長篇となるような短篇を連ねたようなクロニクル/アコーディオンの罪
アコーディオンの罪
E・アニー・プルー
- アコーディオンの罪 (ACCORDION CRIMES)/E.アニー プルー
- ¥2,625
- Amazon.co.jp
100年程前シチリアで作られたアコーディオンが、アメリカでシチリア系、ドイツ系、メキシコ系、フランス系、アフリカ系、ポーランド系、アイルランド系、バスク系、ノルウェー系と様様な人種を渡り歩き、そのアコーディオンをめぐる人々のディテールを綿々と描いた本です。
「シッピング・ニュース」 で、離婚され、二人の娘を持ったさえない田舎の男を淡々と情感たっぷりに描ききったように、ディテールを描くことでその情景を浮かび上がらせる手法が駆け足ながら100年も続き、短篇が延々続くアメリカ絵巻を見るような、息継ぐまもない長大な作品です(2段組449ページ)。
それぞれの人々がアコーディオンを手に入れて、やがて不幸が訪れ、アコーディオンが次の人に移っていく様を時代も人種も関係なく丹念に追っていくのですが、それだけでは飽き足らず、このアコーディオンと関係し、去って行く人のその後についてもカッコつき、でも詳しく書いています。
たとえば、あるバーで偶然このアコーディオンを弾くことになった、アルゼンチンのタンゴ奏者については、こんな感じです。
(1972年ペロン(アルゼンチンの軍人・政治家)が亡命から戻ったとき、タンゴの虎もアルゼンチンに帰った。ペロンが死んだとき、彼は肩をすくめ、そのまま留まった。植物のイラストレーターと恋に落ち、新しいタンゴ音楽で成功を収めていたのだ。ある日彼は“悪い悪い集団”という曲で軍事組織の下っ端の関心を惹いてしまった。これは悪い仲間と付き合うとどんどん転落していくこと、犯罪者タイプとの交際の危険さなどを巧妙に歌ったタンゴである。彼は一晩拘留され、拷問を受け、指の関節を粉々にされた。彼は二度とバンドネオンを弾けなくなった。)
関連する物語を詰め込まなくては気がすまない、といったような書き方で、あまりの密度にゲップが出そうになるのですが、その密度に次第に慣れてくると(私は1/2を超えたあたり)、決して同じ物語が繰り返されないことに「次はどんな人が持つんだ」「次はどんな不幸が訪れるのだろう」と毎日の日課のように読んでしまいました。
気に入ったエピソードもいくつかあるのですが(才能のある人が使っているときは、読んでいても楽しい。幸せの絶頂の中で自殺してしまった話はなんだか悲しい話だった)、一つ一つの話というよりのそのバリエーションとこの歴史そのものという長大さがこの本の売りでしょう。
あえて不幸のアコーディオンとして描いたのか、世に不幸の種は尽きないことを描きたかったのか、あらゆる人生は見方によっては不幸な人生なのか、最終的には「死」がまつ生とはそもそも不幸なのか、その連続する生活苦・無理解・貧乏・無教養に色々と考えさせられれるものがあります。
ガッツリした海外文学が読みたくてE・アニー・プルーの本を読みました思っていたよりガッツリしていました。
肉うどんの大盛りを頼んだら、食べきれないほどの肉が盛られたときのように。
新作も出ているようです。
またしばらくして、消化し終えたら、呼んでみたいと思います。
- オールド・エース/アニー プルー
- ¥3,150
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恩田陸らしいイメージ先行の初期連作/三月は深き紅の淵を
三月は深き紅の淵を
恩田陸
- 三月は深き紅の淵を (講談社文庫)/恩田 陸
- ¥700
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「三月は深き紅の淵を」という本についての4連作。
この本自体は『第一章 待っている人々』『第二章 出雲夜想曲』『第三章 虹と雲と鳥と』『第四章 回転木馬』で構成されていて、この本のなかで扱われている「三月は深き紅の淵を」については『第一章 黒と茶の幻想』『第二章 冬の湖』『第三章 アイネ・クライネ・ナハトムジーク』『第四章 鳩笛』の四章からなっています。
『第一章 待っている人々』は安楽椅子ミステリで、本好きの老人達が若者にしかけるトリック。
『第二章 出雲夜想曲』は旅行ミステリで、夜行列車での本話が印象的で「三月」に一番近づく。
