「最近、忘れっぽい」「集中できない」と感じることはありませんか?

脳の容量は7±2」一度に処理できる情報は5〜9個が限界、

という心理学のお話をしました。

でも、日常を思い返すとどうでしょう。
買い物リスト、夕飯の献立、家事の段取り、子どもの予定、仕事のタスク、

友人からのLINE…。
気がつけば、脳のお皿はすぐにいっぱい。忘れ物やうっかりは、

サボっているせいではなく、ただ脳がフル稼働で疲れているだけなのです。

そこでおすすめしたいのが「1分リセット習慣」。
特別な道具はいりません。なんと、冷蔵庫やペットボトルが

最高のリフレッシュグッズになります。

 

冷蔵庫でリセット

ドアを静かに閉める
いつものように「バタン!」と閉める代わりに、

そっとゆっくり閉めてみてください。
たったこれだけなのに、不思議と気持ちも静まり、

脳の中のざわざわまで小さくなっていきます。
冷蔵庫は、意外と瞑想の入り口になるんです。

 

ペットボトルでリセット

① 耳に当てて水の音を聞く
冷えたペットボトルを傾けると、ゴボゴボ…と小さな水の音。
自然のせせらぎのようで、ふっと心が落ち着きます。

 

コップに目を閉じて注ぐ
目を閉じて「まだかな?」と感覚だけで試す遊び。
その一瞬、余計な考えはどこかへ消え、頭の中がリセットされます。

 

 

ペットボトルを逆さに立ててみる
机の上で逆さにチャレンジ!
成功しても失敗しても、「何やってんの私」と笑えるだけで、

気分が切り替わります。

 

首すじに冷たいものをひんやり当てる
冷たい感触が自律神経に働きかけて、一瞬でシャキッとします。
気持ちがのぼせているときにおすすめです。

ラベルを指でなぞる
意外と凹凸のあるラベル。文字や模様をゆっくりなぞると、

触覚に意識が集中し、頭がスッキリ。
 

これらは、ちょっとしたマインドフルネス体験になります。

 

 

脳を守るリセット法は、難しいことではなく

「日常の中に、ちょっとした変化を持ち込む」こと。
冷蔵庫のドアを静かに閉めるなどの遊びが、

脳には最高の休憩時間になるのです。

「なんだか疲れたな」と思ったら、ぜひ試してみてください。
きっと脳も気分も、ふわっと軽くなります。

 

 

先週は、人の脳には「7枚前後のお皿=短期記憶の限界」があることを紹介しました。

今回は、そのお皿がどのように使われ、どんな情報が長期的に残っていくのか、

さらに「忘れっぽさ」と「睡眠」との関係について考えていきます。。

 

7つまでしか覚えられないのはなぜ?

心理学では「マジカルナンバー7±2」と呼ばれ、一度に覚えておける情報は平均で7個前後とされています。

数字やかな文字は7つ前後までなら覚えられますが、それを超えると忘れやすくなります。

一方で「ひとつの物語」としてまとめて覚えれば、それも1つの“お皿”に収まります。

数字なら「3792485」で7桁が限界、短い物語なら「昔話1つ」で1チャンク、

買い物リストも7品目くらいまでなら暗記可能。情報は「どうまとめるか(チャンク化)」によって、

お皿に置ける量が変わるのです。

 

記憶に残るかどうかの基準

①       脳は「残すべきもの」を選び取るフィルターを持っています。

②       感情が伴うか → 感動や驚きがあれば強く残る

③       繰り返されているか → 九九や歌詞のように自然に定着

④       必要性があるか → 今日必要な予定は優先される

⑤       目的や計画と関連しているか → 興味や目標に合うと残りやすい

 

忘れっぽさの正体

最近「物忘れが増えた」「記憶力が落ちた」と感じる方も多いでしょう。

もちろん加齢の影響もありますが、実は情報過多そのものが原因の場合も少なくありません。

スマホやSNS、ニュース、動画から毎日大量の情報が流れ込み、脳は「お皿7枚」ではとても処理しきれません。

その結果、不要な情報をどんどん捨てるようになり、「思い出せない=脳の正常な防御反応」でもあるのです。

 

