できれば本に埋もれて眠りたい -11ページ目

伊坂幸太郎とうまく出会うことができました/終末のフール

伊坂幸太郎

終末のフール


終末のフール/伊坂 幸太郎
¥1,470
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ああ、びっくりした。

伊坂幸太郎がこんなに面白いとは思いませんでした。

あまりの人気作家ぶりに敬遠していたのですが、大きな鉱脈を掘り当てた気分です。

しばらくは楽しめそうです。


「グランドキャニオンはほんとにすごいんだって」と今更いっても仕方がないんですが、面白かったのでいいます。


面白いよ、伊坂幸太郎


で、あらすじですが、設定は地球に隕石が落ち人類が絶滅すると分かって5年目、後3年で地球滅亡の仙台の日常です。


連作短篇で様様な人物が描かれていきます。

終末のフール」が自分のことしか考えない圧政的な父親が、家を捨てた娘と10年ぶりに合う話。

太陽のシール」は優柔不断な夫が妻の妊娠を知り、どうしようと悩む話。

篭城のビール」は報道被害により自殺した妹の敵を討つために、アナウサー宅を襲撃する話。


とその他「冬眠のガール」「鋼鉄のウール」「天体のヨール」「演劇のオール」「深海のポール」と続きます。


どれも死を3年後に控えたシリアスな状況ながら、安易な死生論にならずに、他の作家が書かないような爽やかな情感を描き出し、ユーモアのあるオチを持ってくるところが魅力的です。


冬眠のガール」の不憫さ、「天体のヨール」の言葉のばからしさ、「演劇のオール」の大家族的温かみ、どれも設定に頼ることなく、誰もが持っていながら巧く描き出せなかったものをきちんと仕上げた、気持ちのいい作品でした。


これはまだまだ人気が出るかも知れませんね。


友人から「好みの小説じゃないと思う」といわれて期待せずに読んだのもよかったのかもしれません。

次作が楽しみです。

水源/ロング・グッドバイ

レイモンド・チャンドラー

ロング・グッドバイ


ロング・グッドバイ/レイモンド・チャンドラー
¥2,000
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久しぶりに、読みながら「こりゃ、いくら長くても楽しめるな」と思った本でした。


あらすじをざっというと、


飲み屋の駐車場で泥酔しているが礼儀正しい男を見かけ、自宅へ連れて帰り介抱してやる主人公フィリップ・マーロウ。その男は翌朝帰っていきます。大金持ちの妻がいることが分かりますが、それとは別にいつのまにか飲み友達となります。

そしてある日その男がマーロウの家を訪れ、ためらいがちにメキシコへの逃亡の手助けを依頼します。何も聞かず空港まで送るマーロウ。

その後マーロウの下に訪れる、旧友の警察、目障りなチンピラ、妻の妹の金髪美人、人嫌いの大金持ち、金髪美人の夫の気難しい小説家などなど。

はたして、逃亡の本当の理由はなんだったのか。

いったい何から逃亡したのか。


読んでいる間は、文章が洗練されているせいか、マーロウのゆるぎない自己規定とその実行のせいか、じつに楽しんで1ページ1ページを読むことができました。

そうそうこれが読書の楽しみだよね、って感じで、本編533頁も読み出せばその厚さは、全然気にならずむしろ薄さが気になるくらいです(重いけど)。


文体だけでそこまで読ませるのもすごいのですが、やっぱりこの作品を単なるハードボイルド・ミステリーから一つ上に押し上げているのが「よく分からないが気に入った男に、不利不毛は知りながら協力義理立てするマーロウ」というところでしょう。そういう友人関係というのは、なんだかいいものです。


ハードボイルド・ミステリーの元祖といわれるレイモンド・チャンドラーの最高傑作といわれる「ロング・グッドバイ」。初めてこの作家を読みましたが、びっくりしましたね。村上春樹に似ていて。


