我が家の娘は昨年大学を卒業し、学校で勉強した専門とは全然関係のない普通の事務職に就いた。別にそれは構わない。ともかくフルタイムで仕事しているし、それで十分である。フルタイムとは週30時間以上働く場合を指し、日本でいうところの正社員ってのに近い。しかしフルタイム勤務だからといって、福利厚生がしっかりあるとは限らないので(企業によるのである)、まったく同じというわけではない。
娘本人はいろいろ思うことあってか(?)カレッジに入って勉強したいとか言い出した。いままでやってきたことの延長線上にあるようなことらしいが、それでそのあとは何の仕事に就くわけ?と聞くと、「うーん、関連したものに就きたいとは思うけど」とのこと。だいじょうぶかいな。
彼女が取りたいというカレッジでのコースはフィールドワークに重点を置いてるらしいが、月曜から金曜まで終日授業があるそうで、当然フルタイムでお仕事はできない。つまり仕事は辞めて学校に戻るというわけだ。
その話を日本の私の親にしたら、「なんだそれ。困ったもんだ」「あんたも大変だね。子どもがそんなんじゃ」等々言われた。まぁそういう反応になるだろうなぁ。こちらではいったん社会に出てからまた学校に戻るというケースは多い、が、もちろんそれが一般的なわけではない。だから「なかなか社会人にならなくて困るわねぇ」という反応を示す人も当然いる。
ただ、「いったん社会に出たあと学業にまた戻る」という選択を否定しない人のほうが多い、というところ。
私としては本人がやりたいならやればいいとは思うが、その一方で、自立するのはいつよ?と思わないでもない。やっぱり仕事を持って自立してもらうまでは安心できんよー。もっともそれなりの会社に正社員で入っても、「じゃ、これで安泰」とはいかないことも多々あるのはわかっているが(それはカナダでも日本でも同じだね)。
昔々の話だが、近所のスーパーでパートで働いていたことがある。その時の同僚のひとりが、なんか金融系のそこそこいい仕事に就いていたが、リストラされちゃってここのスーパーで働くことになったという。そこの仕事は、総菜やらハムやらを売っているセクションで、「こういっちゃ悪いけど、サンドイッチ作るために大学出たんじゃないから・・・」とつぶやいていたことがある。本人は忸怩たる思いもあったのだろう。大学を出たからと言ってみんながみんな、いわゆる高給取りになれるわけでも、大学でやってきた専門の分野での仕事に就けるわけではもちろんない。
一方、息子は専門学校は出たものの、日本でいうところのいわゆるフリーター状態である。バイトを2つくらい掛け持ちしつつ、たまに入ってくるランダムな仕事を受けたりといった具合。これまた私の親からすると理解できない、というか許容できないことである。「しっかりとした社会人にならないと」「そんなんじゃダメだろう」等々・・お言葉をいただいております。(ので最近は息子のこともあまり話題にしないようにしている)
うちの親にとっては私の子どもだけが唯一の孫である。常々、近居してないことを責められているのだが、もし近くに住むなんてことが実現したとしても、次は孫についてあれこれ口出してくるだろう(すでに自分の子どもには期待が持てないことがわかっているから次は孫に目が行く)。結局、自慢できる孫(有名大学に行きました、大会社に就職しました、などなど)というのが欲しくなる。ひとの願望には終わりがないのである。
おまけに私には未婚の妹がいる(子どもなし)。彼女がまた我が家のことをことごとく批判するひとで、近くにもし住んでたらこっちのメンタルがやられること必至である。
そんなわけでうちみたいに出来の悪いお子様がいると、離れていてよかったよ・・となるわけだ。いろいろ言われても、内心「あー、もういい加減にしてくれぇ」と思いつつ、「そうですねー」「まったくおっしゃるとおりー」と棒読みして、時間がたつにつれ「勝手に言っててくれ」と思えるようになるという過程を踏める。
日本の場合、多くの人が大学に進学し、4年後の3月に卒業したら一斉に4月に入社という流れになる。こちらでは入学式もないが入社式というものもない。4月に新入社員が一斉に入社という流れになっていないからね。
大学行っている間にインターンやらバイトとして働き始めてそのままそこに入社、とか、卒業してから仕事探すとか、少しのんびりしたり旅行したりして遊んでから仕事探すとか、いろいろなパターンがある。
仕事が簡単に見つかるからこんなペースでも大丈夫なんだよねってわけではなく、じつは就職はけっこう困難なんだけどね。
むしろ新卒採用してくれる日本の会社のシステムっていうほうが、就職へのチャンスが高い気がする。
とにかくとにかく。
うちの子たちもなんとか仕事して自立してほしい。それだけが望みだよ。