睡眠と記憶の関係

脳は眠っている間に、日中のお皿に乗った情報を整理し、必要なものを長期記憶へ移し替えます。

①       ノンレム睡眠(深い眠り):情報を定着させる時間

②       レム睡眠(夢を見る眠り):記憶を整理・再構築する時間

しかし、寝る直前までスマホや動画を見続けると、脳は情報でいっぱいのまま布団に入るため、

整理が追いつかず、記憶が定着しない・眠りが浅い・翌日ぼんやりするといった悪循環に陥ります。

 

脳には7枚のお皿しかなく、その上に置けるのは限られた数の情報です。

感情・繰り返し・必要性・目的というフィルターを通ったものだけが、本棚(長期記憶)にしまわれます。

そして、その作業をしっかり行うためには良質な睡眠が欠かせません。

「忘れっぽい」と感じるのは、必ずしも脳の衰えではなく、情報過多や睡眠不足のサインかもしれません。

脳に余白を与え、夜にはスマホを閉じ、安心して眠ることこそが、現代社会に必要なストレスケアの習慣なのです。

 

ふれあい広場のご案内

今月のふれあい広場では「不眠」をテーマに取り上げます。
情報過多と眠りの関係や脳温、そして心身を休める工夫について学べる時間です。

眠りに悩む方も、より良い睡眠習慣を身につけたい方にも有意義な時間となります。

 

 

 

眠れない「あるある」リスト

心と頭のあるある

1.        布団に入った途端に 昼間の出来事や失敗を思い出してクヨクヨする。

2.        明日の予定を考え出して 頭が止まらなくなる。

3.        「早く寝なきゃ」と思えば思うほど 余計に目が冴える。

4.        どうでもいいことや嫌な体験が 頭の中でエンドレス再生。

体のあるある

5.        足がムズムズして 寝返りばかり打つ。

6.        暑いのか寒いのか分からず 布団をかけたり外したり。

7.        ちょっと喉が渇いて水を飲みに行き、 目が完全に覚める。

8.        寝返りの音やパートナーのいびきに イライラする。

翌日のあるある

9.        「やっと眠れた」と思ったら 目覚ましが鳴る直前。

10.    寝不足の朝に「今日は昼寝しよう」と思うが、結局できない。

昼間は眠いのに夜になると また目が冴える。

 

今週は、現代人にとって身近な「情報過多とストレス」の関係を、脳科学の視点から見てみていきます。

 

脳のキャパシティは「7±2」

人間の脳には、一度に処理できる情報の量に限界があります。心理学では「マジカルナンバー7±2」と呼ばれ、短期的に覚えたり扱える情報は5〜9個程度に収まることが分かっています。つまり、脳の中には7枚前後のお皿しかなく、それを超えて情報を盛りつけてしまうと、自然とこぼれ落ちてしまうのです。

 

YouTubeやSNSからの情報はどれくらい?

現代人が日常的に触れるYouTubeやSNSの情報量は、この「お皿の数」をはるかに超えています。

YouTube:10分の動画1本で、本の数十ページ分に相当する情報量。

SNS:1分で10〜20件の投稿を目にし、1日2〜3時間の利用で数千件の情報断片を処理。比較すると、江戸時代の人が一生で触れる情報量は現代の新聞1日分程度といわれています。つまり、私たちは1日で「一生分以上」の情報を浴びているのです

 

 

 

情報過多がもたらす弊害

情報が溢れると、脳は常に処理落ち状態となり、・集中力が続かない・記憶に残らない

・判断が浅くなるなどの影響が出ます。さらに、自律神経が乱れて不眠・イライラ・焦燥感といったストレス症状にもつながります。布団に入ってからも情報を反芻してしまい、交感神経が優位のまま「過覚醒状態」となり、眠れない夜を過ごす人も少なくありません。

