当方の7月3日のブログで、シドニー大学のマシュー・キルネン教授のプレゼンで、ALS治療薬最新動向として、米Clene社のCNM-Au8が有望との情報があったと紹介させていただいておりました。その情報から、同社株を購入したというお話もついでにさせていただいてましたが、一昨日同社株が50%上昇し、昨晩も(ニューヨーク市場の金曜日)高止まりを維持する目を見張る動きがありました。

 

7月3日のブログ:

 

Clene社、もしくは、CNM-Au8に何が起きたのか即調べたところ、7月14日に同社がプレス発表した内容が背景にあることが判りました。現在CNM-Au8の治験は第2相とHEALEYALSプラットフォーム試験(第3治験に値する)が平行して行われていますが、第2相治験の中間分析から、CNM-Au8がALS患者の死亡リスクを70%減少させ、安全性も問題ないという結果内容でした。9月末のHEALEYALSプラットフォーム試験結果(160名参加)を待ち、結果が予定通り基準に達した場合、同社は来年2023年初頭にはFDAに新薬承認申請をするとのことです。これにナスダックの株式市場が反応したのです。他の記事では、CNM-Au8 がAMX0035に続く新薬だと評する記事も目に入りました。

 

 

私は反射的に短期キャピタルゲイン確定で50%上昇の時点で、保有株を全数売却しましたが、状況を見てまた同社株を購入する考えです。同社株の動きや儲けなどどうでもよく、効果があるなら早くこの治療薬を試したいという方が本心です。

 

(Clene社によるCNMAu8のイメージ画像)

 

わたしも勉強中ですが、CNMAu8は触媒活性のある金ナノ治療薬(経口懸濁液)で、ナノ合金により細胞代謝の有毒物質を除去、細胞のエネルギー生成を促進、酸化ストレスの軽減を行い、運動ニューロンとその関連するパスウエイを守り進行を遅らせる効果を狙っています。アメリカとオーストラリアの文献をみるとわかるのですが、著名な先生方やマサチューセッツ総合病院といったリーダー的な機関も関与していることが判ります。

 

もし、アメリカにいれば、EAPの枠組みにより、治験に参加できる可能性があることも判ります(実際多くのEAP治験参加者が存在しているようです)。改めて思い知らされるのですが、ALS治療薬開発において米国は日本に比べ各段に進んでいます(日本はまったく遅れています)。この一連のニュースに目を通しているとわかるのが、下記のポイントです。

 

  1. アメリカには多くの治療薬候補がある(パイプラインに400以上)
  2. 多くの大学病院機関が連携している、患者団体、製薬会社、FDA、政府も連携しており体系的になっている(日本のようにバラバラではない)。CNMAu8ではアメリカだけではなくオーストラリアのシドニー大学も大きく関与している。
  3. その結果、多くの治療薬を同時進行出来る治験のシステムHEALEYALSプラットフォーム試験の存在がある。ハーバード大学のマサチューセッツ総合病院がリードしているが全米60以上の大学病院と連携し、治験を受けられる。
  4. 政府、FDAによるEAP(Expanded Access Program:治験機会拡大プログラム)の存在、従来治験に参加できない多くの患者がこのHEALEYALSプラットフォーム試験に参加している。政府が治験参加費用を負担する。
  5. ALS新薬開発において、モメンタム「勢い」を感じる。

 

 

結論ですが、

  • 日本もEAPの導入が必要です。
  • 日本政府のリーダーシップが不可欠です。
  • 日本ALS協会も上記達成の為、政府へのロビー活動を始めなければいけません。
  • 日本でも大学間の連携が必要です。さらには、大学間だけではなく、政府、厚労省、大学病院、製薬会社、日本ALS協会、全てが連携されることが不可欠です。その為に国のリーダシップと、米国のマサチューセッツ総合病院のような全体をリードする機関が必要なのです。

 

日本では大学間の連携が非常に限定的です。各大学がバラバラで似たような研究をするのは非効率です。アメリカはこの点において過去の反省から学んだ共通認識があり、現在は全てのデータを共有、共用、協業できるようになっています。その結果、ALS新薬開発の為だけに設計された治験方法(HEALEYALSプラットフォーム治験)の存在もあります。

 

毎年入金される助成金や、大学の名声にこだわっている日本は古い体質です。アメリカはそんなことよりも、みんなで力を合わせリソースを結集し、一日も早くALSを治せる病気にし、現ALS患者を救おうとしています。マサチューセッツ総合病院のリーダーシップのもと全員が精力的に頑張っています。

 

アメリカと日本ではシステム的な部分だけでなく、熱意も大きな温度差があります。これは根本的な問題です。

 

最後に、当方が目についた一文、マサチューセッツ州立病院のHEALEYALSセンターのウエブサイトに書いてある文章を紹介させていただきます:

 

At the Healey Center for ALS, we are on a quest to discover life-saving therapies for the approximately 500,000 people worldwide who are affected by amyotrophic lateral sclerosis (ALS).  

HEALEYALSセンターでは、世界中のALS患者約50万人の命を救う治療法を見つけることを探求しています。

 

ここには日本の研究者や厚労省がよく口にする「オールジャパン」的な概念はまったく無く、最高のリソースを結集し世界の現ALS患者を救おうとしていることがわかります。流石です。

 

 

以上です、

 

 

 

今回目を通した記事、及び過去のブログ:

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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