『第三章 虹と雲と鳥と』は学園ミステリで、二人の少女の心理模様が韓流か少女漫画のよう(どちらのファンにもおこられそうです)
『第四章 回転木馬』は作中作のミステリで、作家が自分の書いている作品に登場するという迷宮のような話
となっていて、それぞれ直接間接的に「三月は深き紅の淵を」という本に関連した話になっています。
4連作IN4連作ということで実は壮大な構造になっているのかと思いよーく読み込みましたが、結果、そんなことはありませんでした。全体的にゆるーくつながり、もしかしたらぼんやりとメビウスの輪を形成しているようにも思えました。しかも『麦の海に沈む果実 』『黒と茶の幻想 』にも発散。細かい設定は気にしないほうがいいみたいです。
何冊か本を読んで知ったのは、恩田陸はまずイメージが浮かんでそれをもとに小説を書いていくらしい。
ともすれば苦労するのは、そのイメージとイメージの間をどう埋めるかです、
それがこの初期4連作では不十分な感じはあります。ま、まずは多くのイメージがあってこれに押し込んだ、ということなのでしょう。初期の大作といっていいのでしょうが、まだ技術が未熟に思えイメージに追いついていないようです。
今の恩田陸ならもっと込み入った世界になりうる作品です。
なんだか、作家のなり始めの頃、作家でいられるうちに浮かぶイメージを放り込んだみたいな作品です。
『第一章 待っている人々』の本好きが集まる設定や
『第二章 出雲夜想曲』の夜行列車で本について語り合う設定はよかったです。
恩田陸大好き、というかたにはオススメですが、ファーストユーザー向きの小説ではないですね。入門書としては、読んだ中では「チョコレートコスモス 」「黒と茶の幻想 」なんかのほうがいい気がします。
本の読み方にも色々注文がある/グリーン・マイル
グリーン・マイル
スティーブン・キング
- グリーン・マイル〈1〉ふたりの少女の死 (新潮文庫)/スティーヴン キング
- ¥460
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- グリーン・マイル〈2〉死刑囚と鼠 (新潮文庫)/スティーヴン キング
- ¥460
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- グリーン・マイル〈3〉コーフィの手 (新潮文庫)/スティーヴン キング
- ¥460
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- グリーン・マイル〈4〉ドラクロアの悲惨な死 (新潮文庫)/スティーヴン キング
- ¥460
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- グリーン・マイル〈5〉夜の果てへの旅 (新潮文庫)/スティーヴン キング
- ¥460
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- グリーン・マイル〈6〉闇の彼方へ (新潮文庫)/スティーヴン キング
- ¥460
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キングの作品でホラーモノではないと書いてあるのを最近読んでそろそろ読んでみるかと手にとりました。
あらすじは
刑務所の死刑囚用の専用房に勤めている看守が語り手。
時代は1930年代。
そこには、「酋長」「大統領」など個性豊かな死刑囚がやってきては、減刑されるか、死刑になっていき、また性悪な同僚から、信頼の置ける所長などと業務をこなしていきます。
ま、キングのことですから、もうこのあたりのディテール
をしっかり書いて、十分読ませるんですね。
それだけでも満足してしまうのですが。
そして物語の主人公が死刑囚として登場。
その死刑囚は、あまり精神的には発達していないのですが、ひょんなことから語り手の病気を超常現象によって治してしまいます。しかし、主人公はそのことを自分でも信じられません。
サブキャラとして、芸をするネズミ。そのネズミと仲良くなる死刑囚。そして危険な死刑囚の登場。
そして、死刑の執行。死刑囚の罪。
物語自体は、語り手の老人ホームからの回想、という形で語られています。
その老人ホームでも、一悶着あります。