 

情報を整える工夫

①       情報過多のストレスケアは「情報の断食」に近い発想が役立ちます。

②       寝る前1時間はスマホを見ない

③       SNSやニュースのチェック回数を減らす

④       深呼吸やホメオストレッチで脳をリセットする

秋は副交感神経が働きやすくなる季節です。少し工夫するだけで眠りの質は大きく変わります。

確かに、情報は生活を豊かにしてくれますが、脳のお皿が7枚前後しかないことを思い出すと、必要以上に詰め込むリスクも見えてきます。情報の量と質をコントロールし、脳と心に余白を与えることが、現代社会を健やかに生きるカギといえるでしょう。

ふれあい広場では「不眠」をテーマに安心を得る工夫について取り上げます。情報過多と眠りの関係についても考えていきたいと思います。

― 9月30日「ふれあい広場」ご案内

「布団に入ってもなかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」

「朝早くに目が覚めてもう眠れない」

――こうした不眠の悩みは、決して珍しいことではありません。

人はなぜ眠りが必要なのか?

眠りは、ただ体を休めるだけの時間ではありません。

  • 脳の老廃物を排出し、神経細胞をリセットする

  • 記憶を整理し、学んだことを定着させる

  • 免疫機能を高め、体を修復する

  • 自律神経のバランスを整え、心を安定させる

とくに脳は、眠っているときに“お掃除屋さん”のように働きます。
起きている間にたまった情報や疲労物質を片づけ、必要な記憶はきちんと整理整頓。

レム睡眠のときには、起きているとき以上に活発に活動していることがわかっています。
つまり睡眠は「休息」ではなく、「脳と心の大掃除の時間」なのです。


今回の 「ふれあい広場」(9月30日開催・オンライン/無料) では、
40年以上にわたりストレスケアの臨床に携わってきた経験をもとに、

最新の睡眠科学の知見を交えながら、次のようなテーマをわかりやすくお話しします。

講座内容(予定)

  • 夜中に目が覚めたとき、やってはいけないこと
    時計を見る、ベッドにとどまり続ける、――こうした行動が眠りを妨げる理由を科学的に解説します。

  • やるとよいこと
    五感を使った感覚瞑想など、臨床と研究の両面から効果が確認されている方法をご紹介します。

  • 「眠れない」を「安心できる静かな時間」に変えるヒント
    完璧に眠ることを目標にするのではなく、心と体を少しずつ緩めることで自然に眠りが訪れる。

  • そんな考え方を一緒に共有します。


特徴

  • 無料で、どなたでも参加可能

  • 科学的根拠に基づき、すぐに実践できる方法をお伝えします

  • 日常生活にすぐ役立つ「わかりやすい工夫」を中心にご紹介


眠りは「頑張って得るもの」ではなく、「緩めることで自然に訪れるもの」。
そして眠っている間に“脳のお掃除屋さん”が働いてくれると考えると、

眠りの大切さがぐっと身近に感じられるはずです。

ぜひお気軽に、9月30日の「ふれあい広場」 にご参加ください。

まだ、日中は30度を超える暑さが続きますが、朝夕には涼しい風が吹きはじめ、下旬からは秋の気配が少しずつ感じられるようになってきます。季節の移ろいは、私たちの体と心にさまざまな影響を与えます。その中でも「眠り」は特に敏感に反応します。

これまで「眠れない」「夜中に目が覚める」といった不眠の悩みをお伝えしてきました。特にお母さん世代は、家事や子育て、介護や仕事との両立で心身ともに休まらず、「布団に入っても眠れない」「夜中に何度も目が覚める」といった声が少なくありません。

 

