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気の多いベトナムとNEXT CHINA

NEXT CHINAやCHINA+1と言われて久しいベトナムですが、現在色々な国内問題に直面し、目標としていたCHINA+1の地位を近隣諸国に奪われるかもしれません。

現在世界第二位の経済力を誇り徐々に新しい産業を手を出す中国ですが、もとは1990年代初めから低い賃金と世界一の労働力を前面に押し出し、世界の工場として徐々に力を蓄えてきました。人民元の為替コントロールなどでいろいろ叩かれた中国ですが、世界中の生産が中国に頼り切ってしまったため世界での重要なウェイトを占めるようになりました。

中国での生産コストが上昇するにつれ、多くの企業が中国以外での人件費の安い生産国を求めるようになり、そこでベトナムが地理的な理由と勤勉な国民性から選ばれるようになりました。ベトナムも中国の成功に倣い、安定的に安価な労働力を継続的に提供することを目標としました。

そのべトムは今大きな問題に直面しています。このブログでも何度か書きましたが
- 貿易赤字
- 外貨準備高不足
- 年20%近いインフレ
- 不動産バブル崩壊の懸念

このうち外貨準備高不足とインフレは貿易赤字が大きな原因です。貿易赤字でドルがどんどん出ていくため、ベトナムははどんどん弱くなり、多くの物を輸入品に頼っているのでそれによって価格がどんどん上昇していきます。外貨準備高とインフレに関しては政府が色々な手を打って、少しは落ち着いてきました。特にインフレは国民の生活に大きな影響があるという事で最重要課題として取り組んでいます。問題の原因となる貿易赤字は一朝一夕に解決するものではないので長期のプランニングが必要です。


インフレ抑制の為に金利を引き上げたので、多くの中小企業が資金繰りに困り、経済の成長スピードは落ちてはいますが、政府としては少々成長率が落ちてでもインフレを抑制しようという心構えです。


今政府が最重要課題として取り組んでいるインフレですが、思わぬ影響を外資に及ぼしています。

外資誘致に水差すスト ベトナム、「脱中国の受け皿」陰り
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110620/mcb1106200504009-n1.htm

多くの外資は生産コストダウンの為にベトナムに進出したので、工員の給料もさして高い物ではありませんでした。今回のインフレは生活コスト大幅に上昇させ工員の給料では生活するのが難しくなってきました。これにより賃上げを求める違法なストライキがベトナムでは多発し、多くの工場を悩ませています。


ベトナムではストライキは違法ではありませんが、労働組合により組織されないといけない等、他にもいろいろな規制があり簡単に行えるものではありません(集会の自由も同じように規制されていて、最近の反中国デモを当局が許したのは異例の出来事です)。多くの工場が生産性を維持するため賃上げ交渉に応じています。


このトレンドは外資からみると大きなリスクです。もし安定した賃金体制が保障されていないのなら、多くの外資が他国に工場を作ることになるでしょう。記事にもありますが今年の最初の5か月間のFDI認可額は前年比48%と大幅にダウンしています。

この問題の解決方法としては、賃金をドルベースにしてベトナムドンでの支払いの際に連動性にする方法があります。インフレは為替レートにある程度連結しているので、これにより工員からの不満もある程度抑えることができると思います。コストアップにはなりますが、食事など生活に必要な物を提供することによって生活を保障するというのも一手だと思います。この場合は、食事を保証する分ある程度賃金を下げる交渉も可能ではないかと思います。

このような個々の企業努力も必要ですが、最も重要なポイントは政府がどの問題にプライオリティを置くかだと思います。よくあることですが、政府の問題に対する対応が場当たり的で長期的な解決になっているものがありません。多くの事を解決しようとせずに、ベトナムは最も苦手とする長期的なプランが必要です。

中国はFDIを盛んに誘致したため、インフラが整えられ、雇用が創造され、税収を増やし、莫大な貿易黒字を産むことができました。ベトナムも同じくFDIをより多く受け入れそれによる利益を享受する姿勢を取るべきだと思います。


2012年にはWTO加盟5年目を迎えて多くの分野を外資に開いていかないといけませんが、最近はそれに逆行するような規制も多くみられます。今年の下半期6か月でベトナムは国としての方針を決めることができるのでしょうか?ベトナムは地理的に有利な点を多く持っていますが、カンボジア等の近隣諸国も外資誘致に積極的な姿勢を見せていて、ベトナムの魅力はどんどん下がっています。この6か月が本当にNEXT CHINAになれるかどうかの正念場です

昔の日本とおませなベトナム

今のベトナムを表す言葉としてよく「1960年代の日本」や「三丁目の夕日」の頃の日本と似ていると言われたりします。たしかに今のベトナムはインフレは未成熟ですが、国が一丸となってよりよい生活をしようと邁進しているように思えます。その反面ホーチミンでは南国特有のゆったり感もあって、独特の雰囲気です。


