長篇となるような短篇を連ねたようなクロニクル/アコーディオンの罪
アコーディオンの罪
E・アニー・プルー
- アコーディオンの罪 (ACCORDION CRIMES)/E.アニー プルー
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100年程前シチリアで作られたアコーディオンが、アメリカでシチリア系、ドイツ系、メキシコ系、フランス系、アフリカ系、ポーランド系、アイルランド系、バスク系、ノルウェー系と様様な人種を渡り歩き、そのアコーディオンをめぐる人々のディテールを綿々と描いた本です。
「シッピング・ニュース」 で、離婚され、二人の娘を持ったさえない田舎の男を淡々と情感たっぷりに描ききったように、ディテールを描くことでその情景を浮かび上がらせる手法が駆け足ながら100年も続き、短篇が延々続くアメリカ絵巻を見るような、息継ぐまもない長大な作品です(2段組449ページ)。
それぞれの人々がアコーディオンを手に入れて、やがて不幸が訪れ、アコーディオンが次の人に移っていく様を時代も人種も関係なく丹念に追っていくのですが、それだけでは飽き足らず、このアコーディオンと関係し、去って行く人のその後についてもカッコつき、でも詳しく書いています。
たとえば、あるバーで偶然このアコーディオンを弾くことになった、アルゼンチンのタンゴ奏者については、こんな感じです。
(1972年ペロン(アルゼンチンの軍人・政治家)が亡命から戻ったとき、タンゴの虎もアルゼンチンに帰った。ペロンが死んだとき、彼は肩をすくめ、そのまま留まった。植物のイラストレーターと恋に落ち、新しいタンゴ音楽で成功を収めていたのだ。ある日彼は“悪い悪い集団”という曲で軍事組織の下っ端の関心を惹いてしまった。これは悪い仲間と付き合うとどんどん転落していくこと、犯罪者タイプとの交際の危険さなどを巧妙に歌ったタンゴである。彼は一晩拘留され、拷問を受け、指の関節を粉々にされた。彼は二度とバンドネオンを弾けなくなった。)
関連する物語を詰め込まなくては気がすまない、といったような書き方で、あまりの密度にゲップが出そうになるのですが、その密度に次第に慣れてくると(私は1/2を超えたあたり)、決して同じ物語が繰り返されないことに「次はどんな人が持つんだ」「次はどんな不幸が訪れるのだろう」と毎日の日課のように読んでしまいました。
気に入ったエピソードもいくつかあるのですが(才能のある人が使っているときは、読んでいても楽しい。幸せの絶頂の中で自殺してしまった話はなんだか悲しい話だった)、一つ一つの話というよりのそのバリエーションとこの歴史そのものという長大さがこの本の売りでしょう。
あえて不幸のアコーディオンとして描いたのか、世に不幸の種は尽きないことを描きたかったのか、あらゆる人生は見方によっては不幸な人生なのか、最終的には「死」がまつ生とはそもそも不幸なのか、その連続する生活苦・無理解・貧乏・無教養に色々と考えさせられれるものがあります。
ガッツリした海外文学が読みたくてE・アニー・プルーの本を読みました思っていたよりガッツリしていました。
肉うどんの大盛りを頼んだら、食べきれないほどの肉が盛られたときのように。
新作も出ているようです。
またしばらくして、消化し終えたら、呼んでみたいと思います。
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