今度は西日本を中心に断続的に大雨が降り続いている。関東地方もこのところ雨が多く、「梅雨はもういい」と嫌気がさしていたところ、ようやく来週後半には「梅雨明けの兆し」というニュースが流れた。東京に4度目の緊急事態宣言発令が決定、など暗いニュースが続く中、わずかに明かりが灯ったようなニュースに感じられた。

 

 梅雨が開ければ、いよいよ夏本番である。夏の花は数々あれど、最も「夏らしい」と感じるのは、私はやはりひまわりである。夏の厳しい暑さにも負けず、太陽に顔を向けてあくまでも背筋を真っ直ぐに伸ばして立っている。そしてパッと周りを明るくするような、まん丸の大輪の黄色い花はやはり魅力的だ。

 

 詩人で画家の星野富弘さんの作品には、好きなものが多いが、その中でも初めて知った時の感動が今もなお薄れないのが、以下に画像を貼ったひまわりのものである。

 

 

 ひまわりは歌の題材にも好んで用いられる。宏美さんが吹き込んだものだけでも、

 

ひまわり「すみれ色の涙」B面、『緋衣草』(1981)

ひまわりのように…『Natural』(2006)

ひまわり…『Dear Friends Ⅵ さだまさしトリビュート』(2012)

ひまわり娘…『Dear Friends Ⅶ 阿久悠トリビュート』(2014)

 

がある。私は勝手に「ひまわり4部作」と呼んでいる。

 

 今日取り上げる「ひまわりのように」は、大好きな田村武也さんの作詞・作曲である。「天気雨」「愛するキモチ!」など、宏美さんに提供された楽曲は、どれも私の琴線に触れるものばかりだ。

 

 「ひまわりのように」は、内容的には4部作の初めの「ひまわり」の数年後を描いたような歌だ。曲調は全く違うが、全体を支配しているノスタルジックな雰囲気は似ている。そして、「ひまわり」冒頭の歌詞「♪ ひまわりが咲いてるだけの 小さな駅から」に対し、この「ひまわりのように」では「♪ 今は 懐かしい 古ぼけた 小さな駅/ホームの 隅に咲いた ひまわりは あの日のまま」と始まる。恰も同じ駅が舞台かのようだ。もしかすると、田村さんは宏美さんの昔の「ひまわり」をご存知で、それへのオマージュでこの曲を書かれたのかも知れない、などと想像を逞しくしてしまう。

 

 昔、何の約束もせずに町を離れる恋人を見送った娘。数年後、その恋人を思い出し、「♪ 遠い夏の日があなたを見てる/今でも元気でいるかと」懐かしむ。

 

 若い頃は、「♪ 背すじのばして天を仰ぐ/ひまわりの一途さが/なぜか今は憎らし」くさえあった主人公。だが今では、「♪ 胸を張って 咲いている/あの向日葵(はな)のように 生きよう」と、ひまわりの一途さを受け入れる。そして最後、「♪ 背筋のばして ひまわりが 笑ってた」と、ようやくハッピーエンドになるのだ。

 

 

 編曲は古川昌義さん。どちらかと言うと素朴で地味目のアレンジが多い古川さんだが、この曲は田村さんのメロディー・メイクに触発されたか、洒落たサウンドである。

 

 宏美さんの歌は、Aメロ・Bメロとセピア色の心象だが、サビ(♪ 遠い夏の日があなたを見てる〜)で俄かに盛り上がり、画面に色がついていくようにクリアになる。従来の宏美節には見られなかったようなフレージングである。また、バックコーラス(高尾直樹、山田洋子)の入り方が粋だ。

 

 特に、「♪ 夢を追いかけて 生きてた/太陽に顔を 上げたら」の「てた/たら」のファルセットは、初めて聴く声の出し方のように思う。ここを聴くたびに私はテンションが上がる。😍しかも、その部分の【Gmaj7→A7/G→F♯m7→Bm7】というコード進行が、ラストの3度目だけ【Gmaj7→A7/G→F♯m7→F6】と変わるのが何とも痺れる。

 

 そして、「コーラスが耳に残る宏美さんの歌ベスト20❣️」でも触れた通り、ツーコーラス終了後のコーラスが突如英語になる。古川さんのエレキのソロが炸裂、郷愁を誘う風合いはどこかに吹き飛んで、垢抜けた印象を残してフェイドアウトしてゆくのだ。

 

(2006.2.22 アルバム『Natural』収録)