う~ん。。。このザックはキライではないけれど、
これを使う限りはとてもオシャレなキャンプには程遠くなるなぁ…
と呟いてしまう。
 

条件が揃えば最強のザック“グラン・クロワール 

 95年だか96年に購入した山岳系の大型ザックです。
それまで使っていた大型のザックといえばmt.DAX社の70ℓ級だけでした。
ザックの自重は3.0kgちょっと。(手元にデータがないので詳細は不明)
約25~30Kgの荷物を背負うことができました。

 ある時、
「背負いやすさよりも、軽いザックを!」
と魔がさしたような考えに囚われてしまい、アライテントのグランクロワールを購入しました。
まぁだいたい70ℓの荷物を背負うシーンよりも50~60ℓくらいの荷物を背負うシーンの方が圧倒的に多かったこともありますが。

クロワール5
メインの素材はスパイダロン
僕が購入した当時はダイナモナスという

ポリエステルとケブラー(アラミド繊維)のハイブリッド地がメインの素材で、
引き裂き強度耐摩耗性耐熱性(難燃性)にすぐれた布地だったそうです。

最近のスパイダロン製のグラン・クロワールは、
前述のダイナモナスよりも強度がアップしているようですが、
スパイダロン製のグラン・クロワールは1650g

ダイナモナス性グラン・クロワール1550g
カタログのスペック上で約100g重くなっています。
とは言え、55~65ℓクラスのザックとしては
かなり軽量なザックに仕上がっています。

ダイナモナス2

 新しいスパイダロン製グラン・クロワールを手にとったことがないので詳しく語れませんが、
カタログを見るかぎりではザックの造りはほとんど変わっていないように見えます。
左右のハーネス、ハーネスに付いているチェストベルトとスタビライザー、長さ調整のためのストラップ、必要最低限度のクッションの付いたウエストベルト、サイドコンプレッションベルト、ピッケル留め用のループ…等々、
ほとんど変化が見られません。
クロワール2クロワール3
サイドポケットは極小でフロントポケットもありません。
アライテントのザックは、今も昔も造りが本当にシンプル。(普通の山行であればこれだけで十分!)

クロワール4

このシンプルな造りと、メインの素材スパイダロン(ダイナモナス)がとても軽いので、このクラスでは驚くほど軽量です。カタログベースで公称1650gとありますが、実際に手にとるとその軽さに驚くことでしょう。そして強靭なザックとなっています。

 コンクリートやアスファルトの上を10mほど引きずったくらいでは穴さえ開かなかったくらいです!

 

アライテント RipenGlan COULOR グラン・クロワール


容量 55L(本体)+10L(雨蓋)
重量 1650g(旧ダイナモナス製1550g)
背面長 42cm(ショートタイプ)、48cm(ノーマルタイプ)の2種
カラー 4色/ブルー、グレー、ブラック、マスタード
素材 スパイダロン®リップ

●メーカー希望小売価格 ¥33,600(税込¥36,960)
 

 

サーチたらく亭のレビュー

…というよりネチネチと良いところ考察
 

 最初に正直な本音として書いてしまいますが、このザックやクロワールはキャンプとか軽登山や入門者には不向きだと感じています。
どちらかと言うと山の熟達者や過酷な環境の海外遠征に向いたザックだと感じています。

(だいたいアライテントの大型ザックを使おうと思う人それなりに思い入れが強い方ばかりだし…)

 旧グラン・クロワール(ダイナモナス製)の布地そのものは、
触感としては薄手のデニム布地というかコットンのような風合い。薄手で軽い感じ。
ところがケブラーのような強靭さがあるため、驚異的な耐摩耗性があります。(←しつこい)
購入した当時、四国の山をこのザックで縦走したことがありました。
だいたい一週間くらいだったと思うのですが、全行程ずっと雨天でした。
 したがってこのザックにレインカバーを装着していたのですが、
ザックのダイナモナスが強靭すぎて、レインカバーの頻繁に擦れる部分が
摩耗してしまい、穴が開いてしまうほどでした。
それほど摩耗性に対しては驚異的な強さがあります。
すり切れたり、こすれて破れるってことに対して非常に強いから、
防水性さえあれば、テントのボトム部分やグランドシートに最適だったのに。。。と残念に感じます。

ちなみに2000年くらいの頃、モンベルのアルパインジャケットの肘宛ての補強部分や
ズボンの膝宛ての補強部分などにも、このダイナモナスが採用されていました。
それほど耐摩耗性には驚異的な強さを有してました。
 

 このザックは100回くらいは使っていますが、破損した箇所はありませんし、
購入後30年近く経過していますが、なんの障害もなく使用できています。
耐摩耗性については驚異的な強さと耐久性があります。
きっと最新のスパイダロンも同等の強さがあるのでは?と考えています。
そして同じ強靭さを誇るコーデュラ等と比べて圧倒的に薄くて軽い!