キングらしく、謎解きや超常現象に焦点をあてるより、ディテールを楽しみながらストーリーテリングを楽しむのが一番の作品です。
感動するかどうかは別にしても、それなりに読める話です。
といっても一番気になるのは、この分冊形式。
最初に断っているように「今では少なくなった連載方式での書き下ろし出版をしたかった」ということですが、5巻(?)の解説で中島梓 も「私をはじめ日本では珍しくない形式だが、最近のアメリカでは珍しいらしい」ということで、できれば1冊/月のペースで読むのがベストなんでしょう。
もちろん私はそんな甲斐性もなく、1-2巻で「相変わらず物語が始まるまで時間がかかるな」と思いながらよんで3-4-5-6は一気に読んでしまいました。寄り道しながら1週間ぐらいで。
せっかくの分冊なのでじらしながら読んでみてはいかがでしょうか。
そこにも価値のある本です。
映画は・・・こちらも機会があればみたいですね。
- グリーンマイル
- ¥3,700
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処女作にはすべてがある/僕が戦場で死んだら
僕が戦場で死んだら
ティム・オブライエン
- 僕が戦場で死んだら (白水Uブックス)/ティム・オブライエン
- ¥1,019
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ティム・オブライエンの処女作。
「本当の戦争の話をしよう」を読んだらその前の作品との関係を知りたくなって読みました。
あらすじは、
当時大学生だった主人公に徴兵の連絡がありました。
この戦争について、本当のところ何が正義かわからないし、議会でもまだ決着がついていないのに、徴兵は進みます。
陸軍学校に入れられ、錬兵。
毎日のきつさもありますが、間違っているかどうかも分からない戦争についていかれ、戦場にいけば人を殺すことも自分が殺されることもあることに、理不尽な怒りと恐怖が高まります。
自分の信念とその恐怖から逃れるため、ひまがあれば外国への脱走を計画。
あるとき教官に「この戦争では戦場に行きたくない」というと「臆病者」と罵られさらに神父にまで激怒されます。
そしてついに脱走を決意。外出日に都会まででかけそこから外国に逃げる予定でしたが、結局やめます。
戦場へ。
そこは死が日常にあり、死を面白おかしく扱うことで、なんとか狂気を押さえ込んで、平気な顔で日常生活を送っている、そんな世界でした。
本部のいうがままの、村の占領、待ち伏せ、夜の進軍、戦闘。
戦争本来の意味を問うには、あまりに大掛かりで非現実的でありながら、それにしては命が現実的にかかっているというギャップに飲み込まれながら、なんとか正気と命を保って、その役目を終えるまで耐え忍ぶのでした。
命を失うのが怖い、という以外のベトナム戦争を描いた小説で、なかなか興味深くはあります。
そしてティム・オブライエンは何かしら戦争のにおいのするものを書くのですが、そのマスターピースがすでにここに芽を出しているのが分かって面白かったです。
しかし、同じネタでも枝葉末節を切りとり、伸ばしたい枝だけ残したような「本当の戦争の話をしよう」の方が、僕はよく書けていると思いました。
凡庸な作家と優れた作家の違いぐらい。
この本も悪くないのですがね。
そいえば友人がこの本を読んだ感想を「政治の部分を抜かせば悪くない」と言っている部分があり、そんな部分も面白かったかな。
知ってました?精神救急/救急精神病棟
救急精神病棟
野村進
- 救急精神病棟 (講談社+アルファ文庫 G 37-6)/野村 進
- ¥880
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好きなノンフィクション作家の1人、野村進の精神病院の取材ルポ。
取材した千葉県精神科医療センターは、当時日本の精神病院のなかで、精神科救急に最重点を置く唯一の公立病院でした。
精神病院と救急? と思いましたが、この病院の救急での対応は「自傷他害の恐れがある場合」が基本です。
なるほど、たしかにあるときを境に「自傷他害」の活動が始まった場合、入院できる場所として「救急」の「精神科」というのが必要になりますね。そしてその数は、当直の職員の休みがないほど多いようでした。必要とされている施設なんですね。