いやもちろん、いわいる心理描写を書かずに状況のみを書いていくハードボイルドの文体の元祖の1人として、多くの人に似ているのでしょうが、私がそちら方面をあまり知らない(景山民夫とロバート・B・パーカーぐらいは思いつきました)のと、ハードボイルド・ミステリーとは無縁な村上春樹がここまで似ているとは思いませんでした。


そうですね。「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」のハードボイルドの方とかは、よく似ています。しっかりとした自分のポリシーを持ち、何があってもそのポリシーを貫き、またその実力を持ってはいるが、何かが損なわれている。そして時々でてくる世間への辛らつな警句。

似ている作品は数多ありますが、鑑賞に堪えるものは少ないのが事実です。


最後の解説では、村上春樹フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」との相似に言及していますが、なるほど、と思いました。たしかにある構造を表と裏から書くとこの2作品になるのかもしれません。

村上春樹ほどロマンチックさに入れ込んでないので、書いてあるほど似ているかどうかは実感できませんでしたが、そういうふうに村上春樹が惹かれているんだ、というところには興味がもてます。

ロマンチックが好きな人なんだなぁ、と。


ま、村上春樹のことはファンに任せておいても、十分ハードボイルドの元祖であり最高峰の作品として十分に楽しめる作品です。



グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)/スコット フィッツジェラルド
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羊をめぐる冒険〈上〉 (講談社文庫)/村上 春樹
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羊をめぐる冒険〈下〉 (講談社文庫)/村上 春樹
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ダンス・ダンス・ダンス〈上〉 (講談社文庫)/村上 春樹
¥680
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ダンス・ダンス・ダンス〈下〉 (講談社文庫)/村上 春樹
¥680
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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)/村上 春樹
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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)/村上 春樹
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「本当」の話/本当の戦争の話をしよう

本当の戦争の話をしよう。
ティム・オブライエン

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)/ティム・オブライエン


¥610
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ベトナム戦争の前後を描いた短篇集。


ぼくが戦争で死んだら 」がオーソドックな手法で、作者の書きたいことを書いた作品なら、こちらは作者の書きたいことを要素要素で取り上げ短篇としたもの。


この2冊を読み比べると、作者の伝えたいことが、より明確に分かります。


たとえば「レイニー河で

戦争に行こうか悩む青年の姿を描いたものですが、その心情をより分析的に掘り下げて書いているため、戦争について書きながら、より抽象的な「社会的要請と自分自身の要求のバランスの破綻」としても読むことができます。同列にするのもなんですが、ニートやひきこもりなどにも通じるものがあるように感じられました。


たとえば「勇敢であること」「覚え書

書きたかったことは多分、戦闘に参加することの悲惨さについてだと思います。

これは重要だし事実としてつらい話ですが、悪く言ってしまえばよくあるテーマで、悲惨さを伝えるために悲惨な事例を数多く出してきた小説や映画は多くあります。

でも、戦争の悲惨さを伝えるため、助からないであろう友人を救うため自分の命を危険にさらしながら口の中に排泄物が入りその味を感じながら、自分の命か誇りかを選ばなくてはいけない状況を、これが戦争なんだ、と伝える作品にはまだ出会ったことがありません。これを読むと新たにやっぱり戦争は嫌だな、日常の延長で思います。


そして「本当の戦争の話をしよう

あえて読者を混乱させるように「戦争について語れることなんかないんだ」とここでは述べます。

ではなにを語ろうというのでしょうか。


『本当の戦争の話の中にもし教訓があるとしても、それは布を織りあげている糸のようなものだ。それだけを1本抜き出すことはできない。より深い意味をほぐすことなくその意味だけを引き抜くことはできない。そしてつまるところ、本当の戦争の話を聞かされたあとに、何かもっともらしいことを口にするなんて不可能である。「へえ」とか「ふうん」とか、それくらいしか言えない。

