昨日公開した記事「GKのプレジャンプは、絶対に必要だ」。
JARTA代表 中野崇 公式ブログを更新しました。 『GKのプレジャンプは、絶対に必要だ。』 #JARTA #中野崇https://t.co/dXdOgz0duo
— 中野 崇|JARTA CEO (@nakanobodysync) 2018年5月1日
プレジャンプは「絶対に」必要だ、という極端に断定したタイトルであったが故に反論もたくさんあるかと思います。
ただこれが、合ってる間違ってるという二元論になることは本意ではなく、かつ選手のためにはならないと思うので、少し整理したいと思います。
また、質問もたくさんいただいたので、それも踏まえて改めてまとめたいと思います。
まず記事を書いたきっかけ。
プレジャンプは必要、不要という双方の見解を聞いた際、そもそも「プレジャンプの定義とメカニズム」がとても曖昧だったことが気になった。
どこに向かうのかも決めていないのに、「この装備は必要か不要か」を議論しているようなもの。
プレジャンプをしているGK、していないGK、のそれぞれの動きを分析した時に、そもそも「人間が飛び上がるというメカニズム」について考えるべきではないか、と感じた。
ざっくりこの2点です。
そして、以前、大きな議論になった野球の記事「腰を落とせ、は間違いだ」、「腰を落とせは間違いだ、は間違いか」でも論じた通り、最も合理的な身体操作はトップクラスのプレイヤーの分析によってのみ議論が成立するという点も重要でした。
(ちなみに腰を落とすべきか落とさないべきかも、GKには重要な視点です)
つまり、野球の内野手もサッカーのGKも、相手(ボール)に対しての反応という前提が必須条件であり、それ故に相手のレベルが低ければ「合理的でない動き」であってもプレーは成立してしまうということです。
内野手は腰を落としてからの送球に時間がかかってもアウトにできるし、GKは”普通のジャンプ”を使ったプレジャンプをしていたとしてもセービングできてしまいます。
これら、語弊を恐れずに書くと「高くないレベル」という枠組みでは、身体操作の合理性は非常に追求しづらく、「この動きが使える」という基準がものすごくばらけます。
http://www.afpbb.com/articles/-/3019788?pid=14001616&page=2から引用
僕が常にトップレベルのプレイヤーを基準にロジックを展開するのはこういう理由があります。
それらを踏まえて改めてプレジャンプについて。
まず、プレジャンプを定義する必要がありました。
必要か不要かを考える上で、とにかくその対象は定義しないと議論はできません。
「あの人は賢いか賢くないか」というテーマは、まず「賢いとは」を決めないと議論がバラバラになるのと同じです。
テストで点数が取れる賢さと主婦としての賢さは別物ですから。
ということで、プレジャンプを定義し、かつ条件付けをしたのです。
プレジャンプの定義>
メインジャンプのためのエネルギーチャージ動作。
*この時点ではメインジャンプのエネルギーをチャージできるのであればどんな方法でも成立。
プレジャンプの条件>
メインジャンプまでの流れが速いかつ十分なエネルギーを確保できること
タイミングを合わせられる、ズレた時に円滑に修正できること
この条件という枠組みによって、プレジャンプとして有効とできる方法はかなり絞られます。
プレジャンプを再定義することで、もしかしたらこれまで「プレジャンプは不要だ」という立場の方にとっても改めて検討していただければ嬉しいです。
普通のジャンプを使ったプレジャンプは不要だが、引き上げを使ったプレジャンプと定義するのであれば必要かもしれない、こんな感じで。。
*前回記事でも書いたように、トップレベルではプレジャンプは非常に見えにくいぐらい小さな動き(=速い)になっています。
飛んでいるようには見えないかもしれません。
小さな動きでも十分にエネルギーをチャージできるぐらい彼らの身体操作は研ぎ澄まされています。
また同時に、そもそもこの議論そのものがあんまり意味がありません。
なぜならパフォーマンスに「正解」はないから。
あるのは使えるかどうかという観点です。
逆説的ですが、正解であっても有効でなければ選手にとっては無意味ですよね。
僕が考える有効な動きは、協力者が多い動き、ということです。
加えてジャンプであるならば人間が飛ぶという現象はどういう物理現象なのか、ということです。
(ジャンプであれば反力によって飛び上がることができると前回書きましたね)
ジャンプという動きにおいて、協力者はどんなファクターがあるでしょうか?
いくつ挙げられますか?
足の力だけで飛ぶのと、上半身や腕の反動も使って飛ぶのとではどちらが高くかつ素早く飛べますか?
つまりどちらが大きな反力を得られますか?
反力を得るための協力者が3つなのと、5つなのとでは、どちらが高くかつ素早く飛べますか?
少し思考プロセスを紹介すると、
飛び上がるという現象に作用する物理学=地面から受ける反力
ということは、
高めるべきは2つのベクトル。
1)地面から受けられる反力を増やす
2)地面から受けられる反力を逃がさない(効率)
反力を増やす→地面を蹴る力、地面を蹴る力の向き
反力を得る効率を高める→反力を受け取る時の姿勢
これらに当てはまる動きを考えていけば、ジャンプ力は高まります。
筋力ももちろん1)に当てはまりますが、あくまで協力者の一部。
ざっと考えてもジャンプの協力者は20以上あります。
決して筋力だけではないということですね。
(具体的なものまで提示して解釈に誤解が生まれると困るので、このへんで。。)
一つのファクターを強化することはもちろん重要だけれど、「同じベクトルで作用する協力者を増やす」という視点もパフォーマンスを高める上ではものすごく重要です。
繰り返しになりますが、ジャンプであれば飛び上がるベクトルをどれだけ増やせるか、という視点です。
これが動きの原理原則です。
そしてそれらの原則に対して、、GKであればGKが要求される条件に照らし合わせて「最も有効な動き」を絞り込んでいく。
ジャンプについて議論する、GKのプレジャンプについて議論するということは、僕にとってはこういうことです。
そして僕はそれを元にトレーニングを構築します。
目の前の選手、または選手自身が、それら「飛び上がるための協力者」のうち、使えていないファクターを見極め、協力者が増えていくようにトレーニングしていく、というプロセスが僕の立場で求められるパフォーマンスアップの基本的な考え方です。
例)
飛び上がるための協力者:A.B.C.D.E
だとして、
目の前のA選手:A.C.D
であれば、
ACDを強化しつつ、B.Eも使えるようにしていく
*個別に使えるようにするというより、ABCDEが同時に発揮できるように。
(腕が振れても地面の蹴り出しとのタイミングが合わなければジャンプの協力者にはなってくれません。)
足の力だけで飛び上がるのと、腕振りの反動にも協力させて飛び上がるのが大きな差を生むように、協力者を増やす、という作業はパフォーマンスを高める上ではかなり使えますよ。
お読みいただき、ありがとうございました。
全てはパフォーマンスアップのために。
中野 崇
追伸
今回ご紹介した協力者を増やす、という考え方は、あらゆる動きの強化に使っていただけるはずです。
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