※要旨
・日本には1000兆円を超える見かけ上の債務はあるが、約630兆円もの「政府資産」が存在する。
筆者が2011年に調べたとき、アメリカの「政府資産」は約150兆円だった。
すると日本政府は、GDPが3倍も大きいアメリカ政府の、4倍以上にもなる巨大な資産を持っていることになる。
・日本はアメリカをも抜く、まさに金メダル級の金融資産を持っているのだ。
そのため、資産と負債の差額である純債務となると、日本は459兆円ほど。
そして、負債が459兆円だったとしても、日本のような先進国の場合は、さほど問題ではない。
なぜならば、政府には国民に税金を課す課税権と税金を取る徴税権があるからだ。
・ここで確認の意味で、私のスタンスを改めて述べておきたい。
私は増税を否定しているわけではない。
1000兆円あるグロス債務残高をこのまま放置しておいてもいいとも、むろん思っていない。
赤字はなるべく早期に解消し、財政再建をすべきだ。
ただ増税の前に、金融政策、政府資産の売却など、踏むべき手順がある。
・財務省が「省庁のなかの省庁」といわれるのは、権力が財務省に集中しているからだ。
財務省のスーパーパワーの最大の源泉は、よくいわれるように予算編成権、差配権である。
・予算には必ず「人」と「人に関する権限」が付いている。
財務省は実は、予算を通して霞ヶ関全体の人事を掌握しているのだ。
いうまでもなく、各省庁にはそれぞれ人事セクションがあり、人事異動は各省庁に一任されている。
しかし、国家公務員の人事を全体として管理しているのは、次の3つの部門だ。
1.まず、財務省主計局給与共済課。
ここで給与の額を管理している。
2.次に、各省庁の人員を管理している人事院給与局給与第二課。
3.三つ目は、全体の国家公務員数を統括している総務省人事・恩給局。
・上記の3つは機構上は別々の組織だが、実はすべて財務省が牛耳っている。
2と3の部門にも財務官僚が出向し、実務を取り仕切っているのだ。
・人事院の給与第二課の課長は代々、財務省からの出向者。
総務省人事・恩給局には、「管理官」の肩書で財務省の課長クラスが送り込まれている。
カネもヒトも押さえている財務省は、民間企業ならば、経理部長と人事部長を兼任しているようなものだ。
・予算編成権は政治とのパイプ作りにも大きく貢献している。
財務省は強大なパワーを背景に政権中枢にも深く食い込んでおり、
政権の要所要所のポストは財務省の指定席になっている。
・政権中枢の要職を財務省が独占できるのは、財務省が予算と税を担当していることと深く関係している。
政治家の仕事は立法だ。
法律には普通、予算が伴う。
予算の財源は税金だ。
予算の編成と税制は数ある国会議員の仕事のなかでも最も重要で、
この2つを握る財務省の役人と国会議員の関係は、他省庁に比べると嫌でも深くなる。
・財務省には「予算のできない年はない」という格言がある。
この格言の裏にあるのが、埋蔵金だった。
財源が不足したら、埋蔵金などの税収以外のカネで手当てしてきた。
財務省の予算官僚なら誰でも知っているテクニックだ。