本当の戦争に一般法則というものはない。それらは抽象論や解析で簡単にかたづけられたりはしない。』


個人的には上記3篇ついて心動かされました。


他には短篇の間をつなぐ読み物的な極短篇ものや、恋人がグリーンベレーになる「ソン・チャンポンの恋人」や、戦闘での仕返しのいたずらが一線を超えそうになる「ゴースト・ソルジャー」などの秀作もあります。


表現方法として分かりにくいところもありますが、何篇かは、筆者の伝えたいことが痛切に感じる、そんな短篇集です。

実感と意外性、そして実感の理解、がない/グランド・フィナーレ

グランド・フィナーレ

阿部和重

グランド・フィナーレ (講談社文庫)/阿部 和重
¥490
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ニッポニア・ニッポン」を読んで以来もう阿部和重は読まない、と思っていたのですが、人と話しているときに阿部和重が話題にでたので読んで見ようと手にとりました。


グランドフィナーレ」のあらすじをざっくり言うと、主人公のロリコン趣味が妻に発覚し、当然離婚されるのですが実の娘への思いがどうしても捨てきれない様子を描いた短篇です。


この本にはさらに3編の他の短篇があり、「馬小屋の乙女」は(たぶんグランドフィナーレに続いて)田舎に帰り、できるだけロリコンの種から離れようと引きこもっていると友人から女学生の演劇の手助けを求められて悩む、という話。

そしてよく分からないそのほか「ヨドバシカメラ」「20世紀」の短篇があります。


ロリコンを糾弾するためにあえて比較的常人の設定の主人公を持ってきて(昨今いくらでもひどく描ける部分をあえてゆるくリアルに書く)、最後にひっくり返すという手法には感心しますが、それ以外は特に驚くこともなく「ニッポニア・ニッポン」と同じ感想。つまり「うんうんうん」でおしまい。


文庫版の高橋源一郎の解説がいいらしいですが未読。


結局この作品には「理解」はできても「実感」はなく、「意外性」もなかったので、なんの引っかかりもなく読み終えてしまいました。


自分にとって面白い作品というのは、


 ・実感できるもの(自分の感性に近い)

 ・驚くもの(自分の想像を越えたもの)


というのが基本ですが、次点として


 ・他人の実感として、理解できるもの


というのがあります。

これは、自分とは感性が違うものの、生活していて「この人は何を考えているんだろう」と興味を持った人の類型が描かれている場合は、興味を惹かれます。


最近では「もう切るわ 」がそうでした(ちょっとしんどかったのですが)。


しかし、この「グランド・フィナーレ」は上記2点に該当せず、他人の実感としても興味がわかず、単に「理解」だけに終わりました。


高橋源一郎の解説で変わるか、機会があったら読んでみたいと思います。 



戦地での少年達の適応/悪童日記

悪童日記

アゴタ クリストフ


悪童日記 (ハヤカワepi文庫)/アゴタ クリストフ
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戦時中、田舎の意地悪なおばあさんに引き取られた双子の日記です。


まだ食べ物の残る田舎に疎開にきた二人ですが、働かざるもの食うべからずを実践するおばあさんは、過酷な労働を二人に課しますが、二人はそれを「訓練」と受け止め、日々精進していきます。


さ口汚いおばあさんは、さらに二人に「売女の子供」などといいますが、それも二人でいるときにお互い罵りあう訓練をして、どんな罵詈雑言にも耐えられるようになります。


万事その調子で、混乱した戦時中の世界を、生きるために必要な力を第一に、それに少しの理性を加えて、二人が逞しく生きていき、次第におばあさんにとってもなくてはならないパートナーになっていきます。