本書の内容は、そういった「救急精神病棟」の話から、通常の精神病の話、そしてそこで働く職員の話と、この一冊のその周辺を大体俯瞰できるのですが、詳細になるといくらページがあっても足りません。
●詳細
・冒頭「ケータイケータイ」と叫んで救急車に乗せられてやってくるエリートサラリーマン。第三次世界大戦がはじまることを誰かに告げたくて、突然駅で駅員からマイクを奪い叫びだしたそうです。
病院でよくよくきいてみると、NYでのトラブル対応で心底疲労して日本に帰宅して時差ぼけと極度の心労で眠れないところに9.11のテロを見て、「俺のせいだ」と思い始めたそうです。それから徐々に調子が悪くなって入院。
・精神科で最近の発達は、効く薬が増えてきたこと。疾患が本人しかわからない精神病にとって、治療法として本当に効果があるものは限られていて、薬がその一つ。後は各先生の理論と技術によって各々にゆだねられているというのが実情のようです。
・そのような状況のなかで、この病院では「精神病は脳の機能不全」として通常の病気が脳にあらわれたように扱い、かつてのように「伝染する」だとか「人間ではない」とかいう扱いは、職員の一人一人からありません。
・かつては、患者を薬づけにして病院で一生過ごさせて、患者の家族、世間、病院事業者の要求を満足するような施設が一般的でしたが、この病院では治る病として、できるだけ早くに治療し退院させるのが主流です。
・電気ショックはかつては懲罰と治療として用いられていましたが、現在は有力な治療ですとのこと。ですが、有力すぎて対処療法的になってしまい、根本的な問題の解決にならない場合もあるのが悩みのようです。
なにせ知らないことばかりで、どの章も興味深く読みました。
文庫本のためのまえがきも「透明人間になることができなかった」と今回の取材の特殊性を語っていましたし、巻末の夏樹静子と野村進の対談も夏樹静子の心身症の体験談が語られていていました。
全体としては詳細と俯瞰がうまくできていないのかな、と思いつつ、この作家ならリベンジがあるのでは、と思って次回作に期待したいと思います。
古川日出男はどこに行く/ハル、ハル、ハル
- ハル、ハル、ハル/古川 日出男
- 古川日出男
- ¥1,470
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あとがきのようなものにこうあります。
2005年11月から僕は完全に新しい階梯に入った。
中略。そして、その階梯での第一作として書き綴り、発表したのが中篇の「ハル、ハル、ハル」だとも言い切っておこう。
意図したのは、”生きている文章”であり、はっきりした”世間との対決姿勢だ”
そうか、それは分からなかったなぁ。
表題作の「ハル、ハル、ハル」は、主人公の13歳の少年と、16歳の少女と41歳の男のロードノベル的短編。
「スローモーション」は、174cm、26歳の女性が親戚の子供を預かり、千葉に遊びに行く途中にある事件に巻き込まれる短編。
「8ドッグズ」は、若い男女二人。千葉の城の話、南総里見八犬伝、犬、とつながる短編。
それなりにストーリー自体に工夫は凝らされているものの、むしろ強調されているのは各主人公の「今」の感覚をどう書くか、ということでしょうか。
「今」の自分の思いを自動筆記のように少し歪に書いていくことで、「今」らしさを支えています。
それが“対決姿勢”なんでしょうか。
個人的には「どう感じるか」という部分の割合が多くなってきたので、ちょっと読みづらくもあります。
昔のストーリーも含めて歪になっているほうが好みです。
いったん古川日出男から離れてみましょう。
相撲好き、歴史好き、長編好き/雷電本紀
雷電本紀
飯嶋和一
- 雷電本紀 (小学館文庫)/飯嶋 和一
- ¥730
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相撲史上最強の力士といわれる雷電。
その伝記小説です。
浅間山の大噴火後の荒廃する上州。
1人の大男が、相撲の巡業でやってきた本職の力士に、軽々と勝ってしまいます。
まわりに言われて相撲をとっただけのその男は、農家のこれからの働き盛りの一人息子。
親が、親方からの相撲界への勧誘の説得を受けるとは思われていませんでしたが、
父親が、息子の尋常ならざる力を見抜き、百姓に治まる体ではないことを悟り、二つ返事で回答。
