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ベトナム経済の今と行方

今ベトナムで一番大きな問題は相も変わらずインフレです(少し前までは中国でしたが、日曜日のデモでちょっと落ち着いた感があります)。5月度のCPI上昇率は前年比で19.8%でしたし、ガソリン代、電気代が上がったほか、いろいろな生活の場面でインフレを感じています。

ベトナムのインフレは貿易赤字と外貨準備高不足が大きな原因です。ベトナムドンがもちろん主な通貨ですがアメリカドルも流通し、全体的にドルでの支払いの方がドンより好まれます。ベトナムドンは中央銀行によりレートがコントロールされているため、ドンが切れ下げられる(ドルが高くなる)とドルの需要が減り、外貨準備高が守られ、貿易赤字が縮小するのがセオリーなのですが、ベトナムではあまり効果が見られていません。

原因はベトナムが資源・資材がないために何かを生産するためには原材料を輸入しなければなりません。原材料の輸入への需要が一定に存在するため、ドン切り下げにより貿易赤字縮小の効果は見られませんでした。

逆に切り下げにより、原材料価格がドンベースで上昇したためありとあらゆる物の価格上昇につながってしまいました。

そこで政府は金利を引き上げて流通量を抑制しようとしましたが、これにより多くの企業への資金調達が難しくなり、生産活動が落ちるというサイクルに突入してしまいました。

これに加えてホーチミン、ハノイでの不動産バブル崩壊の懸念もあり、景気がやや減速した感があります。
いくつかのニュースでも今年の成長率は目標に届かないだろうというニュースも見受けられます。

このようにちょっと成長ペースが落ちつつあるベトナムですが、まだ巻き返すチャンスはあります。来年度にはWTOに加盟してから5年目で小売り、流通、証券などの多くの分野で外資に門戸を開かなければいけません。もし本当にこれができればベトナムはまた2007年のような投資ブームを経て大きく成長することができるでしょう。またこれは多くの日本企業にとっても市場拡大のチャンスとなります。

しかし最近ベトナムのWTOへのコミットメントに関してちょっと疑わしい条例等も出ています。もしベトナムが2007年にただ多くの国仲間入りしたいというだけでWTOに加盟したのなら、ベトナムの将来はそんなに明るいとは言わざるをえません。WTOのメリットを享受するという事はそれなりの痛みを伴うプロセスを経なければいけないと言う事をベトナムは分かっている事を願います。どちらにしろ下半期に減速すると予想されるベトナム経済ですが正念場は2012年です!

ベトナムと中国:ついにアメリカも。。。。

最近書いている南沙諸島でのベトナムと中国の衝突にで新しい動きが出てきました。

<米国>ベトナムを対中防波堤に…オバマ政権が位置付け (毎日新聞)

南シナ海の実効支配を強めようと軍事力増強を図る中国の同海域への進出を食い止めるため、中国の隣国で「海域の玄関口」にあたるベトナムに対し、「(オバマ米政権が)軍事面などで大きな役割を担う意思がある」とする報告書を米議会調査局がまとめていたことが分かった。米国は、ベトナムと同様に中国と南シナ海の領有権を争うフィリピンにも軍事支援を進めており、ベトナムなどを“対中防波堤”に位置付けているとみられる。海域を巡る軍拡競争がエスカレートする恐れがある。

 毎日新聞が入手した報告書(今年2月作成)によると、オバマ米政権は中国に対する「戦略上の懸念」から、ベトナムとの関係を「次のレベル」に発展させるため関係強化を進めている。

 米国はフィリピンに対し、中国寄りの姿勢を取っていた前大統領から昨年、政権交代したアキノ政権に積極的な軍事支援を開始している。米政府によると、米国の対外軍事融資額も09年2800万ドルから10年に2900万ドルへ増額した。
 (抜粋)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110604-00000013-mai-int 

今回の中国とベトナムの衝突にはアメリカが参入してくる理由はありませんが、東アジアでの最大の同盟国である日本が震災からの復興、原発、政治、経済と大きな問題を抱えているため、しばらくは内向きになる事が予想されます。

昨年世界第二位の経済国になり、近年軍備を拡張している中国はアメリカにとっても最大の頭痛の種のひとつです。本来なら日本がアメリカと共に中国にプレッシャーをかけるべきなのですが、それは当分の間期待できそうにもありません。ベトナムという中国の隣人のパートナーを持つ事は日本からよりもはるかに大きいプレッシャーが期待できます。

