ALSの進行抑制を目的とした徳島大学とエーザイのメコバラミン高用量製剤、遂に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に新薬承認申請がされました。先月末の話ですが、順当に行けば、年末12月頃に病院で治療を受けられるようになると考えます。

 

1月25日、エーザイ株式会社のプレスリリース:

 

 

 

これも創薬並の長すぎる年月がかかっていますが(2006年からなので18年位でしょうか?)、遂に日の目を見ることになります。昨年出てくる話だったはずですが、更に沈黙期間があり、正直メコバラミンはフェードアウトの一途をたどっているのだと思い、関心も薄くなっていました。メディアも反応も少ない感じに見受けられます。日経記事などもエーザイのプレスリリースをそのままコピーペーストしたような記事です。

 

とはいえ、我々ALS患者はグッドニュースとして認識すべきです。理由はメコバラミンの高用量製剤の認可によって治療の幅が広がることです。ご存じの通り現在日本ではラジカットとリルゾールしか薬がありません。これが加われば3つの保険適用の治療薬が存在することになります。効果としても早期であれば既存薬を大きく上回ります。

 

残念な点は、今後実際に病院で我々が治療を受けれるようになるまで更に1年近い時間がかかるということです。順当にいけばPMDAによる承認は9ヵ月後、それに薬価設定等で実際に我々が病院で治療を受けることが出来るようになるのはおそらく年末か来年2025年1月です。本来であれば、即承認し、我々患者が来月にでも治療を受けられるようにすべきです。

 

先日の国会での上野議員によるトフェセン承認の質問に対し、武見大臣は海外の薬品だけでなく国内の創薬も大事だと語られてましたが、そうであれば、これこそ即承認するべきではないでしょうか。

 

尚、今回の承認は堅いと考えます。理由はこれまでの長い開発経緯にあります。過去に第2相の治験結果で承認を求め、承認されなかった経緯があります。人体にも安全であることが証明されています(そもそもビタミン剤です、何故ここまで時間が必要だったかも不思議です)。

 

一つ考えられる問題点として、発症後1年未満の患者しか治療の対象にならないのでいか?進行してしまったら対象にならないのでは?と懸念する人もいるかもしれません。何故ならエーザイと徳島大学の最終的な治験は、「発症早期の ALS 患者に対する有効性」が証明されただけだからです。言い換えると発症から既に4年、確定診断から2年といった僕でもこのメコバラミンの筋肉注射(点滴?)を受けさせてもらえるかどうか?というものですが、多分大丈夫だと考えます。理由は、そもそもラジカットも2015年に承認されたときは「発症から二年以内の軽症者」とされていましたが、実際は幅広く投与されています。メコバラミンにおいても結局ラジカット同様、医師の判断で行えるものになるになると考えます。

 

次に、どれ程の効果が見込めるか?ですが、一説によると発症から一年未満の患者の場合、20ヵ月の進行抑制効果の可能性があるとするプレゼンテーションを見つけました。

 

 

フロリダ大学のロカテリ教授の2週間前のプレゼンでの情報です。驚いたのですが、アメリカではメコバラミンの高用量製剤を既に入手できる状況にあることがわかりました。数は限られるようですが、アメリカには、Compound Drug Store といわれる薬局があります。医師の処方箋が必要なのですが、原料が入手できるものであれば、その薬を作ってくれるのです。アメリカは合理的というのと、おそらく医師の処方箋を出す裁量が保険診療で縛られている日本と異なり、大きいのだと考えます。

 

こちらのウエブサイトによると、メコバラミン投与のお値段は、個人の保険がカバーしない場合、一ヵ月216ドルのようです。あの医療費が高いアメリカでさえ、今の円安で3万円程度です。ですが、実際エーザイさんがどういう値付けをするかは不明です(多分5万円くらいかと想像します)。

 

 

 

因みにロカテリ教授のプレゼンでは、ラジカット、リルゾール、レリブリオ、メコバラミンの4つをすべてを使っている患者は、そうでない患者に比べ、機能維持や呼吸機能維持も含め延命効果が高いことがわかっている。可能であれば全て使う「コンビネーション」が望ましいとプレゼンで語られています。理論としては理解できますが、果たして実際どうなのでしょうか?ロカテリ教授も証明するためには治験が必要としています。

 

 

 

正直、今更感もあり、淡々と書いてしまってますが、グッドニュースであることに間違いはない、というのが結論です。英語にはBetter late than never という言葉があります。「何もないより遅れてでも出てきた方がいい」というものです。僕の信条もそうです。「多少時間がかかっても自分が言ったことはやる」というものです(一方でビジネスにおいては言ったことを実行しない方が良いという状況や判断になる時があります。その場合は、従業員や株主にも何故やらない方がいいのかを説明します)。

 

メコバラミンは、おそらく様々なハードルがあったのだと考えます。察するに柔軟性とはかけ離れた日本特有の問題が背景にあったのだと考えます。最終的には徳島大学の研究者の意地と、「神経領域」に強みがあるとされるエーザイ株式会社の事業上のニーズがあり、今回最後の駒を進めることが出来たのだと考えます。

 

 

メコバラミン高用量製剤、是非試してみたいと思います。

 

 

以上です、

 

 

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