あるお母さんの事例です。
昨年の夏も気温が下がらず、エアコンをつけても寝苦しい日が続きました。子どもの夜泣きに何度も起こされて熟睡できず、朝になっても疲れが抜けません。昼間は集中できず、つい子どもにきつい言葉を投げてしまうこともあり、「どうして眠れないのだろう」と自分を責めてしまう…。眠れないこと自体が心の負担を大きくしてしまうのです。しかし、10月初旬になると、状況は変わりはじめます。夜風が涼しくなり、布団に入ると体温が自然に下がって眠りにつきやすくなります。さらに日照時間が短くなることで「メラトニン(眠りのホルモン)」が増え、眠気が訪れやすくなります。本人も「あれ? 気づけば夜中に起きずに眠れた」と驚くほど。翌朝の目覚めも軽くなり、昼間の気分もぐっと楽になったのです。

 

秋が眠りにプラスになる科学的理由

①       深部体温が下がりやすい → 秋の涼しさは自然な入眠を助ける。

②       メラトニンの分泌が増える → 日照時間が短くなることで眠気が訪れやすくなる。

③       自律神経の安定 → 夏の暑さで優位になっていた交感神経が落ち着き、副交感神経が働きやすくなる。

 

今週の実践ヒント

①       就寝前は静かな時間を持ち、心を落ち着ける。

②       朝はカーテンを開けて光を浴び、体内時計を整える。

③       短い昼寝やホメオストレッチを取り入れ、睡眠リズムを戻す。

 

30日のふれあい広場に向けて

今月30日の「ふれあい広場」では、不眠を話題に取り上げます。眠れない夜は誰にでもありますが、「秋は眠りを後押ししてくれる季節だ」ということを知るだけで、気持ちは軽くなります。同じ悩みを共有しながら、安心を得て、新しい工夫やヒントを持ち帰っていただけるはずです。

秋は、眠りを整え直すための大きなチャンス。今週は、体と心のリズムに寄り添ってみてください。

眠れない夜が続くと、「このまま眠れなかったらどうしよう」と不安になり、ますます眠れなくなることがあります。不眠症にはいくつかの典型的なパターンがあり、それぞれに原因や特徴があります。

不眠症の3つの症状

  • 入眠困難
    布団に入っても30分以上眠れない状態。不安や緊張、ストレスが原因となりやすく、若い世代にも多く見られます。

  • 中途覚醒
    夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか眠れない状態。頻尿や痛み、加齢、睡眠時無呼吸などが関係することがあります。

  • 早朝覚醒
    予定より2時間以上早く目が覚めてしまい、その後眠れない状態。特に高齢者やうつ病、気分障害と関連があるといわれています。

つまり、

  • 「寝つけない」=入眠困難

  • 「途中で目が覚める」=中途覚醒

  • 「早く目覚めすぎる」=早朝覚醒

この3つが不眠症の代表的な症状です。

不眠症 ― 3・3・2・30の法則

不眠症を理解するうえで重要な数字があります。

  • 週3回以上 … 不眠の症状が出る頻度

  • 3か月以上 … 慢性不眠症と診断される持続期間

  • 30分以上 … 入眠や再入眠にかかる時間の目安

  • 2時間以上 … 望む起床時刻より早く目が覚めてしまう基準

覚えやすい「3・3・2・30の法則」として知っておくと、不眠の目安を理解しやすいでしょう。


夜中に目が覚めたときの対処法

眠れないときに「やってはいけないこと」と「やってよいこと」があります。

やってはいけないこと

  1. 時計を見ない
    「あと何時間しか眠れない」と焦ると、コルチゾール(ストレスホルモン)が分泌され、余計に眠れなくなります。

  2. 20分以上眠れないのにベッドにとどまる
    眠れないベッドが「苦しい場所」になってしまうので、一度ベッドを出て静かに過ごしましょう。

  3. 水を一気に飲まない
    胃腸に負担がかかり、逆に眠りを妨げることがあります。

やるとよいこと

  1. 温める
    温かいお湯を少し飲んだり、手足を温めたりすると安心感が得られます。特に足指や手の指を温めるとリラックスしやすくなります。

  2. 感謝日記と不安整理
    感謝できることを3つ書き出してみましょう。同時に心配や不安を書き出して「不安整理箱」に入れるような気持ちで手放します。

  3. 五感に集中する

  • 目に映るものを5つ見る

  • 触れている感覚を意識する

  • 聞こえる音を3つ感じる

  • 匂いを2つ意識する

  • 口の中の味を1つ感じる

この「感覚瞑想」によって、思考の渦から離れ、今この瞬間に心を戻すことができます。

 