 例えるとハンカチ2枚分くらいの厚さで、ザックに詰めた荷物のカタチがくっきりしてしまうほど。

ヘンな言い方で恐縮ですが、女性が「下着のラインがひびく…」って言い方が近いです。

それほど「薄い❗そして軽い」と表現したいだけでして。。。

 

 それから、ザックの素材としてはメリットだけでなく、しっかりデメリットがあります。
まず第一に防水性が皆無ということです。
素材そのものにコットンのような吸水性はありませんし、若干の撥水性はあるのですが
強い雨などでは雨水をそのままザック内部へ通してしまいます。
なのでザックに詰める荷物でどうしても濡らしたくないものは防水性のスタッフバッグなどで保護しなければなりません。
また、レインカバーの購入も必須でしょう。


 次にデメリットというほどではないのですが、この素材は繊維の染色が鮮やかにならないので、とってもとってもダサく見えてしまいます。
もちろんザックの性能とは無関係なので、気にならない人もおられるでしょう。
私も購入当時は気になりませんでしたが、
登山口の最寄りの駅まで行く車中ではけっこう恥ずかしくなりました。
なんか紫外線で妬けたボロボロのザックのようで。。。
当時はブルーとマスタードとベイヴピンクの3色だけ
(執筆後に当時のカタログを発掘しまして、確認したら1997年当時は
ブルーは販売されておらず、マスタードとベイヴピンクの2色だけでした。
完全な記憶違いでした。)

97グランクロワール
97年のアライテントのカタログより。
つまり黄色とピンクしか選択できなかった。

 

そのどれもが色褪せたような色彩でした。


特にベイヴピンクはホントに酷い印象を受けました。

比較的まともなのはブルーだけで、そのためかブルーは人気が高く、品薄でした。
私は山行きの予定が直前に控えていたので、その時に店頭に残っていたマスタードしか買えませんでした。
 このザックを初めて背負って友人と会った時、
「なんか、ダッセーなぁ!」と言われ自分でも笑ってしまいました。
当時は「ザックは恰好よりも、機能性がすべて!」的な考えだったので、
好んで使ってましたけど。。。
 この紫外線妬けしたような色は、染料が繊維に定着しずらく
そんな中でもマスタード、ブルー、ベイヴピンク、ブラックの4色だけが
比較的強く染まったのだそうです。

山に行くと鮮やかなカラーリングのザックの中にポツンと紫外線妬けしたようなザックは逆に人目につきました。


 自分の狭い交友関係の中でこのザックを使用してる人はいなかったのですが、山の愛好家の間では意外にも好評だったのかも知れません。
人気の山、特に標高1500m以上を登っていたりすると、
だいたい1日に1人くらい、自分と同じグラン・クロワールを
背負っている人と遭遇してました。
そんな時、「まったく売れてないワケじゃねぇーんだなぁ…」
と実感したものです。

 

 カラーリングという使用感とは無関係な話題はそこそこに。
使い心地とか背負い心地などについて。

 まず背中が接する背面パッド。
アライテントらしくフカフカ~っ!って感触はなく、
ザック内部の荷物が破損しずらい程度の必要最低限度のクッションです。
(感触として8~10mm厚の銀マットくらいのクッション性)
ですから、荷物を抜いたザックはフレームもないため自立しません。
パッキングするモノによっては背中が痛くなったりもします。

クロワール2

 また左右のショルダーハーネスも必要最低限のパッドなので、
荷物が17,8kgくらいから肩に食い込んでくるような痛みを感じはじめます。
それ以下の重さの場合は、身体にフィットするような感触で
背負い心地はけっこう良く感じます。
これは背中にフレームもなく、背面パッドもそれほど厚くないので、
各所のストラップ(ハーネス、トップスタピライザー、チェストベルト、ウエストベルト)を絞めることでザックが自体が都合よく変形して身体に吸い付くようにフィットしてきます。

 

アライテントの大型ザックは、
往々にして細長く横幅の狭いシルエットのものが多いのですが、
このグラン・クロワールも細長いタイプです。
 私のようなパッキングがヘタな人間がこうした細長いタイプのザックを使うと、
歩行していてもザックの上の方が左右にフラついてしまい
けっこうウザい想いを強いられます。
こうしたシーンでも14,5kgくらいまで重さなら、パッキングが多少ヘタでも、
各所のストラップを締め上げるとザック全体が背中のカタチに変形して、
ぴったり身体にフィットしてくれて左右のブレに悩まされません。

また、細長いザックの利点として、腕の振りを阻害されることも少ないです。

僕もこのグラン・クロワールにサイドポケットを装着しないのは、こうした腕の動きをころされたくないためです。

 

  最後に、荷物の出し入れについて。

このザックにはファスナーの小窓などは一切なくて、出し入れは雨蓋を外した上からだけです。

で、細長い造りのために荷物の出し入れはけっこうイラッ💢とさせられます。

特にザックの一番下に厳冬期用大型シュラフを詰め込む時などはため息をついてしまいます。

そりゃそうです。

防寒のため何枚も重ね着して太くなってる腕で幅の狭い深いザックの低部までシュラフを詰め込むのは難儀なことで、それだけではなく薄いザックなのでフニャフニャとヘタってるから、さらに詰め込みずらいのです。

 

絶対に万人向けするはずもないザックですが、いくつかのデメリットを受容できる人にはガチで心強く感じるザックだと思います。

 

名品とか、ベストセラーとか、傑作とかではなく。

ユニークとか独創的なザックと言えると思います。

 

 

 

 

 

※オプション商品の

 ・カーゴポケット
 ・スコップ/スノーボードホルダー
 については別の稿で書きたいと思います。