中央線で読む新書 -30ページ目

欧州通貨統合のゆくえ

ユーロについては、それ自体が偉業とされ、ドルに対抗しうる通貨として
(実際に取引量は2006年12月にドルを上回った)手放しでの賞賛が多
い中で、マクロ指標を用いて、冷静に論述する。

昨年より、ロシアがユーロ建てのコモディティ取引を始め、OPEC参加国が
外貨準備高のユーロ引き上げを模索するなど、EU圏外のユーロ化が進ん
でいる。そうした事情を踏まえた改訂版も読みたいところ。

【通勤用にGOOD】 2005年

坂田 豊光
欧州通貨統合のゆくえ―ユーロは生き残れるか

都市と日本人

都市化しようとも残る「ムラ」的なるものを巡るエッセイ。

【暇つぶしに】 2003年
上田 篤
都市と日本人―「カミサマ」を旅する―

アメリカ外交とは何か

岩波でこういう書名だと、どうしても偏見を持ってしまうが、それで読まないのは損。

ピューリタンが押し寄せ、先住民から領土を奪い、黒人奴隷を働かせながら発展した
アメリカ。その「明白な運命」(マニフェスト・ディスティニー)。

テキサス併合の正当性をジャーナリストのジョン・オサリヴァンが訴えた宣言
「自由と自治政府とからなる連邦という偉大な実験を進展させるために、神が与え給
うたこの大陸全体を、覆いつくし、所有するのは、われわれの明白な運命がさだめる
権利なのである」から来た物。

その「明白な運命」によって領土を拡大し、それが帝国主義へ発展する。
アメリカ外交の根はこういう具合なのである。

「トム・ソーヤの冒険」のマーク・トウェインはこうした帝国主義に反対。ともに運動した
ウィリアム・ジェニングスと、現職の大統領マッキンレー(副大統領にはフィリピン侵略
の立役者セオドア・ローズベルトを指名)が大統領選で激突し、帝国主義が勝つ。

再選したマッキンレーは就任演説でフィリピン独立派との戦争を「自由の領域の拡大」と
位置づける。

【書物としてGOOD】 2004年

西崎 文子
アメリカ外交とは何か―歴史の中の自画像

皇居前広場

井上章一「愛の広場」に触発されて書かれた皇居前広場の歴史。
現在は何もないことで威厳を湛えるこの空間、井上章一はそこが
恋人が青姦する場所であったことより「愛の広場」を書いた。

この場所は戦後、左翼集会の場所となる。食糧メーデー(「朕はタラ
フク食ってるぞ」のプラカードで有名)もこの場所で行われた。
ジョン・ダワーは「敗北を抱きしめて」で「左翼を自認する人々が、奇妙
なことに天皇の絶対的権威に訴えかけるという伝統的なやり方をとるこ
とによって、民主的な人民政府の創設を求める運動に汚点を残したの
である」と書いている。

この指摘は面白い。

【話のネタ本にGOOD】 2003年
原 武史
皇居前広場

若者が<<社会的弱者>>に転落する

2002年の新書。
今となっては語られ尽くされているので。

【今頃になって読むものではない】 洋泉社新書 2002年
宮本 みち子
若者が『社会的弱者』に転落する

これが憲法だ!

政治学者の杉田敦が、憲法学者の長谷部に食ってかかる構図。
長谷部の方が一枚も二枚も役者が上。

ネーションステート絡みで外国人の人権をその国民の生活水準が
保てるレベルでなら認められようと長谷部。(162)

また内閣法制局の存在が国会の地位を下げていると杉田。
ジョン・ロックに即した松下圭一の国会の最高機関性を内閣法制局が
損なっていると。

対する長谷部(憲法学会は最高機関性は「政治的美称」とする)は
実情(国会議員より官僚の方が優秀)でかわす。

このかみなわなさが面白い。

【つまみ読みにGOOD】 2006年

長谷部 恭男, 杉田 敦
これが憲法だ!

思想なんかいらない生活

バラエティに出た田嶋陽子や、反対にサンデープロジェクトの島田紳介の
居心地の悪そうな素振りを笑う前半。

実社会と乖離したところで、大いばりの思想・哲学、その語り手を笑う中盤。

そして、エリック・ホッファー、シモーヌ・ヴェイユを取り上げ、何でもない、ただ
働き死んでゆく、つまり実社会の人間の思想に共鳴する後半。

いい歳したら読むべき新書である。

【書物としてGOOD】 2004年
勢古 浩爾
思想なんかいらない生活

キリスト教は邪教です!

「アンチクリストフ」の超訳。

ひとつの芸。しかし、ことの本質がかえって見えにくくなった気もする。

【おしい】 講談社+α新書 2005年

フリードリッヒ・ニーチェ, 適菜 収
キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

売れただけに、批判する偏屈者も現れる。
が、ゴーイングコンサーンなどの見地から身近な、しかし興味深い事例を
読解していくのは面白い趣旨。
また展開も上手くて、片手間に読む新書としては出色。

【通勤用にGOOD】 2005年
山田 真哉
さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学

熟年恋愛講座

「熟年性革命報告」の続編。薄い。
「第二章 シニアビジネスとしての性風俗店」は面白い。

【つまみ読みにGOOD】 2004年
小林 照幸
熟年恋愛講座―高齢社会の性を考える