戦争は進み、町は敵軍に占領され、おばあさんの家にも敵の将校がきます。

しばらくいた後敵軍は去り、また新たな占領が始まります。


森のはずれで死んだ敵軍のしまつ、近所の見捨てられた少女、背徳の牧師、おばあさんの秘密などありとあらゆる機会を利用し、二人は盗み、助け、脅し、盗み見など悪徳に躊躇なく手をつけ、自分に有利な地位を築き、それでいながら、近所の恵まれない少女を助け、依怙地なおばあさんにあった優しさで仲良くやっていくなど自分達なりの価値観を押し通していきます。


そのタガのはずれた理性の鋭さが恐ろしくもありながら、そうせざるを得ない状況を作り出す戦争が感じられます。


しかし、一番怜悧なのが作者でしょう。

戦争状態で人々が行う様様な悪徳を、あえて罪のない双子にやらせることで際立たせる手法は、善悪を冷たく見据えるまなざしがなければできません。


さらに本は続くようですので、次が楽しみです。




書家の話の面白さ/莫山書話

莫山書話

榊 莫山


莫山書話/榊 莫山
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書家の莫山先生のエッセイを集めたもの。


「バクザン先生」といって、分かる人は、ある年齢以上の人では意外に多いのではないかと思います。

そうです、かつて白髪の蓬髪でCMに出ていた人ですね(懐かしい)。


結構な書家だと聞いたので読んでみることにしました。

あ、ちなみに私は悪筆で学校で三筆に選ばれたこともあり、書とは遠くかけ離れたところにいます。


書家だけあって、空海や良寛などの書の有名人から棋士の升田幸三の扇子まで、様様な書やその詩について分かりやすく語っています。


そのなかで興味深かったのが『野の書』の話。

書はなにも博物館に飾ってあるものばかりではない。


博物館ばかりではなく、野にある碑にもきっと素敵な書があるに違いない、といってカメラ片手に全国を周り、写真と文で紹介していった『野の書』というものがあるそうで、書が楽しめるというのはずいぶん楽しみが広がることなんだなぁ、と思いました。


他にも墨へのこだわりと、それに答えるの職人さんたちの技と執念は、墨用の菜種と取り替えるため米を奈良から阿蘇まで持っていく話など、想像もしなかったような話が読めました。


しかし、書とというのは、ある意味物語とは正反対の性質のもので、あんな字になにを騒いでいるのだろう、と思いつつ、いいものをみるとそれなりに納得してしまうのが不思議です。

野の書―書の美をたずねて/榊 莫山
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理解不能な人々/もう切るわ

もう切るわ

井上荒野


もう切るわ (光文社文庫)/井上 荒野
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かつてならまったく理解できなかった作品ですが、今ならなんと興味を持って読み通すことができました。


ある男を巡って妻と愛人を交互に描いた作品。


読んでいてつくづく思ったのが、登場人物の誰もが、自分にしか興味のないこと。

妻も、夫の不倫が気になるというよりは、それを気にしている自分が気になる。

愛人は、男と一緒でいられる自分と会えない自分が気になる。

そして男は、その対象・記号として描かれながらも、やっぱり身勝手に自分のことしか興味がない様子。


三角関係プラス男の末期癌によるホスピスでの死、という状況設定でありながら、相手に対する共感めいたものがほとんどありませんでした。


しかし、それはそれで見事。

そういう人物の描写としては徹底していて、興味深くあります。


情は深くとも、相手を思いやるわけでなし。

かかわると非情に厄介そうな、でも正直な人たちです。


しかし、その両女性から愛される男の設定が、典型的なダメ男で驚きました。

本職は占い師で、妻は大きな遺産を持っている。

話術が上手で、どんな人にもすぐ打ち解け、虚虚実実の話で盛り上がる。


生活に心配のない女性には、こんな男性が受けるのかなぁ、と思ってしまいました。


中途半端に人物を描いた作品よりは人物設定が徹底していていいのですが、

「知らない国の言語ルーツ」みたいな話で、最終的には興味が続きませんでした。

人気作家の小説的技巧/ビタミンF

重松清

ビタミンF


ビタミンF/重松 清
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この後味のすっきりさ、巧いなぁ、というのが感想でした。


