小池百合子『小池式コンセプト・ノート:プロジェクトは「大義と共感」で決まる』のまとめ | 朝礼・商談・接待のネタ帳!ビジネス書を超読み解く

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いつも仕事が忙しいビジネスパーソンへ。本を読む時間のない人向けとして私が読んだビジネス書を解説をしています。

※要旨

・わたしは小泉政権において、
2003年9月から2006年9月まできっちり3年間、環境大臣を務めた。

・環境大臣として、クールビズの導入や風呂敷の復活キャンペーン、
兼任の沖縄対策担当大臣として美ら島ブランド委員会の立ち上げなど、
次から次へと唯一無比な政策を打ち出す努力をした。

・太い道筋、仕組み、システムさえ植え付けておけば、
いつ大臣が代わっても、
方向付けができるとの強い思いが私を支えた。
それが発想の原点だった。

・原点といえば、大臣として最初に手がけた私の仕事は、一世を風靡することとなった「クールビズ」ではない。
すべては環境省の記者会見室のくすんだ青いカーテンを、
美しい地球をプリントした背景に変えたことに始まる。

・カーテンを美しい地球の写真に変え、
その場に居合わせたテレビ局のカメラマンの協力も得て、
「10センチ、上」「もう少し、下」
と指示しながら設置した。

・なにも大臣自らそこまでしなくてもと
思われるかもしれない。
それにキャスター出身である大臣の初仕事が記者会見室の背景変更では、
予定調和の範囲内すぎることも懸念した。

・しかし、環境省には環境の専門家はゴロゴロいても、
広報や報道の専門家、テレビに詳しい職員はいない。
細かい作業だが、仕上げを疎かにしてしまうと、せっかくのコンセプトもうまく活かせない。

・正しい政策、強力な施策を始め、
実行しようとしても、国民に知らしめる知恵を出さずして、
効果が出るとは限らない。

・政治は結果責任がすべてだ。
大抜擢され、大臣の椅子というチャンスを得たのなら、
大臣としての必須科目はもちろん、
私にかできないことをやってやろう。
いわゆるオンリーワンの考えを実践しようと考えた。

・入浴中や、飛行機、新幹線での移動中、
はたまた目覚めとともに、考え続けた結果としていくつかのひらめき、オンリーワンの発想があった。

・クールビズのプロジェクトでは世間から批判を浴びた。
日本の常識から考えると、
上司に刃向かうようなことはなかなか進まないものである。
この場合の上司とは、果たして誰か。
政界の上司は小泉総理、財界の上司は経団連の奥田さん。
この2人の軽装が実施できれば、きっと日本は動く。
ターゲットを具体的に絞り込んでこそ戦略と言えるのだと、
私は何度も自分に言い聞かせた。

・永田町「奉加帳方式」の凄い効果。

・トヨタの奥田会長に電話を入れたのは、2005年1月だった。
わたしと奥田会長とは、数人の経営者とともに、年に数度開く読書会のメンバー同士だった。

・課題図書を巡って、率直に意見交換するのだが、その会そのものはすでに15年以上続いていた。
メンバーが順番に選ぶ課題図書で、
その人の思考や興味分野までわかってしまう、
非常に面白い会である。

・多忙な経営者でも、
大体半年後の予定は調整できるものであることは、この会合の日程設定から知っていた。
そしてクールビズのファッションショーはトヨタの本拠地・名古屋だった。

・私は奥田会長に電話で尋ねた。
6月5日の日曜日、名古屋ですけど、ご予定は空いていらっしゃいますか?」

「ああ、大丈夫、空いてますよ」

これでプロジェクトの8割は成功した、、、そう実感した瞬間だった。

「実は、、、」と、ファッションショーでのモデル依頼の話を切り出すと、
さすがに、
「えーっ、ファッションショーのモデルですか??」
としばらく絶句されていたが、結果は快諾だった。

・モデル集めの幸先は整った。
なぜなら、次から「奥田会長も参加されます」という、強烈な殺し文句が使えるからだ。
松下電器の森下会長、オリックスの宮内会長からも快諾を得た。

・人脈は何にも増して重要だ。
それはあえてここで書くまでもない。
誰しも、日々のご縁を忘れず、相手に敬意を払い、日ごろから人脈づくりに最大限のエネルギーを用いることが大切だ。

・奥田、森下、宮内と、3人の実力経営者がそろった。
この時点で、成功率は80%から90%へと跳ね上がった。
これから先は、永田町で言うところの「奉加帳方式」でいくのみだ。
「奥田さんや森下さんも参加」
という強いお墨付きが、
「そんな方々が出るのなら」という、
大きな安心感を生む、、、私は絶対的に確信していた。

・わたしは政界入りする前、経済番組のキャスター時代に、
経営者本や株式市場に関する本など、フィクション、
ノンフィクションを問わず、片っ端から読み漁った。

・株式などの投資関係者が視聴者に多く、
どの番組より熱心な視聴者を抱える経済金融番組のキャスターともなると、うっかりした発言はできない。
視聴者の熱心度でいえば、馬券購入で直接自らの財布に影響のある競馬番組か、
金融や経済がらみの番組が1番ではないかと思う。
だから経済事件などへのコメントも、
経済や株の裏の裏まで熟知している必要がある。

・かと言って、自分自身が裏の裏に精通するわけにはいかない。
そこで経済小説、なかでも清水一行さんの『小説兜町』『虚業集団』など、
片っ端から読み漁り、疑似体験する方法を取ったこともあった。

・ビジネス書を読む習慣は、政治家になっても全く変わっていない。
特にマーケティング関連の書物から得たヒントは、
政治や行政といった分野でこそ活かせると、長年感じていた。

・政策や行政の場合、顧客は国民、納税者、有権者である。
商品は政策であり、将来への希望である。
それをどう提供し、納得してもらうか。
政治や行政の世界こそ、
究極のマーケティングが必要な分野なのだ。

・そんな思いで政党運営などにマーケティングの手法を
活かしてきたこともあるが、
行政の最高責任者としての舞台が与えられている大臣だからこそ、
これまで学んできた「理論」を「実践」するしかない、、、
ずっとそう考えてきた。

・わたしの座右の書は、
先の大戦での敗戦を客観的に分析した
『失敗の本質』という本だ。
本書はミッドウェー海戦、ガタルカナル攻略戦、インパール作戦など、
様々な戦いにおいて、何が敗因だったのかを学際的に分析している。

・クラウゼヴィッツの『戦争論』や、孫子の『兵法』も参考になる。