三菱商事が洋上風力発電事業から撤退を正式に表明して、話題になっていますね。私は、さすが三菱商事だなと感心しました。
国の事業を公募入札して勝ち取るのは本当に大変です。実際、三菱商事を中心とするコンソーシアムは 2021年12月 に、秋田県(能代市・三種町・男鹿市沖、由利本荘市沖)と千葉県(銚子市沖)の 3海域すべてを落札しました。この時も、相当な人数を投入し、コストを精密に試算して「利益が見込める」と判断したうえでの入札だったはずです。
ところが、当時と今では外部環境がまったく違います。ひどい円安、原材料・光熱費・人件費・建設費の高騰。どれを見ても当初の見積もりと比べて圧倒的に高騰しています。行政との契約にある程度のコスト補填条項があった可能性はありますが、それでは到底吸収できない規模の変化です。
しかもこの事業は建設して終わりではなく、20年スパンで収益を見込む超長期プロジェクト。当初は「建設費はギリギリで、20年かけて回収する」というシナリオだったのでしょうが、いまや全く通用しなくなっています。
だからこそ、三菱商事の中西勝也社長が会見で「ビジネスとして成立しない」と明言したのは、むしろ潔く、戦略的な判断だと思います。違約金は莫大になるでしょうが、それでも撤退を選び、人材や資金を別事業に振り向けるのは正しい経営判断です。実際、三菱商事は2025年2月に 522億円の減損損失を既に計上しており、追加の損失は限定的と見込んでいます。
「画像はAIで作成しました」
もちろん、国や自治体が納得しづらいのは当然です。関係者も膨大な時間とコストをかけてきたわけですから。それでも、経営の現実を直視すれば「採算が合わないなら撤退が正当」という判断に、ビジネスマンとして私は納得します。