男親と子を描いた短篇集で

「Family, Farther, Friend, Fight, Fragile, Forture・・・」とFで始まるさまざまな言葉をキーワードとして物語りに埋め込んだそうです。


会社勤めでの疲労の中、ただでさえ難しい子育てに、普段から接していないハンデを抱えつつ、子供の問題に取り組んでいく。


等身大の男親の取り扱いが巧く、同年代ならきっとどなたも「そうそう」と思ってしまうヒキの強さがあります。


しかし反面、その子の問題についての解決方法は小説的技法(偶然なにかがおこって、なんとなくうまいこといく)で、根本的な解決方法とは違います。


子の問題に解決方法などない、ということなのか、その場その場でなんとかやっていくしかないじゃない、ということのなのか、扱っている問題は結構根深いですが、読後には何も残らない、という印象です。


小説的マジックのないものも読んでみたい気もしますが、このあたりが重松清のど真ん中かな、という木もするのでちょっと躊躇気味です。

思い入れのない土地で起こった事件/days new york

days new york

小林紀晴


days new york―デイズ ニューヨーク/小林 紀晴
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小林紀晴は、好きな写真家の1人ですが、この作品はイマイチピンときませんでした。



思い入れのないからこそ訪れたNY。


適当に入りこんだ英会話学校に通う、なんでもない毎日。

そしてそこに偶然、9.11。


現状を把握できず、写真を撮り続け、混乱のまま、終わります。


きっとこの作品は、ほんの断片を切り出しただけで、きっと熟成されればもっといい作品になるのではないかと思います。


アジアン・ジャパニーズ 」レベルの作品を楽しみにしているのですが、なかなか当たりませんね。

腰を据えて他の作品も読まないと、多作家のようだから見当たらないのかな。


ASIAN JAPANESE―アジアン・ジャパニーズ〈1〉 (新潮文庫)/小林 紀晴
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ASIAN JAPANESE―アジアン・ジャパニーズ〈2〉 (新潮文庫)/小林 紀晴
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アジアン・ジャパニーズ〈3〉/小林 紀晴
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黄金の毛と豊穣の大地/ARCTIC ODYSSEY


ARCTIC ODYSSEY

星野道夫


アークティック・オデッセイ―遥かなる極北の記憶/星野 道夫
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図書館で借りるべき本とは、と考えたときにあがる一つとして高価な本、というのがあると思います。

たとえば大判の写真集ですね。

そうそう最近写真集借りてなかったと思い借りたのがこの本です。


なにかいい写真集はないかと凸凹とならんでいる本棚の背表紙を見回してたのですが、結局星野道夫を選んでしなうあたり、自分の保守性にがっかりしてしまいます。


でもとてもよかったです。


北極圏のカナダとアラスカの一年をとった写真集でした。


少し黄色がかったホッキョクグマの長い毛並みが、動物園で見るぬいぐるみのようなものとは違い、北極圏生きていく逞しさと誇りを感じさせます。


それから個人的には、ツンドラ地帯のコケ類の紅葉が好きで、裏表紙のアップの写真や、本の中の見渡す限りの紅葉がいいんですよね。厳しい土地でもこれだけの豊かさがある、っていう感じが。


それ以外にも、普通の写真集だとメインになるレベルの写真が何枚もあって、苔が滴る逆光の森の写真や、大地に漣のように押し寄せるカリブーの大群の写真や、神話のように踊り語らうホッキョクグマの親の子の写真など、いくらでもあります。


うーん、保守的とはいえ、期待にたがえず、満足しました。


星野道夫は色々本がありますが、読んだ中では、この写真集と「長い旅の途上」「旅をする木」 は間違いないですね。


旅をする木 (文春文庫)/星野 道夫
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長い旅の途上 (文春文庫)/星野 道夫
¥710
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