ここから、「雷電」の最強伝が始まるのでした。
雷電の活躍とあわせて、上州の一揆や各藩の競り合いなどから鉄物問屋の詳細まできっちり書いて話の背景・奥行きを作っています。
もちろん、雷電の手に汗握る攻防は読みどころの一つです。
しかし専門用語がこれだけ多いとどれだけの人がリアルに取り組みを想像できたかというのは、怪しいものです(・・・雷電の左四つ得意に対して、自分十分の右四つに持ち込みながら、小野川が攻めあぐんでいる。気が付くと、差した小野川の右を、雷電、左上手で小野川の手首にかぶせるように浅くとり完全に殺している。小野川の右は浅いまま自由がきかず、左上手も遠い。頭をつけながら小野川、雷電の右下手を嫌い、上手をあきらめた左手でしきりに手首をつかんで防ぐ。・・・)。マンガ向きですかねぇ。
最後は、力士の供養に、お寺に禁止されている鐘を寄進する話から、政治の話になるあたりはさすが飯嶋和一。
たんなるスポーツライティングじゃつまらないということなんでしょう。なるほど面白かったです。
相撲好きにはオススメできます。
しかし朝青龍、今場所いい動きしていますね。
誰も伝えない歴史の狭間/神無き月十番目の夜
神無き月十番目の夜
飯嶋和一
- 神無き月十番目の夜 (小学館文庫)/飯嶋 和一
- ¥670
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1602年陰暦十月十三日、陸奥国と境を接する常陸国の北限一帯の依上保(よりがみほ)の物語。
唐突に、人の気配があるのに人がいない家で、不穏な雰囲気に飲まれながら一夜を過ごそうとする場面から始まり、少しずつその不穏な空気の謎が解けて行き、その地であった大事件の一端が見えてきます。
元来、依上保は陸奥国からの侵略をせき止めるため、常陸国の年貢も軽減されてきた、軍略的な地域。
そこに、関が原も終わり、世が平和になり、徳川家による全国の平定が進む中、検地が依上保で行われる。
徳川にとっての検地は、平定した地を完全に徳川幕府の管轄下に入れるための、戦と同じほど重要な作業。
しかし依上保にとっては、軍略地として独自性を保ってきた長い歴史があり、今までは検地なんぞは茶番のようなもの。
そのギャップを埋めぬまま、幕府側、村側、そして幕府の意向も村人も意向も分かった上で何とかしようとする村の代表である御騎馬集の主人公、籐九郎。
それぞれが各自の性格と経験で新しい時代を迎えようとし、それぞれ思惑がすれ違い、大事件に発展しています。
飯嶋和一にしてはめずらしく、一旦結果を見せた後、その理由をさかのぼり丹念に物語が進んでいきます。
途中、籐九郎が自ら死を覚悟するあたりが、飯嶋和一の得意の「先の先までよんで現在の覚悟を決める」という深慮遠謀がでますが、それ以外はミステリを追っていくような、ハラハラドキドキが続きます。
飯嶋和一が小さな村の大きな事件を書くとこうなるのかと感心しました。
ドミノ倒しのような、検地という一つの出来事により様様な事件が引き起こされていく様子は、非情な連鎖ながらもページをめくる手が止まりません。
大きな思想はないものの、物語を楽しみにしたい人にはオススメの本です。
ただただ本好きが本について語る/読書会
読書会
恩田陸
山田正紀
- 読書会/山田 正紀
- ¥1,575
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半村良「石の血脈」「岬一郎の抵抗」
アイザック・アシモフ「鋼鉄都市」「はだかの太陽」
時間を超える小説を求めて
ル=グィン「ゲド戦記」
沼正三「家畜人ヤプー」
小松左京「果てしなき流れの果てに」
山田正紀「神狩り」
スティーブンキング「呪われた町」「ファイアスターター」
萩尾望都「バルバラ異界」
特別対談 萩尾望都&恩田陸
恩田陸「常野物語」
と上記の本について語るのですが、エンタメ・SF系では恩田陸しかとスティーブンキングしか知らないのに読んでみようと思ったのは読書会というものに興味があったからです。
読書会、というのは何を語って成り立っているのだろうと
で読み始めると、何の事はない、好きな本についてただたた色々語ってるだけでした。
でも面白かったですね。
司会者がいてそれなりに「恩田さんならどう書かれますか」と振って、それはそれで面白いのですが、作品への過剰な愛が溢れ出すあたりは、同じ本好きとしてなかなか楽しいです。