ホーチミン市内では高層ビルも増え、まだ建設中の物もあります地下鉄などのより進んだインフラの建設計画もありまし、多くの人がバイクをやめ、車を購入する等、購買力も徐々に上がってきています。ベトナム人の勤勉性(ここに意見がある人もいらっしゃると思いますが)が日本人と似ていることもあり、昔の日本を知る人はそのイメージをベトナムに重ねるのでしょう。


しかしそのままでベトナムに来られるとかなりギャップを感じられることがあると思います。一番のギャップは電化製品と情報量です。


昔の日本では三種の神器(テレビ・洗濯機・冷蔵庫)が普通の国民にはなかなか手が出ない高嶺の花としてありましたが、いまではほとんどの家で薄型テレビがあり、ぼろぼろの家ではテレビは大きな液晶テレビというおもしろい風景がよくあります。


その代わりとなるものが携帯電話/スマートフォンでしょうか。定価よりも高いシンガポールなどから持ち込まれたスマートフォンやiPad等が飛ぶように売れています。月収以上と思われる物もありますが、それでもどんどん売れています。


パソコンとスマートフォンのおかげで、ベトナムの人が持っている情報量は1960年代の日本人とは比べ物にならなくなりました。多くの人がファッションブランドの名前やそれぞれのシーズンのコレクションについても知っていますし、アメリカやヨーロッパで流行っているものを知っています。これは1960年代の日本ではありえなかったことです。


インターネット以前は購買力=情報力でしたが、今は携帯電話かパソコンさえあれば誰でも様々な情報にアクセスすることができます。購買力では先進国に比べればまだまだ及ばないベトナムですが、情報量では同等以上の物です。また先端技術の製品が安くなっているので、いきなりその技術を導入したりと今までの常識が通じない面も多々あります。


先入観と過去の経験だけでは簡単に太刀打ちできなくなったベトナムをはじめとする新興国。先進国の持つイメージと現実のギャップは日に日に開いて行っています。この成長する国々とビジネスをしようと思うと日本企業も動くスピードを速めないといけませんが、韓国企業等にくらべてまだまだ遅い日本。もはや先進国が新興国を見下してビジネスをする時代ではないと思いますが、いつになれば日本企業はこの現実に気付くのでしょうか?

ベトナムと中国:中国の新しい作戦

ちょっと前の記事ですが、さすが中国という感じの記事が日経に載っていました。

「中国、カンボジア・ラオスに急接近 援助でASEAN分断」 日経新聞 6月11日
http://www.nikkei.com/etc/accounts/login?dps=3&url=http%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Fnews%2Flatest%2Farticle%2Fg%3D96958A9C9381959FE2EBE2E6E18DE3E2E2E4E0E2E3E39494E3E2E2E2

現在南沙諸島付近の海域を巡って、ベトナムとフィリピンは中国と衝突を重ね、中国の度重なる調査妨害などによって緊張は日に日に高まっています。それに合わせてアメリカも直接介入はまだしていませんが、ベトナムとパートナー関係を結ぶと宣言したり、軍艦を派遣すると言ったり、この対立の乗じて、中国にプレッシャーをかけつつ東南アジアでの存在感を強めようとしています。

この記事にある中国にあるアプローチは従来の威圧ではなく、ベトナムに経済的にダメージを与える有効な方法だと思います。カンボジア、ラオスは共に経済力はそれほどありませんが、今後のベトナムの成長に多大な影響を与える重要な隣国です。

昨年ベトナムの中部都市ダナンからラオスを抜けタイ、ミャンマーにまで通じるインドシナ半島を横断する国際高速道路で、それぞれの国での工業製品、輸出物を陸路でダナンまで運び、ダナンから輸出・国内流通、また反対に輸入品をダナンから入れ陸路でそれぞれの国へと運ぶと計画です。このためにベトナムは1000億近い費用をかけ、ダナン港を整備しました。これにより海路だとタイから1週間以上かかるものが半分の3日程で済みます。

またこれと同じように第二東西回廊はホーチミンからプノンペンを通り、バンコクが終点です。

この二つの高速道路は関係国に物流面で時間短縮という恩恵を与えますが、一番恩恵を受けるのはやはりベトナムでしょう。これにより今までシンガポール経由で出ていたコンテナがベトナムから出向することになり、アジアの物流で重要な地位を占めることができます。地理的にも恵まれた条件を存分に生かすことができます。

しかし、これにはいろいろ通関や、コンテナの載せ替えなどいろいろな問題があります(ベトナムは右側、カンボジア・ラオスは左側通行のためトラックを税関で変えなければならない)。

今のところ工業国としてそれほど成長していないラオスとカンボジアにとって、この経済回廊の通過国であり、今のところそんなに利益のあるものではありません。

中国が十分にある外貨準備高を使い(また元の為替を保つためにも使う必要がある)、十分な援助を両国にすれば通関作業などで遅延等でベトナムを困らせる事が出来るでしょう。多くの物流業者にとって、陸路でベトナムへの通関に対して問題が出るのなら、従来通り海路で物流を行う事も十分考えられます。そうなると今までのベトナムの努力は水の泡です。

さすがは中国四千年の歴史だと私は思うのですが、これが領海争いにどのような影響をもたらすのでしょうか?