4thアルバム『ウィズ・ベスト・フレンズ』収録の佳曲。阿久×筒美というデビュー当時の鉄板コンビの作品である。このアルバムのオープニング・シングルである「悲恋白書」から、宏美さんはいったん生みの親の京平先生の手を離れている。そう考えると、この曲は「想い出の樹の下で」「わたしの1095日」等と共に、アルバムの中では早い時期の作品と考えられる。

 

 昨日この曲について書こうと思い、得意な筈の脳内再生をしようとしたら、なんとイントロが思い浮かばなかった。😓それならと、アルバムで1曲前に収録されている「パパにそむいて」のアウトロから脳内再生を始めたところ、無事にイントロが頭の中で鳴り出した。それはそれですごいと自分で思う私。✌️😜

 

 3拍子のような不思議なイントロの入りから、すぐ16ビートフィールの軽快なサウンドに切り替わる。宏美さんが、若々しい伸びのある声で「♪ 駄目なの あなたなしでは〜」の頭サビのリフレインを歌い出す。本当の愛を知って生まれ変わった私。このまま“コンサート”のように2人のデュエットを続けたい、という熱烈なラブソングである。

 

 キーはEマイナーで、幸せなはずのラブソングが若干哀調を帯びて聞こえなくもない。でもそこは、16ビートのリズム感が弾む気持ちの盛り上がりを代弁する。

 

 頭サビの部分をAメロとすると、この曲はA+BB’A×2+Aというシンプルな構成。Bメロが繰り返されてB’のパートとなると、最後の「♪ にぎりーしたまーまでーー」の「め」で上のDまで使い、「でーー」の伸ばすB音が、ドミナントに行く前に、F♯m7と印象的なコードを挟む。そして1小節余分に引っ張り、サビが戻ってくるのだ。

 

 また、1番と2番の間の間奏のフレーズが、2番の後には「♪ ラララ…」のスキャットで歌われ、半音上がってリフレインが繰り返される。ファルセットも駆使したスキャットから、半音上がる部分は、美しく緊張感が高まってゆき、宏美さんの高音が透き通ってキラキラしている。私の好きな箇所である。

 

 このアルバムは中低音がよく響く曲も多いが、この曲はどちらかと言うと、よく伸びる高音をフィーチュアした楽曲と言えるだろう。

 

 

 以前、私の弟が、宏美さんの歌が頭の中で回ってしまい、何の曲か調べたら「夏からのメッセージ」だった、というお話をさせていただいた。同じようなことが、1年くらい前にこの曲でも起こり、弟から「調べたら『コンサート』という曲だったけど、何のアルバムだったっけ?」というLINEが来て、盛り上がったことがあった。その時のやり取りの雰囲気がよくわかるので、一部をスクショでご紹介したい。

 

 

 ドッペルドミナントについては、「感傷時代」「なごり雪」「宏美さんの主要楽曲に見られる平行調への転調」のブログでも触れたので、そちらもご参照願いたい。ドッペルドミナントという、ノンダイアトニックコード(そのキーの音階にない音を含んだコード)が鳴るのだが、この「コンサート」では、まさにそのキーの音階にない音がメロディーラインに来るのだ。楽譜や楽器については知識や経験のない弟だが、「♪ 生きて行けない/っかりと 〜」の「し」のA♯の音に耳が反応したらしい。

 

 LINEのスクショの通り、ドッペルドミナントについて「読めば読むほどちんぷんかんぷん」だと言うので、「『女優』『スローな愛がいいわ』徹底比較」以来の「ピアノで解説動画」を送りつけた(笑)。

 

 ここは、Aの音にシャープが付くだけではなく、減5度の下方跳躍で、音程も取りにくい(楽譜参照)。だが、ドッペルドミナント→ドミナント→トニック、と収まり良く解決している。しかも楽譜にして改めて眺めてみると、出だし2小節のモチーフが、1音ずつ下がりながらきれいに3回繰り返している、よくできたリフレインである。

 

 

 ラストに半音上がって盛り上がり、「♪ 二人の 愛のコンサート」で歌い終わると、アウトロが少しずつリタルダンドしながら曲が収束する。そして、切ない片想いを歌うワルツ「花のことづけ」へとバトンが渡されるのである。

 

(1977.5.25 アルバム『ウィズ・ベスト・フレンズ』収録)