恩田陸のするすると書名が出てくるあたりはさすが多読家の面目躍如、とも思いますし、マンガへの愛も大きく、萩尾望都との対談は、たんなる1ファンとして接しているように見えました。
山田正紀もあとがきで、それなりに年を取っているので対抗しようと考えていたが、途中からそれをあきらめてから楽しくなった、とやはり楽しんでいる様子がうかがえます。
自著についても語っていて恩田陸は、「雰囲気勝負」といっていて、「蒲公英草紙」を書くときは小説の世界に入るのに苦労して、明治時代の写真をならべてウンウンうなっていたとか、山田正紀も2-3日はその世界に入るのに時間がかかる、といっていました。
「家畜人ヤプー」をべた褒めしていたのですが、あんな特殊な本を手放しで誉めるなんて、と思ってしまいますがいろいろ気になる本ができました。とりあえず機会があれば「神狩り」でも読んでみます。関係代名詞が13もある神の言葉、みたいなSFだそうです。
知っている本が多いほど楽しい本なので、この本の最低限の内容しか楽んでいませんが、それでもなんだか十分楽しめました。
あの人の本棚/本棚
ヒヨコ舎
- 本棚
- ¥1,575
- Amazon.co.jp
色々な人の本棚の写真と、本についてのコメントを集めたもの。
そうか、こういう人たちが今売れているんだ、と知りました。
個人的には、半々ぐらいで知っている人がいました。
石田衣良
知っている。けど読んだことはない。
撮影した本棚(仕事場)は撮影用らしい。ずいぶんとしゃれています。
宇野亜喜良
知らない。
和田誠とかと同じぐらいの古いイラストレータらしい。
大森望
よく知っている。書評本を中心に読んだことがある。
「本はいちでも手に入る時代なので極力買わない」とクールなことを行っておきながら蔵書を整理したら1tぐらいになっていたと恐ろしいことが書いてあった。
角田光代
知っている。1冊だけ読んだ。
本棚の本の量は少ない。他の本で読んだけど毎日午前と午後で締め切りがあるような忙しさらしい。開高健のファンだったのが意外。
金原瑞人
知っている。最近1冊読んだ。
翻訳家で教授なので研究室には本がいっぱいあって生徒にも貸し出しているらしい。そんな生徒がうらやましい。
川上未映子
知っている。最近読んだ。
作品よりも普通の人でした。「私が考えているようなものは哲学の人の本読めば、もっとダイレクトに書いてあるんだって気づいて、哲学の本を読むようになりました」というのが印象にのこった。
喜国雅彦
知っている。マンガ家じゃんねぇ。よく読んでました。
日本の探偵小説を集めていました。カバーがないときは自分で作って、とマニアックさが実に喜国さんらしい。
桜庭一樹
知っている。でも読んだことがない。
この本の先物買いの実力を実感。好きな本の好きな部分を何度で読むらしい。井田真木子「プロレス伝説少女」をすごく面白いと話していたのが印象的。
長崎訓子
知らない。イラストレータらしい。金持ち父さん貧乏父さんのとかの。その絵なら知っています。
仕事場が狭いので本棚はオーダーメイド、というのがいかにもデザイン系の人らしい。
中島らも
よく知っている。本も何冊も読んでいます。
奥さんのコメントかな。読んだ本の内容は大体覚えていてでも間違わないように本を置いている、晩年は薬の生で目が悪くなって本が読めなかった、というエピソードが悲しい。「船用ボイラの基礎」「怪談」「ノルウェイの森」「ナマコの目」「チャート式新世界・・・」が同じ段に並んでいました。
穂村弘
知っている。1冊だけ読んだ。
こちらも作品よりもずっと清潔感もあっていい人。本棚も「かわいいもの」が多くて思ったより普通。
みうらじゅん
知っている。1冊ぐらい読んだかな。
本はとりあえず買って「オレ、こんな本に興味もっていたんだ」という証になればOK。また興味持ったときにすぐ手にとれればなおOK、という姿勢は新鮮でした。
山崎まどか
知らない。
読むシチュエーションを大事にするという話は面白かった。「氷の城」は冬読むとか。
山本幸久
知らない。
本のカバーをはずさずに保存しているのが異色。でも私もそうかも(めんどくさい)。
吉野朔実
知らない。漫画家さんらしい。
ボックス型の本棚がうらやましい。図鑑をいつまでも見ていられるというエピソードが、絵を書く人という感じですね。