずとも自ずから存在していた。だからこそ習慣法だったのである。しかし、一旦、習慣法が断たれ、社会構造、経済構造が全く変わってしまった現代に生きる人々が、これらにそのまま同意することは難しいように思う。であるにせよ、チャンちゃんは、現在の「教育基本法」より、これら「五常五倫」の中に、より多くの真実があることを、著者と同様に信じて疑わない。
 「五常五倫」関連をリンクしておきます。

   《参照》  『大和古流の「躾」と「為来」』 友常貴仁 (三五館) 《前編》

            【武門の袴】

          『清く美しい流れ』 田口佳史 PHP研究所

            【江戸期の「生き方」教育】


【「小説の神様」の発言!】
 「小説の神様」といわれた志賀直哉は雑誌『改造』の「国語問題」という文章の中で、次のような発言をしていたという。

 「世界の中で一番いい言語、一番美しい言語をとって、その儘、国語に採用してはどうかと考えている。フランス語がもっともいいのではないかと思う」 (p.236)
 森有礼(?)が英語公用語論をぶち上げていたという話は聞いていたけれど、志賀直哉までが、こんなことを書いていたとは初めて知った。いずれも、日本が近代化を進めるに及んで「脱亜入欧」をスローガンにしていた時代だったので、時流に乗って愚かにもこんなことを言い出していたのかもしれない。
 チャンちゃんは、「日本語の価値を知らない人々は、単なる無知ではすまない、最悪の国賊である」、と断言する。言葉=文化である。自国の言葉を尊ばない人間は、それだけで十二分すぎるほどに国賊の条件を満たしている。

   《参照》  日本文化講座⑩ 【 日本語の特性 】


【出版社考】
 海竜社という出版社について、この読書記録のブログを始めて数ヶ月の中で4冊目である。私はビジネスや日本や日本文化に関する本を選ぶことが多い。そんな読書傾向の中でPHPが圧倒的に多くなっている。そして、この海竜社は私の印象に残る本が多い。過年度数年間の読書記録の中に、海竜社の書籍がこんなにあった。
・『日本人に生まれて幸せですか』 金美麗
・『生きるという航海』 石原慎太郎

『幸せになる教育』 米長邦雄

・『大人の男というもの』 西浦みどり
・『なぜ日本は成熟できないのか』 曽野綾子&クライン孝子
・『これで日本の教育は救われる』 渡部昇一
・『「5つの約束」で子供は変る』 湊川栄太
・『角が立つ韓国人丸くおさめる日本人』 王秀英
『これが私のお経です』 草柳大蔵
『しつけのない国、しつけのできない人びと』 中村喜春

 海竜社は、日本を守ろうとする良識的な出版社であることがよく分かる。

 

<了>