大切なのは「眠れないことを悪いと決めつけない」こと

眠れない夜があっても、それを「失敗」と思わないことが大切です。完璧にできなくても構いません。何かひとつでもできたら十分。

眠れないときは「静かな時間を過ごせる」と考えてみましょう。そうすることで、心と体が少しずつ緩み、自然に眠りに戻れる可能性が高まります。


👉 不眠に悩んでいる方は、ぜひ今日から「やらないこと」と「できること」を意識してみてください。

 

🌙 眠れない人と眠れる人の決定的な違い

厚生労働省の調査によると、日本人の約2割が「睡眠で十分に休養が取れていない」と答えています。
不眠の原因はさまざまですが、ぐっすり眠れる人には共通点があります。

それは 「やっていること」ではなく「やっていないこと」 にあるのです。


❌ ぐっすり眠れる人が“やっていないこと”5つ

① 寝る直前のスマホやPC

米国睡眠学会(AASM, 2017)の報告では、ブルーライトはメラトニン分泌を抑制し、入眠を30〜60分遅らせることが示されています。
👉 眠れる人は、寝る前1時間はスマホやPCを避けています。


② 寝酒(アルコールによる入眠)

アルコールは「寝つきを良くする」反面、睡眠後半のレム睡眠を減らし、中途覚醒を増やすことが多くの研究で確認されています(Roehrs & Roth, Alcohol Research, 2001)。
👉 眠れる人は寝酒に頼りません。


③ 遅い時間のカフェイン

カフェインの半減期は約5〜7時間。臨床研究(Journal of Clinical Sleep Medicine, 2013)によると、就寝6時間前のカフェイン摂取でも睡眠時間を平均41分短縮させることが報告されています。
👉 眠れる人は午後のカフェインを控えています。


④ 布団の中で“考え事”をする

「眠れない」と焦ると交感神経が優位になり、心拍数が上がり眠気が遠ざかります。
睡眠障害の標準治療(認知行動療法=CBT-I)では、**布団の中では「眠ること以外をしない」**ことが推奨されています(AASM, 2016)。
👉 眠れる人は、布団の中を「眠る場所」として保っています。


⑤ 睡眠環境を整えない

環境医学の研究では、遮光カーテンの使用や18〜22℃の室温が睡眠効率を高めることが示されています。
逆に、光・騒音・高温は中途覚醒のリスクを増加させます。
👉 眠れる人は、寝室を「静かで暗く、涼しい」環境にしています。


🧠 睡眠改善の鍵は「やらない習慣」

ぐっすり眠れる人は特別な才能や体質を持っているわけではありません。
共通しているのは、眠りを妨げる行動を避けていること。


🌟 まとめ

眠りの質を変えるには「やること」より「やらないこと」を意識することが重要です。

ぐっすり眠れる人がやっていないこと:

  1. 寝る直前のスマホやPC

  2. 寝酒

  3. 遅い時間のカフェイン

  4. 布団の中で考え事

  5. 環境を整えないこと

👉 睡眠は「健康」「集中力」「感情の安定」の土台です。
今日から“やらない習慣”を取り入れて、深い眠りを取り戻しましょう。


〜最大半数は睡眠誤認〜

 

「毎日、ほとんど眠れない…」
そう感じて医療機関を訪れる方は少なくありません。
しかし最新の睡眠科学では、**不眠を訴える患者の最大で半数が

「実際には眠れている」という現象が明らかになっています。
この状態は睡眠状態誤認(Sleep State Misperception, SSM)と呼ばれ、

本人の感覚と客観的な睡眠データが大きく食い違うことが特徴です。

 

