こんにちは。

スポーツトレーナー協会JARTA代表の中野崇です。

 

 

 

今回は、僕がこのブログで頻繁に扱うテーマである「言葉の定義」

この定義っていう言葉の響きそのものがちょっと日常的でないですし、理屈っぽさを感じさせる言葉の代表格ですよね。

 

 

 

でも言葉を扱う立場にある僕にとっては、非常に重要なこと。

だって知ってると知ってないで議論やコミュニケーションの質が大きく変わってしまうから。

 

 

 

例えば「今日は参加者の人数が多い」って聞いたら何人ぐらいだと思いますか?

 

 

 

20人と思った人もいるでしょうし、100人って思った人もいると思います。

大きな集会をイメージした方は、1万人って思った人もいるかも知れません。

 

 

 

「多い」という言葉は、人によって違うのです。

それを確認しないまま、会議を進行したらまずくないですか?

 

 

 

そもそも、定義ってどういう意味でしょうか?

 

 

 

定義を使いこなすためには、まずこの「定義という言葉」を理解しておく必要があると思います。

 

 

 

辞書によると、

【物事の意味・内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定すること。】とあります。

 

 

 

「限定する」

 

 

 

ここがポイントです。

言葉は、人や場面、立場や時代、文化によって解釈が変わります。

解釈が変わるってことは、行動が変わるってこと。

 

 

 

特に抽象的な言葉はその傾向が強いです。

 

 

 

例えば「あの選手は走るのが速い」は、見る人によって速いかそうでないかは違うはずです。

日本人全員から見たらめちゃくちゃ速い桐生選手でも、ウサインボルト選手から見れば、遅い。

ウサインボルト選手を見慣れたコーチから見たら、桐生選手は遅いんです。

 

 

 

だから、ここではこの言葉はこういうことを表しますよ、という限定が必要。

限定、つまり定義するために必要なことは、大きく分けて次の2つの視点です。

 

 

 

1)場面。

その選手が走るのが速いのは、50m走なのかそれともマラソンなのか。または直線なのか野球のベースランニングのように曲がる必要があるのか。

 

2)量的な側面。

走るのが速いという言葉であれば、何秒以上のことを言うのか。

 

 

 

つまり定義とは、「ボーダーラインと場面を明確にする作業」です。

(本当はもう少しあります。質的な側面とか。)

 

 

 

会議やコミュニケーションでうまく噛み合わない時やまとまらない時は、この点を不透明にしたまま議論していることが非常に多いのです。

 

 

 

スポーツの指導やトレーニングにおいては、会議が長引いたり意見がまとまらなかったりどころの話ではありません。

例えば以前ここでも書いた「腰を落とせ」という指導。

以前書いた、結構いろんな反論もあった記事はコチラ。

 

あとそこへの反論を思っきり逆手に取った反論も書きました。

「腰を落とせは間違いだ」は間違いか?

 

 

 

「腰を落とせ」はスポーツ界では非常によく使われる言葉です。

野球のゴロを捕球する時やサッカーのキーパーの姿勢、相撲の基本姿勢などなどたくさんあります。

いろんな競技の選手に尋ねましたが、ほぼ全員、腰を落とせという指導を受けています。

 

 

 

全て、腰を落とすという同じ言葉を使っていますが、中身は大きく異なります。

 

 

 

例えば相撲の腰を落とすと、キーパーの腰を落とすは、ほぼ真逆のパフォーマンスが求められます。

 

 

 

相撲は、その場からなるべく動かされないようにするのが目的。

キーパーはその場からなるべくどの方向にも瞬時に動けることが目的。

 

 

 

だから同じ腰を落とせでも、必要な骨盤や股関節の角度や意識状態は変わります。

 

 

 

指導側が「腰を落とせ」と指導する時、この中身を限定、すなわち「定義」せずに腰を落とせ!と言うことで、もしキーパーが相撲の「腰を落とせ」をやってしまったら、どうなるでしょうか。

 

 

 

キーパーの腰を落とす

相撲の腰を落とす

 

 

 

これらを定義しないと、言葉によってパフォーマンスが低下するリスクが生じるのです。

 

 

 

ちなみに日本文化において、つまり日本人選手においては、腰を落とせという言葉に対する反応は、相撲の腰を落とせに近くなってしまうことが多いです。

この点も非常に注意が必要です。

詳細はコチラ。

「単に欧米式のトレーニングをやってもダメな文化的理由」

 

 

 

上手くなるためにやっている指導のはずが、言葉の曖昧さによって逆のベクトルを生じてしまうのは本当にもったいない。

 

 

 

冒頭にも書いた通り、僕の経験上、ここまで書いても言葉の定義ってやっぱり難しいという反応が多いです。

なのでもう少し詳細を。

 

 

 

言葉を定義する方法の一例です。

いろんな方法があると思いますので、あくまで一例です。

 

 

 

僕は中学生の英語で出てくる5W1Hを使います。

 

 

 

When=いつ:時間的な要因を確定。

Where=どこで:場所や場面の要因を確定。

Who=誰が:人物側(実施者・対象)の要因を確定。

What degree=程度:量的な数字で確定。(何人以上を「多い」とするなど)

Why=動機・語源:その言葉の語源や使われている理由を確定

How=手段:行動や手段を確定。

*ここでも質的な側面は省略しています。

 

 

 

抽象的な言葉をこれらに当てはめてみるとうまく定義できると思いますので、ぜひ試してみてください。

 

 

 

 

 

 

お読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

全てはパフォーマンスアップのために。

 

 

 

 

 

中野 崇

 

 

 

 

追伸

ピッチャーによく使われる「下半身の安定」も、定義がはっきりしていない言葉の代表格です。

「ピッチャーの下半身が安定している状態」を定義せずに、安定させるためのトレーニングなんて指導できるのでしょうか。

ぜひ一度、「ピッチャーの下半身が安定」を定義してみてください。

投手用トレーニングセミナーでは、それを明確に説明します。

ちょっと分からん、気になる、という方は投手用トレーニングセミナーへどうぞ。

http://jarta.jp/j-seminar/pitcher/

 

 

昨日は明治安田生命さんからのご依頼で、美容ストレッチというテーマで講義してきました。

今回で2回目です。

一般的な美容=スタイルという観点だけでなく、動きという視点も加え、プロアスリートたちに指導しているトレーニングを女性向けにアレンジしてご指導してまいりました。

どんなにスタイルが良くても動きが不十分だとスタイル良く見えないですよね。

普段とは違う景色と雰囲気におもいっきり呑まれながら、2本の講義を終えました。

 

 

 

JARTAのトレーニング指導をご希望の方は下記から(初回半額です)。

http://jarta.jp/dispatch/

 

 

 

JARTAのオフィシャルLINE@

友だち追加