またこの南沙諸島は海運上重要なルートの通り道であり、シンガポール、ベトナムからの船をはじめ多くの港をから日本、アメリカに向かう貨物船、またその反対のルートの船ににとって非常に重要な海域です。この海域で緊張が高まるという事は物流に大きな影響を与え、ただでさえ弱っているアメリカ経済または世界経済に大きなブレーキをかけることになるかもしれません。

この数日のベトナム国民の反応と街中でベトナム人を見ていると、この国の人々は本質的にイケイケ(若い人達にこの意味はわかるかな)なのだと思います。それがあったからあんなに長い期間アメリカとやりあい、他にいろいろな要素はあったにせよ、最終的にはこの気質が勝利を呼び込むおおきな一因になったのだと思います。

今回のベトナムの中国に対する態度の裏には他に意図があったかもしれませんが、中国に対してかなりイケイケに対応していました。軍力ではかなりおおきな不安を抱えていたベトナムでしたが、このパートナーシップが大きな自信を与えるのはまちがいありません。

35年を経て、戦争で敗れた相手を対中国での重要なパートナーに選んだアメリカ。アメリカが日本と結んだ関係とは全く違う形立場でのこのパートナーシップは中国に対してどのような結果をもたらすのでしょうか?

もしかしたらベトナムはアメリカが味方になるのを分かっていたので、中国に対してあんなにイケイケになれたのでしょうか?

ベトナムと中国:芝居それとも偶然の一致?

最近いろいろなニュースでベトナムと中国の関係がかなりヒートアップしてます。簡単にまとめると

5/26 にペトロベトナムの探査船が南シナ海で調査活動をしていたところ、中国の監視船にケーブルを切断された。現場はベトナムの排他的経済水域(EEZ)内だったといい、同国は中国政府に抗議した。
 しかし、中国外務省は「自国の管轄海域での正常な取り締まり活動だ」と反論。これに対し、ベトナム側も「水深30メートルでケーブルが切断されており、事前に準備した行為だ」と指摘する。

最初のやり取りがあった海域は南沙諸島とよばれベトナム、中国、フィリピン、台湾などの国々が領有権を巡って争っています。第二次世界大戦終結までは日本の領有地だったのですが、戦後フィリピンが領有権を宣言したのを皮切りに、ベトナム、中国、台湾、マレーシア、ブルネイが入り乱れてのバトルロイヤルになりました(マレーシア、ブルネイは所有している領土なし)。一番の原因は広大な排他的経済水域内の海底資源や漁業権の獲得と1970年代に発見された広大な海底油田です。

参考:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110531-00000094-jij-int

この海域ではベトナムの漁船が以前からたびたび拿捕されており、大きな問題となっていました。この事件の後も5/30にはまた漁船拿捕があり、6月1日にはベトナム漁船に向けて中国軍から威嚇射撃がありました。

この一連の事件を受けて、ベトナム人、特に若者の怒りは頂点に達しており、中国製品のボイコット、またまたデモの話まで出ています。ベトナムではデモは許可されておらず、そのような話があると公安がすぐに動き出すのですが、今回はネット上でデモの話が過熱しているにも関わらず今の所動きはなしです。これを政府からのお墨付きとみて実行に移す話も出ています。

先日のブログでも書きましたが、ベトナムがこのような激しい抗議を中国にすることは珍しく、国民からは賞賛の声も上がっています。また最近近隣諸国から「ベトナムは素晴らしい」系のニュースをよく見るようになりました。最近のインフレで打撃を受けていた国民もその事を忘れ、愛国心と反中国で頭がいっぱいです。


cbsolutionsのブログ-ベトナム人乗組員
ベトナム人乗組員のできる限りの抵抗


普段はする事もない中国に対する抗議をし、中国に対するデモを許して、愛国心を煽ってインフレなどの現実から目をそらすという作戦かなとも思います。不動産市場も徐々に冷めだし、今のインフレ以上の問題が出てくるのを政府は気づいて先に民衆の心をつかもうと政府は動いているのでしょうか?それともこれは7月から発足する新体制のため準備なのでしょうか?もしこれがすべて偶然ならタイミングが良すぎるようなきがしませんか? 

偶然にしても、芝居にしても、結果として今回の事件は国民の心をつかみ、は色々な問題から目をそらすことができました。しかし、この事件によりさらに石油分門への海外からのFDIは落ちるでしょう(以前から多くの外資系石油会社は撤退しています)。石油部門の発展を遅らせるという今回のコストに見合うリターンを果たして政府は得ることができるのでしょうか?