1. 睡眠誤認とは

  • 定義:脳波計(PSG)やアクチグラフで測定すると十分な睡眠が確認されるにもかかわらず、本人は「ほとんど眠れていない」と感じる状態。
  • 実際は6時間眠っていても「2時間しか眠れなかった」と自己申告するケース。

2. どれくらい多いのか

  • 睡眠専門外来のように「重度の不眠を訴える人」が多く集まる臨床現場では、この割合が半数近くに上る。
  • 一般集団での割合は低めだが、市販の睡眠薬(不眠対策用途)を使用している人にも多い。

3. なぜ起こるのか

心理的要因

  • 不安、うつ、過剰な自己観察が「眠れていない」という感覚を強める。
  • ネガティブな出来事や感覚を強く記憶する脳の性質(ネガティビティバイアス)が影響。不眠症とは眠れていないという不安感という専門医もいます。

生理的要因

  • 睡眠中に覚醒に近い脳波が頻発すると「眠っていない」と認識しやすくなる。
  • 時間感覚のずれ(時間知覚機能の変化)によって睡眠時間を短く見積もる。

4. 「眠れていない」という不安の影響

  • 不安は交感神経を刺激し、実際の入眠を妨げる。
  • 夜間の覚醒時に時計を見る行動は不眠感をさらに悪化させる。
  • 睡眠アプリやスマートウォッチの数値が“悪いと表示されることで不安が増すケースも。

5. 誤認を修正するためのアプローチ

  1. 客観データの確認
    • アクチグラフや睡眠日誌を用いて、実際の睡眠時間を可視化する。
  2. 認知行動療法(CBT-I)
    • 「眠れていない」という思い込みを和らげ、睡眠衛生を整える。
  3. 心身の緊張を緩める習慣
    • 副交感神経を優位にし、入眠しやすい状態を作る。

「眠れていない」という感覚は必ずしも事実とは限りません。
不眠を訴える患者の最大半数は、実際には十分な睡眠をとっている「睡眠誤認」です。
この自己判断の落とし穴に気づくことが、不安を減らし、眠りの質を高める第一歩になります。

 

9月の「ふれあい広場」でも詳しく取り上げます。

1. 交感神経は「戦う力」と「集中力」を引き出すエンジン

交感神経の基本的な役割(心拍数・血圧上昇、筋肉への血流増加、集中力アップ)

運動前や大事なプレゼン、試験前などの「短期的緊張」がパフォーマンスを高める例

短期的な交感神経活性は、私たちの能力を最大化するスイッチという視点が大切。

 

2. 問題は「オンになりっぱなし」状態

長期的な交感神経優位の弊害(不眠、消化不良、免疫低下など)

仕事・家事・人間関係で慢性的に“戦闘モード”が続く現代人の特徴

「交感神経は悪ではない、使いすぎが問題」という考え方を持とう。

 

3. 回復のための「副交感神経タイム」を意識する

副交感神経が働くときの体内変化(血圧低下、消化促進、脳の休息)

交感神経→副交感神経への切り替えが心身の修復・成長の鍵

ポイントは“意識的にオフをつくる”こと、

 

4. 日常でできる「交感神経→副交感神経」切り替え法

深呼吸+ホメオストレッチ(胸郭の柔軟性を高め、副交感神経を優位に)

目を閉じて3分間の“感覚集中”法

温熱刺激(ぬるめの入浴や足湯)

自然環境(緑や水辺)への短時間アクセス。忙しい人ほど時間を作れます。

 

5. ストレスを“力”に変える3ステップ

必要なときに交感神経をオンにする(目的・時間を明確に)

終わったら副交感神経優位の回復期を確保(短時間でもOK)

このリズムを毎日の生活に組み込む(習慣化で自律神経が柔軟に)

 

ストレスは本来、私たちが環境に適応し、生き延びるための重要な仕組みです。
大切なのは「交感神経を必要なときに使い、副交感神経でしっかり回復する」リズムを持つこと。
このメリハリが、心も体も強くし、ストレスを味方に変えてくれます。

 

〜深部体温とは異なる「脳の温度」が睡眠の質を決める〜

 

睡眠科学の最新研究では、「脳温(Brain Temperature)」という概念が注目されています。

脳温とは、脳組織の実際の温度のことで、腋下や口腔で測る一般的な

体温(core body temperature)とは異なります。
この脳温が高い状態では、深い睡眠(徐波睡眠)が大幅に減少し、

翌日の認知機能や気分にも悪影響を及ぼします。

つまり、睡眠の質を高めるためには「脳温をいかに適切に低下させるか」が鍵なのです。

 

1. 脳温と深部体温の違い

  • 深部体温(core body temperature):内臓や筋肉の温度。直腸や食道で測定可能。
  • 脳温(brain temperature):脳組織の温度。脳血流、代謝活動、外気温、熱放散の状態で変化。
  • 深部体温が低下しても、脳温が高いままだと入眠しにくく、深い眠りに入りにくい。

2. 脳温が睡眠に与える影響

  • 睡眠の最初の3時間に現れる徐波睡眠(Slow-Wave Sleep, SWS)は、脳温の低下がスイッチとなる。
  • 脳温が0.5℃高いだけで、徐波睡眠の時間が約50%減少するという報告(国立精神・神経医療研究センター)。
  • 高脳温状態が続くと、入眠潜時(寝つくまでの時間)が延び、夜間覚醒が増える。

3. 脳温を下げる3つの科学的アプローチ

  1. 末梢血管拡張による放熱
    • 就寝30〜60分前に足湯や手足の温熱刺激で末梢血流を増やし、脳からの熱放散を促す。
  2. 副交感神経優位への移行
    • ゆっくりとした呼吸(例:4秒吸って8秒吐く)やホメオストレッチで心拍数を下げ、脳血流量を調整。
  3. 環境温度と湿度の最適化
    • 室温は26℃前後、湿度50〜60%が放熱を助ける条件。冷やしすぎは逆効果。

4. 「眠れない夜」の応急対策

  • 夜中に覚醒した場合は、一度ベッドから出て暗く静かな場所で座り、脳温が下がるまで待つ。
  • 思考が止まらないときは、紙に書き出して外部化し、脳の活動レベルと代謝熱を下げる。

5. 朝の行動が夜の脳温低下を決める

  • 起床後30分以内に太陽光(2,500ルクス以上)を浴びることで、体内時計がリセットされ、約16時間後にメラトニン分泌ピークが訪れる。
  • 朝の軽運動は夜の深部体温低下と脳温降下を促し、自然な眠気を生む。

「よく眠れる人」は、意識せずとも脳温の下降を促す生活習慣を持っています。
脳温を科学的に管理することで、睡眠の質は飛躍的に向上します。

放熱ルートの活用、副交感神経への切り替え、環境調整

この3点を組み合わせれば、眠りは確実に変わります。

 

 ホメオストレッチが脳温に作用しうる理由

① 副交感神経優位への移行

ホメオストレッチは胸郭をゆるめ、呼吸筋の緊張を解きます。

その結果、呼吸が深く・ゆっくりになり、心拍数と血圧が低下。

副交感神経が優位になると、脳の血流量が適正化され、代謝活動による発熱が抑制されます。

 

② 末梢血流の促進による放熱

体幹部の緊張が緩むことで、血管が拡張し、末梢(手足)への血流が増えます。

これにより脳から末梢への熱放散が促進され、脳温の低下につながります。

 

③ 頸部周囲の血流改善

ホメオストレッチでは首〜肩の筋緊張もゆるむため、頸動脈・椎骨動脈を通る血流がスムーズになります。

脳の冷却は頸部を通る血流の温度差でも影響を受けるため、この改善が脳温低下をサポートします。